家が浸水したあとの対応

 佐賀県を中心として、全国あちこちで家屋や倉庫などの浸水被害が出ており、これからどうやってお片付けをするのかについて悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 かくいう私も、地元の島根県益田市で起きた昭和58年に大きな水害に遭い、うちの親が経営していたお店が床上浸水しました。
 今回は、その時やその後水害復旧のボランティアに出かけた先で経験した経験則としての浸水後の対策について書いてみたいと思います。

0.浸水家屋掃除の格好

マスクとゴム手袋は必須だと思ってください。臭いや粉じん対策としてのマスクと、たまっている汚泥には釘や刃物などの危険なものが混じっていないとも限りませんので、厚手のゴム手袋は用意しておきます。
また、万が一汚泥の撤去中に外傷を受けた場合、破傷風などになることがありますのでなるべく肌の露出は避けるようにします。
あとは汗拭きタオルと自分が飲むお水は忘れないように準備しておきましょう。

1,まずはものの撤去

 洪水の水が引いた後は一面が泥、というよりもヘドロの層が堆積しています。
 そのヘドロを一刻も早く屋内から出さないといけませんが、その時に邪魔になるのが洪水に使ってしまった家具や電化製品、畳やふすまといった家の中のいろいろなアイテムです。
 とりあえずはこれらを家の外に追い出します。もし水道の供給が再開されていれば水をかけてついた泥を流し、その後で再利用するかどうかを考えてください。
再利用する場合には、なるべくきれいな場所を見つけてそこで乾かします。乾いた後、最低でも一度は拭き取り掃除をし、その上で消毒を行ってください。
 使えない場合には、行政機関が粗大ゴミの仮置き場を設置しているはずですので、そちらへ持ち込むことになります。
 道路や空き地に置いてしまうと、それが呼び水になってあちこちから粗大ゴミが集まって収拾がつかなくなるので、仮置きするなら家の前など、目につく場所に置き、早めに粗大ゴミの仮置き場に移動させるようにしましょう。
 そして、可能な限り「燃えるゴミ(生ゴミ含む)」「不燃物」「家電製品」「粗大ゴミ」という風に普段の回収と同じように分けておくと後が楽です。

2.屋内の汚泥を排出する

 洪水で貯まった泥はなぜか非常にくさいことが多いです。そのため、開放できる扉や窓は全て開放し、風通しを良くしてから床下の汚泥の撤去から始めます。
 撤去した汚泥は、あれば土嚢袋に詰めて行政の指定した回収場所に持って行きます。指定が無い場合には、なるべく家から離れた場所に仮置きして回収を待つようにします。
 土嚢袋が無い場合には、やはり住家からなるべく離れた場所に運んで仮置きし、回収を待つようにしましょう。
 汚泥を除去した後は、壁や柱などを清掃し、床下と合わせて消毒を行います。その後は風通しを確保し、できれば扇風機なども使って完全に乾くのを待ちます。
 完全に乾いた状態であれば、もし汚泥が残っていても乾いた薄い板状になっている可能性が高いので、そのまま回収して土嚢袋にいれて回収してもらいましょう。
 また、天候や諸条件によって完全に乾ききらない場合もありますので、そんな時には消毒の回数を増やして乾ききらなかった場所からカビなどの汚染が広がらないようにしておきましょう。
 消石灰などは消毒と乾燥を同時にすることができるので、あるのであれば使った方がいいと思います。

3.洗浄と消毒は忘れずに

 幸いにして使える家具や食器類、調理器具などは丁寧に水洗いした後は消毒をしておきます。消毒後はしっかりと乾かして、カビや汚染を防ぐようにしておきましょう。
 消毒液はハイターなどの塩素系がお勧めですが、他の薬品と混ぜると塩素ガスが発生することがありますので「混ぜるな危険!」でお願いします。

4.無理しない

 手早くきれいに片付けられるのが理想ではありますが、現実としてなかなか思うようには片付きません。
 そんなときには焦らずに、自分のペースで無理しないように片付けていきましょう。ちょっとずつでも手を止めなければいつかは終わります。長期戦を覚悟して、マイペースで片付けをするようにしましょう。

5.もしボランティアが来てくれたら

 自宅や倉庫の掃除や片付けに災害ボランティアが来てくれたなら、おうちの人はなるべくボランティアにわかるような場所にいてください。
 屋内から持ち出したものの掃除や必要性の有無、掃除すべき場所やゴミ捨て場など、おうちの方に聞かないとボランティアでは判断のつかないことがたくさん起きてきます。
 その時に誰に聞いたらいいのかを、最初の顔合わせの時にボランティアに伝え、ボランティアの見える場所にいてもらうようにお願いします。
 人手のいる部分や誰に任せても大丈夫な部分は積極的にボランティアにお願いし、自分たちは自分たちでないとできない場所に集中して作業を行うようにすると効率がいいです。
 また、ボランティアは基本的に自己完結した装備を持ってきていますので、接待は不要です。
 ボランティアは支援した人の喜ぶ顔が一番の接待だと思っていますので、終わったときにいい笑顔を見せてあげてください。

 床下浸水、床上浸水を問わず、片付けの流れとしてはこんな感じになります。
 もし床下浸水であっても、安心せずに床下を開けて中を確認してください。
 何も問題なければそれでいいですし、もし汚泥がたまっていたなら、清掃しておきましょう。
 ところで、洪水による災害は環境が汚染され食中毒や赤痢などに感染しやすくなっています。もしも何か体調不良を感じたら、作業を中止して早めに病院を受診してください。
 また、食事の前やトイレの後は、しっかりときれいな水で手を洗うようにしましょう。