体を冷やす方法あれこれ

 台風15号による停電は想定以上の被害が出ているようで、復旧に時間がかかっているようです。
 電力関係の方々が昼夜問わず復旧作業をされていますが、なかなか困難な状況とも聞きます。ぜひ安全第一で作業を続けていただければと思います。
 そして、台風一過で真夏並みの暑さが戻ってきました。その結果、冷房なしで殺人的な暑さを耐えないといけなくなるという過酷な状態になってしまいました。熱中症により亡くなる方も出てきています。
 熱中症の傾向については以前触れたことがありますが、今回は遅ればせながら「体の冷やし方」についていくつか方法を考えてみたいと思います。

1.なぜ体を冷やさないといけないのか

 人間の体は体の機能を維持するために体温を調整する能力を持っています。
 ただ、まだ調整能力が発達していないこどもや、調整機能が衰えている高齢者の方は、体の調整機能が環境の変化についていけず、熱中症になってしまうことがあります。
 そのため冷房などの外的要因で体を冷やしてやる必要がありますが、最近はやりの携帯扇風機にはお気を付けください。
 周囲の空気を顔に吹き付けると汗の気化熱で涼しく感じるのですが、高温になると汗が出る前に熱風で乾いてしまって熱中症を誘発してしまう危険性があります。もし使うなら、水をミスト上に吹き出せる構造を持ったものを使うようにしてください。

2.どこを冷やせばいいのか

 体温を下げるということを考えると、大きな血管が集まっている場所を冷やすのが効率的です。
 背中の肩甲骨の間、脇の下、太ももの付け根などがよく言われる部位ですが、冷やすのが難しい場所でもあります。
 また、夏場にできる野菜や果物には体を冷やす働きがありますから、そういうものを食べて体を冷やすこともいいでしょう。氷やアイスクリームなどの冷たいものも同様ですが、どちらも食べ過ぎるとお腹を壊したりします。
 今回、簡単に誰でもできてお勧めしたいのが「手のひらを冷やす」こと。
 手を水につけるだけでも体温を下げる効果が期待できます。
 手に冷たくしたペットボトルを持っているだけでも、体温が確実に下がります。先日テレビで実験していましたが、冷えすぎているとよくないようなので、凍っているペットボトルの場合はタオルを巻くなど、温度を少し上げる方がいいようです。
 また、濡れたタオルで熱を吸収しやすい頭などを冷やすのも効果的ですが、びちゃびちゃのタオルを使うと周囲の熱で逆に煮えてしまうこともありますので注意してください。
 また、いっそのこと水風呂に入ってしまうというのも涼を取るという点ではいいと思います。

 停電区域全域に電気を行き渡らせるのは無理でも、電源車や発電機を使えば、特定の施設を通電させ、冷房を稼働させることはできるのではないでしょうか。
 また、停電していない場所まで被災者を移動してしまう広域避難を行うのも効果的だと思います。移動手段を提供できれば、小さい子ども連れや高齢者を移動させることも用意だと思います。。
 停電も災害の一つと考えると、地域への支援や地域外への避難という選択肢はできると思うのですが、あなたはどう思いますか?

被災後の段取りあれこれ

 ここのところ災害が続いていますが、被災した後、片付けを始める前にいくつかやっておいた方がいいことがあります。
 以前「被災物件の調査と証明あれこれ」で行政の調査については少し触れたことがありますが、被災後の片付けと段取りについて思いつくことを書いてみたいと思います。

1.被災したものの写真をしっかりと撮影しておこう

 被災した後、罹災証明書の申請や各種災害保険の請求などには写真が必要です。
 大規模災害になると、行政や保険会社が確認にくるのが被災してからかなり期間が空いてしまうこともあるため、その間片付けができない事態に陥ります。
 その際、写真が撮影されていると、その写真を使って罹災証明書や保険手続きを進めることができる場合があります。
 予め自治体や保険会社に確認して写真OKの了解をもらえば万全ですが、とにかく写真を撮っておきましょう。
 被災したものは4面と斜め、上部など、角度を変えて撮影し、被災したものの被災した様子がわかるようにします。
 建物や車両などは内部の写真や被災部分の写真も取っておくといいと思います。
 あと、建物の場合には簡単な見取り図と被災部分がわかるようなものを作っておくと、後々いろいろと役立つと思います。

2.業者による修理が必要かどうか確認しよう

 破損している場所やものによっては、専門の業者の方に修理をお願いしないとどうにもならない場合があります。
 まずは自力で修繕できるかどうかざっくりと被災したものを確認し、業者さんによる修理が必要だと判断したら、修繕の必要な場所と内容をリストアップして、すぐに業者さんへ依頼をかけましょう。
 被災してすぐなら業者さんもある程度余裕がありますから、自分のところができなくても、場合によっては他の業者を紹介してくれることがあるかもしれません。
 また、修理箇所と修理内容をリストアップしておくことで業者さんは修理部材や必要な期間が見積もれるので、手早くやってもらえることも多いです。
 全て業者さんに確認してもらおうとすると、時間が取れないために後回しにされることも多いのでご注意ください。
 そして、片付けが終わってから依頼すると、今度はいつ来てくれるかわからないくらい待たされますし、被災地外から入ってきたおかしな業者に異常に高価な金額で適当な修理ををされてしまうことも発生します。
 専門家が必要な作業は、早めに手配するようにしておきましょう。

3.ゴミ捨て場の確認をしておこう

 被災した後の片付けは、まず被災して壊れたものを家から搬出するところから始まります。
 その際、大型ゴミを処分する場所が確認できないと家の前や周囲に放置することになってしまい、衛生的にも景観的にもよくない状況になります。
 大型ゴミの処分場所・回収場所は変更されることが多々ありますので、処分する前に自治体に搬入先を確認するようにしましょう。
 また、自治体によっては処分場所・回収場所がいっぱいになって個別回収に変更するケース、回収を一度中止するケースなどもあります。
 前の日に確認したとおりにいかない場合もありますので十分注意してください。

4.人の手当を考えよう

 被災した後の片付けでは、自分一人ではどうにもならないような大型ゴミの搬出やいろいろな場所の掃除、片付けなど多岐にわたる後片付けが待っています。
 そのため、どのようにして片付けを始めるのかを考えておかないと途中で力尽きてしまいます。
 近所の人と一緒にみんなでお互いの家を片付けるのか、ボランティアを要請するのか、親戚縁者を総動員するのかなど、人によってやり方はいろいろだと思いますが、間違っても一人でやろうとは思わないでください。
 間違いなく途中で挫折します。

5.水が使えるかどうか確認しよう

 掃除につきものなのは水です。特に水害で被災した場合には家具や建物に貯まった汚泥を流すのに必須のものです。
 飲料に適さなくても構いませんが、それなりにきれいな水を確保するようにしましょう。
 水が使えない場合には、どんな方法ならきれいにできるかを資材を見ながら考えてみてください。

 注意しておきたいのは、全てにおいて作業をするのは自分だということです。
 自分一人では挫折すると書いていることと矛盾すると思われるかもしれませんが、周りはあくまでもお手伝い。
 全体の流れや段取りは自分で組むしかありません。
 誰かに頼ろうとすると、「災害関係の保険手続きは自分でするようにしよう」で触れたようにどこかからやってきた変な業者があなたの保険金をごっそり奪っていったりすることもあり得ます。
 あくまでも主体は自分。周囲はそのお手伝いということを忘れないでください。
 そして、どうしてもわからないことがあればご近所や社会福祉協議会、行政の窓口で確認してみてください。
 被災したことは終わったことですから、その事実は変えることができません。
 でも、被災からそれまでの生活に復帰するまでの時間を短くすることは可能だと考えます。
 早め早めに段取りをつけて、日常生活を取り戻せるようにしたいですね。

簡易トイレを作ってみる

 ちょっと前にトイレについて触れてみましたが、もう少し具体的に簡易トイレの作り方を教えて欲しいというご要望を頂戴しました。
 以前に「トイレ問題を考える」のなかで簡易トイレの作り方を書いたことがあるのですが、あれは便座や便器をそのまま転用する方法だったので、便座や便器が使えない場合どうするのかというご質問もあわせていただきました。
 理屈が分かれば「なぁんだ」というようなものなのですが、一度目で見てみるとよく分かるのかなと思いましたので、今回は簡易トイレを作ってみることにします。

1.材料

1)バケツ 1個
2)猫の砂 1パック
3)大きめのビニール袋 1枚

猫砂はお好みでどうぞ。個人的な感想を書くと、木からできているペレット状のものがお勧め

2.作り方

1)バケツにビニール袋を入れて口を折り返して拡げる

2)バケツの中に猫の砂を注ぎ入れる

3)バケツの上に座って用を足す

 バケツのサイズにもよりますが、おしりがはまって抜けなくなったり、うまく腰をかけられないことがあると思うので、バケツの上には段ボールなどで便座を作っておくといいと思います。
 結局のところ、排泄物を貯められる箱のついた座れるものであればいいという話になるので、コンテナボックスやゴミ箱、段ボール箱なども使えます。ただ、強度の問題がついて回りますので、くれぐれもおしりの載せ方には気をつけてくださいね。

被災者の心理について考える

 「災害」というのは非常事態ですが、被災後のあれこれは日常生活に組み込まれていきます。
 災害が起きてから完全復旧するまでにどのような精神状態になってくるのかについて、今日は考えてみたいと思います。

1.被災直後

 災害で自分はどうなってしまうのかという不安が中心です。
 自分の安全が確保されると、家族や友人、近所の人の安否、そして自分の財産、地域の状態という風に、安全が確保されて行くにしたがって意識が広がっていきます。
 連絡の取れない人や、残念ながら亡くなってしまった方がいるような場合だと、多くの人の意識はそこで止まってしまいます。

2.被災してから1週間程度まで

 自分や家族の命を繋いでいくことや、家の片付けなどに追われます。
 なんでも自分でやらなければと言う意識になったり、災害をなかったことにする逃避行動などが見られるようになるのはこの時期からです。
 これからどうするのか、どうしたらいいのかという将来に向けての不安が出てくるのもこの時期からで、日頃抱えていたさまざまな人間関係が一気に噴き出してきたり、漠然とした不安から暴力行為、性犯罪などが増える時期でもあります。

3.被災後1週間以降3週間目くらいまで

 被害の小さかった人と被害の大きかった人の差が出てくる時期です。
 被害の小さかった人は、家の復旧が終わって今後の見通しを考え始め、被害の大きかった人は自分の生活再建についてどのようにしたらいいのかについて考えていますが、高齢者や生活に支援が必要な方は、このあたりで将来に絶望を感じ始める人も出てきます。
 被災者の心身の疲れが出てくるのもこの頃からですので、心理的なケアも必要となってきます。

4,被災後3週間から半年

 被災者は自分の生活再建で手一杯になってきます。
 避難所に残っているのは、生活復旧の目処の立たない人が殆どになり、避難所の統合による再三の引っ越しや移動、見えない将来と破壊された日常など、被災時から積もってきた疲れと不安、そして不満と絶望から感情的になったり、逆に無気力になったりします。

5.被災後半年から一年

 話題に取り上げられることも少なくなり、良くも悪くも日常が戻ってきます。
 ただ、ここまでで以前の生活に戻れなかった人や他人との接触に疲れてしまった人は、やがて社会との接触を断っていくことになります。
 このあたりでこれ以降の生活が固定することが多くなるようです。

 人によってとらえ方や感じ方は異なると思いますが、以上が筆者が個人的に感じている被災者の様子です。
 被災してからしばらくは、気が張っていますし「みんなで復旧・復興するんだ!」という空気に流されて元気でいられることが多いのですが、日常生活は結局それぞれの被災者個人で取り戻していくことになるため、取り戻す方法を手に入れた人と手に入れられていない人では時間が経過するに従って格差が生じることになります。
 この格差が孤独感を生み出し、やがて孤独死に繋がっていくのでは無いかと思います。
 格差を作り出さないためには、「日常生活の復旧」に加えて「社会的な存在意義の確保」という視点からの支援が必要となるのでは無いでしょうか。
 自分の日常生活が戻ってきて、社会的にも必要とされている状態を作り出すことで、本人も生きていく気力が出てきますし、孤独死を防ぐことも可能です。
 別に大上段に構える必要はないと思います。朝、道路に出てもらって、行き交う人に「おはよう」のあいさつをしてもらうだけでもいい。それだけで生活に張りが出ます。
 ちょっとした社会との関わりを持ち続けることを作るような支援も行っていく必要があるのかなと感じています。

災害ボランティアをやってみる

 最近はあちこちで災害が起きており、災害ボランティアという言葉もすっかり定着した感じがします。
 8月に佐賀県を中心とする大雨により発生した水害の復旧にも、あちこちからボランティアが集まって被災地の支援を開始していますが、ボランティアをするためにはどんな装備や意識が必要なのでしょうか。

1.ボランティアの条件

 災害ボランティアをするに当たって特に必要な条件はありませんが、被災地や被災者を助けたいという気持ちは必要だと思います。
 そして、体調が万全でなければ被災者に迷惑をかけてしまうことになりますから、体の調子はしっかりと整えておく必要があります。
 また、災害ボランティアは自分のことは全て自分でやることが基本ですので、自律できていない人はやらない方がいいと思います。

2.ボランティアをするには

 大きく分けるとボランティアセンターを通して行うものと、個別に回って作業を手伝うものとにわかれます。
 それぞれにメリットデメリットがありますが、ボランティア参加者の身元確認及び安全確保という点から、行政等はボランティアセンターを通してボランティアに入ることをお願いしています。
 また、現地の混乱や危険が解消されつつあるという一つの目安がこのボランティアセンター設置ですので、ボランティアセンターが設置されるまでは、地元の支援なしでボランティアに入ることはかなり困難が伴うということも意識しておく必要があると思います。

1)ボランティアセンターを通して行うボランティア

 被災地のどこで支援を行うかという場所・内容選びをボランティアセンターが行ってくれますので、時間にボランティアセンターに行けば済むという点で楽です。社会福祉協議会がやっているボランティア保険も適用されるので、何かあったときにも最低限の担保はされています。また、作業に必要な道具類や状況によっては飲料水等の提供を受けられることもあります。
 デメリットは、自分の思うようにはならないということ。ボランティアセンターの指定した時間に指定した場所で指定した内容のボランティアのみをこなすことになりますから、お隣の人から作業を頼まれてもやることができないというジレンマを抱えることがあります。
 また、誰でもできる内容が多いので、特殊技能を持っている人は物足りなさを感じることがあるかもしれません。

2)ボランティアセンターを通さずに行うボランティア

 自分の思うように思った場所で思った時間、被災者が要望している内容を要望にそって提供できるということで、被災者、支援者ともに要求を満たせて素早い復旧が期待できます。
 デメリットはまず被災地のどこへ行くのか、誰に何を提供するのかを地元の要望を確認しながら事前に決めなければなりません。また、ボランティア保険の適応がありませんので、自分で保険会社に依頼して保険をかけておく必要があります。そして、独立して作業をするので、自分の食料や水といったものだけでなく、作業に必要とされる道具類も自前で準備しておかないといけません。

3.ボランティアの装備

 個人の装備としては、長袖、長ズボン、安全靴、なければ安全中敷きをいれた長靴や運動靴、防塵マスク、作業手袋、あれば防塵ゴーグルと帽子、ヘルメット。
 リュックサックにはタオル、ウェットティッシュ、2リットル程度の飲料水、食事、怪我をしたときに使える救急セット、雨合羽。
 日帰りボランティアならこれくらいあれば大丈夫だと思いますので、あとは季節に応じて日焼け止めや冷却剤、カイロや防寒着といったもの、また個人的に必要なものを持って行けばいいと思います。
 宿泊して現地でボランティアを続ける場合には、被災地外に宿泊地を設定し、被災地には通うようにした方が現地に負荷をかけずにすみますので、移動手段及び宿泊方法も考えておいた方がよさそうです。

 行政機関は面的、一律的な対応しかできませんが、災害ボランティアはややこしいことを抜きにして被災者を助けることのできる重要なボランティアです。
 ボランティアが動けば、その分現地の復旧は進みますので、興味があったり機会があったら、ぜひ一度経験してみてください。

ろうそくと火災

 昨日は災害における死因について書きましたが、消防研究センターの調査によると、被災後に起きる火事の原因では、「通電火災」「ろうそくによるもの」「カセットコンロによるもの」「その他」に分かれるようです。
 最近は殆ど見ないような気のするろうそくが原因の火災が、消防研究センターから注意が出るくらいには起きているということで、今回はなぜろうそくによる火災が起きているのかについて考えてみたいと思います。

 最近でこそ電池式ランタンが普及していますが、ちょっと前までは普通にろうそくを使っていました。
 市販されている「防災缶」でも照明器具としてろうそくが入っているくらい、ろうそくは災害後の生活ではメジャーなものです。

市販の「防災缶」の中身。小型のペンライトと、背の低いろうそくが一緒に入っている。

 灯りだけでなくある程度の暖を取ることもできますし、なによりもろうそくの火は安心感を与えてくれます。
 非常にありがたい道具ではあるのですが、裸火であるが故に地震の際には非常に危険なものにもなるのです。
 地震ではしばらくは余震が続きます。重心の低いろうそくを使ったり、風防でろうそくを囲ったりと、いろいろと気をつけていても、強い余震がきたら飛んだりはねたり転がったりして、周囲にあるものに引火することがありますし、ろうそくは動かなくても、他の可燃物が倒れたり落ちたりすることもあるでしょう。
 他の災害時はともかく、地震ではろうそくに限らず屋内の裸火は危険であると言うことを覚えておいてください。

防災缶の中のろうそく。このサイズで3時間程度は燃えるらしい。
缶の表面に書かれている案内文には、たき火の火種にも使えるとある。

 ところで、災害備蓄ではランタンを勧めているのになぜろうそく火災が増えるのか。
 お仏壇があるようなお宅だと、たいがいろうそくとマッチが一緒に置いてありますので災害時にはそこから持ってきて使うということが多いようです。
 普段使わずどこにしまってあるかわからない電池式ランタンよりも、すぐに取り出せて普段使い慣れているろうそくを使うのはある意味で当然です。
 そうであるなら、例えばろうそくをしまってある場所に「災害の時はランタンを使う」という張り紙をしておいたり、ロウソクと一緒にランタンをしまっておいたり、家族で一緒に一年に一回くらいはランタンを囲む日を作ってもいいかもしれません。なんらかの形でランタンを意識し、使うという気にさせるような仕掛けを作っておけば、ろうそくを使う確率を下げることができるのではないかと思います。
 ろうそくは便利であるけれど、地震の時には屋内では使わない。その意識を持ってランタンを準備しておくようにしましょう。

災害での直接死を防ぐには

 起きる災害によって異なるのですが、それぞれの災害によってある程度亡くなる方の死因というのははっきりしています。
 例えば、地震であれば建物の倒壊による「圧死」、洪水であれば「溺死」、土砂災害であれば「打撲」と「窒息」といった感じです。
 もちろん全ての災害で出てくる死因というのもあって、火災による「焼死」などは大規模災害では大概どこかで発生しているようです。
 これらの死因を元に、どうやったら災害で死ななくて済むのかを考えてみると、「居場所の耐震強化」と「早めの避難」に答えが集約していくような気がしています。
 地震は予告なしにいきなり来るものですから、どこにいてもいる建物が崩れてしまえば圧死してしまう可能性があります。そのため、建物の耐震強化というのが学校等の最優先事項として実施されていたわけです。
 他の災害の場合には、ほとんどの場合何らかの前兆があります。その前兆を見逃さないようにすれば、ある程度までは安全なところに避難することが可能だと思います。
 そして「火災」ですが、これは起こる可能性が3回あります。
 1回目は災害そのものによるもの。例えば関東大震災ではちょうど昼食の準備をしていたご家庭が多かったこともあって、発災後100件以上の家から出火したそうです。ただ、初期消火ができれば、この火はさほど怖いものではありませんので、家庭に消化器を備えておくことが重要になってくると思います。
 2回目は、災害後のある程度復旧したときの通電時。これは通電火災と呼ばれるもので、暖房器具に可燃性のものが乗っていたり、断線などによりショートすることによって発生するものです。阪神淡路大震災では、この通電火災があまり意識されていなかったため火災が多発してしまったという苦い経験から、各電力会社さんは災害復旧による通電開始時には通電予定エリアを徹底的にチェックをするようになっています。そのため、熊本地震では通電火災は1件もなかったそうです。
 3回目は、余震や不注意によるもの。例えば、停電時にろうそくを使っていて余震にあい、ろうそくが転がって火がついたというような場合です。また、災害後に気を落ち着かせようとつけたたばこの火が漏れたガスに引火して火災が発生したようなケースもあるようです。いずれにしても、災害後にちょっと意識をすると防げる火災ではあります。
 こうやって見ていくと、災害で発生する民家の火災というのは、燃え始めた初期で消火器が使えるのであればかなりの火災を防ぐことが可能なのが見えてきます。
 家屋の火災はまず初期消火。もちろん、火事と言うことを大声で周囲に知らせて応援をしてもらうことも大切です。
 災害で死ななかったのに、その後の火災で死んでしまっては何にもなりません。
 建物の耐震強化と早めの避難、それに家庭用消火器の備え付け。
 これらを忘れないようにしたいです。

家が浸水したあとの対応

 佐賀県を中心として、全国あちこちで家屋や倉庫などの浸水被害が出ており、これからどうやってお片付けをするのかについて悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 かくいう私も、地元の島根県益田市で起きた昭和58年に大きな水害に遭い、うちの親が経営していたお店が床上浸水しました。
 今回は、その時やその後水害復旧のボランティアに出かけた先で経験した経験則としての浸水後の対策について書いてみたいと思います。

0.浸水家屋掃除の格好

マスクとゴム手袋は必須だと思ってください。臭いや粉じん対策としてのマスクと、たまっている汚泥には釘や刃物などの危険なものが混じっていないとも限りませんので、厚手のゴム手袋は用意しておきます。
また、万が一汚泥の撤去中に外傷を受けた場合、破傷風などになることがありますのでなるべく肌の露出は避けるようにします。
あとは汗拭きタオルと自分が飲むお水は忘れないように準備しておきましょう。

1,まずはものの撤去

 洪水の水が引いた後は一面が泥、というよりもヘドロの層が堆積しています。
 そのヘドロを一刻も早く屋内から出さないといけませんが、その時に邪魔になるのが洪水に使ってしまった家具や電化製品、畳やふすまといった家の中のいろいろなアイテムです。
 とりあえずはこれらを家の外に追い出します。もし水道の供給が再開されていれば水をかけてついた泥を流し、その後で再利用するかどうかを考えてください。
再利用する場合には、なるべくきれいな場所を見つけてそこで乾かします。乾いた後、最低でも一度は拭き取り掃除をし、その上で消毒を行ってください。
 使えない場合には、行政機関が粗大ゴミの仮置き場を設置しているはずですので、そちらへ持ち込むことになります。
 道路や空き地に置いてしまうと、それが呼び水になってあちこちから粗大ゴミが集まって収拾がつかなくなるので、仮置きするなら家の前など、目につく場所に置き、早めに粗大ゴミの仮置き場に移動させるようにしましょう。
 そして、可能な限り「燃えるゴミ(生ゴミ含む)」「不燃物」「家電製品」「粗大ゴミ」という風に普段の回収と同じように分けておくと後が楽です。

2.屋内の汚泥を排出する

 洪水で貯まった泥はなぜか非常にくさいことが多いです。そのため、開放できる扉や窓は全て開放し、風通しを良くしてから床下の汚泥の撤去から始めます。
 撤去した汚泥は、あれば土嚢袋に詰めて行政の指定した回収場所に持って行きます。指定が無い場合には、なるべく家から離れた場所に仮置きして回収を待つようにします。
 土嚢袋が無い場合には、やはり住家からなるべく離れた場所に運んで仮置きし、回収を待つようにしましょう。
 汚泥を除去した後は、壁や柱などを清掃し、床下と合わせて消毒を行います。その後は風通しを確保し、できれば扇風機なども使って完全に乾くのを待ちます。
 完全に乾いた状態であれば、もし汚泥が残っていても乾いた薄い板状になっている可能性が高いので、そのまま回収して土嚢袋にいれて回収してもらいましょう。
 また、天候や諸条件によって完全に乾ききらない場合もありますので、そんな時には消毒の回数を増やして乾ききらなかった場所からカビなどの汚染が広がらないようにしておきましょう。
 消石灰などは消毒と乾燥を同時にすることができるので、あるのであれば使った方がいいと思います。

3.洗浄と消毒は忘れずに

 幸いにして使える家具や食器類、調理器具などは丁寧に水洗いした後は消毒をしておきます。消毒後はしっかりと乾かして、カビや汚染を防ぐようにしておきましょう。
 消毒液はハイターなどの塩素系がお勧めですが、他の薬品と混ぜると塩素ガスが発生することがありますので「混ぜるな危険!」でお願いします。

4.無理しない

 手早くきれいに片付けられるのが理想ではありますが、現実としてなかなか思うようには片付きません。
 そんなときには焦らずに、自分のペースで無理しないように片付けていきましょう。ちょっとずつでも手を止めなければいつかは終わります。長期戦を覚悟して、マイペースで片付けをするようにしましょう。

5.もしボランティアが来てくれたら

 自宅や倉庫の掃除や片付けに災害ボランティアが来てくれたなら、おうちの人はなるべくボランティアにわかるような場所にいてください。
 屋内から持ち出したものの掃除や必要性の有無、掃除すべき場所やゴミ捨て場など、おうちの方に聞かないとボランティアでは判断のつかないことがたくさん起きてきます。
 その時に誰に聞いたらいいのかを、最初の顔合わせの時にボランティアに伝え、ボランティアの見える場所にいてもらうようにお願いします。
 人手のいる部分や誰に任せても大丈夫な部分は積極的にボランティアにお願いし、自分たちは自分たちでないとできない場所に集中して作業を行うようにすると効率がいいです。
 また、ボランティアは基本的に自己完結した装備を持ってきていますので、接待は不要です。
 ボランティアは支援した人の喜ぶ顔が一番の接待だと思っていますので、終わったときにいい笑顔を見せてあげてください。

 床下浸水、床上浸水を問わず、片付けの流れとしてはこんな感じになります。
 もし床下浸水であっても、安心せずに床下を開けて中を確認してください。
 何も問題なければそれでいいですし、もし汚泥がたまっていたなら、清掃しておきましょう。
 ところで、洪水による災害は環境が汚染され食中毒や赤痢などに感染しやすくなっています。もしも何か体調不良を感じたら、作業を中止して早めに病院を受診してください。
 また、食事の前やトイレの後は、しっかりときれいな水で手を洗うようにしましょう。

テクニックと備え

 防災の準備というと、なんとなくアウトドアやサバイバルというイメージをされる方もいらっしゃると思います。
 実際、「災害に備える」というようなタイトルのついた本やネット情報では、「水を浄化する方法」や「火を起こす方法」などが書かれていて、見るとかなりハードルの高い内容が書かれていることが多いです。
 ただ、これは災害時にそうしなければならないということではなく、災害時にはこういった方法もありますよという技術として知っておいた方が良い内容でしかないということを意識してほしいなと思います。
 例えば、火の起こしかたでも、ペットボトルや虫眼鏡、木の摩擦やファイヤスターターなど使わなくても、マッチやライターがあれば簡単に着火することができます。
 また、田舎ならともかく、大都市のど真ん中で裸火を使うことができるのかという疑問もあります。
 水の確保でも、高価な浄水器があれば確かに便利ではありますが、その値段で1週間分の飲料水が何本買えるかを考えたら、お水を買ってくる方が現実的かもしれませんし、そもそも浄水器で浄水して飲める水が確保できるのかという問題もあるでしょう。
 技術として知っておいたほうがいいとは思いますが、実際の準備としてはなるべく普段の生活と変わらないものを用意しておくということが重要だと思います。
 ペール缶コンロを作ったり使ったりするのは自信が無くても、カセットコンロなら簡単に使えるのでは無いでしょうか。
 また、飲料水もあらかじめ飲める水を用意しておけば、飲料水の確保であくせくする必要はなくなりますし、長期保存の水で無くても、普通に売っているお水を買い足していけば安く確実に更新をすることも可能です。
 このホームページでも空き缶を使ったご飯の炊き方を書いていたりしますが、鍋があればより確実に安全においしいご飯を炊くことが可能です。ポータブル電源が確保されているのなら、電気炊飯器を使うことも可能でしょう。
 災害の準備は、自分の普段の生活を維持できるための装備を用意すればいい話ですし、、予算の都合などで普段の生活が維持するための準備が難しいようなら、どのようにすれば代わりが用意できるかを考えて準備しておけばいい話です。
 「防災」というと皆さん難しく考えるのですが、要するに「普段の生活を確認し、状況が変わってもいかに質を落とさずにすむか」ということを考えて備える作業なので、難しく考えずにできるところから備えていけばいいのではないかと思っています。

生活弱者ほど防災対策を知っておこう

 発災してからしばらくして落ち着いてくると、避難所の生活リズムも確立されていきます。
 その中で、生活弱者の視点があるのかというと、ないと言わないといけないのが現状です。
 ただ、生活弱者がもし防災や避難所運営に詳しかったとしたら、避難所の生活リズムの中に生活弱者の視点を取り入れることが可能ではないだろうか、と考えています。
 災害が発生して避難所が立ち上げられるときには誰もが呆然とし、不安になるものですが、もし、そこで普段「生活弱者」とされている人が避難所設置の指示を出し、避難所の運営を主体的にすることができたなら、よりよい避難所運営が可能なのでは無いかと思うのです。
一般的に「避難所では生活弱者ははじき出されてしまう」ことが多いのですが、運営の核の部分に入り込めれば、うまく避難所運営ができている限りにおいては追い出される心配はないのではないでしょうか。
 そして、生活弱者が避難所で生活できる環境というのは、生活弱者で無い人が生活するにしても悪い環境ではないはずです。
 いろいろと考えてみるのですが、生活弱者が「お客さん」として避難所に入ってくると、これはそうで無い人がその手配をさまざまにしなくてはいけないことになり、非常に煩雑になってくるものです。
 ですが、最初から避難所の運営にそれが組み込まれているのであれば、仕組みを変更する必要が無いのでうまく回せるはずです。
 訓練時に「生活弱者だから」こそ積極的に参加して、避難所の設置方法や運営方法といったことに提案や協力をするのであれば、災害本番の時にも当然それが組み込まれていきます。
 生活弱者の実態と対応は、その立場にある人で無ければ完全には理解できませんから、災害時に立場の弱い生活弱者ほど、積極的に訓練に参加しておくべきなのではないかなと思います。
 そうすることで、避難所を運営する人たちにもそれなりの覚悟ができますし、そういう生活弱者がいるということを知ってもらっておくことも大切なことです。
 「迷惑かけてはいけない」とか「足手まといだから」とか、「どうせこのまま死ぬから」とか言っているうちは、避難所に入ることが受け入れてもらえないし、生活弱者への対応も当然してもらえません。
 自分の防災対策はもちろんですが、地域の防災活動にも参加することで生活弱者もそうで無い人も、お互いに安心して避難できる環境を作ることができるのではないかと思っています。