非常食を食べ比べてみる

同じ品名でも、味付けはかなり異なる。好みで選べるのが面白い。

 

 災害時の非常用持ち出し品に入っている非常食。
 アルファ米や缶詰、レトルト食品などさまざまだと思いますが、あなたはそれを実際に食べてみたことがありますか。
 気分の沈んでいるときや不安な時にはちょっとでも元気をつける必要がありますが、その元気のでる代表的なものの一つが食事です。
 普段食べなれているものや、普段あまり食べられない好物などをこういったときに食べると、案外と気力が持つものです。
 でも、口に合わない食事を毎食食べると考えてみたらどうでしょうか。
 恐らく、食事が気分が落ち込んでしまうものの一つになってしまうのではないでしょうか。
 ちょっとした気分の落ち込みかもしれませんが、少なくとも食事は一日何回も食べることになりますから、そのたびにちょっとずつ落ち込んでいくと、ちょっとやそっとでは復活できないくらいになってしまうと思います。
 食べなれたものを食べるのが一番いいのですが、どうせ非常食を準備するのなら、さまざまなメーカーのものを食べ比べてみることをお勧めします。
 缶詰やレトルトパウチ、アルファ米など、非常食を作っているメーカーさんはかなりありますが、各社とも自社が一番おいしいと思う味付けで売り出しています。
 そのため、同じ名前の商品でも味が全く違うことがあるのです。
 つまり、一つ食べておいしくなかったとしても、他の会社なら好みの味があるかもしれないのです。
 もちろん結果的にすべてのメーカーがダメなひともいると思いますが、各社を食べ比べして、自分の好みの味を探すというのも楽しみの一つではないでしょうか。
ちなみに、最近ではアルファ米もさまざまな味が出ていますし、一昔に比べるとかなり味もよくなっています。
 また、売っている場所も増えてきていますから、買い物に出かけた時にでも探してみて、もし見つけたなら、実食してみてはいかがでしょうか。

揺れやすい地形、揺れにくい地形を知る

 地震では震源から同じ距離であっても同じ震度や同じ揺れになるわけではありません。
 揺れを拾いやすい地形だとより揺れますし、逆に揺れにくい地形だとほとんど揺れません。
 揺れを拾いやすい地形は、俗にいう「軟弱地盤」と言われるような場所で、硬い岩盤の上に柔らかな地盤が乗っているため、本来の揺れ以上に揺れてしまいます。
 そのため、震源から離れていても、建物が倒壊したり大きな被害が発生します。
 建物の構造自身がよく問題になりますが、実は建物の構造よりも建物が乗っている地盤の状態のほうが、地震に対して大きな問題となるのです。
 1995年に神戸や淡路島が大きな被害を受けた阪神淡路大震災や2004年に新潟県の中越地方が大きな被害を受けた新潟県中越地震では、この地盤の脆弱性が建物の倒壊を増やしてしまったと言われています。
 では、地盤の柔らかさや固さはどうやって調べればいいのでしょうか。
 実際には専門家に地盤調査をしてもらうのが一番ですが、おおざっぱに見るのであれば、「地震ハザードカルテ」というものがあります。
 これは全国を250mのメッシュで区切って、揺れやすい場所や揺れにくい場所の診断をするもので、大まかな参考になると思います。
 さまざまなところで言われているところですが、地震は起きた時には勝負がついています。
 建物の倒壊や半壊といった被害を防ぐには、こういった地味な調査も重要になってきますので、よかったら参考にしてみてください。

地震ハザードステーション(防災科学技術研究所のウェブサイトへ移動します)

暖房器具と災害への備え

カセットガスを使ったファンヒーター。電源不要で暖かい。カセット1本で1時間~1時間半程度持つ。

 だんだんと冬らしくなってきました。
 気象庁の1か月予報によると、西日本は気温も降水量も平年並みのようですが、暖冬とはいえ、冬への備えはきちんとしておいたほうがよさそうです。
 といっても、大したことではありません。
 暖房器具の熱源に使うエネルギーの多重化、つまり電気だけに頼らず、灯油ストーブやカセットガスストーブなどを準備しておくということです。
 薪や炭は、家の中で使うのにはかなりハードルが高いのでお勧めしませんが、さまざまな事情で発生する停電対策はきちんととっておいたほうがいざというときに安心できると思います。
 電気とそれ以外の熱源の一番の違いは、熱源を調理などにも使えるかどうかということ。電気の場合には暖房にしか使えないものがほとんどですが、他のエネルギーの場合にはほぼ煮炊きが可能です。
 また、そこまで大げさにしなくてもという方は、せめて使い捨てカイロや白金カイロの準備をお勧めします。
 万が一極寒の時に停電してしまうと、室温は一気に下がり、エマージェンシーシートや毛布などを羽織っても、かなり寒いことは間違いありません。
 また、人によっては自分で十分な体温を作れない場合もあると思います。
 そういうとき、自分の体温に頼らずに熱を作ってくれる使い捨てカイロなどのアイテムは非常に貴重です。
 体温の低下は死ぬことに直結しますので、熱源の確保だけは考えておくようにしてください。

あるものでなんとかするには

ゴミ袋と養生テープで防寒着を作る。ここまで本格的である必要はないが、やってみると結構楽しい。

 災害が起きた後は、とりあえずあるものでなんとかするしかありません。
 ですが、あるものでなんとかするには、あるものの活用法を知っておかないとなんとかすることができません。
 一番いいのはあるものでなんとかする羽目にならないような準備がされていることなのですが、なかなかそこまで準備のできている人は少ないような気がしています。
 あるものでなんとかするためには、その場にないが必要になったものの特徴を考えてみる必要があります。
 その特徴を満たすような代替品を探すと、案外となんとかなったりします。
 例えば、座布団で考えてみます。
 座布団の機能は床の固さの緩和、床の冷気の遮断といったところになると思います。
 そうすると、その場にビニール袋と新聞紙があれば新聞紙をくしゃくしゃにしてビニール袋の中に入れれば、とりあえずの代替品になるかもしれません。
 大き目のボールがあれば、その空気を抜くことで代替品ができるかもしれません。
 緩衝材があれば、袋にいれれば手軽に座布団ができるでしょう。
 こんな風に、機能を考えることで代替品を用意できることがあります。
 もちろん代替品の候補がどんな機能を持っているのかを知っていないとそもそもどうにもならないので、いろいろなアイテムの機能や特徴を調べて知っておくといいと思います。
 例えば、極端な例ですが、穴が開いているからと言ってちくわをストローの代わりにすると、ちくわストローを使って飲んだ飲み物はみんな魚の味に染まってしまいます。
 つまり、素材の特徴も知っておかないといけないということです。
 あるものでなんとかすることは、ないに越したことはありません。
 あくまでも代替品を作ることができるという前提で、必要なものの準備を怠らないようにしてください。

地震の起きる確率

 大地震の起きる確率、ということであちこちで数字が出されています。
 南海トラフ地震の場合、今後30年以内に大地震の発生する確率は70~80%だそうで、まず近いうちに起きると考えて間違いなさそうです。
 これは南海・東南海地震がほぼ似たような周期で発生しているために予測がしやすいという前提があります。
では、確率が低ければ安心できるのかというと、実はそうでもありません。
 2016年に熊本地震が発生しましたが、地震が発生するまで発生する確率は0~0.9%というもので、ほとんど起きないのではないかと考えた人も多かったようです。
 結果はというと、2016年4月14日にM6.5、その28時間後にM7.3の地震が発生し、大きな被害を受けました。
 実はこの地震活動の評価というのは、定期的に発生することがわかっている海溝型地震を別にすると、かなり適当だと考えていいと思います。
 南海トラフ地震のように、起きると言われてから10年以上経ちますが、まだ起きていないこともあれば、確率は低くても大地震に見舞われることもあります。
では、この数字をどうみたらいいのか。
 答えは簡単で、0%でない場合には地震は起きると考えておけばいいのです。
 起きる時期がわからないだけで、地震は起きる。そう考えたほうが精神衛生上いいと思います。
 日本に住んでいる場合、ほぼ100%の人が一生の間に一回は大きな地震に出くわすと考えてほぼ間違いないです。
 震源近くにいるのか、それともマスメディアで光景を見ることになるのかはわかりませんが、地震は起きるから備えておく。
 確率が0%以外の場所にお住いのかたは、それくらいの気持ちでいたほうがいいと思います。

長期評価結果一覧(政府 地震調査研究推進本部のウェブサイトへ移動します)

自助と共助と公助の関係性

 最近の災害対策で言われているのが「自助」「共助」「公助」です。
 考え方はいろいろとあるのですが、災害時には「自助」→「共助」→「公助」の順番に自分の身を守る対策が行われることから、一番最初に来るのが自助となります。
 では、普段はどうでしょうか。
 「自助」だから自分で、と言われても、何から手を付けたらいいのか、災害対策に興味のある人でもない限りはわからないとなると、自助は全く進みません。
 そのために「共助」としての自主防災組織づくりが言われているわけですが、これもコロナ過で地域のつながりが薄れてしまったことや高齢化などでうまくいかないという現実があります。
 また、自主防災組織単独で研修や講習をするのは難しいかもしれません。
 そこで「公助」の出番となります。
 さまざまな研修や呼びかけ、訓練開催などを通じて何をしたらいいのか、何から手を付けるべきなのかを明確化し、実行するための後押しをします。
 例えばその相手が自主防災組織だったり、地域だったり、個人だったりするわけですが、誰が何をすべきなのか、どのようにすればいいのかについての交通整理も公助の仕事かもしれません。
 災害対策は、平時には「公助」→「共助」→「自助」という、災害時とは逆の動きをする必要があるのです。
 「公助」を行政単独でするのが難しいなら、消防や社会福祉協議会、当研究所も含む災害対策のNPO等に支援を要請してもいいと思います。
 大切なのは災害対策に対する備えや心構えなどがきちんとすべての人に伝わることです。
 理想論かもしれませんが、最初はできることが小さくても、さまざまな災害対策を見たり訓練したりすることでできることが増え、結果として地域の防災力の向上につながっていくと思います。
 災害対策は発災前と発災後では「自助」「共助」「公助」の矢印が変わると考えると、案外と関係性がわかりやすくなるような気がするのですが、あなたはどう思いますか。

あなたは地図が読めますか

普段住んでいるところでも案外とわからないところがある。写真は防災マップを作る一シーン。

非常用持ち出し袋のアイテム類の一覧を見ると、多くのものに「地図」が入っています。
田舎に住んでいる人にはピンとこないアイテムなのですが、普段公共交通機関で移動している人の場合には、いざ歩いてときに道がわからないという大問題があるため、地図が必要だと考えられているのです。
ただ、この地図にもさまざまなものがあり、それぞれに特徴があります。
どのような地図を準備してもいいのですが、その地図がきちんと読めないと何の役にも立ちませんので、せっかく地図を準備するのであれば、その地図に書かれているものがどのようなものを意味するのかをきちんと理解しておきましょう。
例えば、自分のいる現在位置がわからないとそもそも地図が使えません。
また、場所がわかっていたとしても、自分がどの方向に向けて移動すればいいのかが理解できていなければ、全く違った方向に移動してしまうことになります。
最近都会地では「避難用マップ」というような名称で徒歩避難者向けの地図も販売されているようですが、地図を用意するのであれば、方位磁針もセットで準備したほうがいいと考えます。
例えば、日本で作られて日本で使う地図の場合には、基本的に上側が北になっているはずです。そうでない場合には地図面のどこかに方位が記載されていますので、それを確認してください。
では、方位磁針がない状態で自分がいま見ている方向を当ててみてください。
次に、30分ほどその地図で歩いてみて、今見ている方向が東西南北のどの方向なのか、もう一度当ててみてください。
結構な確率で方向がわからなくなっていると思います。
平時にはさまざまな目標や目印があって移動もわかりやすいですが、災害時にはそれらが燃えたり崩れたりしてわからなくなるかもしれません。
地図を準備するなら、方位磁針も併せて準備し、そのうえでそれを読み取ることが可能な程度には見慣れておく必要があります。
現在はスマホやカーナビが充実しているため、地図を見ることはあまりないと思います。
地図は普段から見慣れていないと内容を読み取ることは難しいですので、特に長距離を公共交通機関で通勤・通学している人は機会を作って地図と方位磁針に慣れるようにしておいてください。

使いやすい髪留め用ゴム

髪ゴム。結び目がなく切れにくいので、ちょっとしたことに重宝する。

 非常用持ち出し品の中に余裕があるのであれば、長い髪を束ねるときに使う髪ゴムを入れておくといろいろと使えて便利です。
 普通の輪ゴムに比べると丈夫で絡みにくく長持ちな上、輪ゴムと同じように使えるため、ものをまとめたり、縛ったり、固定したりと使い勝手がいいアイテムです。
 輪ゴムに比べると値段は高いですが、切れる心配をしなくてもいいというのは、ストレスがかかりやすい災害後の生活においては結構大切なことなのではないかと思います。
 また、普段は気にならない長い髪の毛も、洗髪できない状況が続くとうっとうしくなることが多いようですが、そういったときにも髪の毛をまとめればうっとおしさは軽減されます。
 その特性上、輪ゴムのような滑り止めの効果は期待できませんが、ちょっとしたあれこれに使える髪留め用のゴム、準備しておいて損はないと思います。

防災ポーチと防災ボトル

 手軽に持ち歩ける防災アイテムとして「防災ポーチ」というのがあります。
 マスクやエマージェンシーブランケット、お手拭きや懐中電灯、ホイッスルなどが小さなポーチに入っているのですが、最近は防災ボトルというのが発売されています。
 プラスチックの飲料用ボトルを収納容器につかって、中に防災ポーチと同じようなアイテム類が収められているもので、防災ポーチに比べると場所を取りますが、重要な問題の一つである「水」を確保する容器がついている非常に実用的なアイテムだと思います。
 学校や外回り用のカバンであまり大きな空間が確保できない場合には防災ポーチ、お出かけカバンなどで収納に余裕があるのであれば防災ボトルと、持ち歩くカバンに併せて作ってみるといいと思います。
 どちらもあまりたくさんは入れられませんので、必要と思うアイテムを厳選し、どこにでかけるときでも最低限の防災用品が備わっているようになっているといいですね。

 ちなみに、12月18日に開催する「持ち出し用防災セットを作ろう」では、ポーチかボトルのどちらかを入れ物に選んで作成を行います。イメージがしにくかったら、そういった企画に参加して確認してみるのもいいと思います。

【活動報告】防災講習会で非常用持ち出しについての講師をしました

 去る11月19日、益田市の市民学習センターで開催された南町自治会様・同自主防災組織様の防災講習会の一コマで非常用持ち出しについて講師をしました。
 災害時、自分の避難が完了してから支援物資が届きだすまでは自分の持ち込んだ非常用持ち出し品を使ってしのがなければなりません。
 その際にどのようなものを用意しておくのかやちょっとしたコツなどについてお話をしました。
 皆さん熱心に聞いていただき、こちらの説明がいざというときに備えた非常用持ち出しを上手に作るための参考になるとよいなと思います。
 お声がけくださった南町自治会の皆様にこころからお礼申し上げます。
 なお、当日カメラを忘れて写真がありませんことをご了承ください。