雨水をためる

 地震や台風、水害などで浄水場が被害を受けたり、停電が起きたりすると水道は止まってしまうため、片付けや掃除に必要な水が手に入らずに困ることになります。
 少し前から話題になっていますが、給水管の老朽化も相当ひどくなっているようで、災害が起きるたびに給水設備に大きな損害が出ていることから、生活用水の復旧というのは思ったよりも時間がかかるのかもしれません。
 給水車は基本的に飲料水が主で、生活用水に使うためには量が足りません。また、生活用水を給水車の水で確保しようとすると、給水所から家までの輸送方法がかなり難しいです。
 井戸があればそこからくみ上げて使うこともできますが、停電になったとき、手押しポンプがないとくみ上げができないことになってしまうので、井戸の場合には蓄電池を使うなど、くみ上げができる体制を確保しておく必要があります。
 川や水路の水がきれいであればそちらからくみ上げて使うこともできますが、くみ上げるためのバケツやポンプなどが必要になります。
 手っ取り早いのは、雨水を貯めるタンクを用意しておくことです。
 最近では集合住宅でもうまくやれば設置できるかなと思ってしまうくらいさまざまな大きさや形が出ています。
 建物の構造や雨を貯めるために流す雨どいの状況によりますが、取水できるのであれば、このタンクを据えるだけである程度の生活用水の確保ができますから、検討してみる価値はあると思います。
 できれば藻やボウフラが湧きにくい外観が黒や濃い色の雨水タンクが理想ですが、農業用の貯水タンクでも定期的に藻の掃除をするのであれば大丈夫です。
 このタンクがあると、掃除や洗濯に使う生活用水が確保できるので、生活環境が格段に良くなります。
 また、浄化槽タイプのトイレであれば、当座はこの生活用水でトイレが使えるようになります。
 災害後には、きれいな水はいくらあっても困るものではないので、備えの一つとして、雨水タンクも検討してみてほしいと思います。

発電機と延長ケーブル

 大規模災害ではよく停電が起こりますが、そのための備えはできていますか。
 蓄電池や発電機を備えている方も多いと思いますが、一つ注意しておいてほしいのが、発電機は屋外で使うということです。
 太陽光パネルは屋外の日当たりの良いところに置かないと意味がありませんが、ガソリンや灯油、ガスといったエンジン式の発電機も家の中では絶対に使わないでください。
 当たり前のことではあるのですが、エンジン式の発電機が動くためには燃料とそれを燃やすための酸素が必要となります。
 燃料と酸素は、燃えたあとは二酸化炭素になりますが、屋内では燃やすための充分な酸素が取れなくなるため、酸素が足りなくなってきて不完全燃焼が起き、一酸化炭素が発生します。
 一酸化炭素は無味無臭で非常に強い毒性を持っています。そのうえ、吸った人がおかしいと気がついた時には全身が中毒症状となって動けなくなってしまっていて、そのままだと死んでしまいます。
 不完全燃焼しなければ一酸化炭素は発生しないので、十分な酸素が供給できる屋外で使う必要があるのです。
 特に、最近の家は気密性が高いので、家の中でエンジン式の発電機を動かすとあっという間に一酸化炭素が発生しますから、絶対に屋内での使用はやめてください。
 過去には玄関で動かしていた発電機による一酸化炭素中毒で一番遠い場所にいたそのおうちの方がなくなったという事例もあります。また、毎年停電が起きるとこの発電機による一酸化炭素中毒が起きています。
 ただ、屋外に設置して発電すると使いたい電気器具までコンセントが届かないということも起こります。
 それに備えて、延長ケーブルもきちんと準備しておきましょう。
 延長ケーブルもなんでもいいというわけではなく、供給できる給電量がケーブルによって決まっていますので、その延長ケーブルで自分が使いたい電気を送ることができるのかどうかをきちんと確認しておいてください。
 発電機はどこに設置して、どの電気器具に電気を給電するのか。そのためにはどれくらいの長さの延長ケーブルが必要となるのか。
 何も起きてない普段のときに、おうちの給電計画を作って、実際にうまくいくかどうかを試しておいてくださいね。

災害時の応援派遣要請は誰がするのか

 結論から言うと、災害時に自衛隊や消防、他の行政機関への派遣要請を行うのは各都道府県知事または市区町村長で、派遣を決定するのはその部門を所管する大臣や長官、あるいは知事会や市長会といった首長の会ということになっています。
 日本はシビリアンコントロールが徹底していますので、いくら目の前で大きな災害が起きていても、その地域を代表する首長からの出動要請がない限り、勝手に出動することはできません。
 ただ、被災地の情報収集を行うことまでは妨げられていないので、派遣要請があって出動命令が出るまでは、出動命令が出てからいかに短時間で効率よく被災地の支援に入れるのかを調査しています。
 ただ、被災地の首長がどういう判断で自衛隊に派遣要請を行うのかは各首長の気持ち一つで決まるので、災害派遣部隊の出動が早かったり遅かったりしても、あくまでも首長や大臣といった政治家が責任を負う部分で、実働部隊ではないことに注意が必要です。
 ここまで災害が続くのであれば、災害復旧を本業とする、例えば危機管理庁のような部門が専門でやってもいいのではないかという気もします。
 現状の正確な情報が首長にきちんと伝わること、そして状況的に外部支援が必要であるかどうかを判断できなければ、いつまでも派遣要請は出ないことになります。
ちなみに、警察だけはどこからの要請がなくても警察庁の判断で自律的に被災地へ警察の災害派遣ができるようになっています。
現地の交通規制や治安維持を考えると必要な措置だと思いますが、場合によっては首長以下の幹部が全滅している場合も想定されますので、首長の派遣要請によらない方法も検討しておいたほうがいいのかもしれませんね。

災害派遣の仕組み(陸上自衛隊のウェブサイトへ移動します)

緊急消防援助隊の仕組み(総務省消防庁のウェブサイトへ移動します)

災害に係る危機管理体制の再構築に向けた規定の整備(警察庁のウェブサイトへ移動します)

助けてほしい人と助ける人をつなぐもの

 台風14号、15号と立て続けに大きな被害が出ているようですが、被災された方の一日も早い復旧を願っております。
 ところで、災害復旧支援ボランティアについては、基本的に要請があって初めて対応が始まるということをご存じですか。
 というのも、被災地がどうなっているのかや災害復旧支援ボランティアが必要なのかどうかというのは、被災地で被災した被災者の方が声を上げない限り周辺ではわかりません。そのため、災害復旧支援ボランティアに助けてほしいという声が届かない限りは、必要がないと考えてしまうからです。
 ニーズをくみ取る装置は、現在災害ボランティアセンターがありますが、自治体や社会福祉協議会が素早く立ち上げるためのノウハウは持っているところがほとんどなく、被災規模が大きくなると対応しないといけないことも増えるため、被災者のニーズを把握することがどうしても遅くなってしまいます。
 プッシュ式で現地に入って調査すればいいという話もありますが、被災地でボランティアの名をかたる詐欺師グループなどと区別がつかないことや、昨今は新型コロナウイルス感染症の蔓延ということもあり、被災地以外からの災害復旧支援ボランティアは現地で受け入れる体制ができて初めて活動ができるのが現状です。
 そして、被災地でどのようなニーズがあるのかが把握できて、そしてそれをまとめたところで、災害復旧支援ボランティアの編成が始まります。
 ここ最近起きたたくさんの災害のおかげで、災害復旧支援ボランティアも団体化され、さまざまな出来事に対応できるように技能が細分化、専門化されてきています。
逆に言えば、現地のニーズがわからない限り、どの災害復旧支援ボランティア団体が出かけたらいいのかがわからないため、対応のしようがないのです。
 助けてほしい人と、助けてあげたい人は存在しています。この両者をつなぐことができるところ、例えば災害復旧支援ボランティアセンターを被災からどれくらいで立ち上げることができるかが、その後の復旧に大きな影響を与えるような気がします。
 両者をつなぐ平時からのシステム作りが、これからは必要なのではないかと思っています。

被災したときの写真の撮り方

悲哀判定
被災状況判定では、第一次は外回りだけ調査します

 建物が被災した後、お片付けにかかるまでに被災状況の写真をしっかりと撮っておこうという話は最近よく出ている話です。
 被災度判定する行政職員や保険会社の職員が現地に来るよりも写真を使った判定のほうが判断が早いため、被災した時に出る罹災証明や保険金も早く出ることになります。
 ただ、撮り方を間違えるとせっかく写真を撮っても使えないといった状況になることがありますので、写真を撮る時にはちょっとだけ意識しておくといいことを今回は書いてみたいと思います。

1.外構は正面と斜め、遠景と近景を複数枚撮っておく

 おうちの外回りの写真は各面を正面から撮影するのと、それから2面を入れて撮影すること、そして被災した部分を全体が入るようにと、被災している部分がはっきりわかるような写真を撮るようにします。
 判定する人は写真だけで判断できるように、全体がどんな感じで、どこがどのように被災したのかがわかるようにしておきます。
 もしも建物が傾いてしまっている場合には、これにプラスして紐の先に重りを付けたものを傾いた部分に垂らし、垂直からどれくらいずれているのかを分かるような写真も撮っておきましょう。

2.比較物を入れておく

 撮影する際に全体や被災部分の写真には被災している場所の大きさがわかるものを一緒に写しておきましょう。
 例えば人物、あるいは指差しや手のひら、足などを一緒に入れる、または近景でメジャーなどの目盛りが読み取れるようなものであれば、目盛りを一緒に写し込んでおくと判断がしやすいです。

3.被災している部分は全て写真で近景を撮る

 外構、建物内ともに被災している部分は遠景だけでなく近景を写しておきます。屋内の場合にも、可能な限り異なる場所から被災状況の写真を撮っておきましょう。

4.写真は日付を入れておく

 スマートフォンやデジタルカメラで撮影をすると、撮影した写真が持っているexifデータに日付が記録されますので、写真を印刷するときには必ず日付も表示させておきましょう。
 誤った日付にならないように、撮影前にはスマホやカメラの日付を確認しておいてください。
 もしも誤った日付で撮影したとしても、exifデータは改ざんしないこと。また、写真にも手を加えてはいけません。
 ちょっとしたことで写真を偽造したといわれてしまうこともありますので、ありのままで提出するようにしましょう。

5.片づけを開始する前に評価をする市町村役場や保険会社に了解をもらっておく

 写真が証拠として採用されない場合もあるので、しっかりと写真を撮ったら、片付ける前に罹災証明を発行する該当の市町村と保険会社には片づけを始めていいかの確認を必ず取りましょう。
 写真がしっかりと撮影してある場合には、基本的にはどちらも片づけ開始を認めてくれると思います。
 ただ、お片付けが始まったら証拠はあなたの撮影した写真だけです。あとで認定されないということがないように、しっかりと写真を撮っておいてください。

 大規模災害になると、人的資源の不足からどうしても被災度判定が遅れてしまいます。早めに判定を完了して罹災証明や保険金の手続きを行うためにも、写真の撮り方をしっかりと覚えておいてくださいね。

災害に係る住家の被害認定(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

食材管理はしっかりとしておこう

思いついて備蓄庫の片づけをしてみた。使っているようでも、期限切れを起こしてしまっていた。

 非常用持ち出し袋や防災ポーチの中に入っているものは割とよく点検するのですが、備蓄庫に入っている食料品はあまり点検していません。
 というのも、我が家では備蓄庫のものはローリングストックということで普段の生活の中で管理しているということになっていて、期限切れは起こさないと考えていたからです。
 もちろん、長期保存できるものばかりなので、あまり気にしていないということもありますが、先般、久しぶりに中の片づけをしてみたら、期限間近、期限切れのものがごろごろと出てきてびっくりしました。
 普段ローリングストックをしていると考えていても、日ごろの調理ではあまり使わないものは、そのまま備蓄され続けます。魚などは普段は生のものを普通に使っているので、なかなか缶詰の出番がないということもあります。
 また、大好きだけど高価でなかなか食べられなかったというのもありました。
 缶詰はともかく、他のものは劣化が進んでいくので、思い付きで消費のディキャンプをすることに。
 「これ、どうやって使う気だったっけ?」と買った当時のことを思い出しながら、調理しておいしくいただきました。

温めて食べるより常温のほうがおいしかったりするものもある。使ってみないとわからない。


 非常用持ち出し袋や防災ポーチの中身は意識することが多いと思いますが、普段使いしているはずの備蓄品も、時にはチェックすることが必要だなと思いました。

【終了しました】小学生向けワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催します

10月15日の13時30分から高津柿本神社駐車場を集合場所にワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催します。

地域の安全点検をしながら防災マップを作っていきます。最初に点検のポイントを説明した後、実際に地域を回って点検し、最後にどうやったらこの地域で安全に過ごすことができるのかを考えてみます。

対象は小学生ですが、それ以外の方のご参加も歓迎します。

小学生以下のお子様が参加される場合には、保護者の方も一緒にご参加ください。

興味のあるかたのご応募をお待ちしています。

【活動報告】高津小学校の防災クラブを開催しました。

 2022年9月21日に益田市立高津小学校で第3回目の防災クラブを開催しました。
 本当は7月に開催する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延により中止となり、9月の開催となってしまいました。
 今回は前回に引き続いて応急処置法と搬送について行いました。
 応急処置は心肺蘇生法に次いで大切な処置で、傷の種類や手当の方法について説明し、実際に包帯を巻いてみてもらいました。

直接圧迫法が基本であることを理解して包帯を巻いていく。

 最初は手こずっていたようでしたが、要領がわかると一人で自分の手に上手に巻いた子もいました。
 それから、毛布を使った搬送法、そして担架を使った搬送法を行いましたが、全体を上手に見て声をかけるリーダー役がなかなか難しかったようです。

力を合わせて担架で搬送します。

 災害時に怪我をしたとき、大人子ども関係なく、応急処置できる人が対応をする必要があります。
 こういった技術は使わないに越したことはありませんが、万が一に備えて、しっかりと覚えておいてほしいなと思います。
 今回参加してくれた子供たち、そして担当の先生、支援に来てくれたスタッフに感謝します。

【活動報告】一般向け研修会「火災保険の基本」を開催しました。

遠くて近い存在の損害保険ですが、知らなければ意味がないものです。

 去る2022年9月17日に益田市民学習センターにおいて、研修会「火災保険の基本」を開催しました。
 災害時に生活再建の基礎となる損害保険の火災保険について、当研究所理事の大谷一樹様を講師に迎えての研修会。
 火災保険の基本から始まり、補償の見方や補償額の考え方、災害後に気をつけないといけないことまで、非常にわかりやすく丁寧に研修をしていただきました。
 例えば、普段何気なく支払っている火災保険ですが、なぜ火災保険をかける必要があるかご存じですか。
 「失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年法律40号)」によって、失火については大きな過失がない限り他者に与えた損害に対して補償の義務を負わないこととされており、もらい火で火事になっても誰もその補償をしてくれないため、自らを守るためにかける必要性があるものだからです。
 また、災害後の保険金の請求は自分でできるので、見たことのない業者などには任せないことも大切です。
 保険が出せるのか、そしてどれくらい出るのかについては保険会社が査定を行いますが、その際に第三者からの意見によって査定額が変わることはありません。
 災害後にはどうしてもすることが多く、また動揺もしていますので、つい他人に頼りがちですが、見ず知らずの人にお金に関する手続きを代行させるのは、普通に考えたらありえないと思いますが、災害時にはそういうことが普通に起きてくるのが不思議ではあります。
 また、いざというときに備えて、自分がどのような保険に入っていて保険会社がどこなのかくらいはまとめておいたほうがいいと思います。
 災害に対する研修会というと避難や避難所運営、災害復旧支援ボランティアなど多岐にわたりますが、こういった生活再建にかかる研修会も行っていきたいと思いますので、興味がある方のご参加をお待ちしております。

「保険が使える」にはご注意ください

 台風14号が日本列島を縦断しましたが、被災された方にはこころからお見舞い申し上げます。
 一刻も早い復旧・復興ができることをこころから願っております。
 さて、災害が起きると出てくるのが国の被災者生活再建支援法や都道府県、市町村など行政機関からの支援金と、掛けていれば損害保険の保険金など、復旧に必要となるお金の手続きのことです。
 災害からの復旧であれこれとかなりやらなければいけないことがたくさんあるときに、手続きのよくわからない支援金や保険金を申請するというのは精神的にかなりの負担です。
 そして途方に暮れているそういうときに、自分の住んでいるところまでやってきて、建物を修繕し、お金の申請手続きも代行してくれると聞くと、ついお願いしたくなるのもわかります。
 ただ、これらの業者はさまざまなトラブルを起こすことが多いですので注意が必要です。
 代行手数料として支払われる額の半分以上を持っていくことはざらですし、建物修繕が必ず保険適用になるかどうかもわかりません。
 手続きの方法は行政機関の窓口や保険代理店の方が丁寧に説明してくれますので、自分でやるのはさほど難しくはありません。
 また、弁護士、司法書士あるいは行政書士が無料相談窓口を開くこともあります。
 普段面識のない人や見知らぬ建築業者などが手続き代行の話を持ち込んでくるときにはほぼ100%トラブルが起きますので、申請手続きは必ず自分でするようにしてください。
 なお、日本損害保険協会でもチラシを作っていますので、よかったらご確認ください。

被災者生活再建支援法」(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

「保険が使える」にご用心」(日本損害保険協会のウェブサイトに移動します)