防災工事の勘違い

 公共工事で行われる、例えば急傾斜対策工事や地すべり対策工事、砂防工事や防波堤、堰堤などを作る防災工事は、その工事を行うことにより周囲の被害を防ぐことができるようなイメージがあります。
 このイメージは完全な間違いというわけではないのですが、これらの工事も想定される雨量や水量といったものを前提に設計・施行されているため、その想定を超える雨や水量が出れば当然被害が発生します。
 「工事の施工完了=100%災害が起きない」というわけではないのです。
 もちろん工事をしていないよりはしてある方が災害が発生する確率は格段に下がりますから、やれればやったほうがいいのですが、やってあるから絶対に大丈夫とは考えないでください。
 どちらかというと、これらの施設はあなたが逃げる時間を作り出していると考えた方が正解です。
 土砂災害が起きる予兆を感じたら、まずはそこから逃げること。
 仮に施設が破損したとしても、あなたが逃げて命が守れたのであればその施設はきちんと目的を果たしていることになるのです。
 防災工事をしたから災害が起きないという勘違いはしないでください。
 あくまでも逃げる時間を稼ぐための施設と考えて、しっかりと情報を集め、早めに避難するようにしてくださいね。

災害対応は長期戦です

 災害が起きると、できる限り短時間で復旧・復興をしてそれまでの日常生活を取り戻そうと関わっている全ての人が昼夜を問わず限界まで頑張ってしまうものです。
 特に被災した自治体や避難所運営担当者、自治会長さんなどは本当に大変な思いをされることになると思います。
 ただ、災害復旧は長期戦だと腹をくくってかかった方がいいと思います。
 数日、数週間程度ならともかく、ちょっと大きな災害になると、対応は年単位になることもざらになってきています。
 そんな中で、最初から担当者が限界以上の仕事をしていては、そのうちに関係者全員が枕を並べて討ち死にということになりかねません。
 しっかりとした対応をしなければならないときこそ、しっかりとした休養と栄養補給が大事になるということを知っておいてください。
 とはいえ、そんな話を発災中や発災後すぐにしたところで、現実の対応に追われてとても考えられるものではありません。
 あらかじめ、しっかりとした計画を作って、その中で休養と栄養補給が取れるように手を打っておく必要があるのです。
 災害対応は長期戦です。短期決戦と長期戦では、おのずから戦い方が異なりますし、長期戦で戦っても担当者の士気が下がらないような仕掛けは、平時から作っておかないと絶対にうまく行きません。
 被災した自治体でなぜかよく管理職の方が言われる「気合いと根性」では災害対応は乗り切れません。特に災害対応を指揮すべき人はそのことを念頭に常に置いたうえで準備をしておいて欲しいと思います。

行動を口に出して確認してみる

慌てているときや焦っているとき、どうかすると普段必ずしているはずの点検を怠ってしまうことがあります。
そして、そんなときに限って怠った点検から大問題が発生してしまいます。
普段の行動、分かっている行動でも、記憶や行動に頼っているだけでは問題が起きるということですね。
少しでも問題発生を抑えるためには、行動リストを作ったり、もう一人とコンビになって、お互いに手落ちがないか点検しあうといったことが大切になってきます。
ただ、災害時に常に手元に行動リストがあったり、自分以外の誰かと一緒に行動できるわけではありませんから、緊急時に一人でも身の安全を確保するための方法を知っておくことが重要です。
それは、「行動を声に出して確認する」という非常に単純なことです。移動や点検などをするのであれば、指さし確認をすると、声だけよりもミスが格段に減ります。
鉄道などに乗ると、運転手さんがよく声を出して指出しして次の行動の確認をしている光景を見ることがありますが、声を出し、指さし確認することで起こりうるミスを減らす行動をしているのです。
自分の行動を確認するために、声を出して行動を宣言すると身体が動かしやすくなります。できれば、自分の出した声が自分の耳で聞き取れるくらいの大きさ以上で出すことが重要です。
試しに、慌てているときに大きな声で「落ち着け!」と大声を出すことを試して見て下さい。周囲だけで無く、不思議なことにあなた自身も落ち着いているはずです。
また、その声を聞くことであなたの周りで被災し、思考停止した人が金縛りが溶けたように身を守る行動を起こすようになります。
災害に限らず、慌てているときや心配なときにはやるべき行動を声に出し、確認して行動を起こすようにすれば、あなたに発生するかもしれない二次災害を防ぐことができるようになると思います。

社会福祉施設と福祉避難所

 保育園や介護施設などの社会福祉施設では、非常事態に備えた事業継続化計画、いわゆるBCPを持っていると思いますが、そのBCPでは多くの場合、災害発生時の利用者や職員の安全確保については考えられていても、施設の復旧や早期利用開始についてまでは定義されていないことも多いのではないでしょうか。
 令和3年5月に災害対策基本法が改正され、社会福祉施設をあらかじめ福祉避難所として指定し、事前に指定している被災した要配慮者及びその家族を最初から避難者として受け入れられるようにすることができるようになりました。

 これにより、普段利用している要配慮者の心身両面の安全安心が確保でき、安心して早めの避難をしてもらえるようになります。
 ただ、現時点ではなかなか及び腰になってしまっているのが実際のところではないでしょうか。
 今までは営業中の被災について考えておけばよかったのに、福祉避難所としての機能を持たせることになるとより細かな規定を作る必要があるからです。
 例えば、その社会福祉施設がどのような災害に弱いのかやどうなったら福祉避難所の設営を行うのか、職員の確保はどうするのか、施設の復旧と要配慮者の避難受け入れの両立ができるのかなど、さまざまな問題が発生します。
 また、今まで以上に職員やその家族のBCPまで考えてもらわないといけませんから、手間と時間を考えるとどうしても二の次になってしまいます。
 BCPの修正期限まで3年間の猶予はありますが、その間に個別避難計画を策定し、避難所運営計画を作り、事業の復旧や支援受け入れ体制、他の社会福祉施設との応援協定や定期的な訓練など、やらないといけないことはてんこ盛りです。
 元々現在の社会情勢から考えて、社会福祉施設が機能を再開しないと社会全体の復旧が進まないという現実がありますから、営業を止めないことや要配慮者を受け入れることのできる環境を作っておくことは必然です。
 厚生労働省や内閣府防災担当が社会福祉施設に関するガイドラインを作っていますので、とりあえずはそれに当てはめてBCPを作成し、その上で問題点を見つけていくことになると思います。
 全ての社会福祉施設が服し避難所になれる要件を満たしているわけではないと思いますが、あなたの社会福祉施設はどのような条件なら福祉避難所になれるのか、そして福祉避難所をどうやったら運営できるのかについて、市町村などの行政機関から相談がある前に、準備を始めておいた方がよさそうです。

福祉避難所の確保・運営ガイドライン(令和3年5月改定)(内閣府防災担当のサイトへ移動します)

虫除けとかゆみ止め

便利なスプレータイプの虫除け。苦手な人も居る。

 避難所ではよほど天気が悪くならない限りは窓や扉は開けられていることが多いです。特にここ最近の新型コロナウイルス感染症対策を考えると、換気用の開口部が設けられていることはほぼ絶対条件です。
 その開口部に網戸がきちんと準備されていればいいのですが、体育館や学校の講堂などには虫除けの網戸が設けられていないケースが結構あります。
 そこで登場するのが虫除けなのですが、蚊取り線香や忌避剤は定番ですが喘息持ちやアレルギー持ちにとってはつけることが命に関わるケースもありますので、あちこちで焚くというわけにはいきません。
 虫除けスプレーや虫除けリングなど、各個人で虫除けをするしかないという事態になります。
 非常用持ち出し袋には、虫の忌避剤を入れておくのを忘れない方がよさそうです。
 そして、もし咬まれたり刺されたりしたときに備えて、虫刺され用かゆみ止めも救急箱に入れておくようにしましょう。
 体質的に合う合わないや好みの問題もありますので、自分にあったかゆみ止めを持参して下さい。
 最近は夏場だけで無く、通年で蚊やダニがあちこちにいますから、標準装備として非常用持ち出し袋に入れておくようにしておくと安心です。
 大規模な避難所では、案外と個人を守るべき装備はおろそかになっているものですから、できるだけ自分にあった虫除けやかゆみ止めを準備しておいてくださいね。

同じ正解のない世界

 災害対策ではいろいろなことが終わってから言われるわけですが、それは災害が収まって落ち着いて、全ての結果がわかっているから言えることで、災害時に常に正しい答えが導き出せるとは限りません。
 同じ状況下でも、前回正解だと思っていた行動が今回は命の危険を招くこともあり得るわけで、過去の経験則がそのまま当てはまらないのが災害の特徴と言えるかもしれません。
 そういった事態をなるべく避けるため、避難訓練や研修会を重ねていくわけですが、問題が起きないようにやろうとすると、実はあまり意味の無いものになってしまいます。いざ本番でトラブルが起きても対処できるように、訓練ではより意地悪な環境や設定を行うといいと思います。
 もっとも、現実としてはそんな設定をすると関係者や上司にボロっかすに言われたりするのですが。
 ともあれ、災害対策は同じ正解のない世界です。あるとすれば、とにかく早めに避難することくらい。ただ、普段の生活や行動から、災害時のあなたにとっての正解を予想することはある程度できるので、普段の生活でちょっとだけ災害対策を意識してもらえると、よりあなたの命が安全になると思います。

常時と非常時の判断

台風や大雨など、ある程度早めから被害が想定される場合には、どのように対処するか悩ましいときがあります。
公共交通機関では基本的にBCPが準備されていて、その計画に従って計画運休することも増えてきました。
ただ、結果として何も起きなかった場合には、公共交通機関は計画運休したことを責められます。
困ったことに、何も無かったという事実は存在していますから、運休で困った人達だけでは無く、専門家という人達もマスメディアも喜んでバッシングをするわけです。
災害が起きたかもしれないという予測は、そういったときには完全に無視されます。
ただ、公共交通機関の場合、もし災害に伴って事故が起きるとその被害はけっして許容できるレベルではありません。
どのタイミングで常時と非常時のスイッチを切り替えるのかは、本当に判断に迷うと思います。
実はこの判断を迷わせずに実行するためにBCPが存在しているのですが、あまりバッシングすると、今度は現場の判断でBCPに従わないという選択肢が登場してしまうことになります。
そうすると、非常時に備えた計画そのものが破綻してしまいます。
公共交通機関は常に安全確実に利用者を目的地に連れて行くのが仕事です。
その目的を考えれば、災害時により安全な対応を判断することはおかしいことではないと思います。
計画運休は、数日前から予告されるものですから、それに従ったそれぞれの対応を取ることが正しい姿なのではないでしょうか。
日常生活を非常時にシフトすることは難しいものです。
特に通勤通学している人達にとっては、その所属する組織が「非常時とは」という定義をきちんと示しておく必要があります。
以前、大阪北部地震では、鉄道が止まったにもかかわらず会社や学校が通常どおり活動しようとして、あちこちで問題が発生しました。
判断に迷うときに日常を継続するのか、それとも非常時にシフトするのか。この判断、公共交通機関だけではなく、それぞれの組織や個々人もできるように準備しておきたいですね。
あっても、やっぱり判断には迷うのでしょうが。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました。

 去る9月22日、益田市立高津小学校のクラブ活動の一つとして、防災クラブを開催しました。
 今回は「揺れに強い形って何だろう?」というテーマで、ストローとクリップを使った立体模型比較をしてみました。
 三角錐はみんな上手にできていたのですが、四角柱になった途端、自立できずに倒れるものが続出し、面の斜めに一本支柱を入れることで安定して自立することを試して見ました。
 今回の内容は、一般にはストローハウスと呼ばれているものですが、50分という時間では家を作るところまでできないことがわかっていましたので、三角と四角という形を作ってその強度を確かめるところまでを一つのプログラムとしてみました。
 担当していただいた先生からは、図工でもできそうだということで、興味深そうに子どもの指導をしていただけました。


 結果だけ書くと、できるだけ角の数が少ない方が安定しやすいので、面は三角形を基本に作ると言うことだったのですが、わかっていてもなかなか難しかったようです。
 首をひねりながらストローとクリップに悪戦苦闘してくれた子ども達と、的確な指導で子ども達をサポートして下さった担当の先生に感謝いたします。

台風の時の窓対策

 台風が来るとき、窓に養生テープや布テープを「×」や「米」の形に貼り付けておくことがあります。
 巷ではいろいろといわれているようですが、これは窓ガラスが割れたときに飛散するガラスをできるだけ減らすことを目的としたもので、やったから割れないというのは迷信ですので注意してください。
 窓ガラスの内側にテープを貼ることで、何らかの原因でガラスが割れたときに大きな破片が飛び散ることをある程度防いでくれるので、何もしないよりは安全度が確実に上がると考えればいいと思います。


 当研究所では、大きな窓ガラスには飛散防止フィルムを貼っていますが、そうでない窓については屋内側に養生テープを米の形に貼り付けて飛散対策をしています。
 ガムテープや布テープもあるのですが、ガムテープは剥がすときに非常に大変ですし、布テープは窓にのりが残ってやはり剥がすのが大変でした。強度と剥がす手間を考えて、うちでは養生テープが一番いいという結論に達しています。
 ちなみに、窓の内側に養生テープを貼ったら、窓の外側にはプラ段ボールや段ボールでガラスの上に蓋をしています。窓枠に養生テープで貼り付けることで、衝撃からガラスを守ってくれると期待しているのですが、幸いにしていまのところ活躍したことはありません。


 窓の保護と飛散対策を考えるとガラスの内側と外側の両方を段ボールで覆うといいのでしょうが、手間の問題から外だけにしてます。
 代わりに、内側はカーテンをしっかりと閉めて、飛散対策としています。
 窓ガラスにテープを貼ると強度が落ちるというような研究もあるそうですが、何か当たったときにガラスが飛び散って怪我したり、そこから入ってきた風で屋根や壁が壊れても嫌だなと思って養生テープとプラ段ボール張りはやっているのですが、するもしないも好みだと思っています。
 どう考えるのかも人それぞれですから、やる人もやらない人も、お互いに全否定せずに対策ができるといいですね。
ちなみに、一番効果があるのは雨戸やシャッターを窓の外に設置することですから、それらの対策が可能であるなら、そちらで対策することをお勧めします。

お店にハザードマップを貼っておこう

 あなたのお宅では、ハザードマップは壁に貼ってありますか。
 家だけでなく、避難経路についても赤線などでわかるように書いて、避難先まで問題ないかを確認するようにしてください。
 ところで、不特定多数の人が集まる食堂やレストランなどの飲食店では、災害が起きたときにどこへ避難すべきか知らない人が多くやってきて利用します。
 いざというときに安全な避難先がわからないとパニックになってしまいますし、少ない従業員の方で完全な誘導をすることも難しいですから、お店の位置と近くの避難所がわかるハザードマップを貼っておくといいと思います。
 貼る場所は、トイレの中。
 小便器を使っているときに目線がある場所や、個室の場合には扉の内側。用を足しているときは案外としっかり見てくれますから、そこへ掲示しておくとかなり効果的です。飲食店に限らず、不特定多数の人が利用する施設では掲示するようにしておくと、ある程度の混乱を避けることができると思います。
 ハザードマップは大事にしまっておくものではありません。活用してこそ作った意味があります。
 掲示したからといってお客様に何かが訴求できるわけではありませんが、いざというときに少しでもお客様の生存確率を上げることができる簡単な取組です。
 広告に混じっていても構いませんので、お店のどこかにお店の位置と避難場所を記載したハザードマップを貼り出してみませんか。