防災用電化製品の乾電池のサイズと規格を意識する

 防災グッズを用意するときに気をつけておきたいのは、電化製品の電池の大きさを統一しておくことです。
 普通に準備すると、懐中電灯は単二電池、携帯ラジオは単三電池、ヘッドライトは単四電池やボタン電池ということになってしまい、それぞれの電化製 品で互換が無く、全ての予備電池を持って歩かなければいけないことになってしまいかねません。
 電池は、できれば汎用性の高い単三、あるいは単四に統一し、予備電池は一 種類あればいいようにしておくのが安全です。
 もし大きな懐中電灯を使いたいというのであれば、単三を単二電池として使えるようにするスペーサーなどもありますので、そういったものを活用してください。
 また、最近よく使われている光量の強い小型懐中電灯は、専用の充電池を使
っている場合があります。この場合、通常の乾電池は使えません。

乾電池は規格と出力を確認して揃えよう。

 防災用品で使う消耗品は、基本は手に入りやすいことです。
 できれば普段から使い慣れておくことで、本体にセットした電池の液漏れや、予備電池の利用期限切れを起こすことを防ぐことも可能です。
 また、その電化製品が使える電池の規格にも気をつけましょう。
 乾電池には大きく分けるとマンガン電池、アルカリ電池、エネループなど再利用が可能な乾電池がありますが、電化製品にもそれぞれ適切な出力があり、それに適合する乾電池があります。
マンガン電池だと動かないものや、 再利用型乾電池が使えない電化製品がありますから、その電化製品が使える電池の規格を必ず確認して準備するようにしてください。
ちなみに、私自身は単四電池で規格を揃えています。
軽くて持ち運びしやすいためですが、電池の持ちは大きさ相応ですので、数を用意することになります。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。

防災・減災・縮災とは?

当研究所のコンセプトにも入っている「防災・減災・縮災」ですが、似て異なるものを表しています。
言葉の語源とその意味するところについて、そしてその先にあるものについて、ちょっとだけ触れてみたいと思います。

1)防災

文字通り「災いを防ぐこと」を目的とするものです。
具体的には、津波対策のための防波堤や川の線形改良、護岸工事、山の斜面が崩れないような対策工事など、ハード的なものを指し、日本では長年この「防災」に取り組んできました。
ところが、近年の災害の大規模化や公共事業の予算の縮小などにより、発生する災害を防ぐことが物理的に難しい状況になってきています。

2)減災

そこで、発生する災害はもう防ぎようがないので、人が受ける被害を減らそうという動きが出てきました。
これが「減災」と言われるもので、文字通り「災いを減らすこと」が目的となっています。
早めの避難や防災用品の充実、支援体制の強化などがここに位置します。

3)縮災

でも、「減災」をしても被害を無くすことはできません。
そのため、被災している期間をいかに短くするか、いかに自分の日常生活を早く取り戻すことができるのかという考え方の元に産まれたのが「縮災」です。

防災は大規模な工事を伴うため行政や大企業で無ければ実施するのは困難ですが、減災や縮災は個人や地域、組織や中小企業でも、努力次第で行うことができます。
それが「タイムライン」や「事業継続化計画(BCP)」と言われるもので、これらを作って訓練を実施することで、災害時にも可能な限り被害を防ぎ、通常業務を早く再開することが可能になります。
この時に気を付けないといけないのは、作成業者に丸投げしないこと。
つい「わからないから」と業者に丸投げしてしまいがちですが、実際に行うのは誰でも無いあなたです。
あなたが行う行動を、あなたをよく知らない他人が勝手に決めたところで、そのとおり行動できるとは限りません。
業者に作ってもらうなら、丸投げにせず自分も協議に加わって、一緒に作り上げていくようにしましょう。
そして、作りっぱなしにせず、定期的に訓練を行って、可能な限り減災・縮災ができるように備えておきましょう。

BCPってなんだろう?

災害対策においてよく出てくるのがこのBCPというものです。
大企業から中小零細、個人商店に至るまでこれを作成して欲しいという話が、政府から一時期かなりの勢いで発信されていたので、あなたも名前だけはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
BCPとは「BusinessContinuePlan」の略で、日本語では「事業継続化計画」という言い方が多いようですが、名前から見ると商売をしている人や組織が作っておけばいいような印象を受けるかもしれません。
でも、このBCPはお仕事をしている方のみならず、全ての人が作っておくとよいものです。
今回はこのBCPについて触れてみたいと思います。

1.そもそもBCPって何?

「BCP」=「事業継続化計画」とは一体何か?
これは「災害が発生したとき、何が問題になるのか、どう対応したらいいのか、何から処理していくのか、何に誰が対応するのか」ということをあらかじめ決めておく作業のことです。
要するに、「被災してから復旧完了までの手順を決めておく」ということです。
この手順を決めて関係する全ての人が知っておくと、もし社長に何かあっても知っている人が手順通りに段取りをして事業が止まらないように復旧することができるというもので、途中の過程では自分の財産の洗い出しも行うことになります。
災害が発生すると、一度にいろいろなことへ対応しないといけなくなります。
あらかじめ対応を決めておくことで、やらないといけない手順を自動で動かすことが出来、想定していなかった事態への対応に専念できるようになります。
また、これが出来ると誰に何を頼んでおかないといけないのかも分かるため、さまざまな支援を受けやすくなります。
たまたま経営関係なので「Business」となっていますが、地域だと「Community」=CCP、医療現場なら「Medical」=MCP、学校なら「エデュケーション」や「スクール」となり「ECP」や「SCP」と略されます。
個人なら、さしずめ「人生=Life」となり、「人生継続化計画」=LCPと呼ぶのかなと思いますが、ここでは代表的な「BCP」と書くことにします。
ここの表示は、あなたが必要なものに読み替えてください。

2.BCPはどうやって作る?

BCPは次の順番に決めていきます。

1)自分は「いつ」「何を」「いつまでに」提供するのが仕事なのか、を確認します。
2)(1)で確認した仕事をやり続けるためには「何が無くなると困るのか?」を確認します。
3)(2)で確認した「無くなると困るもの」を「いつまでに、どうやって、どの順番で、誰が、どこで確保して使えるようにするか」を決めます。
4)(3)で決めたことを、やる人や確保する先にお知らせして協力をお願いします。その際、相手には「そこで確保が困難な場合に他に確保できそうな先」も確認しておきます。
5)(4)で決まったことを踏まえて、計画書を文章化します。
6)文章化したものがその通りにできるかどうか実際にやってみます。
7)問題が発生しそうなら、(3)に戻ってもう一度考えてみます。

(1)では「仕事」になっていますが、あなたが個人や家族で作成するのであれば、(1)は「自分の命を守ること」になります。
また(2)では「どうなると死んでしまうのか」を考えてください。
(3)の「無くなると困るもの」は「(2)で考えた死んでしまう条件を防ぐためには?」と読み替えます。

3.出来たらどうしよう?

できたら、とにかく一度その継続化計画を試してみましょう。
実際に動いてみると、思った以上にいろいろな問題が出てくるはずです。
問題が出たら、「それはどうやったら解決できるのか?」を考えて、計画書に組み込んでいきます。
発生する災害は一つでは無いので、さまざまな災害や複合的におきる災害も想定して考えてみます。
場合によっては「もうどうしようもない」ということが出てくるかもしれませんが、語尾に「?」をつけておくと、そのうちによい解決策が浮かぶかもしれません。
また、あなた一人で考えるのでは無く、複数の人に作った計画を見てもらって、さまざまな角度から考えてみることが大切です。
ここまでくるとおわかりだと思いますが、BCPは作って終わりではありませんし、あなただけで完結するものでもありません。
出来上がったものを定期的に見直し続けること、関係先にどうしたら動いてもらえるかを確認し続けることが大切なのです。

4.全ての継続化計画が繋がる世の中に

個人や組織、企業、地域、行政がそれぞれに継続化計画を作ってそれを繋げていくと、驚くほど地域復興が早く進みます。
いちいち場当たり的な判断をしていては、いつまでも何も決まらずに時間だけが過ぎていきます。
素早く復旧、復興し、受ける影響を最小限に留めるためにも、事業継続化計画を作っておきましょう。

防災グッズ、何を用意しよう?

防災というと、さまざまな道具が必要だと言われますが、本当のところ、何を用意したらいいのでしょうか?
私は、普段の生活に必要なものを基本に、プラスアルファで準備すればいいのではないかと思っています。
今回はそんな考え方を基本に、防災用品の準備を考えていきます。

1.防災用品の考え方

子供用防災セットの一例。これだけではかなりものが不足している。

防災用品といっても、そもそも何を準備したらよいのかさっぱりわからないという方も多いと思いますが、あなたはどうですか?
インターネットでちょっと検索してみると、実にさまざまなところから防災グッズがセットになったものが販売されています。
災害に備えて準備するものがセットになっていて、「防災士が監修」とか「災害経験者が推奨」などと書かれていると、「これなら」と思って買ってしまうものですが、そうやって買ったものって、買った後は安心してしまって一度も開かずにタンスの肥やしになってしまっていませんか?
これは「非常用」として普段の生活から切り離してしまっていることが原因で、こうなるといざ災害が起きたとき、せっかく準備した防災用品は期限切れや破損、またはどこにしまったかわからないという事態になってしまいます。
防災用品というのは日常生活の延長線にあるものなので、普段使うものを用意しておけばいいのです。
まずは自分や家族の生活を考えて、何をどれくらい、いつ使っているのかを洗い出すところから始めましょう。
例えば、赤ちゃんのいるおうちでは、ほ乳瓶や消毒セット、粉末ミルクとそれを溶かすための水に湯沸かしセット、紙おむつ等は必要になるでしょう。
逆に高齢の方のいるおうちでは、老眼鏡や入れ歯、補聴器、大人用おむつなどが必要になるかもしれません。
目が悪ければコンタクトレンズや眼鏡が必須な人もいるでしょうし、ひょっとしたらプロテインがないと困るという人もいるかもしれません。
自分の生活を軸にして用品を考えていくと、無いと困るものが見えてきます。
それらを防災セットの中に入れ、手持ちのものを使い切ったら防災セットから新しいのを取り出し、防災セットには買ってきたものを入れておく。
このサイクルを確立することで、数日間は確実に生活できる防災セットを簡単に作ることができます。
現在の政府の計画では、3日から1週間くらいで各種資材が届くようになることになっていますので、最悪のことを考えて1週間程度を前提に備えをしておくとよいでしょう。
ただ、1週間分を持って避難というのは現実的ではありませんので、1日から3日分はリュックサックに詰めて「非常持出用防災セット」にしておき、残りは分散して収納しておくと生き残る可能性が高くなります。
また、お薬手帳は必ず持って避難しましょう。

2.必ず準備しておくもの

どんな防災セットにも必ず準備しておかないといけないものがあります。
防災セットの基本的な考え方として「飢えないこと」「身体を冷やさないこと」「不安におちないこと」「衛生的な環境を維持すること」があげられます。
これを解決するためには、最低限「水」と「食料」「携帯トイレ」「防寒用品」「灯り」「携帯ラジオ」「歯磨きセット」が必要となります。
その上で、歩きやすい靴、頭部を保護する帽子、新聞紙、ゴミ袋やビニール袋、ウエットティッシュ、ヘッドライト、カイロ、カセットコンロと鍋などお湯を沸かせる道具、敷物やブルーシート、それら1日~3日分の道具を入れて歩くためのリュックサックを用意しましょう。

3.防災でしか使わなさそうなものはどうしよう?

ヘルメット。あると安心。でも場所をとる。

防災用品のうち、人によっては防災の時しか使わないだろうというものがあります。
例えば、防災用品を入れるリュックサック。
登山やキャンプ、ピクニックが趣味でも無い限りは、防災用品が全部収まるようなサイズのものはたぶん必要ないでしょう。
避難するときには両手は空けるというのが鉄則ではありますが、防災用品を厳選することで普段使いしているカバンに収めることができるかもしれません。
いろいろと試してみて、自分で納得のいくリュックサックに非常持出用防災セットを入れるようにしましょう。
防災ずきんやヘルメットはどうでしょうか。
頭部を守るものとして防災用品の中でもかなり有名なものですが、ヘルメットはともかく、普通の生活で防災ずきんを使うことはまずないでしょう。
あればそれに越したことはありませんが、綿やアラミド繊維などで作られた丈夫な帽子の中にショックを和らげるタオルを入れてかぶるだけでも、それなりに安全は確保できます。
この場合は、首元を守るためにその部分にもタオルを垂らすようにします。また、化繊でできた帽子は火がつくと燃えてしまうのでお勧めしません。
かぶるものがなければ、タオルでもないよりはまし。頭部を何かで保護するという考え方を持ってください。
ホイッスルも防災セットを買うと大抵の場合はついてきます。
このホイッスル、建物や山が崩れて巻き込まれ生き埋めになったとき、救助隊に自分の位置を知らせるために使うとされているものです。
ということは、これはリュックサックに入れておくのではなく、普段から身につけていつでも使えるようにしておかないと駄目だということがわかります。
いつも首からかけ、いつでも使えるようにしてあれば、防災だけで無く怪しい人が近づいてきたら吹いて撃退するという防犯対策にも使うことが可能です。
最後はローソク。お仏壇があって普段から使い慣れていれば別ですが、そうでなければどのように使うのかのイメージが沸かないのではないでしょうか?
よくあるのは、ローソクはあっても火を点ける道具がないということ。ローソクと一緒に必ずマッチを保管しておくことです。
ライターは知らない間に壊れている可能性もあるので、壊れる心配のないマッチ、できれば防水タイプのものをローソクや乾燥剤と一緒にジップロックなどの密封できる袋に入れて置きます。たまに意識して点けて使うようにすると、被災時にも使おうという気になります。ただし、ガス爆発には十分に気を付けてください。

なんとなくイメージができたでしょうか?
防災セットにはいろいろなものが入っていますが、ぱっとみて何に使うのかよく解らないものがあるとしたら、それは災害時にもあなたでは使えないものです。
あなたが使うものをあなたが選んでセットする。防災用品は手近なところで揃えていけばいいのです。
また、普段登山やキャンプをする人であれば、新たに備えないといけない道具は殆どないと思います。
まずは用意して使ってみる。そして、あなたにあった道具を揃えていけば使える防災セットができると思います。
また、それぞれの道具の細かいお話は、またこれからやっていければいいなと考えています。
どうぞご安全にお過ごしください。

被災物件の調査と証明あれこれ

被災した後、災害関係の証明(罹災(りさい)証明書や被災証明書といいます)を受けるのに、役所に行って手続きを行うことになります。
ただ、役所の対応する職員も普段は全く違う仕事をしているため、不慣れで手続きを間違えることも多々あり、被災者もさんざん待たされたあげくに再度手続きしないといけないはめになるようなことも起きているようです。
今回は、役所が出す各種証明について考えてみたいと思います。

1.住家の被災判定の種類

被災すると住家の被災判定を行うことになります。
ややこしいのは、これが三種類あって、それぞれに内容や手続きが異なることです。
行政への手続きに必要な罹災証明書は、申請しないと手続きができないことに注意してください。

1)応急危険度判定

この様式の他にもいくつか種類がありますが、色は統一されています。

被災した家屋を現状のまま利用したとき、とりあえずそれが倒壊しないかどうかを確認するものです。
緑、黄、赤の三種類の紙があり、緑は「とりあえず問題なし」、黄は「危険」、赤は「いつ崩れてもおかしくない」という意味があります。
応急危険度判定士の資格を持つ人(建築士や建築業者、行政の建築職員など)が、建物の状況をみて判定を行います。
これは被災自治体の判断で該当地域に応急危険度判定士が派遣されますので、申請は不要です。

2)被害認定調査

悲哀判定
被害認定調査では、第一次は外回りだけ調査します

罹災証明書の発行に必要な証明書を作るために必要な調査で、被災者からの申請が必要です。
基準は「どれだけ経済的にダメージを受けているか」というもので、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「被害無し」の4種類にわかれます。
これには外観だけを見て決める一次調査と、屋内まで立ち入って行う二次調査の二つがあり、通常は一次調査のみで判定されます。
ただ、外観に影響が無くても屋内が壊れているという場合もありますので、判定後、再調査を申し出ることで二次調査を受けることになります。
ここで作られる罹災証明書が、行政機関の行う各種給付・融資・減免申請の根拠となります。
調査が完了すると「調査済証」が建物に貼り付けられますが、実施する自治体によっては行わない場合もあります。
また、災害の規模にもよりますが、申請から調査まで1週間~1月程度はかかるようです。

3)被災度区分判定

その建物を修理して引き続き利用することができるかどうかを調べる調査です。
これは被災者が個別に建築士に依頼して行うもので、費用負担が発生します。

2.住家以外の被災判定


住家以外で損害を受けた場合、例えば農地や林地、工場などで被害が出た場合には、申請手続きが異なります。
こちらは「被災証明書」といい、被害にあった場所の写真を角度を変えて複数枚撮影し、窓口で申請を行うと、原則その場で証明書が発行されます。
取り扱う市町村によっては、「被災証明書」では無く「罹災届出証明書」が発行される場合もありますが、いずれにしても罹災証明書よりも早いのが特徴です。
また、被災自治体によっては被害調査認定と同様に現地調査を行う場合もあります。この場合には、被害認定調査と同じくらいの期間がかかります。

3.注意点

どんな場合であっても、被災した場所の写真はかならず角度を変えて複数枚撮影しておきます。
特に住家以外の被災判定では写真が必須となりますので、申請するまでのところで撮影をしておきましょう。
また、民間の地震保険などの請求をする場合にも写真が必要となります。
全景数枚、被災箇所毎に数枚の写真を撮影しておくと、手続きがスムーズに進みます。
また、被害認定調査の時、外観を調べる一次調査の職員は屋内を調べる二次調査が出来ないので、判定後に再度申し出る必要があります。
調査を待てない状況であれば、写真を撮った上で行政機関に連絡し、修繕などの許可を受けてください。
住家以外の被災判定は、ルールが定まっていないため、被災自治体によって扱いが異なります。
申請窓口では、対象となるものが住家なのかそれ以外なのかをはっきりとさせて手続きしましょう。

大規模災害になると、被災自治体の職員は不眠不休の体制をとっても手が足りてないのが現実です。
そのため、処理が遅いと言って文句を言っても状況は変わりません。
幸い、行政関係の手続き以外はこの証明書の必要性はあまりないので、地震保険や生命保険などの保険関係や生活再建の具体的な手続きなど、できるところから手を付けるようにしましょう。

行動する理由を確認しておこう

避難訓練は、「自分の命を守る」ために行うものです。
そして、訓練していないことは本番でもまずできません。
だから消防士も自衛官も、みなさまざまな状況を想定した訓練を行っているのです。
では、学校ではどうでしょうか?

1.どうして机の下なの?

学校で地震に対する防災訓練をすると「机の下に隠れなさい」という説明をされます。
でも、なぜ机の下なのでしょう?
上からものが降ってくる、それによって怪我をしないために机の下に隠れるというのが正しいのだと思うのですが、訓練時には、その説明もなく、ただ「机の下に隠れなさい」と言われているのが現状です。
山梨大学地域防災・マネジメント研究センター秦康範准教授がある興味深い実験をしています。
何の予告もなしにいきなり緊急地震速報を小学校で流す実験を行ったのですが、驚いたことに、緊急地震速報が鳴り響くや否や、校庭で遊んでいた子ども達の殆どが慌てて校内に駆け込んでしまったのです。
後で確認したところ、校内に逃げ込んだ子ども達は、教えられたとおりにきちんと「机の下」に避難していました。
なぜ安全な校庭にいたのに、わざわざ危険な屋内に退避したのか。
これは「地震=机の下」という説明しかされず、「なぜそれをするのか?」という動機付けがきちんとされていないために発生したものです。
その行動をする理由をきちんと説明し理解したうえで訓練を行っていれば、恐らく子ども達は校庭でそのまましゃがんで地震に備えたのではないでしょうか。

2.避難訓練って、なんだ?

避難訓練は「自分の命を守るため」に行うものです。
ただ、多くの学校での避難訓練は「避難訓練を行うことが目的」となっており、一番大切な「命を守る」という視点が抜け落ちています。
実際に避難訓練の様子を見てみると、学校での避難訓練は校庭まで逃げて終わりになっていることが殆どです。
これは学校が避難所になっている場合が多いこともあるせいと思われますが、、いざ本当に避難しなければならない事態が発生したときには校庭に逃げるだけでは終わらない場合もあります。
被災の状況によっては他の避難所や安全な場所までの避難訓練もやっておかないといけないのですが、まったくそうなっていないのが現状です。
いざ本番のとき、校庭までは訓練通りに逃げることができたのに、校庭に逃げるのが完了した後でその先をどうするのかを決めるようなことをしていると、せっかく避難したのに被害にあってしまいます。
東日本大震災で問題とされた大川小学校では、恐らくはそんな状態だったのではないのでしょうか。
本番では、訓練したこと以上のことはできません。
災害からの避難訓練では、本番で行う全てのことを、可能な限りやっておく必要があります。
大川小学校の例と対比する形でよく言われるのが、「釜石の奇跡」と言われる子ども達による率先避難です。
大きな違いは、釜石東中学校の生徒はハザードマップを元に、何度も絶対安全と思われる場所までの避難訓練を行っていたことです。
そして「自分の命は自分で守る、そのために避難訓練をする」ことがきちんと説明され、子ども達の中にもそれが浸透していました。
移動距離が長かったのが理由で後にもう少し近くが避難先にされましたが、絶対安全と思われる場所までの避難訓練を経験していた子ども達は最終的にそこまで避難を行っていました。
釜石東中学校の生徒が逃げるぞと叫びながら避難するのを見た鵜住居小学校の子ども達も、それに続いて逃げ出します。
これは、いざというときには中学生の行動に続けと教わっていたためで、結果的にぞくぞくと逃げる子ども達を見て、近所の保育園や老人福祉施設の人たちも一緒に避難し、現在「釜石の奇跡」と言われる行動に繋がったのです。

3.行動する理由を確認しておこう

今回はわかりやすい例だったので学校を例に取りましたが、さまざまなところでやっている避難訓練も、訓練のための訓練になっていないかをよく確認する必要があります。
少し前になりますが、アメリカの同時多発テロで航空機に突っ込まれた世界貿易センタービルでも避難訓練はやっていました。
ですが、その訓練とは「消防士や警備員が救助に来るまでその場を動かない」というものだったのです。
自爆テロ後にビルのセキュリティに対応を確認しても「今救助にいくから動かないで」という回答がなされていたようです。
そのため多くの人がその訓練の時のように各階で待機し、犠牲になったとされています。非常階段の位置すら知らなかった方もいたと聞きます。
でも、非常階段を使って逃げ出した人たちもいたわけですから、「自分の命を守ること」がどこまで腑に落ちていたかが、生死を分けたとも言えるでしょう。

考えてみれば、避難訓練に限らず、現在行われているさまざまなことは、案外とそれを行う理由を考えずにやっているものです。
一度立ち止まって、「なぜその行動をするのかの理由」をきちんと整理し、その上でさまざまな行動を行った方が、内容がきちんと理解できてよいのではないでしょうか。
また、行動する理由を見直してみると新しい発見があるかもしれません。
とくに避難訓練は「自分の命を守ること」を目的にするものですから、その理由と目的をきちんと理解した上で実施したいものです。
最後に、今回の実験や釜石の奇跡についての動画、およびネタ元を乗せておきます。
興味のある方はどうぞご覧ください。

Yasunori Hada (youtube)

命を守る防災教育(岩手県釜石市) (youtube)

※アメリカ同時多発テロについては「生き残る判断生き残れない行動」(アマンダ・リプリー著・光文社)を参考にしていますが、現在絶版になっています。
20190105追記・文庫本が2019年1月9日に筑摩書房から出版されるようです。


生き残る判断生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか (ちくま文庫 りー8-1) [ アマンダ・リプリー ]
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災害時の情報収集について考える

大規模災害になると、各メディアは一斉にその災害に対する情報を流し始めます。
この情報を流す過程で、各メディアは行政機関に電話をかけて情報を聞き出すわけですが、災害対応時には行政機関の防災担当部署にそんな余裕はありません。
各社がばらばらに電話してくるため、本来しなければならない対住民への対応が遅れてしまうことがありますから、災害時のマスメディアの役割とモラルに対して、本当は意識を持って欲しいところです。
でも、マスメディアがあるからこそ住民に素早く正確な情報が伝わることもまた事実。
また、最近ではSNSからの発信も増えて、マスメディアが報道しない埋もれたさまざまな情報が支援者に届くようになってきています。
今回は災害時にどんな風に情報を集めたらいいのかを考えてみました。

1.マスメディアからの情報発信


災害が起きると、その影響を受けた人は現在の状況を確認したいと思います。
どこがどんな風になって、どんなことが起きているのか。
これを確認するには、まだまだマスメディアの力が必要です。
一般的には、テレビやラジオ、ネット配信の記事というところで一次情報を集めることが多いのではないでしょうか。

このうち、一番冷静に事態がわかるのは、恐らくラジオだと思います。
映像が無く音声だけのため、情報を発信する側も受け取る側も動揺すること無く対応ができます。
また、ラジオは発信局が最大でも各都道府県単位、小さいところでは市区町村単位で置かれているので、より細かく情報を集め、発信することができます。
そして、ラジオの基地局は災害に強く多重化されていることが多いため、受信ができなくなるということも比較的少ないと思われます。

次に、テレビはどうでしょうか?
テレビは、どちらかというと被災地の外にいる方々向けのような気がします。
ここのところ続く大規模災害の中継を見ていると、災害がエンターテイメント化した状態で伝えられているような気がします。
映像がインパクトを与えられる場所、つまり被害が大きいところばかりを強調して伝えるため、全体像がわかりにくいということもあります。
もちろん、地元に必要な情報も提供されてはいるのですが、全般にラジオよりも大味という気がします。
デジタル化され、その地域に特化した災害情報も発信できるようにはなっていますが、被災地向けかというと少し疑問符がつきます。
避難所にテレビが設置され、被災地のひどい部分ばかりを強調して流されることによって、被災者が精神的ダメージを受けることもありますので、報道する側にも配慮をお願いしたいところです。

ネット配信の記事は、新聞社や通信社の配信する記事が主になります。
記者がきちんと調べて文章にして、それが配信されますので、きちんと記者が活動していれば、一番正確な情報が配信されるはずです。
ただ、被災後には役に立ちますが、現在進行形の災害には対応できません。

2.インターネットの情報


インターネットによる情報は、行政機関のホームページや配信メール、SNSがあります。
行政のホームページは回線が細いのと更新が遅いのが難点ですが、どこで何が起きているのかがピンポイントで判断できます。
また、行政からのお知らせメールに登録して災害に関する情報を受け取るのもいい方法だと思います。
ただ、メールはサーバーを経由するため、場合によっては忘れた頃に届くということもありますので、大規模災害ではあまりアテにはならないかもしれません。
ツイッターやLINE、フェイスブックといったSNS(ソーシャルネットワークサービス)が災害の時に活用できるのは、ここ最近の災害で証明されています。個人の安否に始まって、物資の提供やライフラインの復旧状況、各種支援の受けられる場所の情報提供など、これがあったおかげで助かった人も多かったと聞きます。
そして、嘘の情報が飛び交っているのも、ご存じのとおり。
例えば、熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」と、ご丁寧に合成写真付きで拡散させた人が逮捕されましたし、平成30年西日本水害では、岡山県で爆発したアルミ工場の動画と称する映像がマスメディアで公表され、後に中国の工場の爆発の映像であることが分かって、報道したマスメディアが謝罪することが起きたりしています。
個人がさまざまな情報を発信できるのは非常に便利ですし、小さな声でもそれをかなえることのできる誰かに届けられるようになったことは、非常にいいことだと思います。
ただ、その内容と発信時間をチェックすることができないと、後でとんでもないことが起きてしまうことも事実です。
先ほどの熊本地震では、嘘の記事と写真が拡散された結果、逃げ出した元にされた熊本市動植物園には問い合わせの電話が100件以上かかってきて、一時仕事ができなくなるくらいの状況になりました。
また、東日本大震災では足りない物資情報のツイートがとんでもなく拡がって、その避難所にいつまでも同じものばかり届くような事態もありました。
あるいは西日本豪雨では救援要請のツイートが続いた結果、どこで誰がまだ救助されていないのかがわからなくなってしまったこともありました。
SNSで呼びかけるときには、発信者がいつの時点の情報なのかを本文中にはっきりと明記しておく必要があります。また、支援する側はその情報がいつ発信されたのかをきちんと確認した上で対応を判断しないと、せっかくの支援が無駄になってしまいます。
SNSは間違いなく便利なツールです。ただ、使い方を間違えると、多くの人に被害を与えたり、困らせたりすることも確かです。
そこを意識して使えるといいなと感じます。

3.情報収集する手段の電源を確保しておこう


情報を発信している手段はたくさんあります。
でも、情報を受け取る側は、受け取り続ける準備ができているでしょうか?
即応性のある情報を受け取る機械には、どんなものでも電源が必要です。
例えば、携帯ラジオや携帯テレビ、スマートフォンなどの電源の予備は持っていますか?
特にスマートフォンの場合には、その辺で乾電池買っていれるというわけにはいきません。
高出力・大電力消費型となっている最近のスマートフォンに対して、手回し式や乾電池型の充電器もあるにはありますが、新品の電池を使っても、スマートフォンの電池を充電するには容量が足りません。
そのため、自分のスマートフォンに備えられている電池消耗を防ぐ機能を理解しておいて、いざという時にそのモードへ切り替えることと、モバイルバッテリーを持っておくことは必須です。
ここ最近の大規模災害で、コンビニの店頭から真っ先に無くなるものの一つにモバイルバッテリーがあるそうですが、スマホが高性能化し、それに伴ってバッテリーも大容量化しているため、モバイルバッテリーの容量によっては充電しきれないという事態も想定されます。
自分のスマホの電池容量以上、出来れば2~3回充電できるくらいの容量のあるモバイルバッテリーを用意しておくと、災害時にも慌てなくて済みます。
満充電したモバイルバッテリーを一基、普段のお出かけセットに加えておいてください。

避難について考える

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

「災害=避難」と考えている人も多いと思いますが、実際のところ、避難所を使わなくても大丈夫だったり、避難所が危険だったりする場合もあります。
では、どのように避難を考えたら良いのでしょうか?
今回は避難について少し考えてみたいと思います。

1.避難するかどうかの判断をする

避難訓練では、その地区のどこに住んでいようと全員が避難を行います。
でも、いざ本番の時に本当に避難する必要があるのかを考えておかないといけません。
家はなんともなかったのに、避難の途中で災害に巻き込まれてしまったというような場合もありますので、まずはその場所から避難する必要性があるかどうかを考えましょう。
いまあなたが居る場所で被害が起きるとすれば、どんな災害でどんな被害でしょうか?
そして、その被害は避難をしないと避けられないものですか?
被害を考えて、それに対しての行動を考えますが、避難はその一つでしかありません。
避難所で過ごすのが難しい家族がいるとか、乳児や幼児がいるので避難所に不安がある、ペットがいて避難所に行けない等その場所から動けない理由のある人もいます。
その場合には、避難しないという選択肢も考えてみます。
大切なのは命を守ることですから、避難しない場合に問題になることを考え、安全が確保できなければ、避難所以外に避難することも考えておく必要があるでしょう。

2.いつ、どこへ避難するかを決める

地震以外の災害の場合には、殆どの場合予兆があります。
いる場所が発生しそうな災害に耐えられないと分かっている場合、いつの段階で避難を開始するのかが、実はかなり大事な問題になります。
早めに避難をすると、使える手段も避難先もたくさんありますが、その分空振りが増えますし、何よりも落ち着きません。
災害が起きてからの避難だと、使える手段も避難先も限定されてしまいますし、どこで災害に巻き込まれてしまうのかがわからない。
この判断はあなたの健康状態や経済状態、交友関係によってどうすればよいのかが変わってくるので、判断が難しい部分です。
できるなら、空振り上等で早めの避難をおすすめします。
避難先ですが、あまりに早い避難だと、避難所が開設されていない場合があります。
大雨や洪水の場合、実は避難所の開設条件はまちまちです。調べた限りでは「避難準備・高齢者避難開始」情報が発令されて開設される場合が多いようですが、あなたのお住まいの地域の避難所の開設条件はどうなっているでしょうか?
自助が叫ばれ、「ちょっと危険かも」と感じて避難しようとしても、避難所の開設条件が満たされていないと、受入を拒否されてしまう場合があるのです。
最近の災害の傾向を見ると、以前に比べて随分と開設が早くはなっていますが、大規模かつ短時間で発生する災害も増え、市町村が避難の指示を出すときには、すでに避難できない状態ということも増えていますから、自分で打てる手を考えなければいけません。
この場合、対策は二通り考えられます。
一つは、自主防災組織や自治会、どうにもならなければ個人で、避難所予定の施設と予め交渉し、行政の開設指示がなくても避難者として受け入れてもらえるようにすることです。
例えば警報が出た段階で受入を開始してもらうなどという風に、地域の条件に応じて避難所予定施設と避難時の受入条件を決めておくと、いざというときに助かります。場合によっては避難所予定場所に対していくばくかの使用料等を支払う場合も出てくるかもしれませんが、命には替えられません。
もう一つは、避難所ではないが受け入れてもらえる安全な場所を決めておくこと。こちらは、例えば、ご近所や親戚、友人宅。施設のショートステイ。あるいはホテルや旅館といった宿泊施設などが該当します。
ご近所や親戚、友人宅、施設の場合には、予め了解を得ておくと後でトラブルにならなくて済みますし、知り合い同士なら、お互い助け合うという約束をしておくと、お互いに安全が確保できてより良いでしょう。
局地的な大雨や台風などであれば、針路から外れている場所に小旅行を兼ねて出かけてしまうのも有りです。
年に数回あるかないかのことなので、複数の宿泊施設をリストアップして、「危険かな?」と感じたときにはさっさと予約をとって移動してしまうようにします。
「避難=避難所」ではなく、自分の命を守ることを前提にして、避難先を複数準備しておくことが大切です。

3.避難する手段を考える

避難する手段は、避難する経路と同じで、避難を開始する時間が早ければ早いほど、さまざまな手段を利用することが可能です。
「大雨警報」や「避難準備・高齢者避難開始」情報で避難を開始すれば、移動手段の規制はありませんから避難に車を使うことができます。
タクシーも使えますから足や身体の不自由な方でも安心して移動ができますし、自家用車なら、避難所が開設されていなくても車そのものを避難所として利用することができるので、おすすめの方法です。
ただ、お手洗いの問題がありますので、その場合には避難予定先のトイレの状態は事前に確認しておきましょう。
「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発令されると、この時点では原則として徒歩での避難となります。
近くの避難所まで歩いて移動することになりますので、持ち出し用防災セットを忘れずに、急いで避難しましょう。
ところで、避難する際にはシニアカーは使わないことが基本です。
シニアカーは重心を下げるためにモーターやバッテリーが路面に近いところに設置されています。そのため、移動中に水に浸かり続けると動けなくなりますし、漏電の可能性もあります。また、路面が割れていたり、落ちてきたり流れてきたブロックや瓦や木を踏んだりして転倒する危険性があります。
便利ではありますが、身を守ることを第一に、自力で避難するようにしましょう。
自分で避難ができないと思われるときには、自主防災組織等の要支援者リストに掲載してもらい、手助けしてくれる人と、普段から顔つなぎをしておきます。
いざというときには避難の手助けを受けて、安全に逃げられるようにしておきましょう。

4.避難する経路を考える

自宅が危険だと判断して避難所に移動する際、避難経路や手段が安全でなければ避難する途中に遭難することがあります。
過去の災害でも、この避難の最中に遭難というケースが結構あり、その都度、防災を担当している市町村が批判されています。
自分で自分の命を守る準備がしてあれば、避難中の遭難はほぼ起きないと思われるので、避難先と経路が決まったら、避難する経路を考えてみましょう。
当たり前ですが、避難する時間が早ければ早いほど、選択肢はたくさん存在します。例えば、「大雨警報」や「洪水警報」の発令で避難を開始した場合、どこへでも避難できますし、どんな手段でも使えます。
せいぜい車の避難のときにアンダーパスや低地が冠水している可能性があるので、それを避けることくらいでしょうか。
ところが、「大津波警報」や「避難指示(緊急)」が発令されると、避難できる場所はかなり限られますし、避難も徒歩以外は使えないという状態になります。
そんな事態に追い込まれないようにしなくてはいけませんが、そんなときに備えて、どの経路を通って避難するのが一番危険が少ないかを検討しておきます。
理想は水没せず、崩れない場所を通ること。赤道や里道と呼ばれる昔からの道は、そんな場所を考えられて作られていることが多いようです。また、なるべく高いところを通るようにします。
最近増えている「津波に対するその地点の海抜高度表示」や「ハザードマップ」「過去の災害の伝承」を確認し、海抜表示の低いところやハザードマップで浸水域の深いところ、過去に被害のあったところを避けた避難経路を作ります。
出来たら、実際に避難先まで歩いてみましょう。
ちゃんと移動できるのか、避難先に着くまでどれ位時間がかかったのかを記録します。
その際、側溝やマンホール、ブロック塀や古そうな建物の位置など避難時に障害となりそうなものもチェックしておき、その上で、もう一度経路の検討を行います。
調べていると、経路を見直すことで、自分の地域の避難所に指定されている場所よりも安全に避難できる別の避難所が見つかったり、そもそも指定された避難所が避難所として不適格だったといった場合も出てきますので、その時には近場の別の避難所を検討します。
例え遠回りになっても、安全確保を第一に避難をするようにしましょう。

番外編・避難路が水没しちゃったら

避難は早めが鉄則ですが、例えば、30分間に100mm以上の雨がピンポイントで降って道路が川になってしまった場合、または上流で豪雨があって、気がついたら家の周りに水が迫っている場合などで、家が水没する恐れのある場合には、避難所に決死の覚悟で移動するような事態が起きるかもしれません。
また、水没して水が引かないため、安全な場所まで移動しなければならない場合もあるでしょう。
おまけとして、避難経路が水没しているのに避難しなければならない場合を考えてみます。
避難経路の洗い出しの時に、路面にある危険な場所のチェックもされていると思います。
その際にチェックした側溝やマンホール。
普段は重たくて丈夫な蓋がされている側溝やマンホールは、水圧がかかると蓋が割れたり外れてたりする場合が非常によく起きます。また、川と道の境界線もわからなくなることがあります。
普段見慣れた標識やガードレールを頼りに移動することになりますが、それが流されている場合もありますので、自分の足下には十二分注意を払わなければなりません。
水没した避難路に入るためには準備が必要です。
まず、自分の身長くらいのしっかりした棒。これは足下の直前をつついて安全を確認するためと、身体を支えるために使います。
足下は運動靴を履きます。長靴やブーツでは中に水が入ってしまうと重さで動けなくなってしまいますし、サンダルでは脱げてしまいます。
マリンシューズは、靴底が薄いため、何かを踏み抜いて怪我をする可能性がありますので、出来れば避けてください。
マジックテープタイプの運動靴なら、しっかり固定できる上に脱ぎやすいのでおすすめです。
それから救命胴衣。
人が水中で安全に移動できるのは、膝下までの深さ、流速50cm/sまでとされています。
水深がそれ以上になれば身体が浮いて流される危険性がありますし、流速が早ければ足下をすくわれ、やっぱり流されてしまいます。
でも、救命胴衣をつけていれば、万が一流されたとしても、生き残れる可能性は高くなります。
救命胴衣には浮力が明記されていますので、自分にあったものを選んでください。
具体的には「自分の体重÷10+1kg以上」の浮力があれば大丈夫ですが、浮力が大きくて困ることはありませんので、あとは予算と相談してください。
そして、当たり前ですが着用は必ず一人で一着です。
あとは防水リュックに着替えとタオルなど濡れた身体を乾かすものと、できればカイロなど身体を温められるものを用意して積め、避難完了後には濡れた身体を速やかに乾かし、保温できるようにしてください。
濡れたままだと体温が低下し、夏場でも低体温症になる可能性があります。
ところで、これだけの準備をしても、安全に逃げ切れるかどうかの確証を、私は持てませんでした。
結局、早い避難が一番安全ということで、周囲にしっかりと目を配り、早めの避難を行うように心掛けてください。

発災時の行動と連絡手段について考える

災害発生時、何が起きたらどうするかの確認ができていますか?
そして、どのような連絡手段が確保されていますか?
身近なところから、防災を考えていきます。

おつとめの方であれば、災害が起きたとき、出社する必要がありますか?
あるいは、出社する手段がありますか?
学生さんだと、学校がどんなとき、どう判断するか知っていますか?
子どもさんが居る家庭では、保育園や学校はどう対応するか知っていますか?
預けているとき被災した場合には、どこへ迎えに行けば知っていますか?
これがはっきりとわかっているだけで、無駄な通信や無駄な移動を防ぐことができます。
また、人間は習慣性の生き物ですので、非常時にどうするかを決めていないと、「平時と同じ行動をする」か「動かない」かのどちらかになります。
無用な混乱を避けるためにも、あらかじめどうするのかを決めておくことが大事です。

1.会社や組織の場合


会社や組織が何があっても出社を義務づけているのであれば、その出社する方法まで決めておかないといけませんし、そうでないなら、基本的には出社はさせないと決めておくことが大切です。
公共交通機関は、被害の出るような災害時には全て止まります。
その状態で出社を要求すると、自分で移動する手段を確保しなくてはなりませんので、自家用車やバイク、自転車や徒歩、タクシーの利用者で道路が大渋滞となり、
緊急車両が移動できずに二次災害が多発することになります。
企業のBCPとしては、災害時に社員をどうするのかということをきちんと整理し、社員に伝え、それを徹底しておく必要があります。
社員の側から見ると指示が無い以上、後で「あいつは来なかった」と言われるのも嫌なのでなんとか出社しようとしますから、経営者は自社の仕事が、災害時に大渋滞を起こし、
二次災害を誘発してまでやらなくてはいけない仕事なのかどうかをよく考えておきましょう。
決めたくないというのなら、その代わりに社員にいつまでに判断し、どのように連絡するのかを伝えておくことが必要です。
輻輳すると電話は使えませんので、その場合はどのように連絡を取るのかを、きちんと決めておいてください。
また、業務時間内に被災したら、どのように社員の安全を確保しますか? 社員の安全確保は経営者の大切な業務の一つです。
帰宅させるのか、社内に留めるのか、外回りしている社員や学校等に子どもを預けている社員の扱いはどうするのか?
普段から意識して、さまざまなケースを想定して準備することが必要です。
もしもトラブルが発生したとしたら、それは社員では無く、経営者に問題があることを肝に銘じておきましょう。

2.学校・デイサービスなどの場合


学校やデイサービスでは、被災したときにどのように対応をするのかしっかり決めているところと、全く決めていないところの両極端になっているのが現状です。
決めているところは、ホームページやSNSなどの伝達手段も明示していますから、対象者はそれを確認すれば事足ります。
決めていないところはどうする気のでしょう?
大阪北部地震では、対応を決めていない学校の教諭が、休校を決めた市長に対して「勝手に決めるな」と噛みつくコメントをしていたようですが、教育委員会や行政府との通信手段や
災害対応への判断基準を明確にしていなかった自分の落ち度を、きちんと考え、再発防止対策を考える必要があると思います。
学校や幼稚園、保育園、デイサービスといった施設は、休校や休園の判断基準をあらかじめ明確にし、周知し、徹底することが求められています。
職員と保護者、そして出入りの業者に対しても、きちんと伝えておくことで余計な手間をかけなくても済みます。
とはいえ、判断に迷うこともあるので、できればホームページやSNSといった通話以外の手段で連絡が取れればよりよいでしょう。
電話やメールという手段は、特定の交換機や場所を通らないといけないため、非常時には通信量が激増してしまって、思うように繋がりません。
普段から連絡手段の一つとして、ホームページやSNSを確保しておいた方がよいでしょう。

3.家族や友人間の場合


その場にいない人がどう行動するのか、どうやって連絡するのかの手段は確保されていますか?
災害が発生すると、被災区域外から安否を確認する電話が被災地に殺到し、輻輳状態になります。
そのため、通信事業者が通信制限をかけ、自社のシステムがパンクしないように通信量をコントロールします。
大きな災害が発生すると、各通信事業者は輻輳を防ぐため、災害時伝言ダイヤルを開設します。
そして一般的に「被災地→被災地外」の方が繋がりやすいので、被災者がこの災害時伝言ダイヤルに安否を吹き込み、被災地外の人はその伝言ダイヤルを確認することで、緊急の通信量を
維持することができます。
また、SNSは比較的繋がりやすいので、そちらを使って安否確認を発信してもいいでしょう。
大切なのは、不急不要なことで通信インフラに負担をかけないことです。
被災地では、救助や救援を求める人が電話を使います。
区域外から連絡をして輻輳状態にしてしまうと、被災地内の通信が思うようにできなくなってしまうのです。
また、被災した家族や友人にすぐに支援物資を届けようとすることは絶対に止めてください。
少なくとも、状況が落ち着いてからにしないと、二次災害に巻き込まれる可能性があります。
被災地にすむ人は混乱を避けるためにも、被災地外で心配している人達に対してなんらかの情報を発信して安否を明らかにしてください。
また、あらかじめ避難先を決めておいたり、避難先の書き置きを家などに残しておくことで、他の人が後を追いかけることもできます。
大事なことは自分の安全確保の次に、自分の安否を知らせることなのです。

いかがですか?
被災地で発生する渋滞や通信回線の輻輳、さまざまな混乱は、あらかじめどうするのかが決まっていないことから発生することが非常に多いです。
発災時の行動を決めておくことと、通信手段の確保。
今日からでも遅くはないので、きちんと考えて整理し、みんなで共有しておきましょう。