「話す」というボランティア

 被災地での復旧支援ボランティアというと、ごみなどの片づけや炊き出し、避難所運営などがよく話に出てきますが、同じくらい貴重な活動の一つに「お話をする」というのがあります。
 何も難しい技術は必要がなく、ただ話をするというだけのボランティアなのですが、このお話をするボランティアのおかげで、実はたくさんの被災者が救われています。
 被災地では、みんなが被災者のためになかなか自分のことについて話をすることが難しいという状況があります。口を開くと不安や愚痴などが出てしまうことが分かっている場合には、なおさら話をすることが億劫になってしまいます。
 話を聞く傾聴ボランティアもありますが、そちらをするためにはちょっとしたスキルやコツが必要です。でも、話し相手をするだけなら、恐らくほとんどの人に可能なボランティアなのではないでしょうか。
 聞くだけでなく、話すことで会話が生まれます。傾聴は相手の心の中の思いを吐き出してもらうことが大切ですが、会話ならそう難しいことは考えなくても大丈夫です。
 何でもない話ができると、災害とその後のあれこれの不安や疑念、諦めなどで凝り固まったこころがほぐれてきます。顔見知りになってくれば、その人の災害に関する思いも出てくるでしょう。
 そうすることで、どんどんこころがほぐれてきます。
 こころがほぐれてくると、いろいろと前向きになってきますし、生きる気力も湧いてきます。
 もちろん話し相手には敬意は絶対に必要ですし、自分の思いだけを話しっぱなしというのもNGですが、これは重要かつ老若男女問わずにできる大切なボランティアです。
 あまり重要視はされていませんが、被災地で、落ち着き始めたころから求められるとても重要なボランティア。
 こういったボランティアがあるということも知っておいてほしいと思います。

【活動報告】よつばキッズスクールの避難訓練を見学しました

 民間学童に限らず、児童の集まる施設では避難訓練を行うこととなっていますが、今回は益田市の民間学童保育であるよつばキッズスクール様の避難訓練を見学し、そのうえで避難についてのお話をしました。
 初期消火と避難では、まずは避難、火が小さかったり、消火できる余力があれば消火作業を行うことになりますが、よつばキッズスクールの避難訓練では、実際に学童保育の先生が初期消火の対応訓練もされています。
 子供たちは初期消火中に屋外へ避難し、なるべく出火現場からは離れる行動をとります。
 家庭用の火災報知機の警報音を聞いた子供たちはきょとんとする子も多かったですが、先生の「火事だ!」という声で一斉に避難を開始。避難する児童の中には口元に袖口を当て姿勢を低くして素早く移動する子も見られ、かと思えばなかなか避難しない子もいて行動に差が出ていました。
 訓練後のお話の中では、学校と家庭用の火災報知機の音の違いや、とにかくどこでもいいから出口から出て屋外へ逃げることを説明しました。
 子どもからは「避難するときには履き替えなくてもいいのか?」という質問も出され、履き替えずにそのまま避難することをお願いしました。
 実際の訓練の通りに本番でも行動すると思われますので、できれば訓練でも素足や上履きのまま外へ避難することも必要なのかなと感じました。
 また、子どもが火災を発見した時に周りに大人がいない場合も最近では多くなってきていますので、子ども達でも初期消火できる、または火を出さないための教育についても考えていった方がいいのかなという気がしました。
 今回、避難訓練について快く見学を許可くださいましたよつばキッズスクール様と、そこに通っている児童の皆様にこころから感謝いたします。

【終了しました】塩づくり体験会を開催します

 来る5月20日の午前10時から、益田市高津町の持石海岸沿いにある持石海陽王国で塩づくり体験会を開催することになりました。
 日本海の良質な海水を使い、実際に塩を作ってみます。うまく出来ると、にがりも取れるかもしれません。
 詳細は添付しているチラシをご確認ください。
 普段何気なく使っている塩がどのようにしてできるのか、自分の手で体験してみませんか。
 準備の都合上、事前申し込みをお願いします。
 興味のある方のお申し込みをこころからお待ちしております。

当日の様子はこちら

大人の訓練、子どもの訓練

 防災活動の一環として、避難訓練などの支援をすることがあります。
 支援というのは、避難訓練のタイムスケジュールや訓練時の状況作成、訓練後の講評などさまざまですが、このうちで、一番喜ばれないのが訓練講評です。
 講評をするにあたっては、人の命を守るべき仕事のある人には厳しく、自分の命を守ればいい人はそれなりに見ていくのですが、どんなに頑張ったとしても、必ず一つや二つの修正点、改善点は発生します。それを指摘して改善や修正方法を提案するのですが、これを「あら探し」と感じる人もいて、非常にやりにくいことがあります。
 大人だけや子供だけの訓練はそれでも比較的楽なのですが、大人と子供が入り混じった訓練になると、途端に大人が傍観者になって参加している子どもたちの講評を始めてしまいます。
 そういった人は、たいてい自分の訓練が満足にできていない方なので、どうしても辛口の評価になってしまい、後で怒られることもしばしば。
 大人と子供が入り混じった避難訓練では、大人は子どもの講評ではなく、安全を確保するための誘導をしてほしいのですが、なぜか大人が指示を出し、子どもがそれに従って全員死亡の評価になったりするので、本当に難しいなと思います。
 大人であれ子供であれ、自分の命を守るのは最終的には自分でしかできません。他人に命を預けてはならないのです。
 本当は防災訓練でそういったことを徹底したいのですが、大人は指示慣れ、子どもは指示待ちになってしまっている場合が多いので、普段の生活を変えなければ、災害時に助かる人を増やすことは難しいのかもしれないなと思うことがあります。
 大人だけ、子どもだけの訓練ではこういったことは発生しないので、混ざったときにどうやって生き残るすべを身に着けてもらうのか。
 これができたとき、東日本大震災で子供達の避難が大人も救ったような状況が作れるのにと、少しだけ歯がゆい思いもしています。
 どのようにしたら大人も子供も一緒になって助かることができるのか、試行錯誤は続きます。

暑熱順化しておこう

 ここ最近、寒暖の差が激しい日々が続いていますが、体調は管理できていますか。
 しっかりとした睡眠と食事、無理のないスケジュールなど、身体や心に負荷がかかることをなるべく減らすようにして、気温の変化が心身への過度な負担にならないようにしてくださいね。
 ところで、暑くなってくると思わずエアコンの冷房スイッチを入れたくなりますが、そうすると体が季節の暑さについていけなくなって、暑い時期に熱中症を始めとするさまざまなトラブルが発生します。
 そうなる前に、無理のない範囲で、しっかりと汗をかいて体を暑さに慣れさせるようにしてください。このことを「暑熱順化」といいます。
 暑熱順化のポイントは汗をかくこと。汗をかくことで汗腺が開き、暑い日に汗をかくことができるようになって体の中の余計な熱を排泄できるようになります。
 例えばウォーキングやジョギングなど、軽く汗をかく程度で十分です。面倒くさければ入浴でも構いません。湯船にお湯を貼り、汗をかくことでも暑熱順化することができます。汗をかくときには、しっかりと水分や塩分を補給しておくことを忘れないようにしてください。
 暑熱順化には、体質によりますが数日から半月程度はかかりますので、ちょっとずつ暑さに慣れていくことをお勧めします。

熱中症について学ぼう:暑熱順化(熱中症ゼロへのウェブサイトへ移動します)

非常食は食べてみる

 災害への備えの中で、割と早い段階で出てくるのが非常食です。
 火を使わなくても食べられて、お腹が膨れ、しかも栄養価が高くておいしいもの、というのが理想ですが、おいしいというところで結構判断が分かれているような気がします。
 普段の味付けが割とその人の舌を作りますので、同じものを食べてもおいしいという人もいれば、味が濃い・味が薄いのでおいしくないという主観がかならず入ります。
 そして、いざ災害というときに準備していた非常食がもしも自分の口に合わないものだとしたら、かなり気力が萎えてしまうと思います。
 そのため、非常食については一度は実際に食べて味が自分に合うかどうかを確認してみてください。
 他の人がおいしいといっても、それがあなたの口に合うとは限りません。
 当研究所でやっている防災キャンプなどでも、アルファ化米の食べ比べをやることがありますが、同じ製品名で入っているものがほぼ同じでも、味が全く異なることで子供たちが結構驚きます。
 その中で自分の好みの味を見つけたり、自分だったらどう作るかなどを考えて、実際に作ってみることまでいければ、いざ災害というときにもさほど落ち込むことはないと思います。
 非常食は値段が高いですし、ものによってはかなりの分量があったりもしますが、実際に食べてみることで味がわかれば、自分にあったものを探して準備することができると思いますので、ぜひ食べ比べをして、自分の好みの味を準備しておくようにしてください。

静かに溺れる

 先日スイミングスクールで参加していた子が溺れてなくなるという事故がおき、無くなられたお子様にはご冥福をお祈りします。
 この報道を聞いて、スイミングスクールのコーチがどうして溺れていることに気づかなかったのかと疑問に思われた方もいるのではないかと思います。
 テレビドラマの影響かなという気がしているのですが、「溺れる」というのは水中でもがき苦しんでいるというイメージをされることが多いです。でも、実際には、ああいった溺れ方をする人はかなり少ないのではないかと、溺れて死にかけたことのある筆者としては疑っています。
 筆者の場合には、溺れる瞬間、突然息ができなくなって動けなくなりました。
 そのときの思考は「溺れた!」というパニック状態で「呼吸ができない」や「浮かべない!」といった考えが同時並列で発生、なぜか水の底がとても近くに見えました。
 身体の動きを取り戻して水面に浮かび上がったときには、溺れる前とほとんど周りの人の動きは変わっていなかったのでほんの数秒だったと思うのですが、溺れるというのはこういうことかと、それから後、水の中で泳ぐのが非常に怖くなりました。
 専門的にはこれを「溺水反応」というそうですが、後で聞いたらすぐ傍にいた人も溺れていることに気が付いてなかったそうです。
 また、おぼれてばちゃばちゃしている場合でも、「助けて」という大声は出せません。声は肺に空気がないと出せないのですが、溺れているということは肺には充分な空気がなく、声が出せても小さいものになってしまいます。
 もう少しすると、水遊びが楽しい季節がやってきますが、子どもも大人も、予想しない「まさか」というところで溺れることもありますので、水遊びの時にはとくに気を付けておいてください。
 水遊びの時には浮力のしっかりあるライフジャケットを身に着けること、必ず監視役を置くこと、そして静かになったらすぐに確認することを心がけておきたいですね。

“静かに”溺れる?夏休みの水遊びに潜むリスク」(NHKのウェブサイトへ移動します)

自助、共助、公助に追加するもの

 防災教育の場では自分で自らの命を守る「自助」、自治会や地域でお互いの命を守る「共助」、市町村や都道府県、国、消防といった行政機関等が命を守る「公助」の3つを教えられます。
 この3つ、それぞれに正しいですし当研究所でもそういった説明をしているのですが、先日受けた研修会で「自助」と「共助」の間に「近助」が入るという話がありました。
 自分の命が確保されたら、そのとき近くにいる人たちで助けあうことが必要だということですが、お互いに命を守る関係が時間が経過するごとに落ち着いてきて大きくなっていくことを考えると、自助と共助の間に近助がくるのが正しいのかもしれないなと思います。
 この近助にはもう一つあって、住んでいる地域の個人と自治会の間、いわゆる班や組、隣保というふうに言われるような近所の数軒単位くらいでの助け合い、つまり近所の助け合いも該当します。
 普段顔見知りであれば、自分や家族が助かったら、恐らく周囲の人の心配をすると思いますので、この近所の助け合いも重要になります。
 ただ、偶然居合わせた人達が助け合う「近助」と違って、近所の助け合いは近所の人を知らなければそもそも成立しない関係であることに注意が必要です。
 最近では近所付き合いが面倒くさいとか、金にならない地域の行事に出るのが嫌だ、あるいはそもそも地域付き合いする時間が取れないといった感じで近所付き合いしない、できない人も増えているそうですが、そういった人は近所も相手にしない、というかどんな人がいるのかもしらないわけですから、そもそも意識してもらえないことを理解しておきましょう。
 意識してもらえないということは、共助を受けることが困難になるということです。そもそもそこにいることをわかってないのですから、地域に寄せられる支援や援助は、自分から関係者に積極的に申し出ていかない限り受けることができません。
 公助は期待はできません。平時であればそういった近所付き合いしない人にも配慮されるかもしれませんが、災害時には絶対的な人手が足りませんので、平時のような公的な支援はまず無理です。
 近所、共助を当てにしないための準備、つまり自助を相当手厚く準備しておく必要があるでしょう。
 繰り返しになりますが、災害時には公助、つまり行政機関の助けはありません。災害発生時には、消防、警察、自衛隊はあなたを助けてはくれないのです。
 あなたは自分が助かるためにどのような準備をしておく必要がありますか。
 大雨の降るかもしれない梅雨に入るまでに、一度考えておいてくださいね。

イノシシと豚熱

 昨年の年末くらいから、仕掛けている檻にイノシシが寄らなくなりました。
 猟師とイノシシはお互いにいかに捕まえるか、捕まらないかを競っているので、檻にかからないのは仕方がないのですが、イノシシの姿が見えなくなったのです。
 当研究所が現在檻を仕掛けている場所は普段からさまざまな動物が行きかう交差点のような場所ですので、つかまらないにしても姿を見ることは多いはずなのですが、まったく姿を見せなくなったのです。
 聞いてみると、地元が豚熱の流行地域に入ったとのことで、捕獲されたイノシシのうちの7割が豚熱陽性の反応が出ているらしいとのこと。
 豚熱は豚やイノシシにかかる病気ですが、これが地域のイノシシに蔓延しているらしく、あちこちでイノシシの死骸があり、行政機関への通報が続いているそうです。
 地域からイノシシがいなくなると、有害捕獲をしている方としては助かるのですが、ジビエとして有効活用しようと考えている場合には非常に困ったことになります。
 捕獲されたイノシシは、現在全頭検査されて豚熱が陰性なら肉として使うことができるそうですが、7割が陽性だと、捕獲しても肉として売れずに処分の経費だけがかかるというリスクが大きいことになってしまいます。そのため、猟師さんもオリの稼働を止めている状態だそうです。
 猟師自体の高齢化もあり、仮に数年後に豚熱が収まった後、イノシシの捕獲をするための技術が失われてしまうのではないかという懸念はありますが、とりあえず被害がでなくなったことは喜ばしいことなのかなとは思っています。
 ただ、通常はある動物がいなくなると他の動物がその立場にとって代わることが多いですので、イノシシがいなくなった後に何が悪さをするのかというところが気になるところです。

【終了しました】救急救命講習会を開催します

来る5月21日13時から、益田市の益田スイミング様において、日赤島根県支部の方を講師にお招きし、救急救命講習会を開催します。
誰もがいつどこで必要になるかわからない心肺蘇生法やAEDの使い方などを、丁寧にしっかりと教えてもらうことができます。
普段なかなか接することのない救命法について、こういった機会を通して学んでみませんか。
詳しいことはチラシをご覧ください。
興味のある方のご参加をお待ちしております。

当日の様子はこちら