災害遺構を訪ねて8・大浜の海難者慰霊塔

海難者慰霊塔。手前にはお線香のおける台が用意されている。

 国道9号線を益田市内から浜田方面に進むと、大浜漁港入り口の数百メートル手前に「海難者慰霊塔」があります。この場所は碑を集めているのか、他に交通安全らしきお地蔵様と井戸平左衛門を顕彰する碑が同じ場所に建立されています。

見にくいが井戸正朋君公徳碑と書かれている碑。
奥に見えるのが海難者慰霊塔。

 さて、この手の塔には大抵の場合、その由来や謂われが書かれているものですが、この「海難者慰霊塔」にはそういう記載は一切なしで、これが何のために建立されたのかがわかりません。
地元の市史や町史も調べてみたのですが、やっぱり謂われは不明でした。
一つヒントになるものがあるとすれば、これに刻まれた「島根県知事福邑正樹書」という文字。

陰になっていて読みづらいが、「島根県知事 福村正樹書」と書かれている。

 この福邑正樹知事の在任期間は1932年から1936年なので、その間に何か起きたのかなという推測はできます。
 大浜漁港を真下に望むことと、この海難者慰霊塔の基礎側面には何かを入れられるような箱状の引き手のついた石が収められていたことから、この期間に何か漁船の大規模な事故があったのだろうかと調べてみましたが、この期間にこの付近での大きな事故や事件は特に見当たりませんでした。

見にくいが右下台座部分が引き出せる構造になっている。
海難事故の無縁仏の供養塔だろうか?

 では、全国的にはどうだったのかをwikipediaで見てみると、大規模な海難事故は1935年の船緑丸沈没くらいでした。福邑知事は大分県国東の出身らしいのと、慰霊塔の正面が南西、つまり大分の方を向いているので、これかなという気もするのですが、ここに碑を建てる意味がよくわかりません。
 日本海で起きた事故としては、福邑知事着任の少し前、1927年に美保関事件が起きています。
 島根県美保関沖で演習を行っていた日本海軍の艦艇が衝突して沈没や損傷し、多くの将兵が亡くなったもので、福邑知事の在任期間に起きた大きな事件・事故としてはこの二つが挙げられると思います。
 また、遡れば日露戦争で撃沈されたロシア艦艇の乗組員が漂着した場所でもありますので、それもあるのかもしれません。
 「海難者慰霊塔」が具体的にどの海難事件・事故を差して建立されたのかはわかりませんが、日本海で起きた全ての海難者の慰霊のための塔と考えれば、何の記載もされていなくても不思議ではありませんが、福邑知事とはあまり縁のなさそうなこの大浜の地にこの慰霊塔があるのはなぜなのか、ちょっと気になります。

災害遺構というものとはちょっと異なるかもしれませんが、海難事故も大きくくくれば災害の一つと言うことでご容赦いただければと思います。

防災から見た「衣・食・住」

 衣食住は人の生活の根幹を支えているものだといってもいいと思います。
 一般的には「着る物」「食べるもの」「住む場所」を揃えることが大切とされているようですが、これを防災という視点で見てみたら、思ったよりも面白いなと思えるようになりました。

 まずは「衣」。
 これは文字通り「着る物」のことなのですが、防災の視点で見ると「適切な体温調節」という風に考えることもできます。冬場にTシャツと短パンで屋外へ放り出されたら寒くて仕方ないでしょうし、逆に夏場にコートやセーターしか着替えが無ければこれまたつらいと思います。
 季節に応じて防災セットに備える服も衣替えをしていく必要があるなと考えました。 薄手の長袖シャツやズボンを重ね着すれば季節に関係なく対応ができるかなとも考えたりしましたが、いずれにしても適切な衣類がないと体温調節が難しくなることから、これは大切な視点だと思います。


 次は「食」。
 「食」=「食べ物」と言われるものですが、防災の視点では、これは「食べ物・飲み物・排泄」を含めた一連の流れを考える必要があります。
 「排泄」が追加されているのは、出さなければ食べられなくなるためで、例えばトイレなどがうまく流せずに汚物まみれになった避難所では、不衛生なのと同時に食事や水分摂取を制限することによるさまざまな体調不良が発生していました。
 防災においての食はまず「排泄」を考え、次に「飲み物」、そして「食べ物」をどうするか考えていきます。
 この順番は人が生きるために我慢できなくなる順番に並べたもので、排泄は「出物腫れ物所嫌わず」と言われるくらい我慢できないものですし、水分補給が途絶えると、3日以上の生命維持はかなり困難なものになります。食事は1~2週間は摂らなくても体に蓄えられたものを分解して生命維持を行えるため、この順番で準備しておくのが得策です。
 今までは3日~1週間分を用意しておくような話が出ていましたが、都会地が大規模に被災したときには状況が落ち着くまでに2~3週間はかかりそうだという話も出始めていますので、災害時に自宅避難を行う方は、自宅のトイレの構造を考えた上で、準備しておくようにします。同様に水や食料も再検討しておきましょう。

 最後は「住」。
 これは住むための家をさすのですが、防災的に見ると「安心できる場所」という風に考えられます。
 避難所で生活していても、そこで安心した生活が営めないのであれば、これは住環境が満たされていないと判断できるのではないでしょうか。
 自分や家族が安心できる環境はどのようなものか、それはどのようにしたら確保できるのかについて考えておくことが必要です。
 災害で被災したからといって、指定避難所で生活しないといけないというわけではありませんので、自分や家族が安心できる場所を見つけるようにしましょう。

 防災での「衣食住」は、被災後に落ち着いて生活するための基準と考えてもいいかなと感じます。

 また「衣食足りて礼節を知る」という言葉もあります。これは衣服、食事が満たされて初めて礼儀を知ることができるのだといった意味合いですが、これは避難後にも言えることです。
 衣食住と同じ定義で考えれば、衣類は体温調節がうまくできるものとなりますが、この場合には下着類も含めた適切な着替えと考えます。
 災害により身一つで逃げ出した人は着たきりになりますので、それだけでもげんなりしてきます。着替えが一セットあるだけで、服や下着を洗濯することが出来、さっぱりとした気持ちで前向きになれるのではないかと思います。
 また、この場合の「食」は命を繋ぐだけでなく、生きる気力を生み出すためのものでないといけません。
 具体的には、暖かく、自分が食べ慣れた食事をいかに確保していくのかということを考えていくということです。
 過去の事例でいけば、阪神淡路大震災では、送られてきた支援物資の衣服を取り合ったという話もありましたし、東日本大震災や熊本地震で避難所で配られる弁当は食中毒を配慮して冷たいか、ひどいときには凍っているような、味の濃い、油ものの多い弁当になり、その結果、その弁当が食べられない人が体調を崩してしまうようなことも頻発してした。

 発災後には「生活再建」と言うことが声高に言われますが、まずはそれぞれの体と気持ちを身近なところから通常生活に戻していかないと、生活再建という視点にまでたどり着くことが難しいと思います。

 被災した人が生活を取り戻すためにはどういった道筋をつけていけばいいのか、特に高齢者や日常生活で支援を必要とする人たちがどうやったら前向きになることができるのかを、こういった視点で整理していくことができないのかなと考えます。

非常用持ち出し袋の非常食のお勧め品

 災害に備えて非常用持ち出し袋を用意されている人は結構いらっしゃるのではないかと思います。
 そして、非常用持ち出し袋で一番悩むものは、恐らく非常食をどうするかということではないでしょうか。
 よくあるものとしては、乾パンやクラッカー、ビスケット、あるいはアルファ米や乾燥食品といった保存がきいて軽いもの、あるいは羊羹やチョコレートといった甘みの強いカロリーの高いモノでしょうか。
 これらはそれぞれ非常食にふさわしいものではあるのですが、一つ大きな問題点があります。
 それは食べるのに「水」を必要とするということ。
 不安で口の中が乾燥しているときにこれらのものを食べようとすると、口の中でぱさついてしまうので、どうしても水で飲み込まなければいけないことになりますので、食料としての水ががそれなりに必要となってきます。
 一日3リットルの水を用意しろと言われてはいますが、実際のところ、それだけの水を持って歩くのはちょっと難しい気がします。

 そこでお勧めしたいのは「おかゆ」。缶詰やレトルトパックのものがありますが、おかゆの利点はしっか りと水分が含まれていて食べやすいこと。缶詰もレトルトパックも、封を切ればそのまま食べることができ、食料と水分を同時に摂ることができます。また、夏場の避難ではこれらに含まれた塩分や水分で熱中症を防ぐことも可能です。

 最近防災関係で人気らしいJA北大阪が販売している「飲めるご飯」。避難所での運用を考慮して、特定アレルゲンは使っていないことを明記している。海外向けにココア風味やシナモン風味も用意されている。

 缶詰だと3年~5年程度、レトルトパックだと半年~1年程度の保存期間で、保存期間は缶詰の方が長いのですが、お値段は圧倒的にレトルトパックに分があります。感覚としてですが、缶詰は行政などの住民支援用と考えた方がいいと思います。

レトルトパックのおかゆ。このまま封を切ればパックがそのまま容器になるのが利点。また、このままヒートパックで温めることができるのも強み。

 レトルトパックなら食欲の落ちたときの普段使いや防災週間などで気軽に試せることから賞味期限までに更新し続けることが可能だと思います。
 また、最近は白かゆだけでなく、梅干しかゆや雑炊など、さまざまな種類が発売されていますので、いろいろと試して、自分の好みを見つけておくとよいと思います。
 非常用持ち出し袋の非常食が全部「おかゆ」だとエネルギー量が足りない感じもしますが、水と食料を同時に補給できる食糧として、非常用持ち出し袋の中に加えてみるのもいいと思うのですが、あなたならどう考えますか?

イベント開催の判断を考える

 秋、いろいろなイベントが目白押しの季節となりました。
 同時に、台風や秋雨前線による大雨の季節でもあります。
 気象によるイベントの開催・中止判断は参加者の安全にも関わってくる大切なものですが、具体的に何をどのように見て判断すればいいのでしょうか?
 今回はイベント開催の可否について参考にすべき情報や判断基準を考えてみたいと思います。

1.イベントの性格を考えてデッドラインを決める

 まず、開催の可否を判断するイベントの性格を考えてみます。
 全国から大勢の人が集中するようなイベントの場合には、開催判断は早めに行う必要がありますし、地域の運動会のようなものであれば、当日の朝の判断でも大丈夫かもしれません。
 判断が速いに越したことはありませんが、予測は外れることもありますから、イベント中止による損害と、イベントを開催することにより発生が予測される損害を天秤にかけて判断の行うことになると思います
 他にも昼間やるのか、夜やるのか、宿泊なのか、参加する人はどのような交通手段で来るのか、どのような人が対象なのかなど、開催するイベントの性格によって最終判断をするデッドラインは異なりますので、まずはイベントの性格とここで最後の判断を誰がするというデッドラインを決定しておきます。

2.開催ができなくなる条件を考えてみます

 そのイベントの性格が見えてくると同時に開催できなくなる条件というのも見えてくると思います。
 例えば、川遊びのイベントだと当日の雨はもとより上流で雨が降っている場合や水量が多い場合にはできなくなるでしょうし、屋外の運動会なら雨が降ったらできませんし、地面が水浸しだと開催は難しいでしょう。ホールのコンサートでは、感染症が流行っているときには開催は難しいでしょうし、大風や大雨などによる施設への閉じ込めが起きる可能性もあるでしょう。
 「開催できなくなる条件=開催した場合のリスク要因」と考えて、条件を洗い出してみましょう。

3.開催できなかった場合の代替案を考えてみます

 万が一そのイベントが開催中止になった場合、その後どのようにするのかを決めておきます。
 別な日に改めて開催するのか、それとも完全に中止するのか、それだけでも決まっていると、中止の際にアナウンスがしやすくなります。チケット販売されているものや塾などの習い事の場合には、返金をするのか、別な日に改めて枠を作るのか、あるいはそのままになるのか、この情報を出しておくことで、中止時の問い合わせや苦情をある程度まで減らすことができます。

4.開催できなくなる条件を満たすための情報を決めます

 開催できなくなる条件の洗い出しが終わったら、次にどの情報により開催をしないことを判断するのかを決めます。台風などの予測可能な自然災害の場合、気象庁が5日前に「早期注意情報(警報級の可能性)」を参考情報として発表します。これにより、いつ頃どのようなことが起こりうる可能性があるのかがある程度わかりますし、民間の気象情報会社でも、同じように予測をしていますので、お好みの情報を見つけておくといいと思います。

5.状況を確認していきます

 事前に決めたデッドラインまでに開催ができなくなる条件が満たされそうな場合には、最終判断を行う人の決定で、デッドラインまで待たずに中止を決定してもいいでしょう。
 天気図やアメダス、雨雲レーダーなどの情報や気象予報図、台風などであれば進路予想図などを確認して、いつ頃どのような影響が出るのかを見ていきます。
台風で進路予測に入っている場合、上陸地点の状況を見ることで、イベント会場での感じもそれなりに予測することもできます。
 最近では河川や道路などに自治体が敷設したカメラを見ることができるようになっているところもありますので、それらを見て監視するのもよいでしょう。
 いずれにしても、デッドラインを超えるまでに可否を決定しないといけないということは徹底しておきましょう。迷うようなら中止してしまうのも手です。より安全な方を選択する方が無難だと思います。

 開催するイベント内容によって、開催の最終判断をする情報や決定時期は変わります。
 ですが、「「いつ」「だれが」「どこがどうなったら」中止する決定をする」ということを決めておくだけでも、混乱を防ぐことができます。
 普段とは違うことを行う場合、混乱はどうしても発生します。ただ、判断基準を明確にしたり、どの情報を参考にするのかを決めておくと、混乱の規模を小さくすることは可能です。
 せっかく開催したイベントが災害に巻き込まれるようなことがないように、早めに確実に判断できるように基準を準備しておきたいものですね。

日焼けについて考える

日焼けで真っ赤になった所長の腕。割と繊細らしい。

 今年も暑かったですね。まだ暑さが続くかもしれませんが、もう9月半ばなのでとりあえず過去形を使ってみます。
 気温もそうですが、日差しの強さ。ひなたに出るとあっという間に干からびそうなくらい強烈な日差しでした。
 で、熱中症対策は言われ続けていたわけですが、日差し対策についても意識しておかないといけません。
 美容としてもそうかもしれませんが、夏場の災害での日焼け対策は非常に重要です。
 強烈な日差しのもとで復旧作業などを行っていると、あっという間に日焼けします。
 日焼けは、要するに肌がやけどしている状態なので、状況がひどくなると火ぶくれを起こしたりして病院での処置が必要になる場合がありますが、被災地域内の病院では満足なケアができない可能性があります。
 日焼けは事前に対策が可能な外傷ですから、事前にしっかりと対策をして災害復旧に当たりたいものです。

【本日のお品書き】
1.なぜ日焼けは起きるのか
2.日焼け対策の方法~事前準備~
3.日焼け対策の方法~事後対策~

1.なぜ日焼けは起きるのか

 日焼けが起きるのは、太陽光に人体に有害な紫外線が含まれるためです。
 紫外線が肌に当たると、体の防御システムとして皮膚の表面にメラニンが沈着して肌の色が濃くなり、これを防ぐ効果があります。
 ただ、普段日に当たらない人や肌の弱い人などは、メラニンの沈着が間に合わず、皮膚の内部が紫外線によって焼かれた状態になり、日焼けで起きる「火傷」という状態になります。

2.日焼け対策の方法~事前準備~

 よく言われるのは「日焼け止めを塗る」ですが、日焼け止めは使う人によって体質に合う合わないがありますので、使うのならば事前に目立たない場所に塗る「パッチテスト」を行ってください。
 また、塗り忘れた部分がないように、塗るときにはしっかりと塗っておきます。首の後ろや耳、鼻の頭などは塗るのを忘れやすい上、日焼けするととてもいたい場所でもありますのでご注意ください。
 確実なのは「直射に当たらない」こと。
 長袖、長ズボンはもとより、つばの広い麦わら帽子等を被り、首の後ろはタオルや手ぬぐいなどで直射に当たらないようにします。発汗製素材+冷却素材を使った服であれば、暑いさなかであってもさほど問題なく過ごすことができると思います。
 特に災害復旧をする場合には、日焼けだけで無く怪我の防止のためにも、肌の露出は防ぐ必要がありますので、肌を出さないように意識しておきましょう。

3.日焼け対策の方法~事後対策~

 日焼けしてしまうことはよくあることではありますが、例えば焼けた場所が真っ赤になったりひりひりしたりする場合があると思います。
 これは日差しによる火傷ですので、まずは冷やすことが基本になります。保冷剤や氷などで赤くなったりひりひりしたりしている場所をしっかりと冷やしましょう。
 火照っている程度でも油断は禁物。炎症が起きている状態なので、とにかく冷やすことを心がけてください。よく使われているジェルタイプの冷却剤、たとえば「冷えピタ」などは、人によってはかぶれを起こしたりすることもあるので、こういうときには使わない方が無難です。
 また、水ぶくれになったりすることもありますが、うかつに破ると感染症の心配がありますので、しっかり冷やした後は病院の受診をお勧めします。
 火照りやひりひりがある程度収まったら、保湿効果のある化粧水などをたっぷりと肌にやさしく付けていき、肌荒れしないようにケアしておきます。
私自身は面倒くさがりなので、以前は痛いまま放っていたのですが、肌の状態を見かねた知り合いの薬剤師さんに勧められ、資生堂の「カーマインローション」というのを冷やしておいて、真っ赤になったりひりひりしたり、火照っていたりする場所にしっかりと塗るようにしています。

この「カーマインローション」、炎症を抑える成分も配合されているそうで真っ赤になった部分も割としっかり痛みが取れます。
体質によるものもあるのでしょうが、私の場合にはあっているようで、日焼けしたときにはよくお世話になっています。値段も安くて非常にいい製品だと思うのですが、なぜか周りでは見かけることがないのが残念です。

資生堂 カーマインローション N(260mL)【資生堂】

価格:378円
(2019/9/25 23:37時点)

 繰り返しますが、日焼けは火傷と一緒です。
 日に焼けるのは仕方ありませんが、なるべくひどいことにならないように防護を忘れないことと、日焼けした後のケアをしっかりすることで、日焼けによる体へのダメージを減らすことはできます。
 きちんとしたケアをして、今シーズンの残りと、来シーズン以降の酷暑も乗り切るようにしたいものですね。

避難保険ができるかもしれません

 今日のNHKニュースの中で、災害時に避難するためのタクシーやバスを手配・避難できる保険が作れないかあいおいニッセイ同和損保さんが検討しているというものがありました。
 この保険、とりあえず検討段階だそうですが、同じようなことを考える人がいるものだなとすこしうれしくなったので記事にしておこうと思います。
 当方の記事では、出産時の予約タクシーの考え方を災害時に応用できないかという軽い発想程度のものでしたが、今回のニュースの内容は、災害時の避難に出動したタクシーやバスの運賃を保険で賄うという画期的なもの。
 タクシー会社やバス会社への支払いの金額や頻度にもよりますが、これは商売になるのではないかと思います。
 今回は県立広島大学大学院の江戸教授の提案に保険会社が検討を始めたということのようで、避難するときに運転手が災害に巻き込まれたりしたらどうするかや、避難開始のタイミングや避難先、避難するための車両が確実に確保できるかなど問題も山積のようです。
 ただ、行政が手配するのでは無く、損害保険の一つとして、いざというときに避難するための手段が確保できるということは非常にありがたいと思います。保険は何か起きた後に使うというイメージがありますが、何か起きるのを未然に防ぐというのもこれからの保険に求められる仕事なのかなとも思います。
 西日本豪雨で避難しなかった人の意見の中では、「避難するきっかけがつかめなかった」「避難する手段が確保できなかった」「避難したくてもできなかった」といった意見が、特に高齢者や要支援者の方から出ていたようですが、強制的に迎えに来てくれるのであれば、少なくとも避難するタイミングやきっかけ、避難方法は確保できそうです。
 要支援者の方の場合には介護タクシーや支援サービスの車両でもよいと思いますし、あらかじめ指定しておいた近所の人に対してでもいいと思います。
 なるべく多様な窓口を確保してもらって、多くの人が安全に避難できるようになればいいなと思います。
 もっとも、多くの人が無事に避難所に避難できたら、今度は避難所のさまざまな問題が立ちはだかっているのですが・・。

災害にあったらどうするかの対応をまとめてみた

 災害にあった後何から手を付けたらいいかというのは悩むものです。
 参考になるかどうかはわかりませんが、当研究所で以前に書いた記事をまとめたものを作ってみましたので、気になった記事があればご覧ください。

20181216 災害時の情報の集め方

20181218 被災物件の調査と証明のあれこれ

20190121  り災証明書・被災証明書の使い道

20190122 通電火災を防ごう

20190423  家にある飲料水を探そう

20190602 蚊対策を考える

20190622 懐中電灯を即席ランタンにする方法

20190628 災害後は子どもの過ごせる場所を作っておく

20190707 災害保険の申請は自分で行うこと

20190810 寝床に使える段ボール

20190821 口腔ケアに気をつけよう

20190831 家屋が浸水した後の処理

20190917 生ゴミの臭いを消すあれこれ

その後の防災ポーチ

 以前に防災ポーチ研修を受けたことを書いたことがあります。
 あれから半年。我が研究所の防災ポーチはどうなっているのか、少し気になったので当時同行したS研究員に尋ねてみました。
 彼が取り出したのは、非常用持ち出し袋。防災ポーチはその中に入っていました。
 普段は出かけるときに持ち出すカバンに入れ、帰ってきたら非常用持ち出し袋に戻しているそうです。

最初に作った防災ポーチ。必要最低限のものが組まれている。
S研究員の防災ポーチ。小銭に1円、5円が混じっているのは買い物の時に必要と判断したためとのこと。

 中を拡げてみると、彼なりにカスタム化されたアイテムが追加されています。
 鉛筆と消しゴム、小銭、それにハイドロコロイド素材の絆創膏。あとはガム。
 半年間の運用実績で、自分が必要とするものを組み込んで使いやすくしてきているようです。
 ただ、あめ玉に関しては夏場に溶けてしまうので入れておくのが難しいという話で、代わりにガムを追加しているということでした。
 カロリー0のあめ玉は入れていても溶けないそうですが、目的考えると役に立たないということをぼやいていました。
 ラムネ菓子や他のもので代用することも考えた方がいいかもしれませんが、そこらへんは現在試行錯誤討をしているようです。
 ともあれ、持ってあるか無ければ意味が無い防災ポーチ。
 使っているうちにだんだんと取捨選択が進んでいくようです。
 ちなみに、所長の防災ポーチは殆ど中身が変わっていませんが、消耗品は入れ替わっています。
 普段使いできるものを入れておけば、使用期限をあまり考えること無く使えますから、一度作ってみることをお勧めします。
 中身については、防災ポーチ作り講座の項を参考にしてください。

台風の時の風対策

 台風シーズンです。
 台風の勢力については以前にも触れたことがありますが、今回は風対策に特化して考えてみましょう。
 風対策で最初に出てくるのは、家の周囲のお片付け。
 台風の時には普段とは違う風が勢いよく吹き付けてくるので、家の周囲に置いてある植木鉢やバケツ、物干し竿、段ボール箱といった普段はなんともないようなものが勢いよく飛んでいったりします。
 そのため、屋外に置かれたこれらのものは、屋内に収納するか飛んでも周囲に迷惑をかけないような場所に収納しておく必要があります。
 次に、雨に備えた雨樋の掃除と点検もしておく必要があります。
 雨樋に詰まっているゴミの撤去はもちろんですが、取付を確認し、強風によって外れたり壊れたりしないかを点検しておきましょう。飛びそうだったり壊れそうな感じなら、いっそ撤去して、台風が過ぎてから修繕するのも方法です。
 また、窓ガラスの飛散防止についても必要です。
 合わせガラスや飛散防止フィルムが貼り付けられていればよいのですが、そうで無い場合、布テープを窓ガラスに「米」状に貼り付けて万が一窓ガラスが割れても破片が飛散しないようにしておきます。細かいところは以前触れていますので、そちらをご確認いただければと思いますが、できれば厚手のカーテンやブラインドなどを閉めて、もし破片が飛び散ってもカーテンなどで止められるようにしておきましょう。
 それから、台風シーズンに入る前にはテレビアンテナの点検を忘れずにしてもらっておきましょう。
 台風が来ると、かなりの確率でテレビアンテナが破損することがありますが、これは経年劣化により起きることが多く、定期的な点検と交換で破損を未然に防ぐことが可能です。
 ここまで見ていただけば分かると思いますが、風で被害を出さないためには、とにかくものが飛ばないようにしておくことです。台風の進路はかなり精度が高く予測されていますから、発表される台風情報を元に早めに手を打つようにしましょう。
 最後に、不用意に出歩かないことも大切です。
 風速15m/sを超える風になると、歩いている人でも風に逆らって歩くことが難しくなります。
 気象庁が風速と人や建造物への影響を一覧表にしていますので確認していただきたいのですが、台風などで突風を受けると、風に飛ばされて建物にたたきつけられてしまうことも起こりえます。
 そのため、必要なものがあればあらかじめ準備しておき、台風の勢力圏内にいる間は外出は止めましょう。

ちょっと便利な水電池

 あなたは乾電池についてはどのように備えをされていますか?
 長期保存に対応している乾電池「エボルタ」や充電池である「エネループ」、あるいはローリングストック方式で電池を確保されていると思いますが、今回は水電池をご紹介したいと思います。

20年未満は大丈夫とあるが、製造年月日が書かれていないのでできてどれくらい経過しているのかがこの製品ではわからなかった。新しいものでは改良されていてほしい。

 写真の水電池は、地元のスーパーの店頭にずいぶんと長い間置かれていたもので、ごらんのとおりパッケージはすっかり色あせてしまっています。
 この水電池をこの店で最初に見たのは東日本大震災の後だったと記憶していますので、それが本当なら8年は経過している計算になると思いますが、この電池はそれでも問題なく使うことができるようです。
 「20年未満の長期保存が可能」と大々的に表示されており、これだけ色あせているにもかかわらず定価販売されていました。
 この水電池、使うときには同封のスポイトで何らかの水分を電池に注ぐだけ。それだけで水電池は発電を始め、使うことができるようになります。
 電池が切れても水分を注ぎ直せばまた発電を再開してくれ、少なくとも2~3回は繰り返し使うことが可能だとパッケージには記載されています。
 水分ですので、飲料水で無くても、雨水やどぶ川の水でも大丈夫ですし、水に限定しませんのでお茶やジュース、小水でも発電を行うことが可能なようです。
 難点としては、発電量が小さいこと。懐中電灯で普通の乾電池と比較すると明らかに暗いです。構造上マンガン電池に近いので、アルカリ電池を推奨しているような機材には向かないと思います。
 ただ、保存期間も長く放電現象も液漏れも起きない非常に便利な水電池。値段も手頃ですし、先日の台風15号のような長期間にわたる停電のような状況だと、水分さえあれば使える水電池は非常に助かるのではないかと思います。

災害時用 水を入れるだけで使える電池!NOPOPO 水電池 単3形3本パック NWP-3-D

 もしも見かけることがあったなら、普通の電池に追加してこの水電池も一組準備しておくとよいのかなと思います。そしてその時には「購入年月日」を記載しておくことも忘れないでくださいね。