災害にあったらどうするかの対応をまとめてみた

 災害にあった後何から手を付けたらいいかというのは悩むものです。
 参考になるかどうかはわかりませんが、当研究所で以前に書いた記事をまとめたものを作ってみましたので、気になった記事があればご覧ください。

20181216 災害時の情報の集め方

20181218 被災物件の調査と証明のあれこれ

20190121  り災証明書・被災証明書の使い道

20190122 通電火災を防ごう

20190423  家にある飲料水を探そう

20190602 蚊対策を考える

20190622 懐中電灯を即席ランタンにする方法

20190628 災害後は子どもの過ごせる場所を作っておく

20190707 災害保険の申請は自分で行うこと

20190810 寝床に使える段ボール

20190821 口腔ケアに気をつけよう

20190831 家屋が浸水した後の処理

20190917 生ゴミの臭いを消すあれこれ

その後の防災ポーチ

 以前に防災ポーチ研修を受けたことを書いたことがあります。
 あれから半年。我が研究所の防災ポーチはどうなっているのか、少し気になったので当時同行したS研究員に尋ねてみました。
 彼が取り出したのは、非常用持ち出し袋。防災ポーチはその中に入っていました。
 普段は出かけるときに持ち出すカバンに入れ、帰ってきたら非常用持ち出し袋に戻しているそうです。

最初に作った防災ポーチ。必要最低限のものが組まれている。
S研究員の防災ポーチ。小銭に1円、5円が混じっているのは買い物の時に必要と判断したためとのこと。

 中を拡げてみると、彼なりにカスタム化されたアイテムが追加されています。
 鉛筆と消しゴム、小銭、それにハイドロコロイド素材の絆創膏。あとはガム。
 半年間の運用実績で、自分が必要とするものを組み込んで使いやすくしてきているようです。
 ただ、あめ玉に関しては夏場に溶けてしまうので入れておくのが難しいという話で、代わりにガムを追加しているということでした。
 カロリー0のあめ玉は入れていても溶けないそうですが、目的考えると役に立たないということをぼやいていました。
 ラムネ菓子や他のもので代用することも考えた方がいいかもしれませんが、そこらへんは現在試行錯誤討をしているようです。
 ともあれ、持ってあるか無ければ意味が無い防災ポーチ。
 使っているうちにだんだんと取捨選択が進んでいくようです。
 ちなみに、所長の防災ポーチは殆ど中身が変わっていませんが、消耗品は入れ替わっています。
 普段使いできるものを入れておけば、使用期限をあまり考えること無く使えますから、一度作ってみることをお勧めします。
 中身については、防災ポーチ作り講座の項を参考にしてください。

台風の時の風対策

 台風シーズンです。
 台風の勢力については以前にも触れたことがありますが、今回は風対策に特化して考えてみましょう。
 風対策で最初に出てくるのは、家の周囲のお片付け。
 台風の時には普段とは違う風が勢いよく吹き付けてくるので、家の周囲に置いてある植木鉢やバケツ、物干し竿、段ボール箱といった普段はなんともないようなものが勢いよく飛んでいったりします。
 そのため、屋外に置かれたこれらのものは、屋内に収納するか飛んでも周囲に迷惑をかけないような場所に収納しておく必要があります。
 次に、雨に備えた雨樋の掃除と点検もしておく必要があります。
 雨樋に詰まっているゴミの撤去はもちろんですが、取付を確認し、強風によって外れたり壊れたりしないかを点検しておきましょう。飛びそうだったり壊れそうな感じなら、いっそ撤去して、台風が過ぎてから修繕するのも方法です。
 また、窓ガラスの飛散防止についても必要です。
 合わせガラスや飛散防止フィルムが貼り付けられていればよいのですが、そうで無い場合、布テープを窓ガラスに「米」状に貼り付けて万が一窓ガラスが割れても破片が飛散しないようにしておきます。細かいところは以前触れていますので、そちらをご確認いただければと思いますが、できれば厚手のカーテンやブラインドなどを閉めて、もし破片が飛び散ってもカーテンなどで止められるようにしておきましょう。
 それから、台風シーズンに入る前にはテレビアンテナの点検を忘れずにしてもらっておきましょう。
 台風が来ると、かなりの確率でテレビアンテナが破損することがありますが、これは経年劣化により起きることが多く、定期的な点検と交換で破損を未然に防ぐことが可能です。
 ここまで見ていただけば分かると思いますが、風で被害を出さないためには、とにかくものが飛ばないようにしておくことです。台風の進路はかなり精度が高く予測されていますから、発表される台風情報を元に早めに手を打つようにしましょう。
 最後に、不用意に出歩かないことも大切です。
 風速15m/sを超える風になると、歩いている人でも風に逆らって歩くことが難しくなります。
 気象庁が風速と人や建造物への影響を一覧表にしていますので確認していただきたいのですが、台風などで突風を受けると、風に飛ばされて建物にたたきつけられてしまうことも起こりえます。
 そのため、必要なものがあればあらかじめ準備しておき、台風の勢力圏内にいる間は外出は止めましょう。

募金する先を考える

 災害が続くと、さまざまなところに募金の窓口が開設されますが、窓口の数が多すぎてどこへ募金すればいいのか悩むことも多くなってきました。
 東日本大震災のような大きな災害が起きると、街頭募金がめったやたらと増えて募金する人が募金疲れしてしまうようなことも起きたりします。
 また、募金した人の思いと募金が使われる目的が違っていたりすると、募金した人の違和感が発生したりすることも起きます。

そこで、今回は募金の窓口とその性質について考えてみたいと思います。

【本日のお品書き】
1.募金とはなんぞや?
2.募金の方法と募金先
3.思いと募金する先を一致させるためには

1.募金とはなんぞや?

 募金とは「浄財」、平たく言うと「お金の寄付」です。
 いろいろと大変な思いをしている人たちを助けたいけれど、一人でできる寄付金の金額はしれています。ですが、さまざまな人たちの寄付を集めればまとまったお金となって人助けができるため、共同募金会などの大きな公益法人は常時「募金」という形でお金を集めています。
 災害が起きると、あちこちの組織や団体がその災害限定の募金が立ち上げられることがあります。
 被災地で必要なものは時間や状況の経過によってめまぐるしく変わっていくため、物資を送るよりも募金として現金で届く方がより現地のニーズに合った対応が可能になることが多いです。
 被災地で物資が欠乏するのは、殆どの場合物資の輸送手段に問題が発生しているためなので、自分たちでの直接持ち込み以外の場合には、物資よりも義援金の方がいいと私自身は考えています。

2.募金の方法と募金先

 募金の方法は大きく分けると「募金箱による街頭募金」「寄付口座に振り込む」にわかれます。
 街頭募金はお手軽ですが、やっている団体や個人がいただいた募金をきちんと届けてくれるのかという疑問は残ります。街頭募金に募金するときには、集まった募金をどこへ届けるのかについて、募金する前に確認した方がいいかもしれません。
 街頭募金の届け先は、共同募金会か日本赤十字社になることが多いです。
 これらの団体は集まった募金をきちんと届けてくれるという信頼と実績があり、手続きも簡単なため、さまざまな募金が集まりやすくなっています。
 寄付口座への振り込みは、振り込み手続きをするという手間はかかりますが、間違いなく自分の思う募金先に募金ができるというメリットがあります。最近では被災自治体による「ふるさと納税」やNPOによる「クラウドファンディング」でも災害への募金が設定されることが増えてきており、より思いに即した対象に募金することが可能になってきています。また、募金する先によっては確定申告時の税額控除が受けられるようなものもあります。
 また、AMAZONでは「欲しいものリスト」というシステムを準備しています。
 これは東日本大震災や熊本地震のような大規模災害時、物流回復後に運用されるもので、避難所から出された「欲しいものリスト」の中の品目を支援者が購入すると、該当商品が避難所に届くようになっており、避難所のニーズと支援物資が一致しやすいという利点があります。
 大きな災害時にはそちらを確認してみるのもいいと思います。

3.思いと募金する先を一致させるためには

 募金する人にはさまざまな思いがあります。そして募金を届けるところにもやはり思いがあります。
 募金を届けるところがどのようなことを考えているのかは、それぞれのホームページを確認してみるとよくわかります。
 一般的には大きい組織は全体に広く浅く、特定のことを目的とする組織は狭く深く支援を行います。
 あなたが何のためにその募金をするのかを一度考えてもらって、あなたの思いに沿った組織や団体に募金し、効率的に募金が使われるように考えていただければと思います。

【活動報告】「ストローハウスを作ろう!」を開催しました。

 去る9月17日、高津地区の放課後児童クラブ「いちごクラブ」様にご協力をいただき、「ストローハウスを作ろう!」を開催させていただきました。
 ストローハウスとは、名古屋大学の福和教授が考えた地震に強い構造物を考えるというもので、柱や桁をストローで、継ぎ目をクリップで留めて家の骨組みを作り、揺らしてどこまで耐えられるかというのを競うものです。
 1年生中心の第一クラブと、2、3年生の第二クラブの二カ所で実施させていただきましたが、どちらも最初は「今地震が来たらどうする?」という質問をしてみました。
 1年生達は「ダンゴムシのポーズ&机の下」と全員回答。対して2、3年生は「机の下に潜る」ということで、ダンゴムシのポーズは出てきませんでした。忘れているのか、それとも、そのあたりで防災教育の切り替えが行われたのか、そのあたりはよくわかりませんでしたが、地震の時には頭を護ること、そして頭、首、手首、太ももの付け根といった大きな血管のあるところを守るようにしようという説明と、一緒にダンゴムシのポーズを取ってみました。

机の下に逃げ込もうと押し合いへし合い擦る子ども達

 その後はストローハウス作りです。設計図を書いて、それにあわせて組み立てていくのですが、書いた設計図にきっちりとあわせてストローを刻む子や、繋げて釣り具にしてしまう子、組み立ててもうまく自立せず、崩壊が続いて諦める子といろいろでした。

 事前に当研究所でやった限りではさほど苦も無く組み立てていたのですが、どうやらクリップの保持力が悪かったようで、結局うまく組み上がったのは12組中わずか2組。

最後に「もう二度とやりたくない人?」と尋ねたらほぼ全員の子に手を上げられてしまって、今回の当方の手際の悪さを痛感しました。
あとで文具屋さんに尋ねたら、メーカーや品質にかなりばらつきがあるそうで、有名メーカー製でも製品によっては保持力が少ないものもあることを教えていただき、今回のことが納得いきました。
試しに文具屋さんのお勧めのクリップで作ってみたのが写真の「赤い家」。

 保持力があるせいか、かなりおおざっぱに作ってもうまく自立させることができました。
 この次もしさせてもらえる機会があれば、今度はもっと子ども達に楽しんでもらえる企画にできるかなと思いながら、今回のイベントを終了いたしました。
 提案を快く受け入れていただき、実施させていただきました高津地区放課後児童クラブの先生方と、今回のストローハウス作りで倒れても倒れても作ろうと頑張ってくれた子ども達に、こころからの感謝をいたします。
 ありがとうございました。

生ゴミの臭いを消すあれこれ

 広域災害が起きると、ゴミの収集の再開までにはかなり時間がかかります。
 かといって、ゴミの回収が再開されるまで生活を止めるというわけにも行きませんので、虫のわかないゴミ処理、臭いの出ない・出にくいゴミ処理は必須となります。
 水と電気が使えない状態ではできる選択肢はかなり限定されてしまいますが、今回は臭いを消す方法を考えてみたいと思います。

使い捨ての容器なども食べ残しがついているので臭いの元になる。

1.なぜ臭いが出るのか?

 生ゴミは、そのままにしておくとひどい臭いがするようになります。
 これは菌が活躍するときに発生するもので、人に役立つものは「発酵」と呼ばれ、役に立たないものは「腐敗」と呼ばれます。
 「発酵」も「腐敗」も原理は同じで「栄養」「水分」「pH、酸素などの環境」の3要素のバランスにより「発酵」にも「腐敗」にもなります。
 不思議なことに、腐敗する臭いはハエやその他の不快な昆虫を呼ぶ臭いを出します。恐らく分解を早めるために自然界が作り出した知恵なのではないかと思いますが、これをそのまま放置しておくと衛生環境が悪化していくことになります。

2.どうすれば臭いは出にくくなる?

 腐敗が進む3つの要素、「栄養」「水分」「温度や酸素、pHなどの環境」がコントロールできれば腐敗を止めることは無理でも腐敗しにくくすることが充分可能です。
 普段腐りやすいものを冷蔵庫で保管するのは「温度という環境」を腐敗菌が活動しにくい状態に変更してやることで腐る速度を遅らすものですから、電気が切れてただの箱になった冷蔵庫の中は腐敗菌の温床となってしまい、いろんなものが腐っているカオス状態になっていることは容易に想像がつくと思います。
 さて、常温で腐敗するのを防ぐ方法を考えてみると、「栄養」を無くすことは無理なので、「水分」と「環境」をコントロールすることになります。
 例えば、何らかの方法で水分をなくすとか、本来はやるべきではありませんが、生ゴミをある程度の深さに土中埋設すれば酸素が遮断できるので発生する腐敗臭を大幅に減らすことができます。
 また、pHをコントロールしてもいいわけですから、塩や酢、消石灰を大量投入してやれば、やはり腐敗を遅らせることは可能です。
 それらのアイテムが用意できない、または使いたくない場合には、臭いが漏れない魔法の袋「BOS」を使うしかありませんが、この袋、そこまで大きなサイズはありません。

【BOS公式SHOP★驚異の 防臭袋 BOS (ボス)】 ストライプパッケージ ★(SSサイズ)200枚入 ●送料無料● 赤ちゃん おむつ処理袋 ペット 犬 猫 フェレット ハムスター うんち エチケット袋 サニタリー 生理用 ナプキン マニキュア 除光液 におい 対策 臭わない

 そのため生ゴミが発生するたびにしっかりと水を切って、新聞紙など吸水性の高い紙に包んで袋に入れ、中からできる限り空気を抜き、口をしっかり縛ってゴミ袋を入れた蓋のできるバケツに貯めておくという方法になります。
 ここでは介護施設等で実績のある袋をご紹介しましたが、他にも臭いの漏れない袋があるようですので気になった方は調べてみてください。

3.生ゴミを出さない方法を考える

 野菜や魚、肉などは上手に使うと発生する生ゴミをかなり減らすことができます。災害時だけで無く、普段の生活でも充分に役に立つことだと思いますので、普段から意識しておくといいと思います。

 参考になるかどうかはわかりませんが、他にもいろいろな方法があると思います。きちんと回収してもらえる時にいろいろと試してみて、自分が納得のいく方法を見つけてみてください。

何が初動を遅らせたのか?

 台風15号の被害は時間を経過するごとに明らかになってきています。
 情報集積地である東京のすぐそばの千葉県や島嶼部の情報がなんでこんなに遅れているのか。先日の佐賀県の災害の方がよほど早く、大きく報道されているような印象を受けます。
 では、なぜそうなってしまったのか。
 これは今回東京も被災しており、東京のキー局がお膝元である東京の情報ばかり出して台風15号の報道が終わってしまったことに原因があるような気がします。
 佐賀県の災害は遠くなので客観的に情報を集め、提供することができましたが、台風15号では当事者となりました。それにより自分たちが体験したこと、見聞きしたものの提供が中心になってしまい、情報を客観的に見ることができなかったのではないかと考えます。
 また、自治体からの情報もかなり発信が遅れていますが、これは被災自治体が現場対応に手一杯になってしまうことが原因です。
 「だれが」「どこで」「何をする」は各自治体の事業継続化計画で決められているのですが、被害通報は時間が経過するとある期間までは加速度的に増えていくため、行政の限られた人員では対応が追いつかなくなることがその原因です。
 過去には、熊本地震で一番被害のひどかった益城町からの情報発信がかなり遅れていたことが指摘されていましたが、これも現場対応に追われて全体の状況把握ができていなかったことが原因であるとされており、その後、国や都道府県は積極的に情報収集要員や災害対策支援職員を被災自治体に送り込むようなルールになりました。
 プッシュ式と言われる方法ですが、市区町村の災害対策本部が立ち上げられない限り派遣された情報収集員の集められる情報は断片的なものになります。市区町村の災害対策本部が機能していなければ、市区町村の情報を使う都道府県や国の災害対策本部も機能できません。
 そのため、本来されるべき状況の把握と分析がうまくいっていないという現状が見て取れ、結局SNSの拡散により初めて被害状況が社会的に認知されました。
 現地では「電気がない」「水がない」「ものもない」のないないずくしになっているようですが、被災地外からどのように支援したらいいのかがまだ見えてきません。
 全体を俯瞰した情報がないため、どこまでが無事でどこからが被災しているのか、何がどこで必要なのか、どこが通れるのかなど、わからないことだらけ。
 本来は災害が起きたら各自治体の所有する防災ヘリが空から被災状況を確認しますが、千葉県は防災ヘリを所有していません。
 上空からの被災状況確認は効率的な災害復旧指揮には不可欠なものですが、被災地全体を俯瞰した情報収集がなされていなかったのではないかという気がします。
 初動対応として自治体職員が現場に出かけるのは正しいと思います。ただ、それとは別に初動からひたすら情報を収集・整理して提供する人員が必要です。
 何があっても現場対応をせずに情報をひたすら収集・整理するだけというのは結構大変ですが、その結果、さまざまな情報がうまく発信されて被災現場の復旧が早まることになります。
 こういった機能は、被災自治体そのものが持つのは住民感情的になかなか難しい部分がありますので、被害が広域であれば都道府県や国が積極的に情報を集め、発信していく必要があると思います。
 初動が遅れると後々まで尾を引くというのは災害復旧では常識なのですが、今起きていることを今後しっかりと分析、検討し、大都市で発生する災害への対応について、もう一度整理して備えておく必要があると思います。

情報が入らない

 台風15号の被害では、都市災害のテストケースのような問題がいろいろと発生しています。
 一番の問題は、長期間の大規模停電による情報遮断ということでしょうか。
 携帯電話基地局やテレビ・ラジオの中継塔では非常用発電装置や非常用蓄電池を持っていて、停電になっても1日から1日半は機能を維持できるように作られています。
 ですが今回のように長期間にわたる停電となると、自家発電機の燃料も蓄電池の電源も切れてしまって機能が止まってしまいます。
 本来であればそうならないようにいろいろな手が講じられるのですが、今回は全てが後手に回っている状態で、現在も混乱が続いています。
 なぜ後手に回ったのかと言えば、指揮する場所のある東京が被災したから。
 他の災害では災害はよそ事なので、冷静に判断して指示を出すことができますが、今回は自分たちが被災したため、その状況確認をしているうちに災害対応が終わってしまったと勘違いしてしまったのです。
 また、大規模な被害が出た地域はそもそも情報すら発信できませんので、外部から調査が入って初めてひどいことになっていることが判明することが殆どです。
 今回台風15号による東京以外の被害をマスコミが報道したのは発生から2日目以降でした。SNSからの発信で、東京以外に被害が出ていると言うことに初めて気づいたといった感じです。
 「災害時にはテレビやラジオ、ネットから情報を取る」「行政からの被害情報は防災無線やインターネットにより適宜発信を行う」というのが最近はやりの自助による情報収集なのですが、被災していることに気づいてもらえなければインフラの復旧がされず、被災者が情報を受け取ることができなくなります。
 今回はとにかく「情報が無い」ことが一番の問題となっています。
 行政や支援団体がいくらインターネットに情報を出しても、被災者が確認に使う携帯電話基地局の電源が無ければ通信環境がないので、そもそもそれを見に行くことができず、どんな情報も集めることができません。
 役場の広報車や街頭での貼り紙、口伝えによる情報拡散くらいしか手がないのですが、正直なところ自治会や自主防災組織がない地域では情報の広がりは期待できません。
 地域のつながりの薄いところだと、話を聞いた人が同じ地域の他の人に伝えることは考えにくいでしょう。
 もし東京23区内や大阪市内で同じような被害が起きたとしたら、今回以上に悲惨なことになるのは目に見えています。
 インターネットが使えない場合に、どこへ行けば情報を得ることができるのか、どこへ貼り出せば地域の人が見てくれるのか、アナログ手法を再確認しておく必要があるのではないでしょうか。

温かい言葉

 災害が起きると、さまざまな人が従来の生活を取り戻すために復旧作業を行います。
 行政機関はもとより、電気、ガス、水道、道路、輸送、交通など、その作業は多岐に渡ります。
 でも、普段からその仕事に従事している人たちでも、被害の状況によっては思ったように復旧が進まないことも多々あります。
 そんなとき、もし復旧作業をしている人たちを見かけたなら、一言「ありがとう」や「お疲れ様」の声をかけてみてください。
 どれだけ作業している人たちの励みになるかわかりません。

 以前、災害復旧で給水支援をしたことがあり、他の街からきた給水車の方と一緒に断水した街を回って水を配って回りました。
 その時に、水を受け取った人たちから異口同音に「ありがとう」「助かった」と言われて、他の街から来た給水車の方々はびっくり!
 曰く「断水した地域に給水支援に出て、お礼を言われたのは初めてだ」と。
 その日は朝8時から給水作業を開始、終了は午後4時30分だったのですが、給水車の方達は「被災して大変なのにありがとうと言ってくれるこの地域の人たちを助けたい」と言って、結局夜9時過ぎまで給水支援を続けられました。
 被災した人の暖かい言葉で、作業をしている人たちが奮い立ったのです。

 くたびれたとき、焦っているとき、そして先の見えない作業で気持ちが折れそうなとき、被災した人からの温かい一言が作業をしている人たちの気を奮い立たせることができます。
 大概の場合、復旧作業している人の中には被災した人も含まれているのですが、自分のことは後回しにして、その地域の人たちのために作業をしてくれているのです。
 困っているときほど、対応してくれている人に温かい言葉をかけてほしい。
 それによって自分も助かることになるのだということを、こころの片隅に置いておいてほしいなと思います。

行かないという選択肢

 台風15号は首都圏にさまざまな有形無形の被害を与えたようです。
 今回、首都圏の鉄道会社は事前に計画運休する旨を告知していましたが、蓋を開けてみれば運休していることを知らずに駅にやってきた人がたくさんいました。
 速報値のようですが、首都圏全体の6割の会社や学校が計画運休に対してどのように対応するのかという指示がされていなかったそうです。
 去年関西で続いた地震や台風で企業や学校の災害時対応が騒がれたところですが、今回もやっぱり指示なしによる通勤通学難民が大量発生してしまいました。
 テレビやラジオのニュースでは「情報が提供されていない」と騒ぐ人たちが取り上げられていましたが、果たしてどこまで情報提供すればこの人達は納得するのだろうかとかなり疑問に感じています。
 それはともかく、台風が来るということと、鉄道が計画運休するということは事前にわかっていたのに、そして強風吹きすさぶ中、駅に向かって移動して動きの取れなくなった人たちは何を考えていたのかと言うことに興味があります。
 発表されているさまざまな情報が自分に影響があるという意識ができないということ、言い換えれば「全ての事実は他人事」なのかなと感じます。
 もっとも「計画運休時は休んでよし」と言えない企業や学校に基本的な問題があります。
 安全を意識して「行かない」という選択をしたら、後になって「何故来なかった?」と言い出しかねない風土が、通勤通学難民を生み出す大元になっているのかなと思います。
 社員や学生の安全を意識できないような企業や学校は、このご時世ではこの先、おそらく生き残ることは無理でしょう。
 社員や学生を危険にさらし、社会的インフラに負担をかけ、さらに社会インフラを維持するため出勤する人たちをも妨害している状態が果たしてまともなのでしょうか。
 鉄道も無意味・無計画に計画運休しているわけではありません。
 計画運休するのは、乗客の安全を確保し、災害発生後の復旧を手早くするために行うものです。
 その意味がわかれば、社員や学生を交通手段の途絶している中、通常どおり来させるという行為がいかに無謀かということが理解できるのではないでしょうか。
 今後しばらくは、災害は増えることはあっても減ることはありません。
 そろそろ企業や学校、そして自分自身も災害時対応計画を作って、計画運休時には不要不急の出社や登校はやめるということを決めておく必要があるのではないでしょうか。