普段と非常時の切り替えスイッチを持とう

 いきなりやってくる地震はともかくとして、多くの災害ではその前兆があります。
 例えば水害であれば河川の増水や水路が溢れたり、大雨が降ってみたりしますし、台風であればその進路からやってくる時期がある程度は予測できます。
 でも、予測できているはずの災害で逃げ遅れたり亡くなってしまう方がいることも事実です。逃げる必要があるのかどうかさえ判断できないままに巻き込まれたとか、逃げる必要があるとは思わなかったといった被災者の意見を聞くと、問題になるのは、いつ「いつもの毎日」から「非常事態」に認識を切り替えるのかということなのではないかと思います。
 大災害が起きるときにも普段と同じ行動をしていては、状況によりますが大けがや死んでしまうことも起こりえますから、どこかの段階で頭の中を非常事態に切り替えないといけません。
 この切り替えスイッチ、実は人によって異なるので気をつけてください。
 例えば、浸水するような場所に住んでいる身体が不自由な人であれば、他の人が避難を始める前に避難を開始しないと、巻き込まれると動きが取れなくなります。
 また、氾濫の影響がない、風害にも土砂災害にも影響のないような場所に住んでいる元気な人であれば、ほとんど普段どおりの生活を送ることができるでしょう。
 住んでいる環境やそのときのあなたの状況により、切り替えスイッチをどこに置くかが変わってくるということなのです。
 普段と非常時の切り替えスイッチは、恐らくほとんどの人に必要なものです。
 このスイッチがきちんと作動できるように、スイッチを切り替えるタイミングと、切り替えたら何を止めて何をするのかを、普段のうちに決めておいてくださいね。

「お・は・し・も」を考える

 避難訓練のときに良く言われているのが「お・は・し・も」というキーワードです。
 「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」の頭文字で、避難のときに気をつけるべき行動を並べているのですが、これは屋内避難の時に気をつけることだということがあまり理解されていないのかなという気がします。
 「押さない」は屋内でも屋外でも押されれば危ないですから危険なことはわかると思います。「戻らない」も、安全確保できたらわざわざ危険な場所に出向くことはないわけで、危険な場所にわざわざ戻る必要はないということはご理解いただけると思います。
 問題になるのは、「走らない」と「しゃべらない」。
 屋内では階段や出入口などで人が滞留しますが、その時に走ってくる人がたくさんいるとぶつかったり押したりすることになって将棋倒しになる危険性があります。
 また、屋内で火事から逃げる場合には、一酸化炭素を始めとする有毒なガスを体内になるべく取り込まないように、呼吸は浅く、行動は急いでとなります。ここで走ると息を大きく吸い込むことになるので危険です。
 次に「しゃべらない」。これも火災や屋内の場合には有毒ガスの吸い込みを防いだり、避難指示をきちんと聞き取るためにもできるだけ静かに移動した方が安全を確保できます。
 ですが、津波からの避難となると、なるべく大声で津波が来ることと避難を呼びかける行動をしたほうが多くの人を助ける行動に繋がります。
 「お・は・し・も」に限りませんが、状況に応じて正解は変わりますし、場合によっては正解がない状況も起こりえますので、言葉にとらわれず、その場その場でできる限り自分の命を守るための行動が取れるような判断力をつけるようにしたいですね。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震のようにいきなり事象が発生するような災害の場合、まずは身を守る行動をとることが最優先になります。
 「身を守る行動」、というのは「怪我をしないための行動」ということで、例えば学校の教室などの場合には机の下に隠れたり、落下物が落ちてこないような場所に退避したりといった行動になります。
 建物が崩れる可能性が高いようであれば、揺れたら建物から脱出するような経路の確保や一部だけでも崩れないように補強するなどの方法を考えておかないといけません。
 とにかく基本は怪我をしないことですが、興奮していると大きな怪我をしていても気がつかないような場合がありますので、本当に怪我していないかどうかを、目と手での接触によって確認しておきましょう。
 地震の避難訓練では、想定した揺れが収まったらすぐに避難開始としているような場合が多いと思いますが、まずは自分の身体の怪我の確認、そして周囲の人の怪我の確認、それから避難という流れにできるといいなと思います。
 もちろん崩れそうな状態や危険な状態の場所では、まずは避難して身体の怪我の確認をするといった風にTPOにあわせた対応が必要になりますが、身の安全の確保としての怪我の確認、できるだけ習慣にするようにしてくださいね。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

包帯を巻くのは結構難しい

 2021年10月27日に益田市立高津小学校のクラブ活動で防災クラブを開催しました。
 今回は「助けよう、助かろう」をテーマに、前日にあった避難訓練で怪我をしないように気をつけていたかという問いかけをし、その後大けがをした場合の病院でのトリアージについて少し触れ、それから圧迫止血法を中心とする応急手当と担架での搬送を体験してもらいました。

うまく巻けたかな?


 毎回時間配分がうまくできなくてドタバタになるのですが、今回はかなり強引に進めて時間内になんとか終了することができました。
 応急処置にしても担架での搬送にしても、実際に体験してみないとわからないことが多いので、今回はさわりだけでも体験してもらえてよかったのではないかと思っています。

有人で担架を担ぐと緊張感がでる。慎重に階段を上がる。


 今の学校は保健室が充実しているので、ちょっとした怪我でも保健室で手当を受けることができます。
 でも、簡単な応急処置が自分でできるようになっていると、いざというときだけでなく、普段の生活の中でも役に立つのではないかなと思います。
 毎回お世話になっている防災クラブ担当の先生と、毎回参加してくれている子ども達に感謝します。

【活動報告】小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました

 去る10月26日に益田市立高津小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました。
 避難訓練の見学自体はこれで3年目となりますが、年を追うごとに動きがよくなってくるなと感心しています。
 今回の想定は地震から津波発生で高台への避難という想定。
 地震の緊急速報を流し、安全点検を行った上で校庭に避難、その後近くの翔陽高校へ避難という流れです。

小学校の周囲には歩道が殆ど無く、あっても幅が狭いため普段から安全確保は大変


 6年生は1年生の手を引いて移動するのですが、歩道のない狭い歩行者ゾーンを並んで小走りな移動はかなり気を遣って大変そうでした。

交差点や横断歩道など、流れがまっすぐでない場所はどうしても人が滞留して危険


また、途中で交通量のそれなりにある道路を横断する必要があるため、本番ではちょっと危険になるかもしれないと感じた場所もありました。
参加していた子ども達は真剣に取り組んでいましたし、先生方もかなり真剣に訓練に参加されていました。

避難訓練の講評を聞く。次回に活かせるような仕掛けが必要


 いくつかの課題や気になった部分、ご質問などがありましたので、それは後日報告書として提出させていただくことになっています。
 避難訓練は誰でもできる簡単な訓練ですが、簡単なだけに馬鹿にしてしまうことも多く、成功することが目的になっている場合も多々あります。
 訓練以上のことは本番では殆どできませんので、引き続きしっかりと訓練していただければ名と思います。
 今回、避難訓練の見学を許可してくださった校長先生始めとする先生方、そして訓練を一生懸命していた子ども達に感謝します。
ありがとうございました。

【活動報告】有害鳥獣対策・その後(~2021.10.23)

 宅地に出没するイノシシ対策として、現在当研究所では2基の檻を有害駆除として管理しています。
 前回捕まえてから、檻に寄ってきてはいるもののなかなか捕まらない日々が続いていましたが、本日施主様から連絡があり、イノシシの子が2頭、罠にかかったという連絡をいただきました。
 監視カメラの画像を確認してみると、早朝に親子で来ていたイノシシの子が2頭のかかったようでした。


 捕まるのは毎回最初から設置している檻なので、何かあるのかもしれませんが、ともあれ置いておくと被害が発生するのは目に見えていますので、処分を行うことにしました。
 実のところ、施主様からの最初のご依頼は「庭にでるイノシシを何とかして欲しい」というものでしたので、ドングリの木の撤去をお願いし撤去されて後はすでに庭にイノシシはでなくなっているのですが、ご近所に被害が出ていることからできるなら捕まえて欲しいとの施主様のご希望で、もうしばらく檻を運用することになりました。
 ただ、イノシシに限らず、檻で有害鳥獣を捕獲しようとすると餌を撒くことになりますから、有害鳥獣はターゲット以外にもたくさん寄ってきます。
 捕まえることで個体数を減らせるのは確かなのですが、他の野生動物の数を増やしても困るので、正直なところ罠の運用は悩むところです。
 ともあれ、周辺で被害が続いているのも確かですので、イノシシに相手にされていない檻は位置を変えながら、もうしばらく様子を見ながらの運用をしていきたいと思っています。

【活動報告】ブルーシート張り研修をしていただきました

 去る10月23日、大田市ボランティアセンター様が開催している住宅の屋根のブルーシート張りについて学習するため所長を含む会員3名でお邪魔して、ブルーシートの張り方について実地で研修させていただきました。
 島根県大田市は2018年4月9日に最大震度5強を記録した島根県西部地震の影響で、今なお屋根の修理ができておらず、ブルーシートを張っている状態の家屋があります。
 今回は過去にブルーシートを張ったお宅で、ブルーシートが破れて壊れた屋根がむき出しになり雨漏りをするということから、改めてブルーシートを敷き直す作業のお手伝い。
 ミーティング、機材準備の後、所長は別件で離脱しましたが、残った会員2名が丁寧に教えていただきながら被災家屋の屋根のブルーシート張りについてしっかりと学習させていただきました。
 使っているブルーシートは#3000なのですが、これ以上重くなると屋根に持って上がることが難しいと言うことで、丈夫さと作業の安全性を考えて選択しているとのこと。同じ#3000でもメーカーによってかなり強度に差があるようで、ものによっては半年持たないというお話を伺うことができました。
 使われているブルーシートは寄贈品も多いそうですが、品質や使用目的が異なるものも送られてきており、そういったものを使う場合には後日張り替えることが前提の作業になってしまうようです。
 屋根に敷くブルーシートについては、寄贈いただくときにメーカーや耐紫外線性能の高いものなど、一度張ると数年は持つような強度のものを指定できれば寄付者も作業者も楽なのにねという話が会員の間では出ていました。
 ほぼ毎週活動をしておられるようなのですが、来られる方が少なく高齢の方が多いことからなかなか作業が進まないようで、今回素人の会員2名が参加したことで非常に作業効率が上がったと喜んでいただいたとのこと。


 少し距離はあるのですが、できる範囲で引き続きお手伝いができるといいなと考えています。
 ブルーシート張り以外にも災害ボランティアは続いているそうですので、関心のある方は、大田市ボランティアセンター様に連絡の上、是非一度ご参加いただければと思います。
 今回、突然のお願いにもかかわらず、快く受け入れてくださった大田市ボランティアセンターのスタッフの皆様に厚くお礼申し上げます。

大田市ボランティアセンター(大田市ボランティアセンターのFacebookへ移動します)

冬の防寒対策を考える

ダウンベストは服の下に着るととても温かい。

 急に寒くなってきましたが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 のんびりと構えていた筆者の家では、慌てて冬物を出して衣替えといった感じですが、防寒対策として一つ知っておくといいことがあります。
 それは『空気は最高の断熱材である』という事実です。
 例えば、毛布や布団では、ぺったんこになっているものよりもふわふわのものの方が温かく感じます。
 手触り肌触りがよいということもありますが、ふわふわの部分にしっかりと空気がため込まれていて、それが体温を逃がさないために温かくなるのです。
 防寒対策では、一枚の厚手の服を着込むことを考えてしまいがちですが、間に空気の層がしっかりとできるのであれば、薄手の服を重ねて着るほうが厚手の服一枚よりも温かくなります。
 登山などで体温調整するときの常識になっていますが、薄手の服の脱ぎ着でもずいぶんと暖かさをコントロールできるのです。
 これから冬に入り、非常用持ち出し袋の中身を入れ替えることがあるかもしれませんが、嵩張る厚手の服をたくさん入れなくても、重ね着できる服ならかなり体温調整が可能です。
 寒さ対策を考えるときには、断熱材である空気をいかに上手に使うかに気をつけて、災害時に限らず、快適にお過ごしくださいね。

【お知らせ】ますだすまいる通信に紹介されました

 先日発行された益田市市民活動支援センター様の情報誌『ますだすまいる通信第98号』に当研究所が9月25日に行いました防災マップづくりの記事を掲載していただきました。
 地域での災害対策をするためには、まず地域の状態を知ることから始めなくてはいけません。
 危険想定がわかるハザードマップと実地で現地を歩く防災マップづくりはその地域を知る上で非常に大切なことだと考えていて、もっともっと普及ができたらいいなと考えております。
 今回のますだすまいる通信には、他にも他団体様の防災関係の記事がいろいろと載っていて、防災特集に近い内容だと思っていますので、興味のある方はぜひご一読いただければと思います。
 災害対策は息の長い活動です。いざというときに自分の命が守れるように、そのための準備を、とりあえずは何か一つで良いので取り組んでみませんか。
 当日取材してくださいました益田市市民活動支援センター様、そして防災マップづくりに参加してくれた子ども達に心から感謝します。

ますだすまいる通信第98号(益田市のウェブサイトへ移動します)

段ボールの保管法

何も考えずに置くとこんな感じに置かれることが多い畳んだ段ボール

 防災でよく出てくるアイテムの一つに段ボールがあります。
 保温性・保湿性が高く安価で加工しやすく、場合によってはこれで家が作れたりもする非常に優れたアイテムなのですが、虫がつきやすいという大きな弱点があります。
 段ボールは湿気やすいので、湿度が高いと湿気た段ボールにカビが生え、そのカビを食べるダニがつきます。また、シロアリやチャタテムシ、ゴキブリなども保温性・保湿性が高いことから居心地が良い場所らしく、段ボールの隙間などに潜んでいることも多いです。
 そのため、段ボールでできている資材を保管する場合には気をつけないと、出したした途端にぜんそくの悪化や虫の拡散といった阿鼻叫喚図が起きてしまいます。
 段ボールは使い終わったら資源として回収してもらってその都度新しいものを準備する方がいいのですが、段ボールベッドなどの特殊なものはある程度事前に保管しておかないとすぐに使えず困ったことになってしまます。
 そこで、保管法について少しだけ考えてみたいと思います。

1.できるだけ屋内には置かない

 人の住んでいる屋内に段ボールを保管すると、人の垢や汗、つばなどが段ボールについてカビが生え、ダニのえさとなります。
 また、ゴキブリなども好んですみかにしますので、できるだけ人の住んでいる屋内には置かないようにします。


2.保管は乾燥している場所で

 湿度が50%以上になると、カビやダニ、シロアリ、チャタテムシやゴキブリのすみかになります。
 段ボールを取り扱っている業者では湿度管理を徹底しているそうですが、カビやダニ、虫の生息しにくい乾燥した環境で保管しておくことをお勧めします。少なくとも、地面に直置きするよりは棚の上や屋根に近い方に置く方が湿気は少なくなりますので、そういう場所を選ぶようにしてください。

3.できるだけ外気に触れないようにする

 密封できるビニール袋や湿度調整できるコンテナなど、そもそも虫がつかないように外気に触れないように保管すると安心です。
 例えば、布団圧縮袋などはこの条件に当てはまっています。ただし、内部を減圧すると段ボールが潰れてしまいますので注意してください。

 いずれにしても、段ボールそのものは長期保存を前提として作られているものではありません。
 もしも段ボールベッドなどを保管するときには、上記のことに気をつけて保管するようにしてくださいね。