非常用持ち出し袋のかたち

 「非常用持ち出し袋はリュックサック」だと言われていますが、なぜリュックサックでないといけないのかを考えたことがありますか。
 リュックサックは背中に背負った形で固定ができるため、両手が自由になることと重心が背中にあるため、移動するときに変な方向に引っ張られたり、ひっかかったりしなくても済むという利点があります。
 ただ、これは災害発生後に避難する場合に有利と言うことであり、災害が予測されるときにする予防避難の場合には無理にリュックサックにする必要はありません。
 普段お使いの肩掛けカバンや手押し車、旅行用のキャスター付きのカバンでも問題はないわけです。
 早めの避難を心がけるのであれば、袋の形はさほど意識しなくても構いません。
 どちらかというと、カバンの形状よりもカバンをどこへ置くかの方が大切です。玄関や裏口、倉庫など不意にやってくる地震のときに持ち出すことができる場所に分散して置いておくのがコツです。
 もう一つ付け加えるなら、最優先で守るべきは自分の命です。もし非常用持ち出し袋が見つからないようであれば、探すのに固執せず、逃げ出すことを優先してください。
 ちなみに、リュックサックでもその形状によっては非常に背負いにくい、あるいはものが入れにくいものがありますので、改めてリュックサックを準備する場合には、口の広くて大きいものを選んだ方が使いやすいです。
 登山用のリュックサックなら、口が広く、重量物にも耐えられる設計になっているのでお勧めですよ。

防水リュックと給水袋

給水袋がないときは、普通の買い物袋にビニール袋を入れて給水袋にすると持ちやすい。

 災害時には、非常用持ち出し袋の中身を濡らさないため、防水リュックを非常用持ち出し袋にしている方もいると思います。
 そんな方は、災害後の断水で水を給水してもらうのに、その防水リュックをそのまま使うといいと思います。
 完全防水のリュックは、中のものが水に濡れないように縫い目などがないように作られています。逆に考えれば、中の水も漏れないということですから、重たい水を運ぶのにも適していることになるのではないでしょうか。
 重量物を支えられる持ち手があることが前提になりますが、そのまま背負えるので楽ですし、水が零れる心配もありません。
 普通のリュックの中にビニール袋を入れて作る給水袋もありますが、そちらよりもより安定性がある防水リュックの給水袋。
 これから装備を準備する方は、検討してみてもいいと思います。

ペットの避難の大前提

キャリーケースに入ったうちの猫。

 飼っているペットを連れた同行避難をするとき、小型犬や猫はケージやキャリーケースに入っていい子にしてくれているかどうかはとても大切なことです。
 普段から入り慣れているペットであれば問題ないのですが、そうでないペットはいざというときに大抵抗される可能性があります。
 また、入った後も鳴いたり暴れたりしてじっとしていないことも考えられ、そうなると避難所から追い出されてしまう可能性も出てきます。
 仮にペット同伴の避難所であっても、大騒ぎするペットが一匹いると全体が荒れてしまいますので歓迎はされません。
 そうならないためにも、ペットがケージやキャリーケースにおとなしく入ってくれるように普段から馴らしておく必要があります。
 避難所では、状況によっては数日から数週間、そのケージやキャリーケースがペットの家になることもありますので、きちんと入ってくれるように、また暴れないように普段からしつけておきましょう。
 また、それが苦手なペットもいると思いますので、そういったペットの場合には、避難所以外に避難できるような状況を作っておく必要があります。
 同行避難や同伴避難が認められていても、傍若無人にしてよいというわけではありませんから、他の避難者が困らないためにもしっかりとしたしつけをしておきたいですね。

暖める場所冷やす場所

人間の体温は一定の温度に保つための恒温性が働いています。
ただ、周辺環境が悪くなったりすると、寒いときには低体温症、暑いときには熱中症になって体温の調整がきかない場合も出てきます。
寒いときには暖かいところへ、暑いときには涼しいところへ移動することは大切なことですし、寒ければ服の中に空気を閉じ込める、暑い場合には風をあてることで寒暖の調整をすることもできます。
ただ、それでも寒かったり暑かったりすることがあると思いますが、そんなときには体の中の大きな血管の熱を調整することで体温を調整してみてください。
大きな血管が比較的肌に近い場所にあるところは、のどの両側、肩甲骨の間、脇の下、太ももの付け根です。
ここを暖めたり冷やしたりすることで、体温の調整を行うことが可能です。
体を冷やす場合には手のひらを冷やすことも効果的。ただ、手のひらの場合にはあまり冷たいものではうまくいかないので、氷よりは水の方がいいと思います。
体の機能を上手に使って、低体温症や熱中症を予防していきたいですね。

助ける人と助けられる人の違い

 災害が起きると、ほぼ全ての人が何らかの形で動揺すると思います。
 大きな音や悲鳴などが聞こえると、衝撃で動けなくなる人も出てくると思います。
 そんなとき、思ったように動けるようになる魔法の行動があります。
 それは「人に安心させる言葉をかけること」。
 誰もいない場合には自分に対してでも構いません。人に向けて、自分に向けて「大丈夫です」と声に出してみましょう。
 その一言でこころが一気に冷静さを取り戻すことができます。
 人というのは面白いもので、誰も自分のことを気にしていないと思うと自己防衛本能からか、命を守る行動を人よりも優先しようとしてパニックを起こしますが、人から自分の安否について心配されると、すっと落ち着くものです。
 パニックを防ぐためにも、あなたが落ち着くためにも、大きな声で「大丈夫です!」と声を出す。
 その一言で、あなたは助けられる人から助ける人へ変わることができます。

備えるときにまず考えること

防災マップ作りの一コマ

 災害に備えると言っても、何から手をつけたらいいものか考えてしまうことも多いと思いますが、最初にしなければいけないことは「どんな災害に備えておく必要があるのか」を知ることです。
 日本に住む以上、地震からは絶対に逃げられませんが、他の災害についてはお住まいの地域によって備えがかなり異なります。
 例えば、高い山のてっぺんに住んでいる人が津波に遭う可能性はかなり低いと思いますし、周りに山のない地域の人が土砂崩れに備えるのはちょっと気をつけすぎかなと感じます。
 自分のいる地域で、気をつけるべきはどのような災害なのかをきちんと知っておくことが、災害対策の最初の一歩になるのです。
 まず参考にして欲しいのが、自治体が作っているハザードマップです。
 このハザードマップを見ると、特定条件の中で発生した災害でどういった被害の発生が想定されるのがわかります。
 まずはハザードマップを見て、すでに発生が予測されている災害のエリアを確認しておきましょう。
 もしお住まいの場所や普段居る場所が災害発生想定エリアにあるのであれば、他のエリアの人よりも早めの行動が必要だと考えてください。
 次に標高を調べます。もしお住まいの地域が周囲の土地よりも相対的に低い場所なら、ハザードマップで危険な表示が無い場合でも大雨で水没する危険性があることを頭の片隅に置いておいてください。
 周囲との比較がよくわからない場合には、国土地理院のウェブサイトの標高を色分けすることができる機能を使うとよくわかりますのでそこで調べてみてください。
 もしも可能であれば、過去の災害伝承を調べるとよりよく地域の災害を知ることができます。
 それらの情報を集めた上で、初めて自分がどのような災害に備えるべきなのかの準備ができたことになります。
 最初に備えるべきは、自分の居る地域で起こる可能性のある災害を知ること。
 災害対策はここから始まります。

「ありときりぎりす」

 災害が起きて避難をしたとき、備えていた人と備えていなかった人には明確な差が発生します。
 備えていた人は非常用持ち出し袋を持ってきていて、避難所でもある程度は衣食住の保証された生活が送れますが、備えていなかった人は非常時に持ち出せる物もなく、着の身着のままで避難してくることになります。避難所では災害備蓄がされていない場所も多いですから、そういった人達は空腹や寒さ、情報枯渇等、ないないづくしに苦しむことになります。
 まさに自業自得なのですが、そういった人に限ってなぜか自分以外の何かを悪者にして攻撃をよくしています。その相手は行政だったり、避難所運営委員会だったり、自分の家族だったりするのですが、その中で、災害に備えていた人も標的にされるケースがよくあります。
 そういった人は「備えていることが悪」のような言い方をするのですが、自分が備えていなかった間抜けなのだと言うことに気づかない哀れな人ですから、相手にしてはいけません。
 「ありときりぎりす」のお話ではないですが、いざというときに備えていた人をそれまでさんざん馬鹿にして自分が備えなかったのですから、完全な自業自得。身体で備えるという大切さを覚えてもらうと思って下さい。
 ちなみに、行政が備蓄している災害支援物資は、何らかの理由で非常用持ち出し袋が持ち出せない人用に準備されているものです。
 住まいの市町村役場の防災計画には備蓄数量がきちんと明記されていますのでご確認いただきたいのですが、とても避難者全員に行き渡る量はありません。
 このことを理解しておかないと、避難さえすれば衣食住は保証されていると考えてしまうかもしれません。
 空腹と飢え、寒さで震えるきりぎりすにならずにすむように、今からでも遅くはないので非常用持ち出し袋の備えを行ってくださいね。

防災って何だろう?

 災害の定義を確認したところで、「防災ってなんだろう」ということを考えてみたいと思います。
 災害の定義は

「発生した自然事象+人が受けた被害」

でした。
 そうすると、防災は自然現象を起こさない対策と人が被害を受けない対策をすることになります。

1.自然現象を起こさない対策

 最初にお断りしておきますが、自然現象を起こさない対策も人が被害を受けない対策も、どちらも完璧にすることは困難です。
 例えば行政が行うハード面での防災対策は、起きうるであろう一定の条件が定められていて、それを防ぐための対策を行うという方法を取っています。
 具体的に言えば、10年に一度、あるいは30年に一度、50年、100年といった期間の中で過去もっともひどかった例を基本にして設定がされます。
 そのため、昨今のように極所に短時間で集中豪雨が起きたり、超巨大な台風が来たりすると「想定外」という言葉が出てきます。
 つまり想定外、言い換えると想定を超える事象が発生した場合には、想定を超える部分で被害が発生することになるわけです。
 最近は地球温暖化で雨や台風の被害が増加しているという話もありますが、地球温暖化対策を行うことも、この自然現象を起こさない対策に含まれることになります。

2.人が被害を受けない対策

 人が被害を受けない対策は、防災から見る優先順位としては「人の命を守る」ことが最優先で考えられるべき内容です、
 ただ、人の命を守ることが最優先だからといって、人の日々の生活を犠牲にしてまで命を守るという話になってくると、物理的に命は守れても経済的に死んでしまうということにもなりかねません。
 それでは意味がないので、被害を与えそうな自然事象が発生したときに命を守るための方法を準備しておくというのがここの目的になってきます。
 例えば、地震に備える視点で見ると、究極的に考えると日本から脱出して地殻の安定してほぼ地震の起きない北ヨーロッパやユーラシアなどに移住すれば考えなくてよくなりますが、多くの人はそんな選択肢はとれないと思います。
 では、地震が起きたら何が起きて命が危険にさらされるのかを考えてみます。
 地震の場合、地震の揺れで死ぬ人は殆どいないです。地震の結果、壊れた建物や家具などの重量物の下敷きになって圧死するか、または倒壊した建物に何かの火が引火して発生する火災による焼死か、はたまた地震で発生する津波や地滑りに巻き込まれるかといった地震によって引き起こされたものによって死んでしまうわけです。
 そうすると、地震が起きたときにそれらに対抗する方法を考えて準備しておけばいいことになります。
 例えば、建物の耐震化や居住空間の耐震化、感震ブレーカーを始めとする感震装置付きの各種器具を使うこと、津波を凌げる高台や避難ビルへの避難路の確保、地滑り対象地域からの生活空間の移転といった準備を行うことになるでしょう。 

 こうしてみていただくとわかると思いますが、防災には行政等がすべきことと自分でやらないと誰もやってくれないことがあることがわかると思います。
 あなたが被害を受けないようにするためには、あなたが自分のために災害に備える準備をしていく必要がありますが、あなたは何から備えますか。

災害って何だろう?

 あまりに初歩的なことで申し訳ないのですが、一つ質問です。
 あなたにとって、「災害」とはどんなことでしょうか。
 いろいろと思い浮かぶのではないかと思うのですが、恐らく何らかの形で人が被害を受けているイメージになったのではないでしょうか。
 人が立ち入らないような山の中で起きた土砂崩れや、何も無い岩でできた島が津波に飲まれるようなイメージを思い浮かべた人はいないと思います。
 一般的に言われている災害の定義としては、

自然事象で起きる天変地異+人が受ける被害=災害

となると思います。
 例えば、崖崩れで考えてみます。
 同じ崖崩れでも、人の住む地域で道路の寸断や家屋を巻き込むような崖崩れが起きたら大騒ぎになりますが、山の奥深くで発生した崖崩れは、恐らく誰も気づかないのではないでしょうか。
 ちょっと余談になりますが、今世間で大問題になっている新型コロナウイルス感染症も同じことが言えます。コロナウイルスの変異自体は普段から頻繁に起きているものですが、人間に悪影響を与えるものが発生したので現在のような災害になっているわけです。
 こうして考えてみると、自然現象で起きる天変地異は止めようがありませんが、人が受ける被害を減らせば「災害」にはならないと考えられないでしょうか。
 最初の崖崩れでは、それが起きないように防護壁をつくったり、危ない場所への建築制限をかけたりしているわけですし、新型コロナウイルス感染症については、コロナウイルスの撲滅は不可能ですから、ワクチンを射って人に耐性をつけることで被害を防ごうとしているわけです。
 被害が起きる前になるべく被害の発生を押さえるための備えをすることが、一番簡単で確実な災害対策になると思うのですが、あなたの備えは大丈夫ですか。

意識しないと見えていないもの

先般の大雪のときのことです。
当所の理事長が出勤しようとして車に乗り込み、エンジンをかけるとすぐに声をかけてきました。
曰く「見たことのないランプが点灯している。寒すぎるからに違いない」
寒さでつくランプというとあまり印象になかったので、参考までに見せてもらったのですが、ついていたランプは水温計の低温を示す青ランプ。

水温計のない車には装備されている水温チェックの青ランプ。気づかない人は気づかない。

 このランプ、水温表示を表しているもので、エンジンが暖まるまではいつも点灯しているはずなのですが、理事長は初めて見たと言っていました。
 説明したら、「今まで気づかなかったのかな」と首を傾げていましたが、この車に乗り始めてすでに10年近く。気づいていないことに驚いていました。疑っていましたが、筆者が乗るときには必ず点灯するランプなので、普段見ていても、見えていなかったのだろうなという話になりました。
 災害対策も同じことで、危ない場所や危険な物は隠れているわけではなく、常に目で見ています。
 それでも気づかないのは、今回の水温計ランプと一緒で意識が向いていないからなのでしょう。
 災害に対する事前準備は、その気にならないと必要なものが見えてきません。
 もしも、まだあなたが何も備えていないのであれば、もし災害が起きたらと想定して周囲を見てみて下さい。
 たぶん、今までと見える世界が大きく異なってくると思いますよ。