災害時伝言ダイヤルを使ってみよう

 災害時に気になるのは家族の安否を知るための方法の一つにNTTが提供する「171」があります。
 これは災害時にNTTが災害時伝言ダイヤルを設置してそこへお互いの安否を吹き込み、通信回線の混雑を解消すると同時にお互いの安否を確認することを目的に作られました。
 大きな災害が発生すると、数時間以内にこの伝言ダイヤルが設置され、そこへ伝言を残すことができるようになっています。
 使い方はさほど難しくなく、被災地外でやりとりできるため電話も繋がりやすくなっているそうですので、この活用ができるように考えてください。
 ポイントは、関係者が「この電話番号を使う」ということをあらかじめ決めておくこと。
 一口に電話番号と言っても、個人が複数回線を持っている時代です。あらかじめ利用する番号を決めておかないとここでも行き違いが発生してしまうことになります。

NTT西日本作成の「災害時伝言ダイヤルの使い方」を一部改変しています。

 また、伝言ダイヤルは全体で最大300万件までの登録しかできないそうなので、同じ人が乱立させてしまうと大規模災害ではあっという間に伝言ダイヤル自体がパンクしてしまうことになります。
 毎月1日、15日には訓練用に災害時伝言ダイヤルが使えるようになっていますので、ぜひこれを使って連絡を取り合う練習をしてみてくださいね。
 また、スマートフォンやパソコンが使える環境なら、「web171」や各大手携帯電話会社が提供している「災害伝言板」への投稿も検討してみてください。
 こちらも鍵となる番号を決めておく必要は同じですが、どれかに登録しておけば、探す側はj-anpiというサイトから一括で登録情報を調べることができます。

 j-anpiは伝言板以外にもNHKの安否情報や各企業から提供される社員の安否情報なども反映されるようになっていますので、探す側にとっては伝言ダイヤルよりも早いかもしれません。j-anpiは普段から開設されているサイトなので、一度どんなものか確認してみてください。
 もっとも、心配する側は一声でも声が聞きたいものです。上手に使い分けをして、生存していることを心配している人に手早く伝えられるようにしておきたいものですね。

家具の固定を考える

 家具の固定のお話をさせてもらうと、「どうせ外れるんだから固定する意味がない」ということを言われる人がいます。
「L字金具では役に立たない」というご意見もいただきます。
 私自身は、それらの意見は正しいし間違ってもいると思っています。
 家具の固定は、震度が強くなればなるほど振動が大きくなって家具にかかる力が大きくなる。そのため固定具が外れやすくなるということが確かにあります。
 下地がベニヤ板の家だと、そこに打ち込んであるビスが振動や重さで抜けてしまうことも想定されます。
 ただ、しっかりと固定されていれば倒れるまでの時間を稼ぐことが可能です。
 活断層型の場合には長くても1分以内。海溝型でも数分程度の揺れで収まりますので、いかにかっちりと家具を固定しておくかがポイントになります。
 例えば、L字金具だけで固定したタンスは振動でビスが抜けてひっくり返るかもしれませんが、L字金具+転倒防止具を使うと倒れる確率は格段に下がります。
 大切なことは「いかに倒れるまでの時間を稼ぐことができるか」という視点を持つことです。
 最初の振動で下敷きになった場合、その後の激しい揺れで命を絶たれるかもしれません。でも、最後の振動で下敷きになったのなら、脱出することや他人の救助で助かる確率は格段に上がります。
 完全に固定してどんな振動でも動かない、倒れないのは理想です。ただ、その理想をかなえようとするとかなり大変なことは事実です。
 でも、その場所から逃げ出すだけの時間が稼げる固定なら、さほど難しくはありません。
 要は安全地帯に逃げ込むまでの時間が稼げればよいのです。
 最近はL字金具だけではなく、吸着タイプやテープ、シールタイプなどさまざまな固定具が登場しています。
 壁や床に傷をつけずに固定できるような道具も出ていますから、借家であっても諦めなくてすみそうです。
 自分の家にあった、その家具にあった固定具を考えて、できれば複数の手段で家具を固定することで、倒れるまでの時間を稼ぎましょう。

国産液体ミルクが発売されます

 胆振東部地震で安全だ危険だと物議を醸した乳児用液体ミルクですが、このほど江崎グリコさんから国産品の販売がされることになったそうです。
 先日、その説明を聞いてきましたので分かった範囲のことをお知らせしたいと思います。
 その前に、「液体ミルクってなんだ」という方のために少しだけ説明をします。
 乳幼児用の食事として母乳がありますが、なんらかの理由で母乳が使えない場合や量が不足しているような場合、粉ミルクを使うことになります。
 この粉ミルク、作ったことがある方ならよくおわかりと思いますが、とにかく手間。乳児でも生まれてしばらくの間は頻繁にお乳をほしがります。24時間、朝夜関係なく。
 母乳であれば寝ぼけたままでもあげることができますが、粉ミルクは衛生上作り置きができないので、必要とされるたびに作る必要があります。
 お湯を沸かし、粉を入れ、冷まして飲ませる。書くだけなら大したことない作業ですが、これが毎日毎回となると親も消耗します。
 私自身も寝ぼけてお湯をひっくり返してやけどしそうになったり、分量を間違えたまま子どもにあげて子どもが飲めずに口からだらーっとしたようなこともありましたが、液体ミルクであれば、パッケージを開けてそのままほ乳瓶に注ぐだけなので、寝ぼけていてもなんとかなりそうです。
 また、災害時には粉ミルクを作る衛生環境を維持することがかなり困難ですので、その点でも優れていると思います。
 今回江崎グリコさんが作って販売しようとしている液体ミルクは、江崎グリコさんが作っている粉ミルク「アイクレオ」の液体版になるようです。
 遮光性、衛生面に優れた6層のパッケージで作られた紙容器は125ml入っていて、消費期限は半年だそうです。
 取り扱いは、主に乳幼児品を専門に扱う西松屋さんや赤ちゃん本舗さんなどになるとのこと。売価は1本200円くらいというお話でした。
 販売開始時期ですが、早ければ3月半ば、できれば4月中には販売を開始したいとのこと。

今回は残念ながら製品版パッケージの展示はありませんでした。125mlの容器ってこんなものという青色の箱が用意されていました。

 試飲もさせてもらいましたが、味はそのまま粉ミルクのアイクレオでしたので、普段アイクレオを使っている子どもさんなら違和感なく飲めると思います。
 担当の方が「母乳が一番いいのはわかってるんだけど、さまざまな事情で出ないときに活用して欲しい」とこれを作った目的をお話されていたのが印象的でした。
 ただ、災害用と考えると、海外製品にあるような飲み口だけ取り付ければそのまま飲ませられるようなものも必要なのかなとも感じました。

使い捨てのほ乳瓶各種。オレンジのキャップの向こうにちょっとだけ見える青い箱が液体ミルクの容器。

 使い捨てのほ乳瓶も一緒に展示されていましたので、ひょっとしたらセット商品も出てくるのかもしれません。
 他には明治さんがスチール缶製の液体ミルクの承認を取っているそうなので、そちらもひょっとしたらそのうち登場してくるかもしれません。
 議論がいろいろあるのは承知していますが、災害時に困るのは乳幼児とその保護者です。道具でなんとかなるなら、それに越したことはありません。これからもさまざまな選択肢が増えるとよいなと思います。

※2019年3月6日追記:2019年3月5日からグリコダイレクトで通信販売が開始されました。3月11日からはドラッグストアや赤ちゃん用品店などでも順次取り扱いが始まるそうです。

通学路のブロック塀

 小学校の学習発表会を見た後、子どもと一緒の帰り道。ふと気になったブロック塀がありました。
 前からちょっと危ないかなとは思っていたのですが、よくよく見るとブロック塀と一番上に載っている笠木の部分の間に大きな割れ目が入っていました。
じっくり見てみると、笠木はほぼ載っているだけ。そしてコンクリートブロック塀の接合部もあちこちに亀裂が入っています。

部分的に補修はされていますが、劣化に追いついていない感じです。

 試しに横に子どもに並んでみてもらうと頭に当たるくらいの高さ、約130cmくらい。ブロック塀の側は地面が嵩上げしてあるようなので、一応建築基準法はクリアしているのかなと思いますが、一年生くらいだと、崩れたり倒れたりしたときには頭に当たるかもしれません。

頭よりも高い位置にあると、壊れたときに頭を直撃する可能性があります。

 これは危ないなぁと子どもに話したら、彼は無言で上を指さしました。見てみると、そこには大きなお寺の屋根が・・・。
 直下型地震を受けたら確実に瓦が落ちるだろうなという位置に大きな屋根とブロック塀があったので、さてどうしたものかという話を子どもとしたのですが、揺れたら避けるしかないなぁという結論に達しました。
 学校の通学路は指定されているので簡単に変更するわけにもいきませんが、古い町並みを歩くとこういう危ないものが割とあるので、通学路の安全点検は少なくとも親子で一度はやってみる方がよさそうです。
 危険な箇所を認識して、なるべくそこは急いで通るようにすること。危険から身を守る第一歩ではないかと思います。
 そういえば、以前大阪北部地震の時に防災科学研究所の島崎敢さんが危険なブロック塀を絵でまとめておられました。転載可でしたので、ここで改めて掲載しておきます。
 これを元に、子どもの安全確保を考えてみてくださいね。

危険なブロック塀の簡単な点検表。結構該当する塀があったりします。

防災タクシーという選択肢

 妊婦さんを運ぶタクシーというのがあるそうです。
 お産の予兆が出たとき、あらかじめお願いしておくことでスムーズに指定する病院まで専門の研修を受けた運転手さんが運んでくれるというサービス。
 妊婦さんもタクシー会社もお互いに不安にならず済むという点でとてもいいサービスだなと思います。

妊婦さんをサポートしてくれるタクシーのポスター。
こういうサービスが増えるとみんなが幸せになれる気がします。

 同じようなサービスを防災でできないかなと考えてみました。
 例えば、被災する可能性が高い高齢者の多い地域で、あらかじめ自治会や行政とタクシー会社が協定をして「避難準備・高齢者避難開始」が発令された段階で高齢者を回収し、指定する避難所まで輸送してもらう。
 それによって高齢者しかいない地区でも迅速に避難ができるのではないかと思います。
 現状では消防団や自治会の役員さんが危なそうなときに一軒ずつ回って声かけをするわけですが、実際にはその後の避難に人手を取られてしまいます。
 輸送部分をタクシー会社にやってもらうことで、消防団や自治会役員の負担を減らそうという考え方です。
 タクシーの運転手さんの安全や代金の支払い方法、避難先でのさまざまな段取りといった問題はありますが、選択肢の一つとして検討してみてもいいのではないかと思うのですが、あなたはどう思いますか?

子どもの避難の格好について考える

 地震が起きると、建物や地面から埃や土煙が舞い上がってきます。
 ただの埃や土煙ならいいのですが、その中にはさまざまな有害物質も混じっています。
 この埃や土煙の舞い上がる高さはおよそ1mくらいなので、小さな子はこのもやもやの中を突っ切って避難することになります。
 その結果、目や鼻、口やのどなどの粘膜にダメージを受けることも起きるようなので、 避難するときには火災の時と同じように、鼻と口を袖口で覆い、なるべく浅い息で移動するようにします。
 粘膜のダメージの他に、埃や土煙をなるべく吸い込まないようにすることで後の体調不良をなるべく防ぐためでもありますので、可能であれば避難時に使い捨てマスクを着用させ、あるならば水泳用のゴーグルを着用しておくと粘膜が守りやすくなります。
また、その手の埃や土煙は身体につかないに越したことはありませんので、使い捨てのビニール製ポンチョや雨合羽などで身体を覆うようにすると、より一層安全だと思われます。

ポンチョタイプはリュックサックごと覆えるのでザックカバーがないときは便利です。

 このビニール製ポンチョや雨合羽はある程度の放射線対策にも使えますので、放射能性のものが降ってくる可能性があると判断される場合には、用意しておくことをお勧めします。
 そして、足下は運動靴か上履きといった履きやすく脱げにくいものを選びます。長靴は少し動きにくいのが難点なのと、万一水が入ったときに歩けなくなるのでお勧めしません。もし水の中を逃げるようなことが起きた場合には、足下はマリンシューズが一番安全です。ただ、靴底が柔らかくて弱いですので、水の中の尖ったものを踏まないように注意する必要があります。
 あと、頭の防護用にヘルメット、または帽子もお忘れ無く。

ポリ袋を使いこなす

普段何気なく使っているポリ袋。
これが災害発生時には大活躍することをご存じですか?
大きいものから小さいもの、透明なもの、不透明なもの、持ち手のあるものないもの等々、一口に言ってもさまざまなものが存在しますが、今回はこのポリ袋の使い方についてです。

大きなポリ袋(ゴミ袋サイズ)の使い方

1)簡易の防寒着や雨具として
寒いときに問題になるのはいかに風を遮るかということです。大きなゴミ袋を使い、止めてある側の真ん中を切り取ってそこから頭を出し、すっぽりと被るだけで手軽な防寒着になります。
止めてある側の端っこを切れば、簡易な雨合羽にもなります。腰の部分を紐で縛るととても温かいですよ。
身体に新聞紙を巻き付けると、さらに暖かさがアップします。

2)段ボールと組み合わせて簡易バケツとして
段ボール箱にゴミ袋を収めると、簡易なバケツとして使えます。ゴミ袋だけでも給水を受けることはできますが、保管が難しいので段ボールとセットで扱うようにします。
あまりたくさんの水を入れると底が抜けたりしますので、段ボール箱の強度にも気を付ける必要があります。

中サイズ(お買い物で使う大きなやつ)の使い方

1)三角巾として
買い物などに使うポリ袋の大きなものを使います。持ち手のある側の一方を切り取り、反対側のコーナーに肘を収めて持ち手を首の後ろで結ぶと、立派な三角巾として使えます。
首の部分は直接肌に当たると食い込んで痛くなりますので、出来れば襟やハンカチなどで上手にカバーをしてください。
また、頭部の怪我の時にも頭をすっぽりと覆えば立派な三角巾の代わりとなります。

2)シャワーとして
中に水やお湯を入れて底に穴を空けると簡単なシャワーとして使うことが出来ます。
ポリ袋の中に入る水の量の関係であまり長い時間使うことはできませんが、ちょっとした気分転換には使えそうです。

3)手袋として
ひっくり返して汚物や直接手で触れたくないものを触るときに手袋として使います。
掴んだ後、くるりとひっくり返して口を閉じれば、簡単で衛生的にさまざまなことができます。
また、きれいなポリ袋であればけが人の手当の時に自分の汚れた手で直接傷口に触れることなく、衛生的に処置を行うこともできます。

4)簡易トイレの台座として
以前に「簡易トイレの作り方」の一つとしてご紹介したように使うことができます。
ポリ袋によっては小さい穴がついていてそこから漏水するものもありますので、使うときには液が漏れないかどうかをよく確認しましょう。

5)ゴミ袋として
良くある用途ですが、例えば避難所にいくとゴミ一つ捨てるのに苦労をします。
手元にビニール袋があれば、とりあえずその中に捨てることで安心して鼻をかんだり食べ物を食べたりできます。
臭いが出るものについては、「臭いを防いでくれる不思議なポリ袋」というのがありますのでそれらを利用すれば大丈夫です。

6)簡易おむつカバーとして
あまりお勧めはしませんが、両サイドを切り離して長くしたポリ袋の真ん中にタオルをいれることで簡易おむつとして使うことができます。
普通の紙おむつと違い、一度の排泄でタオルを交換する必要はありますが何も無いときには有効です。
非常に蒸れやすいので、着ける人のおしりなどのかぶれには充分に注意してください。

7)簡易洗濯機として
中に洗濯物とお水と洗剤を入れて口を縛り手でもみもみすると簡易洗濯機になります。
あまりたくさんのものは洗えませんが、清潔にしたい下着類はこれで洗って同じようにゆすげば少ない水できれいになります。
大きいサイズのポリ袋でも可能です。

小さいサイズの使い方

1)調理器具として
きれいなポリ袋であれば、中に具材を入れて揉めばおいしいおかずが一品出来ます。
火は使えるが水が不足する場合には、作りたいものや温めたいものをポリ袋に入れて口をしっかりと閉め、その辺から汲んできた飲めない水を湧かしてお湯にしてその中に入れることで料理もできます。
この場合にはポリ袋の耐熱温度に注意しないと出来上がった食事に妙なものが混じったりするので、耐熱温度はしっかりと見ておいてくださいね。

2)食器やコップとして
新聞紙で作ったお皿やコップの中にきれいなポリ袋を敷くことで汁物や飲み物を安全にいただくことができます。
とはいえ、熱を防ぐ機能は殆どありませんので、熱いものを入れるときには気を付けるようにしてくださいね。

3)照明用として
懐中電灯の光を出す部分にくしゃくしゃにして膨らませた半透明のポリ袋を被せると、灯りが周りに拡がってランタンの代わりになります。
これに使うのは白いポリ袋で、透明なものは役に立ちませんのでご注意ください。

 他にもいろいろとあると思いますが、あるととても便利なアイテムの一つですので、非常用持ち出し袋の中身の一つに追加しておいてくださいね。
 そして、ポリ袋も徐々に劣化していきます。いざというときに使えないのでは困るので、普段使いのストックとして準備しておくとよいでしょう。
 大きなポリ袋は、自治体指定の「燃えるゴミ」や「不燃ゴミ」の袋でもOKですよ。

誰が何を用意する?

 企業や学校などで災害備蓄をするという話になったとき、さまざまな消耗品も準備することがあります。
 飲食物はその典型例で、備蓄はしていても期限切れで廃棄ということを繰り返すことも多いのではないでしょうか。
 そして、コストの点から見て、備蓄している飲食物はなるべく期限の長いものを選びがちなので味は二の次になるものです。
 災害時訓練をしっかりとやっているところであれば訓練にあわせて試食をしてみることで無駄にはなりませんが、好き嫌いやアレルギーの問題で食べられない人も出てくることがあります。
 そこで、飲食物についてはいくらかの補助をして各個人に指定する日数分用意してもらうことを考えてみたらどうでしょうか。
 備蓄すべき場所を提供し、そこにそれぞれが自分の好みの飲食物を収納しておき、非常時にはそれぞれがそこから出して飲食する。
 そうすることで無駄な出費を抑えることができます。
 また、この方法ならそれぞれが自分が食べられるもの、飲めるものを準備するために好き嫌いやアレルギーの心配をしなくて済むというメリットもあります。
 毛布や簡易トイレなどは誰もが使えるし期限があるものでもないので企業や学校で備蓄することでさまざまな手間を省くことが可能です。
 「命を繋ぐための道具をだれがどこまで何をどれ位準備してどこに置いておくのか」ということを、BCPではしっかりと固めておく必要があります。

被災地で起きる大きな4つの問題

 「トイレ」「ゴミ処理」「犯罪」「遺体処理」は被災地で大きな問題になるものです。
 人が生活する以上、トイレとゴミの問題は避けて通れませんし、治安力の弱まった地域には犯罪者が寄ってきます。
 また、残念にも災害で亡くなった方のご遺体をどこへ保管してどのように処理を行うのか、これがはっきりと決めてあるところは殆どないのではと思います。
 これらを解決するにはどうしたらよいのか、ちょっと考えてみることにします。

1)トイレの問題

 食べることは我慢できても排泄は我慢できません。
 ちょっとその辺でというわけにもいきませんので、トイレは災害後まっさきに発生する問題になります。
 日本トイレ研究所が調べた東日本大震災の状態では「9時間以内に避難者の8割弱がトイレに行きたくなった」という調査結果も出ています。
 では、その時トイレはどうなっていたのでしょうか?
 ごく少数の「くみ取り式」は問題なく使えたそうですが、「浄化槽式」や「下水式」だと配管がずれたり破損したりして使うことができなかったようです。
 無理矢理使って、トイレが汚物の山になったというケースもあまたあったようです。
 下水や浄化槽の修繕は一ヶ月以上はかかるようなので、その間は仮設トイレを使うことになりますが、それが間に合ったのかというと、「仮設トイレは3日以内に34%しか間に合わなかった」「もっとも遅いところでは1ヶ月以上もかかった」とのこと。
 詳しくはリンク先のリーフレットをお読みいただきたいのですが、被災したときのトイレをどのようにするのかというのはかなり大きな問題になると思われます。
 静岡県などではクラウドファウンディングによって移動式の仮設トイレ車を作って稼働させているようですが、排泄した後の排泄物をどのように処理するのかについて、自治体は事前に決めておかないといけないと思います。
また、個人や家族の間でも災害が起きたときにトイレをどのようにするのかについて話し合っておくことも必要ではないでしょうか。

2)ゴミ処理

 災害が起きると、ゴミの問題も発生します。
 生活するのに出るゴミと、被災した家屋や家具、日用品など使えなくなったものが災害ゴミとして出されます。
 生活ゴミは通常通り分別するのはもちろんとして、災害ゴミもできる限り普段通りの分別を行って出すようにしないといけません。
 ごちゃごちゃにして捨ててしまうと引き取ってもらえないだけでなく、混じったゴミから虫が発生したり悪臭や汚水などで衛生環境も悪化します。
 例えば、冷蔵庫がダメになったからと言ってそのまま捨てるのではなく、中身は生ゴミとして別に処理し、冷蔵庫は冷蔵庫として単体で処分に出すようにしましょう。
 大変ではありますが、ゴミを出す最初のところでしっかりと仕分けがされていると、被災自治体だけで処理しきれないゴミを支援する自治体が引き受けてくれることも可能になりますし、そうすればゴミの回収も早くなります。
 また、回収する側も素早く確実に回収が出来る仕掛けを作っておくことが大切です。

3)犯罪

 被災地には支援してくれる応援部隊と同じくらいの速度で空き巣や窃盗団がやってきます。
 警察や地元の治安力が災害によって弱まっているところを狙って被災家屋や施設、避難所等にある金目のものをごっそりと奪っていきます。
 これに対抗するには、地域外の車の流入を防ぐことや警察や自衛隊による巡回強化、地元住民による自警団のパトロールを行う必要があります。
 犯罪者は一見ボランティアのような風体で被災地を巡回することも多いですので、見知らぬ人を見たら必ず声をかけて何をしているのかを確認することや車のナンバーを控えることなどを住民の共通ルールとしてなるべく被害を押さえる努力をしましょう。
 ただ、普段隣に誰が住んでいるのかわからないような状況では犯罪を阻止するのは不可能ですので、普段からの近所付き合いも犯罪対策には有効なのではないかと思います。

4)遺体処理

 被災して、建物の倒壊や火災その他の理由で残念にも亡くなられる方も出るでしょう。
 数人程度ならなんとかなるでしょうが、大規模な災害だと、死者の数は通常処理できる数を簡単に超えてしまいます。
 それらのご遺体をどこへ仮安置するのか、どのように死因を確認し、どのように遺族に引き渡し、どのように埋葬するのかについては事前にルールを決めておかないと、通常の流れでは対応できなくなります。
 せめて遺体安置所になる施設だけでもあらかじめ決めておく必要があるのではないかと思います。

 いずれも普段あまり目を向けたくない部分ですが、災害時にはいろんなものが極端化して噴き出してきます。
 行政や自治会、NPOや各個人に至るまで、それぞれ自分にできることがあると思います。
 自分にできることを意識して準備しておくことで、やってくる災害に対してうまくやっていきたいですね。

避難を考える

一口に避難といっても、何が何でも全て避難場所や避難所に移動しろというわけではありません。
 災害対策の考え方では、一義的には自宅避難。自宅が危険な場合に避難場所へ避難。そして自宅が損壊した場合に避難所へ入所という流れになっています。
 「自宅が使える人は自宅で」というのが計画の大前提なのです。
 まず手始めに、地元の防災計画を確認して自分が避難すべき避難所や避難場所の収容人員を見てみましょう。その地域に住んでいる人がみんな避難できる空間があるでしょうか。
 避難場所や避難所はその地域の圏域人口はまったく考慮されておらず、そこにある公共施設が割り当てられているだけという場合が非常に多いため、地域にいる全ての人が避難すると避難者が多すぎて門すら超えられないという事態が想定されます。
 そのため、災害が起きたときに自宅に居るべきなのか、それとも避難すべきなのかをきちんと想定しておかないと、避難したのに路頭に迷うというおかしな事態が発生します。
 そうならないために、まずは自分の住んでいる場所で起きうる災害について、ハザードマップなどを元にして避難場所・避難所に逃げる必要があるかどうかを検討しましょう。
 唯一、津波は発生した場合にはどこでもいいからとにかく高台へ避難する必要がありますので注意してください。
 避難が必要なのは、高潮や洪水では2m以上水没することが想定される地域、後背地に崩れやすい崖や山がある場合や家が急な斜面に建っている場合、台風や竜巻などで自宅が損壊する可能性が高い場合で、この場合には周囲が安全な避難場所や避難所に避難する必要があります。
 逆に避難が必要ない場合には自宅に立て籠もることになりますので、自宅に災害をやり過ごせるだけの備えをしておかないといけません。
 行政機関の準備している住民への災害対策はあなたが思っているよりも遙かに貧弱でせいぜい「ないよりはナンボかまし」程度のものです。
 自分の命は自分で守ることは、災害対策での大前提。
 事前にしっかりと検討し、備えておきたいものですね。

 なお、石西地方の各自治体が指定する避難場所及び避難所の一覧はこちらからご確認ください。