避難所は複数確認しておこう

国土地理院の地図における避難所と対応している災害の種類のマーク。

 災害時に避難する避難所。ひとくくりに避難所と言いますが、災害によっては避難先として使えない場合もありますので、その避難所がどんな災害に対応しているのかを確認しておきましょう。
 もしも対応していない災害があったら、その災害に対応している近くの避難所を確認しておく必要があります。避難所は、基本的には各地区で避難する場所が割り当てられていますが、割り当てられた避難所の災害特性は考えられていないので、大抵のハザードマップには注釈として「適応している近くの避難所に避難すること」という記事が書かれていると思います。
 その避難所がどのような災害に対応しているのかを確認するためには災害対応一覧表を確認しますが、ハザードマップに避難所一覧がついていれば、必ずその避難所が対応している災害の記事があるはずです。また、一番新しいタイプの避難所の看板であれば、それを見ると対応している災害が一目でわかるようになっています。

一番新しいタイプの避難所を示す看板(吉賀町・吉賀高校体育館にある表示)。
これを見るとどの災害なら避難できるのかが一目で確認でき、旅行者なども安心できる。

 先ほど少し触れたのですが、避難所は各地区で避難すべき場所が指定はされています。ですが、施設の収容人員には限りがありますので、遅れていくと入れないという場合も出てきます。その場合避難所の場所をあらかじめ調べていれば次の避難先を慌てて探さなくてもすぐに移動が開始できます。
 避難所が想定外の事態で被災することもありますし、できれば複数の避難所を調べておいて、そこへの行き方や自分の脚でどれくらい時間がかかるのかなどを調べておいた方がいいと思います。

準備する水のペットボトルのサイズを考える

ペットボトルの水。左から500ml、1リットル、2リットル。

 災害時に使う非常用持ち出し袋や被災後に使うことになる備蓄品では、それぞれ準備しておくものが異なります。
 ただ、共通するものもあって、例えば飲料水などは衛生的な水が確保できないという前提で考えると絶対に必要なアイテムの一つとなります。
 では、どのように準備したらいいのでしょうか。
 結論から言うと「備蓄品は保管しやすい最大量」で、非常用持ち出し袋は「持ち歩きがしやすくそのままで飲みやすい大きさ」ということになります。
 備蓄品は家屋倒壊が起きない限りはそんなに長距離を抱えて移動することは考えにくいですから、別に量が多くても困ることはありません。
 保存が利くのであれば、2リットルのペットボトルやウォーターサーバーなどでも問題ないと思います。ただ、水の容器からそのまま注ぐということを考えると、容易に持ち上げることのできる2リットルがお勧めになるでしょうか。
 非常用持ち出し袋では持ち歩くという前提がありますから、大きなボトルだと重さが分散できないので持ちにくいという問題があります。隙間に詰めたり重心を簡単に調製することを考えると、大きくても500mlまでのものになると思います。
 防災ポーチなど普段持ち歩く前提のものであればもっと小さな200mlやそれ以下のものでも構わないと思いますが、そのあたりはご自身の体力と非常用持ち出し袋の重量とを考えながら用意してください。
 中間どころの1リットルというものも存在します。これは備蓄品にも非常用持ち出し袋にも入れることが可能ですが、ちょっと中途半端な感じがします。ただ、家族で小さい子どもや高齢者がいる前提なら、その人達の水の確保と重量バランスの点から、1リットルも検討に上がってくると思います。
 ご自身の非常用持ち出し袋や備蓄品収納の大きさやバランスを考えながら、いろいろと試してあなたがしっくりとくる編成を考えてみてください。
 ちなみに、ここで準備するペットボトルは必ずお水にしてください。水であれば飲料以外にも傷の洗浄やうがいなどいろいろなことに使えます。
 災害時にはなるべく少ない数のアイテムで多くのことに使えることが求められます。災害対策用には「水」。
 もし嗜好品を準備される場合でも、その水分は水としてカウントせず、水は水として準備してくださいね。

非常用持ち出し袋は家族一人に一つずつ準備する

 非常用持ち出し袋を作るというお話をすると、なぜか一家族で一つ準備すればいいと思う方が多いようです。
 実際のところ、一家族に一つだと、いざというときにはどうにもならないことが殆どです。少々大きなリュックサックを準備しても、家族全部の生活を養うものを持つことは非常に難しいと思います。例えば、家族4人の生活に必要とされる水は、一人一日3リットルとして全部で一日12リットル。もし3日分持って避難となると、これが36リットル、つまり36キログラムの重量を一人が背負うことになります。これは極端にしても、非常事態の対応としても、自分の命を守るためのものが特定に人に集中している事態は避けるべきだと思います。
 非常用持ち出し袋は、家族一人に一つ必要です。リュックサックを背負うことが難しい人は仕方がありませんが、リュックサックを背負える人であるなら、子どもでも年寄りでも関係ありません。自分が持てる範囲の自分の荷物をきちんと持ってもらうことが必要です。
 例えば、3歳のこどもに一日分の水や食料、生活用品まで入ったリュックサックを背負えといわれても難しいでしょうが、例えば300mlのペットボトルのお水1本と簡単な非常用食料、着替えくらいであればきちんと背負えるのではないでしょうか。自分で背負える範囲の生活物資を持つことで、万が一はぐれたとしても背負っている物資で命を繋ぐことはできます。また、少しの荷物でもわけることができれば、その分他の荷物を持つことができるので、生活環境の低下を少しでも防ぐことができます。
 家族みんなで自分が避難所で生活するとしたらどんなものがいるのかを話しながら用意していけば、きっと満足のいく非常用持ち出し袋をそれぞれが作ることができると思います。
 非常時には、自分のことは自分ですることが基本中の基本です。小さい子でも責任を持たせて準備させ、いざというときに持ち出すように話をしておくことで、仮に大人がいないときでも自分のものを持って避難することができれば、命が助かる確率はかなり高くなると思います。
 3月末、生活環境が変わるついでに、それぞれが非常用持ち出し袋を準備する機会にもしていけるといいですね。

防災訓練は子どもも積極的に活動してもらう

 地域の防災訓練で主体となって活動しているのはどのような人でしょうか。多くの場合、自治会の方や地域対策を考えている方が中心となると思いますが、その中に子ども達は交じっていますか。
 防災訓練では、子ども達は仕事ができない「お客様」として扱われていることが多いのですが、実際の被災地の復旧では、子ども達がかなりの戦力として活躍しています。炊き出し、話の聞き役、衛生管理など、子ども達はありとあらゆる場面で復旧支援の手伝いをしてくれます。大人同士であれば大げんかが始まるようなぴりぴりとした状況を子どもが仲裁するというようなこともしばしば起きたりしています。歩いて会話ができる子であれば、それなりの仕事はできます。ただ、残念ながら子ども達は経験が不足しているため、最初に指示がないと動けないのです。そして、指示を出している大人達はそれを見て子ども達をお客にしてしまう。悪循環です。
 防災訓練でも子ども達に積極的に参加してもらい、さまざまな仕事のお手伝いをしてもらう。そうすることで、大人とは違った目線での意見ももらえますし、いざというときに頼れる戦力としても育成ができます。
 実際のところ、被災地の復旧が始まると働ける人達はほとんど働きに出てしまい、避難所には高齢者と子ども達が残されてしまいます。子ども達が避難所運営を手伝ってくれることで、大人達にも余裕が生まれてきます。
 もちろん、大人の思ったようにならないことは当然ありますが、子ども達も仕事があることで自分たちが活躍しているという満足感を得ることができ、精神的に安定することも期待できます。災害本番だけでなく、普段の防災訓練でも活躍ができるように、地域の子ども達にも打ち合わせに参加してもらい、守ってもらう側から守る側に変わってもらう。そうすると、地域も社会も変わってきます。
 最初は大変だと思いますが、子ども達も彼らなりにいろいろと考えていますから、防災訓練を企画される際には、ぜひ地域の子ども達を加えてみることを考えてみてください。

地域の情報を共有しておこう

 ハザードマップを使った勉強会や、避難所運営ゲーム(HUG)など、最近は自治会が主体的に災害対策に取り組むことが増えてきました。
 そこでぜひやっていただきたいのが、地域の情報の可視化です。例えば、どこに誰が住んでいてどのような生活をしているのかということをできる範囲でいいので共有化しておけば、いざというときにその人が在宅しているかどうかはわかります。
 阪神淡路大震災で被災した淡路島では、倒壊家屋の下敷きになった人の救出は非常に早く行われたのですが、普段から誰がどこにいてどこで寝てるということまで地域住民の間で共有化されていたそうです。その結果、倒壊した家屋のどのあたりに人がいそうだということが分かって早い救出につながったと言うことです。現在ではそこまでの個人情報を出すのはいやな方がほとんどではないかと思いますが、濃厚で面倒くさいと言われる近所づきあいにも、そのような利点があるということは知っておいてください。
 また、どこにどのような設備があるのかを共有しておくと、心肺蘇生で必要となるAEDの場所や担架、救急資材、消火器といったものが必要なときにすぐ取りに行くことができ、救命につながります。
 例えば、地域の防災マップを作る中で、危険な場所だけでなく安全な場所やいざというときに使える資機材のありかを確認しておくと、本当に災害が起きたときに非常に役に立ちます。
 せっかくその地域に住んでいるのですから、いいところも悪いところもお互いに認識し合って、いざというときに備えておきたいものですね。

出す方の準備もしておこう

携帯トイレ各種

 非常用持ち出し袋や備蓄品の準備のときに、食事や寝具などは思いつくと思うのですが、トイレの準備は大丈夫ですか。
 災害時にはトイレが使えなくなることが多いです。特に下水管による集中管理のところやアパート、マンションと言った集合住宅などは災害後に点検が終わるまでは絶対に使ってはいけません。浄化槽タイプのところも、もし停電している状態であれば使わない方が無難です。くみ取り式のものは問題なく使えますが、最近はあまり見なくなりました。
 災害発生後には多くのおうちが被害を受けますので、点検には時間がかかると思った方がいいです。もし点検せずに使った場合、逆流したり階下や床にあふれ出したりと汚物による汚染が広まることを覚悟してください。
 そういう事態に備えて、非常用トイレの用意をしておいてください。非常用トイレにはいろいろなものがあり、便器がセットになっているものからご家庭の洋式便器を利用して使うものなどさまざまありますので、自分に合った準備をすることが大切です。

強力な脱臭効果のある猫のトイレ砂を使っても簡易トイレを作ることが可能。
写真はバケツにセットしたもの。
洋式便座の中にビニール袋をセットし、刻んだ新聞紙を入れても簡易トイレができる。
使うビニール袋は不透明なものがいい。

 また、準備しただけでは駄目で、一度使ってみてください。一度使ってみると、想像と使い勝手が違っていることが多々あることに気づくと思います。例えばよく百円均一などで売られている携帯トイレは、結構使うのが難しかったりします。男女兼用と謳っていても、中には女性が使うのは無理じゃないかというようなものも存在します。さらには、トイレとして使うには目隠しが必要だったとか、排泄口に上手に当てられずうまく使えなかったなど、やってみないとわからないことがたくさんあります。
 非常用トイレにはびっくりするくらいたくさんの種類がありますので、いろいろと試してみて自分が使いやすいものを選ぶようにしてください。
 最後に、排泄後には袋に入れて捨てるなどの処理が必要になります。こちらも付属している袋だとにおいが漏れたりすることがありますので、介護用に使われる防臭袋やおむつを捨てるときに使える圧着式ゴミ袋など、衛生環境が守れるような準備をしておくといいでしょう。
 大規模災害で避難所で最初に発生する問題の一つがこのトイレ問題です。特に地震ではまず下水管は損傷すると思って間違いないので、発災後、施設管理者はすぐにトイレを閉鎖し、避難者は自分の持ち込んだ非常用トイレを使うようにしたいものですね。

支援物資で送られてきて困るもの

 ある程度以上の大規模災害になると、全国各地からさまざまなものが支援物資として送られています。お互い様の精神で、それは非常に素敵なことだと思うのですが、送られたものが現地に迷惑をかけているという現状があることをご存じですか。
 一番困るのが「私はもう使わないけど、まだ使える」といった感覚で送られてくる中古の服や靴、使い古した靴下や下着など。衣類の中古はまず引き取り手がありませんので、最終的にごみとして処分することになります。
 支援物資はごみの送り先ではありません。あなたが使わないものは他の人も使いませんので、あなたが使うだろうなというものを送るようにしてください。
 次に多いのがどなたか一人に届くようにとセットされたもの。中にお手紙が入っていたりして非常に素敵なのですが、そういったものが支援物資の集積場にくると、中に何が入っていて誰がつかうことを想定しているかがわからず、場所を取るだけの死蔵品となります。中身を確認して仕分けろといわれるかもしれませんが、毎日大量の物資をたくさんの避難所、避難者に届けなければならないこの仕分け業務は、行政職員や配送を請け負った業者の方が休む暇無く行っているものです。
一つ一つ中をていねいに確認して送り先を決めている余裕は現場にはありません。どうしても個別にセットした支援物資を送りたいのであれば、外箱に中にどんなものが入っているかのリストをつけてください。それもできれば細かく記載して欲しいと思います。そうすれば、場合によってはその中身に適合した方のいる避難所に送られる可能性があります。
 それから、テレビなどで「○○が不足しています」という情報が流れた後に届く大量の「○○」。現地で不足するものは刻一刻と変わっていきます。テレビで不足していることを放映していたからと言ってその物資を大量に送りつけても、寸断された流通網では届いた頃には必要がなくなっていることも多々あります。被災地の流通網は殆ど機能していないと考えていただき、もしも不足している物資を送るのであれば、自身で直接該当する場所へ送り届けるようにしてください。
 また、生鮮食料品は絶対にやめてください。避難所で生鮮食料品が不足しているからといって宅配便で発送しても、被災地には普通にとどくことはありません。1週間から2週間、場合によっては一月以上かかることもあります。生鮮食料品は確実に腐ってしまいますので、送るのは絶対に止めてください。

 ところで、支援物資で助かるのは箱詰めされている同一品目の新品です。輸送も楽ですし、送り先も考えなくていい状態のものなので仕分けが非常に楽です。
 また、Amazonなどで商品を購入し、その商品を被災地へ送るようなシステムが作られていますので、そういったもので送っていただければ非常に助かります。
 繰り返しますが、災害後の支援物資を仕分けする集積所の機能はさほど高くありません。避難所等から送られてくる必要とされる物資を集めて送り出すだけで精一杯なので、なるべく仕分けのしやすい形にして送るようにしましょう。
 あと、寄付金なら無駄になることがありませんので、ものではなくお金を寄付するのもいいと思います。被災地で機能を回復するためにはさまざまなものにお金がかかりますが、そのお金がなかなか手配できずに困っている自治体や団体は非常に多いですから現金による寄付は非常に喜ばれます。
 災害が起きるとさまざまなものが送られてきて物資集積所は大混乱を起こします。流通経路や集積所の仕分けに負担をかけないためにも、支援物資の送り方を考えていただければと思います。

災害対策について考える

 大雨や洪水、台風といった災害では「タイムラインを作れ」ということがよく言われるようになってきました。
 地震以外の災害は必ず何らかの予兆があるので、それを見逃さずに災害が発生する前から対処を開始して手遅れになることがないようにしようということなのですが、どんな情報があってどういう風に活かしたらいいのかがなかなか理解されないという現状があります。
 ただ、各市町村が発表するさまざまな避難関係の情報は、被害が大きくなってくると間に合わなくなってきます。これは災害が発生し始めると加速度的にしなくてはいけないことが増えるためで、専任の職員がいても華麗に裁くのはかなり困難な仕事です。そのため、市町村が判断するための根拠となる情報を確認して避難関係の情報が出るかもしれないという予測を立て、行動に移す。そのための時間軸がタイムラインということです。
 これはお住まいの地域や家族構成によって必要となる行動や判断基準が変わります。例えば、避難勧告が出ていても避難しない方が安全なところもあれば、避難準備の段階ですでに危険な場所もあるからです。自分のいる地域の強み弱みを知った上で先手を打って行動することで、助かる確率を上げていくための手段だと考えてください。
 ただ、そうそういつも家にばかりいるわけでもありません。出掛けた先で災害が起きそうなときはどうすべきか。これは市町村が出す情報から判断して避難をしていくしかありません。そのため、状況がおかしくなりそうだと気づくことが一番大切なこととなります。周辺状況の変化を意識することが重要になります。
 ところで、地震の場合にはどうなるのでしょうか。地震は、なかなか発生するタイミングを予測することは難しいです。予想もしなかった場所で大きな地震が発生することもよくありますから、地震が起きたときに死なないように対策をしておく必要があります。
 地震で亡くなる人の殆どは、地震そのもので死ぬのではなく揺れによって倒壊した建物や倒れてきた家具などの下敷きになって圧死しています。つまり、耐震補強や転倒防止処置をすることが大切になってくるのです。家だけでなく、自分が出掛ける先がちゃんと地震対策をしているかどうかが、いざというときの生死をわけることになりますから、出掛けた先では意識的にどこなら自分の安全が確保できるかを考えながら行動するようにしてください。最初は面倒くさいかもしれませんが、これも慣れてくると意識していなくてもできるようになります。
 災害対策は自分だけではなく、家族やペット、友人や近所の人といった自分の周りのたくさんの人が誰も死なないようにするために行うものです。自分の対策ができたら、家族同士で内容を擦り合わせ、何かあってもきちんと合流できるようにしておいてください。また、復旧方法や対応策についても、ある程度検討しておいていざというときにすぐ対処ができるようにしておきましょう。

非常用持ち出し袋の中身を考える

 災害に備えて準備しておきましょうと言われるものの一つに「非常用持ち出し袋」があります。
 ただ、この非常用持ち出し袋、政府の推奨する量を全て収めるとかなりの重さになってしまい、高齢者や乳幼児の居る世帯では持って逃げることが困難なのではないだろうかと考えてしまいます。
 試しに、内閣府の防災情報のページにある非常用持ち出し袋の中身の一例を書き出してみましょう。

飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)、貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)、
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
マスク、軍手、缶切、ナイフ、懐中電灯、衣類、下着、毛布、タオル、ライター、携帯ラジオ、予備電池、
使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、洗面用品、ヘルメット、防災ずきん

 これらのものを家族構成に合わせて準備し、玄関近くや寝室、車の中、物置などに置いておくようにしようと書かれています。
 よく3日分~1週間分の準備をしておこうという話もありますが、災害は発生から収束まで長くても2~3日ですから、さほど間違った内容だとも言えません。もっとも、そちらは家にストックしておく備蓄品でも構わない訳なので、自分の体力にあわせた非常用持ち出し袋を作る必要があるでしょう。
 自分が持ち歩く非常用持ち出し袋は、当然自分が持ち歩けなければ意味がありませんから、あなたの体力や状況によっては、必要だとされる全てのものを持って避難することは無理かもしれません。
 では、最悪の場合は何を持って行けばいいでしょうか?

 前提条件は、とにかくあなたが生き残ることができることです。危険な状況で非常用持ち出し袋を持ち出せる余裕が無い状況であれば、身一つで逃げましょう。
 もしも持ち出す余裕があるのであれば、最低限として次のものを準備しておくといいと思います。

 まずは飲料水。ライフラインが絶たれたときに一番困るのは衛生的な水を手に入れることです。一人一日3リットルという話もありますが、300mlだろうが50mlだろうが、無いよりは遙かにましですので、持てるサイズのお水は必ず用意してください。
 常備薬。慢性疾患や気になる病気がある方は必要です。
 新聞紙1日分と買い物用のビニール袋。これを組み合わせることで簡易トイレや敷物、簡易防寒着やたき火の焚き付けなどに使うこともできます。
 お財布や健康保険証といった貴重品は、恐らくある程度まとめて普段から持ち歩いている人も多いと思うので、その袋をそのまま持って行きます。
 携帯電話をお持ちの方は、充電池と充電ケーブルは絶対に必要ですし、できれば充電機能をもった携帯ラジオがあるとよりよいと思います。
 タオルはバスタオルとフェイスタオルを一枚ずつ準備します。女性であれば、普段お使いの生理用品も一回分は在庫があったほうが安心です。
 ウェットティッシュと歯ブラシ、下着、使い捨てカイロはあったほうがいいです。それから、風呂敷と手ぬぐい、帽子。雨合羽。
 最後に余力があれば食料品少々。
 これらのアイテムを、濡れないように密閉できるビニール袋に収めて、背負いやすいリュックサックに入れておきます。

 人の命が危険になる順番としては、①体温低下、②脱水症状 ③飢えになりますので、ここではそれに対応した準備をご紹介しています。食料は、無いとお腹が減ってひもじい思いはしますが、食べ無ければすぐに死ぬという人で無い限り、優先順位はそんなに高くありません。でも、低体温や脱水は生命にかかわってきますので、そちらへの対応を重視していることが読み取れるでしょうか。
 もっとも、これらのものを準備したところで自分が使わなかったり、使い方を知らなければ単なる重しでしかありませんので、使えてかつ必要だと思う物を準備しましょう。また、上記にプラスして、おうち個別の事情で追加しておくべきものもいろいろあると思います。例えば乳児のいるおうちではおむつやミルクが必要になるでしょうし、高齢者の方だと老眼鏡や入れ歯が追加になってくるという風に。
 ただ、個別の事情を考え出すと、あれもこれもということになって、結局いろいろなものを準備しすぎて持って行けなくなるということが非常によくあります。せっかく準備していても、それを持って避難ができなければ何の意味もありません。
 高齢者が多く、自治会管理の避難所があるところでは、身一つでの避難を徹底する代わりに、避難所にコンテナボックスに入れた各個人の非常用備蓄品が備えることで非常用持ち出し袋の代わりができるようになっていたりすることもあります。

 何を重視するのかは人それぞれですし、地域によって備えるべき災害と準備は異なります。あなたや家族、地域の状況を考えた上で、自分が持てる重さの非常用持ち出し袋を準備するようにしてくださいね。

避難所と防疫

 災害時に怖いのは、人がたくさん集まって生活する空間となっている避難所で発生する感染症。インフルエンザやノロウイルスなどは、避難が長期化した避難所では必ずと言っていいくらい発生して蔓延してしまいますが、その対策としては、徹底的な防疫を行うことくらいしかありません。
 今回は、避難所で起こりうるであろう感染症発生時にどのような対策をすればいいのかについて考えてみます。

1.防疫って何だろう?

  国語辞典などを見てみると、防疫とは「伝染病を予防し、またその侵入を防ぐこと」とされています。つまり、防疫という言葉は「予防措置」と「防御措置」の二つの性格をもっていると言うことになります。

2.予防措置

 大規模避難所では、何よりも衛生環境の維持が必要です。感染症を起こさないようにするためには、徹底した手洗いとうがいが推奨されていますが、被災地では必ずしも水が潤沢にあるわけではありません。
 それでも消毒を行ったり、ウエットティッシュなどで拭く、手が洗浄できなければ使い捨て手袋を使うなど、可能な限り衛生管理を行ってください。
 また、生活空間は絶対に土足禁止です。そして、寝る場所は床から少しでも高さのある状態にしてください。この二つを守ることで衛生環境はかなり維持することができます。
 あとは歯磨きなどで歯や口の中の雑菌を繁殖させないようにすること。特に避難所での生活では気力も体力も消耗していきますから、いつも以上に口腔内の衛生には気をつけるようにします。

3.防御措置

 それでも人が多く集まれば何らかの感染症が発生することは避けられません。感染症発生に備えて、患者を隔離できる部屋を一つ準備してあらかじめ空けておく必要があります。
 また、基礎体温のチェックや体調の確認は毎朝毎晩行うようにし、少しでもおかしな兆候があればマスクを着用した上で隔離部屋へ移動してもらって様子を見ます。
 隔離部屋は部屋だけでなく、その周辺を含めて立ち入り制限区域とし、制限すべきエリアは目で見てわかるようにしておきます。また、立ち入り制限区画の出入口には消毒、マスク、手袋などを用意し、できるだけ感染者に直接接触しないようにします。感染者に接触した後は、生活空間に菌を持ち込まないようにマスクや手袋などは制限区域内に処分場所を用意してそこで外すようにします。間違ってもそのまま生活空間に入らないようにしてください。
 隔離部屋については、室内が乾燥しないようにし、感染者が寝るための場所を準備しておきます。これは生活空間と同じように直接床ではなく、少しでも床から高い位置に場所を作るようにします。そして汚物入れや汚染されたものを生活空間に持ち込まないように窓などから外部へ搬出できるルートは作っておいてください。
 また感染者には優先的に食べやすいものや飲料を供給し、病気の回復を支援するようにします。

4.感染症は起きるものと考える

 感染者と一般者が普通に接触していると、感染は一気に拡大します。早めの封じ込めにより感染拡大を防ぐことと、汚染されているかもしれない空間と汚染されていない空間とがはっきりわかるようにしておくことは、感染症対策としては絶対条件となります。そのため、例えば巡回する医師や看護師などの医療関係者も感染者に接触した後は生活空間に入らないようにしてもらいましょう。
 防疫については大げさすぎるくらいでちょうどいいと思います。ここでは病院に搬送できないという想定で隔離部屋を作っていますが、発症したら病院に送り込むくらい極端でも構わないと思います。
 そしてもし避難所内で隔離するのであれば、感染者が体力を維持し、回復できるように飲料食や薬を優先的に回せるように考えておきましょう。
 いずれにしても、ある程度の規模の避難所では、避難が長期化してくると感染症は必ず発生します。発生したとき、いかに素早く対応できるかで被害の状況が変わりますので、感染させないこと、感染を広めないことを念頭において日々の管理を行うようにしましょう。