防災のラストワンマイル

 災害対策をやっていると、さまざまな情報や物資や支援体制はここ十年くらいで随分と充実してきたなと感じています。
 物資では、国から被災地の要求を待たずに支援物資を届けるプッシュ式が運用されるようになりましたし、情報は気象庁や国土交通省、都道府県、市町村と行政機関から驚くくらい提供されるようになっています。
 支援体制についても、自治体間の相互応援や災害ボランティアセンターの充実、災害NPOの活躍など、量はともかく、必要なものがほぼ提供される環境になってきています。
 ところが、実際には被災した人達の状況というのはさほど変わっていない現状があります。
 これは多岐に渡るさまざまな被災者の要求や要望と、提供する側のマッチングがうまくいっていないことが原因で、私自身は「防災のラストワンマイル」と呼んでいます。
 どのように解決するとよいのか、思案をまとめてみました。

1)物資のラストワンマイルをどうするか?

 災害時の支援物資については、大規模災害のたびに国がやり方の改善をしています。
 大まかな流れを書くと、次のようになります。

備蓄基地→第一次集積所(被災地外かつ近傍地)→第二次集積所(被災地内かつ小規模)→指定避難所(分配拠点)→被災者

 このうち、国が責任をもつことになっている第一次集積所までの物資と流通経路はかなり早く確保することが可能になっており、被災して早ければ翌日、遅くとも数日以内には対応ができるようになっているようです。
 第二次集積所については市町村が責任を持つことになっています。さまざまな問題は残っていますが、流通業者との協定や公共施設の転用によりこちらの設置もさほど時間はかからないと思われます。
 問題となるのは、この第二次集積所から指定避難所、その先にいる被災者にどうやって届けるのかという部分。
 宅配業者に配送をお願いする協定をしている自治体もありますが、全ての自治体が協定しているわけでもないので、この部分を誰が担当するのかということが第一の問題。
 そして、指定避難所に届いた物資をどうやって被災者に配るのかということが第二の問題になります。
 行政が避難所を運営すると「平等・公平」の視点から必要な人に必要なものが必要な数配られないという事が起きますし、自治会が運営をすると、自治会に入っていない、また避難所に避難していない被災者には物資を渡さないという事例が発生しています。
 そのため、どんな人にどのような物資をどれくらい渡すのかということを事前に整理し、情報を共有化しておかないといけないでしょう。
 このあたりは、災害NPO等にやり方を教えてもらうのが手っ取り早いかもしれないと思います。

2)情報のラストワンマイル

 大規模災害が起きるたびに「情報が遅い」「知らなかった」「聞いてない」という被災者の意見が飛び交い、マスメディアがそれを使って「だから行政はダメだ」と叩くのが毎度の光景です。
 去年の西日本豪雨では、気象庁を始め各行政機関がこれでもかというくらいさまざまな災害・避難情報を出しましたが、今度は「情報が多すぎて被災者はわからない」とやっぱり行政を叩いています。
 それを受けてかどうかはわかりませんが、行政が発信する災害・避難情報がレベル表示されるようになるとのことですが、問題になるのは「知る気のない人にどうやって知らせるのか」ということです。
 テレビやラジオ、スマートフォンなどによるエリア配信や防災メール、広域・各個の防災無線と、広域的に出来る手は殆ど出尽くしているのが実際です。
 西日本豪雨では全ての人が助かった自治会は「自治会役員や消防団が一軒一軒訪問して避難させた」ということですが、いつも人海戦術が使えるとは限りません。特に独身者や単身者、高齢者の多い地域では各戸訪問して避難を促しても、文句を言われるか逃げないと言われて押し問答になるかを覚悟しないといけないでしょう。
 「おかしいな」という感覚と「情報はここで確認すること」を住民が意識して常に確認するクセを付けておくこと、何よりも「災害で死なないことは義務であること」を徹底しない限りは、どれだけ手を尽くしても誰かが必ず文句を言うのだろうなと感じます。

3)支援体制のラストワンマイル

 災害が収まって復旧・復興が始めると、被災者にはさまざまな疑問や不安、悩みが発生します。
 それに対するさまざまな対策や対応はだいたい用意されているのですが、被災者がそれを知る術がない。支援が必要な人とその人を支援できるところがうまく繋がっていないのが原因です。
 行政や災害ボランティアセンター、被災地を巡る災害NPO等に来るニーズをどのように対応できるところに繋ぐことができるのか。
 現状は「誰がそれを調整するのか」が決まっていないのですが、本来は行政機関の防災計画にそれを盛り込んでおいたほうがいいのかもしれません。
 熊本地震や九州北部豪雨では市町村や支援団体、災害NPOや地元自治会も加わった協議会が定期的に開催されてそれぞれの得意分野で活動を行うようになってきました。
 発災後だけでなく、普段から交流しておくとお互いのことがよくわかり、被災地の復旧・復興も早く行えるかもしれません。

 最近は「自己責任論」が闊歩していて何でも自分がやらなくてはいけないという風潮があるように見受けられます。
 ただ、実際のところ災害から立ち直るため、自分一人でできることには限度があります。そのため、いかに早く的確に必要とされているものやサービスを必要とする人に届けてその人が立ち直れるのかという仕組みを作っておく必要があるのではないでしょうか。
 自分でできることと助けがいる部分、これをしっかりと見極めて必要な支援を必要なときに受けられるようにしていきたいものです。

レンタルで試してみる

 以前災害対応用品とアウトドア用品は非常に親和性が高いということを書きましたが、災害に備えるための装備を準備をするにあたって、自分にどのようなものがいるのか確認ができていますか?
 いろいろなアイテムが出てきたと思いますが、その中にアウトドア用品が出てきたとしたら、一度借りて試してみてください。

 アウトドア用品というのは、やはりそれなりのお値段がするので買ってはみたが自分には合わなかったというときのダメージは結構大きいものです。
 よく知っている道具ならともかく、初めて使う道具が自分にあっているかどうかを確認するためには、持っている人に借りてみるのが一番です。

 最近のキャンプ場ではレンタル用品が充実しているので、身につけるものを除いたら大概借りることが出来ますから、いろいろと試してみて、その中から自分にあったものを見つけて買いそろえていくというのも楽しいものですよ。
 また、キャンプ場まで行かなくても、家に届けてくれるレンタルもできるようになってきているみたいです。
 特にレインウェアなどは「値段=性能」ですから買える範囲で予算をケチらないことがよいのですがやっぱり相性があります。
 人によっては何万もするレインウェアよりも数千円の雨合羽の方が使い勝手がよいと言う人(私のことです)もいらっしゃいます。
 また、寒さを凌ぐだけならウインドブレーカーを使うという方法もありますよね。とにかく一度試してみて、なるべく自分にあうものを購入するようにしたいものです。
 さまざまなアウトドア用品をレンタルしてくれるお店で郵送対応してくれるお店をご紹介しておきます。
 レインウェアなどもありますので、成長の早い子どもさんやお試しで使ってみるといった使い方が出来そうです。
 ちょっとお値段は張りますが、買って後悔することを考えれば安いもの。
 借りてみて、ぜひ使い勝手を確認してみてくださいね。

キャンプ用品レンタルならそらのした

ハザードマップの功罪

 ハザードマップというのをご存じですか。
 自治体によって表示されているものはいろいろ違いますが、ある想定の中で被害の発生する場所を地図に落とし込んだもので「被害予測地図」とも呼ばれます。
 去年の西日本豪雨では、岡山県真備町での洪水ハザードマップと浸水域がほぼ一致したと言うことで脚光を浴びました。
 あなたが住んでいる地域やお勤め先のハザードマップ、一度は見たことがありますか?
 もしまだなら、良い機会ですので自分が住んでいる場所や勤め先にどのような危険が潜んでいるのか確認してみてくださいね。
 ハザードマップは、殆どの自治体が自分のところのホームページ内で見ることができるようにしています。
 該当部分を印刷して、とりあえず安全かどうかを確認してください。

益田市の洪水土砂災害ハザードマップ

津和野町の洪水土砂災害ハザードマップ

吉賀町の洪水土砂災害ハザードマップ(防災マップの冊子の一部になっています)

島根県砂防危険箇所検索システム(土砂災害の起きそうな指定地域の地図です)

国土交通省浜田河川国道事務所(高津川系河川浸水想定区域情報)

 ところで、東日本大震災のとき、被災地に住む多くの人はこのハザードマップを知っており、ちゃんと読み込んでいました。
 でも、そのハザードマップでは「浸水しない」とされた地域の人に大きな被害が出ることになりました。
 最初に書きましたが、ハザードマップというのは「ある想定の中で被害が発生する場所」を表示したものですので、前提条件が変われば当然浸水域も変わることになります。
 余談ですが、上記で掲載しているURLの中でも、国土交通省が想定している条件と益田市が想定している条件が異なるため、両方のハザードマップを比較すると浸水域にかなりの違いがあるのがわかると思います。
 東日本大震災前に出されたハザードマップの想定は明治・昭和三陸津波で、想定波高は8.8mとなっていました。それ以上の津波が来れば当然ハザードマップ以上の浸水域が発生するわけですが、見た人はハザードマップに表示された「津波で浸かるか浸からないか」だけを見て自分の居場所が安全かどうかを判断していたそうです。
 危険を知らせるためのハザードマップが「ここは安全だと誤解させる安心マップ」になってしまっていたのです。
 ハザードマップというのは、自分がいるところの危険度を目で見ることの出来る便利な地図です。
 ですが、条件が変わればハザードマップに書かれる影響範囲も相当変わるということを頭に置いた上で、内容を確認するようにしたいものです。

「おはしも」と避難先

学校や保育の現場では、数年前から避難訓練時に子ども達と「「お・は・し・も」を守りましょう」という約束をしているようです。
「お」は「押さない」
「は」は「走らない」
「し」は「しゃべらない」
「も」は「もどらない」
避難する際にとても大切なことがわかりやすく端的に書かれています。
人を押せば将棋倒しになってけが人が出るかもしれませんし、走れば転んで怪我するかもしれない。
しゃべっていると逃げる速度が遅くなってしまいますし、せっかく助かったのに「まだ大丈夫」や「もう収まった」と判断して戻り、災害に巻き込まれてしまった人のなんと多いことか。
この標語、子ども達だけでなく地域の大人達にも普及していけばいいなと感じます。
ところで、避難訓練はどこまで逃げる訓練をしているのでしょうか。
学校では校庭まで避難して全員を点呼することになっていることが多いようですが、校庭が全ての災害に対して安全かどうかの検証がされているかどうか、私にはどうにも疑問です。
火事の避難訓練では校庭まで逃げて点呼で終了でも大丈夫かもしれませんが、他の災害に備えるためにはもう一歩先まで訓練しておく必要がありそうです。
具体的には「確実に安全だと判断できる場所まで逃げること」。
洪水や地震、津波、竜巻など、災害によって避難すべき安全な場所は変わります。
それぞれの想定で安全な場所を決め、そこに避難する訓練まではやっておくこと。
そして「なぜその避難行動をするのか」ということを徹底して教えておくこと。
そうでないといざ本番のとき、高手に逃げなければいけない洪水で校庭に逃げ出すという妙なことになってしまいます。
避難する先の判断と悲観開始の決断、それに避難指示はあらかじめ判断基準を決めておき、校庭の次の避難先までとりあえずきちんと避難すること。
仮にそこまでのことが必要なかったとしても、それは結果論で安全を確保することを最優先に行動しないといけません.
せっかく素敵な約束をしているので、安全で的確な避難が出来るような訓練までしておきたいものですね。

避難所の機能あれこれ

 「災害が発生しそうなときは避難所に避難してください」というのはよく聞きます。
 行政や自主防災組織では避難するような事態に備えて避難訓練を行っているわけですが、そもそも「避難所」って何でしょうか?
 前に避難所と避難場所と福祉避難所の違いについて触れたことがありますが、もう一度避難所の定義を確認してみます。
 防災白書では「指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設」となっています。
 これによると、避難所というのは「災害の危険性が無くなるまでの間、または自宅を復旧させるまでの間滞在するところ」という風に読み取れますが、実際のところ、災害が発生した後、指定避難所には3つの機能が備わることになります。

1)生活の拠点
2)物資やサービスの提供を行うところ
3)情報のあつまるところ

今回はこの3つについてちょっとだけ整理してみたいと思います。

1)生活の拠点

 指定避難所本来の目的である「避難が必要な間滞在する場所」としての機能です。
 ただの「場所・空間貸し」というところもあれば寝具や食料品等を備蓄してあり「行けばとりあえずの生活が出来る状態」のところもあり、指定避難所の生活環境というのは基準もなくまちまちなのが現状です。
 一般的にはその地域の住民が主体的に動いているところほど備えが手厚く、行政が主体的に動いているところほどそうでもないというところが多いような印象を受けます。
 口の悪い方は「収容所」という言い方もするようですが、ここにいれば光熱水費がタダでさまざまな物資も集まってくるため、長期化して避難者が減り空間が使えるようになってくるとそのまま避難所に居座ってしまう人もいるようです。
 生活の拠点として使う場合には、どうなったら撤収するのかということをあらかじめ決めておいた方がよさそうです。

2)物資やサービスの提供を行うところ

 物資集積地から被災者には、避難所を経由して物資の受け渡しを行います。また、医療や看護といったさまざまなサービスもここが拠点になることが多いです。
 この場合、物資やサービスはその地域に対して提供されているもので、決してその避難所のために提供されているものでは無いということを認識しておかないといけません。
 大規模災害になると、近傍だけではなく隣県や他の市町村の被災者が「受け取りやすい」ということで小さな指定避難所に物資を受け取りに来るケースがあります。被災者に対する物資ということで配布は問題ないですが、各避難所は必要数を報告して提供を受けているため、あまり域外の人が増えると本来受け取るべき被災者に物資が届かないという状態が起きうるので、そこは検討が必要です。
 また、医療や看護、移動ATMの設置や巡回相談など、個別に巡回できないサービスはこの避難所の一角で実施される場合が多いです。

3)情報の集まるところ

 さまざまな機関が発信する情報や尋ね人など、災害時には避難所がもっとも住民に近い情報の集積地になります。
 指定避難所には出入り口などの目立つところに情報掲示板が設置されますが、提供される情報量があまりに多いため整理して掲示しないと何が起きているのかわからなくなることも多いです。
 避難所によっては、避難者で壁新聞を作って最新の情報を載せておくといったこともされていたようです。
 災害時には、避難所に情報を提供すれば住民に情報は周知されているという認識がされることが多いので、指定避難所に避難していない人は自分でそこまでは情報を見に行くしかありません。
 「知らなかった」という話にはなりませんので、充分に気を付けてください。

 良かれ悪しかれ、指定避難所はさまざまなものが集まる拠点として機能します。
 もし大規模災害が起きて指定避難所が機能を始めたなら、避難所に頼らなくてもいい場合でも定期的に覗いてみることをお勧めします。

チェーン規制導入

 山陰地方を始めとする早朝から始まった大雪は峠を越えたようですが、久しぶりに集中的に山間部を始めとする場所では雪が積もっているようですので、雪道を走行される方はどうぞ気をつけてください。
 ところで、今年の冬から「冬用タイヤ規制」に加えて「チェーン規制」が作られました。
 全国で13区間が指定され、近くの浜田道の「大朝IC~旭IC間」が該当しています。また、県内では島根県と広島県を結ぶ国道54号線の赤名峠も該当しているようです。
 この「チェーン規制区間」では「大雪特別警報や大雪に関する緊急発表が行われるような降雪時」にはスタッドレスタイヤでは駄目でタイヤチェーン装着者のみが通行可能になるとのことで、道路交通情報などでも言い回しを変えるといった話も聞きました。また、高速道ではそこまで厳しくないという話もありますが、念のためにタイヤチェーンは用意しておく方がよさそうです。

チェーン規制区間を示す看板
国土交通省の報道発表資料から抜粋


 ところで、あなたは車のタイヤチェーンをきちんと巻くことができますか?
 過去、チェーンを着用した車が、そのチェーンによって損傷を受けるケースがかなり出ているようです。
 原因は、チェーンの装着方法。
 指定されたとおりの装着ができていなかったため、チェーンがタイヤハウス内で跳ね回ってあちこちダメージを受けてしまうようです。
 事前に一度装着練習をしておけば防げたトラブルですね。
 また、制限速度以上の速度で走ったために切れてしまったというケースもあるようですので、 チェーンをつけたらいつも以上に慎重に運転した方がいいですよね。
 ところで、今回の規制にあわせて私も久しぶりにゴム製のタイヤチェーンを買いました。
 で、練習でつけてみようとしたら車のタイヤよりもタイヤチェーンの方が小さいのですね。どうやらサイズを間違えて買ってしまったらしく、数字が覚えられない自分に思わず苦笑い。
 今回は事前に練習しようとしたからそれがわかりましたが、いざ本番のときにそうなっていたらと思うとぞっとします。
 タイヤチェーンを準備する、そしてシーズン前には一度取付の練習をしてみる。
 たったそれだけでたくさんの事故が防げます。
 シーズン前の習慣にしたいものですね。

暑さ寒さをしのぐ方法

災害は季節を選んでくれません。
春や秋であれば凌ぎやすいかもしれませんが、真冬や真夏でも災害は発生します。
そして避難した先では、暑さ寒さに悩まされることになります。
暑さと寒さを和らげる方法、いくつか提案してみたいと思います。

1.寒さを和らげるには?

 寒さを和らげるには、冷やさないことです。
 つまり、体温をいかに逃がさないかがポイントで、風に当たらないことと身体から熱を逃がさないかを意識するようにします。
 風に当たらないようにするだけで体感温度は随分と変わります。風に当たると熱と水分を持って行かれますのでなるべく風の当たらないところにいるようにします。
 また、温度は空気の層により決まりますので、体温を維持するためには身体の面積の広い部分の保温を行えばよいということになります。
例えば、どんな薄着でも重ね着するとそこに空気の層が出来ます。これを上手に使うと、厚手の服よりもしっかりとした保温ができます。
 また、体の胴体部に新聞紙を重ねて巻くという方法もあります。これは新聞紙の間に空気の層ができて保温効果が期待できるからです。もちろん梱包材に使われているぷちぷちのついたシートなども有効です。
 使い捨てカイロがある場合には、大きな血管が流れているところを温めることで身体全体が暖まります。
 例えば首の根元、みぞおち、背中の肩甲骨の間、太股などです。
 もしも温かいものが飲食できるのであれば、ほうじ茶やお湯など温かいものを少量ずつ飲むようにします。
 発汗作用のあるものは一時的にかなり暖まりますが、そのあと汗をかいて冷えるので避けた方が無難です。
 緑茶やコーヒーなどカフェインを含む飲み物は利尿作用があります。排泄物はかなりの熱を身体から奪うので、できるだけ飲むのは避けるようにします。

2.暑さを乗り切るには?

 直射日光をさけて風の流れるところを探すのが一番です。
 屋外でも、つば広帽子や長袖シャツなど肌を直接日光に当てないような通気性のよい服を着ます。
 水が確保できるなら、手のひらや足の裏を冷やすことで体温を下げることができます。
 もし保冷剤や冷感スカーフなどが使えるなら、首元や脇の下を冷やすことで、身体全体の体温を下げることが可能です。
 また、暑いときには汗をかきますので、水分の補給は必須です。
 スポーツドリンクや経口補水液などが推奨されています。
 私自身は塩分や糖分のことがありますのでスポーツドリンクよりも水+塩飴をお勧めしますが、この辺りは好みになりますので平時に自分に合う水分補給の方法を見つけておきましょう。
 寒さ対策でも触れましたが、緑茶やコーヒーなど、カフェインを含むものは利尿作用があるので摂っても水分補給にはなりません。

 せっかく災害から生き延びても、暑さや寒さで死んでしまってはなんにもなりません。
 風と体温を意識して、可能な限り自分の快適な環境を維持できるように心掛けましょう。

高齢者などの要支援者ほど事前訓練をしっかりしておこう

 最近あちらこちらで自主防災組織の立ち上げが進められています。
 地域のことは地域で行うという前提の自主防災組織が編成されると、まずはその地域の避難についての計画や訓練がされるようになります。
 その避難計画や避難訓練、避難所運営訓練には、いったいどんな人の参加が予定されているでしょうか。
 多くの場合は自治会役員や地域の元気な人達が中心だと思いますが、高齢者や障害者といった支援の必要な方もちゃんと参加していますか?
 自主防災組織が作る避難計画書では、多くの場合「避難準備・高齢者避難開始情報」が発令された段階で、高齢者や障害者と言った要支援者を最初に避難所に移動させることになっているからです。
 つまり、避難所に一番最初に避難してくるのは要支援者の方々であり、恐らく一番長い時間避難所にいることになる方々なわけです。
 この最初に避難してくるはずの人達も訓練にきちんと参加していますか?
 「寝たきりだから」とか「足が悪いから」とか、「人が多いところへいくと何が起きるかわからないから」といって、要支援者が参加を拒んだり、参加を見送ったりしていませんか?
 でも、要支援者が実際に参加しないとどんな支援や準備が必要なのかわかりません。
 やってみたら、設備や資機材の関係でその要支援者がその避難所では受け入れることができないということもあるでしょう。
 それは実際にやってみないとわからないことなのです。
 要支援者によっては「家以外は病院でないと無理」という方がいるかもしれません。 そんな人は、ちゃんと非常時に病院に収容してもらえる手はずを整えているか、受け入れてもらえない場合はどのタイミングでどこへ移動させるのかを決めているか確認しておかないといけません。
 また、避難してくる要支援者の人たちは、ちゃんと持出用防災セットを準備して持ってくることができるでしょうか?
 彼らが身一つで避難してきた場合、食料や寝具といった物資の準備は避難所に備わっていますか?
 準備できていない場合、どこから誰がいつまでに用意するのか、きちんと取り決めてありますか?
 また、避難所内を安全に移動したり、トイレを使ったりすることができますか?
 食事や寝ることが問題なくできますか?
 それらはやっぱり実際にやってみないと分からない部分なのです。
 いざというとき、助かろうと思って避難してきたが、自分が生きるために必要なものが何も無い避難所で死ぬことになってしまったというのでは悲しすぎます。
 立場の弱い要支援者の人たちほど事前訓練が必要だと言うことを、自主防災組織の方は基本的な事項としておいてほしいなと思います。

 余談ではありますが要支援者の方は生活弱者でもあるので、行政の人間が一緒に参加することで地域に隠れている、本来行わないといけないさまざまな支援ニーズを掘り起こすことも可能になります。
 行政、特に福祉関係の方が参加してもらえれば、要支援者が避難所に避難できない場合の受け入れ先の問題も考えてもらえると思いますので、避難計画を作るときや避難訓練をするときには、防災関係だけで無く、福祉関係の部署にも声をかけてみてください。

天井が落ちてくる?!

建物の中の落下物と聞くと、どんなイメージがありますか?
照明器具、高いところに置かれた本や食器、テレビや窓ガラス、いろんなものが浮かぶと思います。
その中に「天井」が落ちてくるという意識があったでしょうか?
一般家屋ではあまり問題にならないのですが、施設では天井そのものが危険ではないかという認識が持たれています。

1.天井が問題になっている理由
天井のうち、「吊り天井」と呼ばれる構造のものが問題になっています。

吊り天井内部
吊り天井内部。石膏ボードをビスやクリップで支えています。

「吊り天井」とは本来の天井から下がったワイヤやシャフトに下げられた鉄骨にビスやクリップで別の天井が作られているもので「安価で音の遮断や断熱、防炎効果」ができ、天井裏の配線などを隠すことができることからあちこちの施設で採用されています。

ここに使われている主な素材は石膏ボードでは7kg/㎡程度、ロックウールでは4.9kg/㎡と重量のあるものです。
地震や経年劣化によりこの天井素材と鉄骨を止めるビスやクリップが外れ、素材が落下することにより事故が発生するもので、東日本大震災では東京の九段会館で2名の方が亡くなっています。

天井用石膏ボード
天井用石膏ボード。持ってみると結構重いです。

建物の耐震基準では、柱や梁は倒れたり落ちたりしないことが絶対的な要件になっていますが、天井は内装物とされ、とくに基準がありませんでした。
平成28年に建築基準法が改正され、初めて吊り天井の強度や構造について決められましたが、それまでに建てられた建物については「増改築時に基準として適用すること」という取り扱いになっています。
2.解決する方法
一番手っ取り早いのは、吊り天井を撤去してしまうことです。構造物が無くなれば問題は解決します。

天井用ワイヤメッシュ
石膏ボード落下対策のワイヤメッシュ

とはいえ、防音防炎断熱をここまで安価にできる代替素材もありませんので、その機能が必要な場合には落下防止対策をする必要があります。
石膏ボードの下にネットやメッシュワイヤーを置くことで、破壊されたときに大きな破片がいきなり落ちることは防げます。
また、軽量化された代替品も出ているようですので、それらに置き換えていくのも一つの方法です。

いずれにしても、施設では天井の落ちる可能性があると言うことを頭の中において行動することが必要なようです。

通電火災を防ごう

地震が起きると、電力会社は被災した一帯の送電を止めます。
発災後、電柱や電気施設の確認をした上で通電を再開するわけですが、この時、地震で壊れた電化製品や断線した電気コードがショートしたり、電気ストーブなどの暖房器具が倒れてきた洗濯物や本など可燃物と接触したりして火災が起きることがあります。
これを通電火災と呼びますが、1995年の阪神淡路大震災で起きた出火はこの通電火災が原因とされているものが数多くあります。
また、東日本大震災でも、発生した火災の6割が通電によるものとされ、中には避難所として使われていた施設も、通電火災により閉鎖になったケースもあります。
電力会社でも対応は進めていて、2016年4月の熊本地震では通電火災は0件となっています。
これは通電前に通電予定箇所を広報して回ったり、倒壊した家屋への引き込み線を撤去することにより達成できたものです。
とはいえ、規模が大きくなったり被災範囲が広範囲になってしまった場合には、全ての場所に電力会社が対応できるとは限りません。
そのため、自衛手段として配電盤を「感震ブレーカー付き」にしておきましょう。
感震ブレーカーと言ってもさまざまな種類があり、配電盤内に感震装置を内蔵しているものや設定した揺れが起きた段階でボールやバネの力によりにブレーカーのスイッチを切るするものなど、いろいろあります。


GV-SB1 リンテック21 感震ブレーカーアダプター【簡易タイプ】 YAMORI(ヤモリ)



簡易型感震ブレーカー「スイッチ断ボール3」 SWB03


感震ブレーカーはその名の通り地震に対して有効な電源切断装置ですが、他の災害では機能しません。
そして、地震以外の災害時でもブレーカーで電気を遮断しなくてはいけないことは変わりません。
ただ、いきなり来る地震ではブレーカーによる電気遮断のことを忘れがち。
そのため、自分の財産を守るためにも、周囲を燃やさないためにも、感震ブレーカーを設置するようにしましょう。
また、当たり前ですが普段から電気ストーブやファンヒーターの周りには可燃物を置かない、使っていない電化製品はプラグを抜いておくといったことも意識しておくようにします。
東京消防庁の調査では、東京消防庁管内で発生したストーブ火災のうち、電気ストーブによるものが実に7割を占めていたそうです。
災害時だけでなく、普段からも火災を出さないように意識したいものですね。