遊びと防災

 防災活動をしていくうえで、結構大変なのが防災に興味を持ってもらうことです。
 そのため、防災活動の普及や推進をしているところはさまざまな仕掛けを作っているわけですが、その中に遊びがあります。
 身体を動かしたり、頭を使ったり、面白がりながら楽しんで体験した結果が、気が付いたら災害時に役に立っているということになるので、有名人の講演会や座学よりも効果的なのではないかと、筆者は思っています。
 先日防災かくれんぼのお手伝いをしましたが、ここでも参加している人たちはとても楽しそうに遊びながら、いざというときの行動についてしっかりと確認していました。
 また、当研究所が子供向けにやっている研修会でも、かなり遊びを取り込んで、できる限り興味を持ってもらえるようなものにしようと試行錯誤しています。
 防災を中心に据えなくても、さまざまなところで体を動かして遊ぶこと、予測をすることというのは非常に大切な体験であり、そういった経験が、いざというときに生き残れるかどうかの差になっていくのではないかと感じています。
 季節もよくなってきました。せっかくなので外におでかけしてしっかりと、身体や頭を使って遊んでみてください。
 子供だけでなく、大人にも大切なことだと思いますよ。

【活動報告】戸田小テラコヤ海風遊舎様のイベントに協力しました

 2023年3月29日に益田市の戸田小学校において、戸田小テラコヤ海風遊舎様のイベント「防災かくれんぼ」が開催され、その中の防災パートの講師をしました。
 防災かくれんぼは日本かくれんぼ協会様が開催される防災とかくれんぼを一緒にしたもので、地震や水害での避難行動をかくれんぼしながら学べるという非常に面白いイベントでした。
 当日は当研究所が戸田小学校のある小野地区全体の被害想定をざっくりと話した後、地震では落下物から頭を守るためにかごや座布団で頭を隠しながらのかくれんぼ、水害では水中の見えない危険なものを探るソナー棒を使い、3人一組をひもで縛ってのかくれんぼを行いました。
 防災学習というとかなり堅苦しいものが多いのですが、今回のイベントのように遊びながら避難行動を身に着けることができれば、いざというときにも思い出して行動してもらえるのかなと思います。
 参加してくれた子からは「かくれんぼで隠れる場所を探すという行動と安全な場所を見つけながら避難する行動が同じだということがわかった」といった感想が出てきて、防災かくれんぼは非常に有効なのではないかと感じました。
 こういった視点で災害対策の行動が学べるというのは面白いなと思いましたので、興味のある方や内容の詳細については日本かくれんぼ協会様にぜひお問い合わせいただければと思います。
 今回お声がけいただきましたことに感謝します。

日本かくれんぼ協会(日本かくれんぼ協会のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました

 2023年3月25日から26日にかけて、益田市の北仙道公民館で「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました。
 当日は15名の子にご参加いただき、段ボールシェルターづくりや心肺蘇生法、ポリ袋炊飯、暗闇体験などを体験してもらいました。

搬送法の一コマ。担架で安全な場所まで搬送する練習をする。

 今後の予定は未定ですが、次回もしやるとしたら、もっと内容を練り込んで、、リピーターも初めての人も楽しみながら防災を学んでもらえるような企画をしていきたいと思っています。
 今回参加してくれた皆様、参加を許可してくださった保護者の方、会場を快くお貸しいただきました北仙道公民館の皆様、そしてさまざまな形でこのイベントを支えてくださった皆様に心から感謝します。
 ありがとうございました。

考え方の違いを理解する

 多くの人が当たり前だと思っていることでも、100%の人がそう思っているとは限りません。
 特に災害後で情報が錯綜しているときには、自分を守るためにどうしても周囲が困ってしまうような行動をとってしまうことがあります。難しく考えなくても、例えばコロナ禍で使い捨てマスクがどういう状況になっていたのかを考えれば理解できるのではないでしょうか。マスクの供給が止まってしまうような報道が出たとたん、店頭でマスクを買い占める人が続出して店では売り切れていた状態。状況がわからずに不安になったので、目につくものをすべて手に入れようとしてしまうことは、迷惑な話ではありますが、感覚としては理解ができませんか。
 さまざまな感覚を持つ人がその所属するコミュニティーに関係なく避難所に避難してくるのが災害です。「そんなことは常識」と考えるのは簡単ですが、思ってもみないところでお互いの悪気のないトラブルが起きるのを回避するためには、ルールをきちんとわかるようにしておくことです。
 全ての手順を誰にでもわかる表示で見えるところに張り出しておくことで、考え方の違う人でもどのような行動をするべきなのかがわかります。
 考え方が異なる人たちが同じ空間で生活するためにはルールを決めることとそのルールをわかるようにしておくこと、なによりも、全ての人がわかる手順を踏んでルールを決めることが大切です。
 緊急時にはそんなことをしている余裕はないと思いますので、できるだけ事前に避難所運営委員会などを設置して、避難所におけるルールを決め、すぐにわかるところに貼りだせるように、場所やポスターなどを準備しておくようにしてください。
 非常時には、ちょっとしたトラブルが大きなトラブルに発展しやすいです。
 できるだけトラブルが起きないような準備をしておきたいですね。

やさしい日本語

 阪神淡路大震災から、大災害が起きるたびに注目されているのが「やさしい日本語」というものです。
 日本にはさまざまな国のさまざまな言語を使う人たちが来ているため、必ずしも英語が通じるというわけではありません。
 地域によっては、同じ国同士の人でさえ言葉が通じないことがあるので、伝える外国語はいくつあっても完ぺきにはならないのです。
 ただ、彼らに共通しているのが、コミュニティーの中には「日本語がなんとか理解できる人がいる」ということです。
 つまり、伝える言語を多国籍化するよりも、わかりやすい日本語を使うことで全ての人に情報を伝えられないかというのが、このやさしい日本語ができた経緯なのです。
 このやさしい日本語、実際に普段使っている日本語をより簡単な日本語に置き換え、状況や内容を理解してもらうことが目的で、やってみるとかなり難しいものです。
 特に災害時や災害後に出される行政からの文章は、より正確性を求められるためにかなり難しい言い回しをしています。
 そこから必要な情報を取り出し、言い換えを行って相手に伝わるようにしなければなりません。
 また、一つの用紙には一つの情報を書くようにした方がわかりやすいのですが、往々にして複数の情報が一文の中に収められたりしているので、これを分ける作業が大変だったりします。
 さらにややこしいことに、それにプラスして日本の習慣も伝えておかないとトラブルのもとになりますから、100%の正確な遅い情報よりも60%の正確性でいいので早く表示できるようにしておかないとまずいことが起こります。
 情報は生き物ですので、可能な限り短時間でタイムラグなく状況を伝えることが重要です。
 できれば情報の発信時にそれが作れることが理想ですが、現時点ではそこまで考えている行政はないと思いますので、なるべく被災者の近くでやさしい日本語に翻訳できるようにできることが求められると思います。そのためには、より多くの人がやさしい日本語に言葉を変えられるように語彙を増やすことと、言い換え言葉を普段から意識することが大切になります。
 また、やさしい日本語は伝えなければならない必要最低限の情報をできるだけシンプルにして作られるため、長文や小さな文字を読むのが難しい高齢者や小さな子供でも内容がわかりやすいというメリットもあります。
 普段から言い換えの訓練をしておくことで、いざというときにすぐ作業ができると思いますので、興味のある方は時間を作って、例えば新聞記事や行政の広報誌などをやさしい日本語に組み替える練習をしてみると面白いと思います。

わかっていることとわかったつもりでいること

 コロナ禍が明けつつあり、あちらこちらで防災イベントも再開されてきています。
 こういった防災イベントでは、体験型の訓練も結構な確率で登場しているので、お出かけした際にはぜひ体験してみることをお勧めします。
 訓練でも、実際に体験してみると案外と本番でもどのような行動をとったほうが安全なのかがわかったりします。座学ではあくまでも講義や映像による頭の体験なので、わかったつもりになっていることも多いような気がします。
 体験だけではダメだし、座学だけでもうまくいきません。
 座学と訓練という体験をとおして、初めてわかるのではないかと思います。
 もちろん訓練と本番の状況は違いますが、訓練をしているのとしていないのでは、判断や行動にかなりの差が出ることは間違いありません。
 いろいろと知識を持っているのであれば、訓練や体験もどんどん参加して、いざというときに生き残る判断や行動の選択肢を増やしておくようにしたいですね。

【終了しました】春はじめこどもまつりin万葉公園に出展します

 令和5年4月2日に益田市の万葉公園で開催予定の「春はじめこどもまつりin万葉公園」にワークショップを出展することになりました。
 当日何を行うのかはまだ決まっていませんが、蚊取り線香作り、石鹸ろうそくづくり、缶バッチづくり、ちりめんモンスター探しのいずれかになるのではないかと思っています。、またはすべてをやっております。
他にもさまざまなワークショップやステージパフォーマンス、雑貨や多肉植物の販売、食べ物や飲み物なども出店されていて見るだけでも楽しいイベントです。
興味のある方はお時間の取れる方、よかったら来てみてください。

開催の様子はこちらから

避難の手段を考える

 避難の時には徒歩でといわれていますが、起きる災害と時期、そして場所によっては、避難の手段が変わる場合があります。
 例えば、歩いて行ける範囲に避難所がない場合には、何らかの交通手段を使用しなければそもそも避難をすることができない場合があります。
 山間部の小集落などの場合には集落そのものが危険な場合がありますが、他の場所へ避難しようとすると自家用車などを使わなければどうにもなりません。
 逆に都会地になると自家用車は使えません。徒歩でなければそもそも交通渋滞に巻き込まれて移動ができない状態になっているでしょう。
 また、来るのが予測できる台風や大雨の場合には、あらかじめ被害の出そうな時間が予測できますから、それまでに避難を完了すればよいことになります。交通機関などが通常通りに動いている状態のときに避難を行うのであれば、あらゆる手段を使うことができます。
 でも、地震のように突然発生する災害については、道路の被害や信号機の停止などによる渋滞が予測されますから、自由の利く徒歩での避難が推奨されるのです。
 いつ被害が起きるのかがある程度予測できる災害の場合には、早めの避難をするのなら悩まなくて済みますし、ぎりぎりになって避難しようとすると、避難に使うための選択肢はほぼ徒歩一択になります。
 可能であるなら、避難の手段がたくさんあるうちに避難行動を開始、完了するように避難の手段や計画を立てておきたいですね。

まずは命を守ること

 日本は災害大国だということは、大きな災害が起きるたびに言われていることですが、災害が起きるたびに犠牲者が出るのはどうしてなのでしょう。
 災害大国というからには、日本のどこに住んでいても災害が起こる可能性はあるわけで、そうするとそれに対する備えをきちんとしておくことは常識なのではないかと思うのですが、実際のところはそうでもないようです。
 災害が起きないようにさまざまな物理的対策をとるのは行政が頑張っていますが、だからといってそれで100%の安全が確保されるわけではありません。
 物理的な対策は、あくまでも安全な場所へ避難するための時間を稼ぐために行われているものだと考えると、自分自身は何もしなくてもいいということにはならないということがわかると思います。
 では、自分自身は何をしたらいいのかというと、まずは自分の命を守るためにどのような行動をとったらいいのかをしっかり考えて備えておくことです。
 災害時に生き残るのは自分自身の判断がかなりのウエイトを占めることになります。災害が起きそうなときには早めに安全なところへ移動したり、災害が起きたら速やかに自分の安全を確保するための行動は、普段から意識していないと本番でも当然できません。
 そのために必要なのが訓練であり、備蓄であり、マイタイムラインと呼ばれる災害時行動計画なのです。
 「起きたらその時」とか「やる意味がない」といったことを考えている人は多いのですが、そういう人に限って、実際に災害が起きると「こんなはずではなかった」というセリフを言います。「こんなはずではなかった」と言えるならまだマシで、災害で命を落とすのは圧倒的にこういった人が多いのです。
 災害発生時に自分の命を守るのは、自分自身しかできません。警察も消防も自衛隊も行政も、災害が発生するその時にあなたを助けてくれるわけではないのです。
 自分の命を守るのは自分自身。そのことを忘れずにしっかりとした準備をしておきたいですね。

備蓄の種類

 災害時に備えるべきアイテム類は3日から1週間程度準備して備蓄しておくように国からは情報発信がされています。人によってはひと月程度準備しろと言っている方もいるようですが、都会地や消費地で生活している人の場合には、支援物資がどれくらいで届くのかまったく予測ができないので、国が言っているよりは長めに準備しておいた方がいいのかなとも考えます。
 ただ、どんなに少ない量でも1週間分のアイテムをリュックサックに詰めるのはかなり至難の業で、非常用持ち出し袋が嫌がられるのには物理的に無理だという誤解や錯覚があるのかもしれないと思うこともよくあります。
 もともと、備蓄には三種類あると筆者は考えています。
 一つ目は普段から持ち歩く防災ポーチ。本当の緊急時に自分の命をつなぐために必要な最低限のものが入っています。
 二つ目は、大雨や台風時などに1泊から2泊程度の生活必需品を詰めて避難に使う非常用持ち出し袋。
 最後は文字通りの備蓄で、5日から1週間程度家や倉庫などに保存してある状態の生活必需品となります。
 家に備えておく備蓄については、普段生活に使っているさまざまなアイテム類を少し多めに準備しておけば大丈夫です。特に食事と水に関しては普段使いである程度保存がきくようなものを重視して買い物をするようにしておけば、そんなに難しい話ではないと思います。
 住んでいる環境によって備えるべきものがかなり異なるので、家に置く備蓄品については各個人や家庭でそれぞれ備えるべきものを準備しておくようにしてください。
 避難に使う非常用持ち出し袋については、車などをお持ちの場合には、家と車の中の両方に準備しておけばかなり安心です。
 その際、車の中はかなり温度差が激しい空間ですので、クーラーボックスなど温度変化を緩やかにしてくれるような容器にいれておくといいと思います。
 そして、普段使いのカバンなどには、防災ポーチを入れておいてください。
 防災ポーチと飲料水が確保されていれば、一日程度は生命の維持が可能になります。
 一口に備蓄しろと言ってもさまざまな形がありますので、それぞれの目的に応じた準備をしておくことをお勧めします。