「行動を起こす鍵」を決めておく

 現在国会で新型コロナウイルスへの対応を巡っていろいろな話をしているようですが、滅多にない大規模な感染症ということなのか、政府の動きがなんとなく後手後手に回っているような気がします。
 以前にもSARSや新型インフルエンザ対策などで大騒ぎしたはずなのですが、そのときに得た教訓は「行動を起こす鍵」を決めておくということです。
 「行動を起こす鍵」は「トリガー」や「引き金」とも言われますが、さまざまな想定で検討をしておいて、どんな状況になっても発生したらすぐに行動に移すことができるようにパターン化して行動を決め、その行動を起こすための鍵となる事象を決めておく作業をさします。
 例えば災害対策では「BCP(事業継続化計画)」と言われる状況と対応の計画書がそのままこれに当たります。
 もちろん状況は動きますし、設定した状況と100%同じ事態が起きることはまずないでしょうが、いろいろと検討しているうちに備えなければいけないことがはっきりと見えてきますので、その対応をするための行動を起こす鍵をしっかりと決めておく。これは平時にこそ準備しておくもので、非常時に慌てふためかないために必ず検討して準備しておいた方がよいものです。
 「Aが起きたらBを実施」という考え方はプログラムのようですが、BCPというのはまさにプログラムで、設定された状況に従って行動をするためのツールとして考えてみるとわかりやすいかもしれません。
 慌てている会社や自治体はこのBCPがうまく機能しておらず、落ち着いて手を打っている会社や自治体はBCPがうまく稼働していると考えていいと思います。
 BCPがないのにうまく対応している会社は、この「行動を起こす鍵」をはっきりとさせていて、それを従業員や顧客にも周知徹底がされているところでほぼ間違いないはずです。
 企業のBCPだけでなく、家族やあなたの生存継続化計画を作るときにも、この「行動を起こすための鍵」を意識して計画を組んでみてください。
 難しくてややこしくて専門業者に丸投げしていた企業のBCPが、そんなに難しくないと感じると思いますよ。

被災後の生活リズムをきちんと作る

 避難所での生活では、食事と消灯時間は避難所全体で決定されますが、それ以外の時間は各自で過ごすことになります。
 また、自宅避難の場合には、全てが自分の思うように時間を使うことができます。
 ただ、そうなってくると乱れてくるのが生活リズム。それまでの生活ではなんとなく生活リズムが決まっていたと思うのですが、被災後はさまざまな要因から生活リズムが狂ってしまいます。
 でも、それをそのままにしておくと、落ち込んだり、寝不足や会話がないことによる精神不安、寝て過ごすことによる身体機能の低下、支援物資のお菓子をひたすらつまむことによる肥満など、あなたの心身にとってよくないことが起きてきます。
 生活や明日の不安があるときだからこそ、無理矢理にでも生活リズムを作って気持ちを切り替えるようにしておかないと、気力体力を維持することはかなり難しいです。
 起床時間、寝床から出て起きている時間、歩く時間、食事や洗濯の時間、トイレの時間、就寝時間など、とりあえずでいいので、自分の生活表を作ってそのとおりになるように生活をしましょう。
 そして、片付けやこどもの見守り、炊き出しなど、自分ができることを見つけて身体を動かすようにしてください。
 そうすることによって生活に張りが出てきます。
 大規模な災害で被災するとこの世の終わりのような気持ちになるものですが、それでも生きている以上は生活をしていかなければなりません。
 いち早く生活リズムを作って気力を取り戻し、自分が思うような普段の生活を取り戻すようにしたいものですね。

地震の基準を確認しておこう

 最近また地震が増えているような気がします。地震が起きる理屈については以前触れたことがあるのですが、連日どこかで地面が揺れているというニュースが流れていますので、今回は地震の考え方をおさらいしておこうと思います。

1.震度とマグニチュード

 地震のニュースのときに必ず出てくるのがこの震度とマグニチュードです。
 ややこしい話は、筆者の能力では説明しきれないのでwikiなどで調べていただければと思うのですが、震源の地震のエネルギーを示すのがマグニチュードと言われるもので、これは一つの地震に一つしかありません。
 マグニチュードは1から10まで存在しますが、1段階が上がるごとに強さが約32倍増えます。そのため、マグニチュード1とマグニチュード3ではその強さに約千倍の差があることになります。
 地球上で記録されているもっとも強い地震とされているのが1960年のチリ地震で、このときの数値はマグニチュード9.5と言われています。
 震度はそれに伴う揺れを表すもので、現在は計測震度計により記録された数値が公表されています。揺れを示すものなので、場所によって異なった揺れ方が起き、人によってはお住まいの地域の震度を見て「そんなに弱かったの?」とか「そんなに揺れたかな?」と首を傾げることもよくおきます。
 震度1から震度4、震度5と6はそれぞれ「強・弱」が存在し、もっとも強いのが震度7となっています。

マグニチュードとは(ウィキペディアの該当ページに飛びます)

震度とは(気象庁のウェブサイトに飛びます)

震源と震度を示す図の一例。震源は一カ所だか、震度は地域によって異なっていることが分かる。

2.緊急地震速報を知っておこう

 最大予測震度が3以上の時に、緊急地震速報が発表されます。
 これは地震発生時に地震波の伝わる速度の差を利用して発表されるもので、震源がある程度離れている場合には有効です。
 ただ、速報を出す方法上、直下型や震源に近い場所では、揺れ始めてから緊急地震速報が出ることもあります。
 発信される警報音はスマホやテレビ、ラジオにより異なりますので、自分の使っている機器の出す警報音を知って、鳴ったらすぐに安全を確保する行動を取るようにしてください。

緊急地震速報のしくみ(気象庁のウェブサイトへ飛びます)

3.地震では身の安全の確保を最優先する

 妙ないい方になりますが、地震そのもので死ぬ人はほとんどいません。
 亡くなる方は、地震によって倒壊した建物やものの下敷きになったりする場合が殆どです。
 そのため、建物が揺れで倒壊しないようにすることや、安全な場所の確保、そして何よりも自分が怪我をしないように安全を確保するための行動をとれるかどうかが大切になります。
 地震時の安全確保の方法は、いろいろな人がいろいろなことを言っていますが、あなたがいる場所や条件によって正解が変わりますので、さまざまな安全確保の方法を知って、その中から最適な方法を瞬時にとることができるようにしておくことが大切です。
 起震車や起震装置による体感とそれに伴う安全確保の訓練もしっかりとしておく必要があります。
 地震であなたの命を守るのは、あなたしかいないことをしっかりと理解して、機会を見つけて準備をしておくことをお勧めします。

新型コロナウイルスでの3密を考える

 「おうちで過ごそう」や「StayHome」などということで、「連休中には家にいろ」ということが言われています。
 「3密を避けてください」と声高に言われているのですが、山登りやサーフィンといった外遊びであるなら問題ないという風に言う方もおり、連休がどうなるのかが少し心配です。
 今日はなぜ「連休は可能な限り家にいろ」と言われているのかについてちょっと考えてみたいと思います。

1.「3密」ってなんだ

 危険だと定義されている「3密」は「密閉・密集・密接」です。
 3密を避けろと言われるので、この3つの条件が重なっているところを避ければよいと考える方もいらっしゃるようですが、この3密はそれぞれが感染する危険性があるとされていて、それを総称して「3密を避ける」という風に言われているのです。
 ですから、他人と密閉された空間は駄目ですし、人が密集する空間も駄目、そして他人と密接することも駄目、ということになります。
 この条件で言うと、女の子や男の子とお酒を飲んで大騒ぎできる夜のお店やライブハウスはもろに3密該当ですし、バーや喫茶店といったところも、この条件が当てはまるところが多いのではないでしょうか。
 人が密集する空間として問題になっているのがスーパーマーケットや商店街で、先日ひらがなや名前で入店規制するような話が出ていたりしました。
 3密の条件が揃うところを避ければいいというわけではなく、3密のうちの一つでも当てはまる場所は避けないといけないというのがこの「3密を避ける」という本来の意味です。

2.自然の中なら問題ないのではという意見

 自然の中なら問題ないだろうと言うことで、週末に山や海に人が殺到して問題になっています。
 1で触れた「3密のうちの一つでも該当したら駄目」と考えると、人が集まってくるのであれば駄目、ということになります。
 それ以外に問題になってくるのが、遊ぶ場所や移動中に利用するコンビニエンスストアといった店舗や公衆トイレ。これは感染した人が気づかずに利用したあと、その人から排出されたウイルスが商品のパッケージや便座といった場所から手について、その手で目や口を触ることで感染してしまうことが起こりうるからです。
 移動は自家用車、現地では他の人とは2m以上間隔をあけるといった対応をしていても、それ以外の場所から感染する可能性があるということを忘れてはいけません。
 そして、自然が豊かな地域は多くの場合医療体制が貧弱です。もしその地域に住んでいる人達に感染が蔓延したら、医療体制があっという間に崩壊することは火を見るよりも明らかですから、そういう意味でも出かけるべきではありません。
 また、まんいち事故が起きたときに救急搬送や緊急受け入れといった、現地の医療体制に無用な負荷をかけてしまうことにもなります。

3.出かける方法はないのか

 結果から言えば、マスクなどの口を覆うものをしっかりとつけ、人と会わないような道を止まらずに歩くだけ、ということなら何とかなりそうです。
 小さな子ども連れだとかなり厳しい条件ですが、お日様に当たることもかなり大切なことなので、ベビーカーやおんぶ紐などで固定して、ものに触らないように、止まらないように移動してみてはいかがでしょうか。
 庭やベランダがあるのなら、そこで遊ぶのなら、3密は避けることができます。ただ、怪我には充分に気をつけてください。

 いろいろと書きましたが、いつものように出歩くことはかなり難しいことは確かです。ただ、いつもと違った遊び方や過ごし方を発見できるチャンスでもありますから、できないことに着目するのではなく、できることに目を向けていろいろとチャレンジしてみてくださいね。

災害時にこそ笑いが必要

 被災地にはいろいろなものが足りなくなりますが、特に不足するのがこころの余裕です。暗い情報ばかりが続く中、先の見えない不安や恐怖でこころに余裕がなくなり、刹那的になったり、暴力的になったり、それらが蓄積すると最悪自ら命を絶ってしまう場合もあります。普段は意識しないようにしている人間同士のさまざまな小さなひずみや歪みが一気に噴き出してしまう場合もあります。
 被災地で笑いは不謹慎だという方もたくさんおられますが、筆者自身は、被災したからこそこころの余裕を産み出すための笑いが必要だと思っています。
 笑うことでこころに余裕が生まれると、それが未来への活力となります。
 被災後、すぐに笑うことはできないかもしれませんが、落ち着いてきたとき、くたびれてきたときには笑いの出番です。
 失敗したときやうまくいかないとき、怒ったり絶望したりするのではなく、それを笑いに変えられるように、普段から意識しておくとよいと思います。
 笑えることはこころの余裕です。
 ところで、もし被災地に笑いを届けるボランティアを考えているのであれば、人をけなしたりいじめたりして笑うものではなく、言葉やしぐさで笑えるような優しい笑いこそが必要だと思います。笑った後で、少しだけでも自分と周りの人にやさしくなれるような笑いだと素敵ではないでしょうか。
 苦しいときこそ笑いを使って乗り越える。
 災害時に限らず、普段の生活でも意識できるといいなと思います。

防災を学ぼう

 新型コロナウイルスによる外出自粛により、何をするでもない時間ができている方も多いのではないかと思います。
 せっかく時間ができたのであれば、文句を言って過ごすのではなく、普段は時間がとれずに放置していた「重要だけど急がないこと」を消化してはどうでしょうか。
 その一つに「防災学習」も含まれていると思いますので、せっかくですから新型コロナウイルス以外の災害についてをしっかりと知識を得るようにしてはいかがでしょうか。
 一口に災害と言ってもさまざまなものがあり、それぞれに対応が異なることも多いですから、それぞれの災害の特性を知っておくことは非常に重要です。
見てわかりやすいウェブサイトの一つとして、NHK「そなえる防災」を今回はご紹介します。
さまざまな災害に対する対策が短い番組として作られていて、それらを見ていくことで学習していくことができます。
また、コラムやQ&Aもあり、読み物としても面白いものになっています。
面白さでは総務省消防庁の「防災危機管理e-カレッジ」もあるのですが、フラッシュプレーヤーを採用しているページが多いため、見ることができないPCがあるのが少し残念です。
 ともあれ、さまざまな防災学習サイトを確認して、自分のいる場所や地域がどのような災害に備えたらいいのかについてしっかりと考え、備えるようにしてくださいね。

照明を変えてみた

 緊急事態宣言が出されて外出自粛になっています。
 この際ですから、普段できないけれどやっておいた方がいいおうちのことをやってみてみようと思い立ち、家の天井照明の一つを交換してみることにしました。

 我が家の天井の照明です。和風ペンダントで吊り下げ式です。傘が固定できないのと、それなりの重さのある蛍光灯仕様なので、地震で激しく揺れると割れたり落ちたりしそうです。
 そこで、今回は天井に直付けできるタイプの照明をつけてみることにしました。
 その前に、絶対にしておかないといけないことが一つ。必ず交換する部屋の電源とブレーカーを落としておきましょう。これをしないと、交換中に感電したりショートしたりする可能性があります。

 和風ペンダントは電源コードで支えられているので、取り外したら照明用コンセントがむき出しになります。このコンセントの形状にはいくつかの種類がありますので、取り替えたいと思う照明器具のコンセントと一致しない場合には、建物側のコンセントを交換する必要があります。その作業は電気工事士の資格を持った方が必要だったと思いますので、それを交換する場合には電気屋さんに相談してみてください。
 形状が一緒なら、外したコンセントに新しい照明器具のコンセントを差し込んでひねって固定すれば交換完了です。

 天井直付けのLED照明に交換が完了しました。以前の和風ペンダントに比べて風情はありませんが、軽量で明るく、光の調整もしやすくなりました。リモコン式なので、寝る前に布団から出て照明を消す手間もなくなり、ちょっとだけ便利です。
 電源やコンセントを直接いじるのであればかなり難易度の高い交換作業ですが、照明機器の入れ替えだけならそんなに難しい作業ではありません。
 和風ペンダントの固定が難しいような場所や照明器具が古くなっている場合などには、新しいのと買ってきて入れ替えてみるのも気分が変わっていいものです。
 落下を防止する安全対策もできますので、該当する照明器具をお持ちの方は一度試してみてはいかがでしょうか。

外出自粛と買い占め

 4月16日に政府から全国に対して「緊急事態宣言」を行いました。
 そして、それを受けた都道府県や市町村が新型コロナウイルス対策として人の移動の自粛要請や業務の縮小などの依頼をかけ始めています。
 この事実だけをみると、確かに非常事態のような感じもしますし、その影響を受けてか、今日はスーパーマーケットのレトルトやインスタント食品のコーナーがほとんど欠品状態になっていて、買い物かごにそれらを満載した高齢者の方が群れを成してうろうろ。正直、なんだかなぁと思ってしまいました。
 売れ筋を見ると、袋のインスタント麺、レトルトカレー、それからパスタソースや乾麺、缶詰など。生鮮食料品や保存期間の短いものは通常通りの分量がありました。
 これから考えると、緊急事態宣言で外出自粛要請が出されたために出歩かなくて済むように保存のきく食料品を調達しているということだと思います。
 面白いのは、パックご飯や冷凍食品はいつもどおりの売れ行きだということ。出会う人達の年齢がかなり高い感じがしましたから、高齢の方が自分たちに馴染みのある保存性の高い食料品を買い占めたというところでしょうか。
 ところで、こうなっている原因の緊急事態宣言とはどんなものなのでしょうか。
 調べてみると、その昔新型インフルエンザで大騒ぎになったことがありましたが、その時に整備された新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)の第32条「新型インフルエンザ等緊急事態宣言等」をそのまま当てはめていて、この特別措置法の附則第1条の2で「新型コロナウイルス感染症に関する特例」を加えて今回対応できるようにしているようです。
 この法律でできるのは、さまざまな要請で命令はほとんどできないようになっています。第45条「感染を防止するための協力要請等」でいろいろと書かれてはいますが、あくまでも要請であって、他国のように都市の出入りを止めてしまったり、戒厳令を敷いて人の移動を制限したりすることはできないのがこの法律です。
 現時点で特に災害で物流が混乱したり停止したりしているわけではないので、食料品はきちんと入荷されています。少し前にトイレットペーパーが無くなるという騒動がありましたが、あれは生産が停止したから無くなったのではなく、物流網の供給能力を超えて買い占められてしまったために手に入らなくなったことは、記憶に新しいと思います。

買い占めが進むと、物流が正常でもあらゆるところで物資不足が発生する。
(写真はイメージです)

 不要不急の外出自粛の中では、食料品や生活必需品の買い出しは規制されていないのですが、外出してはいけないと勘違いした人達が一度に買い出しに出て買い占めを行っている状態になっています。
 想定されている不特定多数の人が一カ所に集まってしまっているわけなので、ここからクラスター感染が発生してもおかしくないのではないかと考えてしまいます。
 どうせレトルト食品やインスタント食品を大量に買い占めても、数日もすれば生鮮食料品を買い出しに出かけることになるのですから、無駄な買い占めはしないようにしたいものですね。
 新型コロナウイルスが蔓延し始めたので政府が緊急事態宣言を出したこと、それを受けて地方自治体が外出自粛要請を出したこと。これはどちらも正しいことだと思います。ただ、出された宣言や要請を曲解して新型コロナウイルス蔓延の機会を作り出すことは、今回の宣言や自粛要請の本意では無いと考えます。
 繰り返しますが、物流は正常に稼働しています。食料も正常に供給されています。慌てて買い占めることはせずに、様子を見て必要と考える分量を何の発生もない時期に調達しておきたいなと思います。

 ちなみに、海外製のインスタントラーメン(タイや韓国)、ラビオリなど見慣れないパスタ、大盛りのレトルトカレーなどは残っていましたから、自分たちが理解できる長期保存できる食べ物ということで調達がされているみたいですね。

備えよ、常に

 新型コロナウイルス対策で現在お休みしていますが、当研究所が防災のさまざまな講座をするときに、「災害で死ぬと思っているかどうか」を伺うことがあります。
 不思議なのですが、災害で被災したり死ぬ人が出たりすることは想定していても自分が死ぬことは想定されていないようで、参加している方は一様にきょとんとされ、お話を進めていくと半分くらいの方が「ああ、そうか」という表情になっていくのが毎回の流れになっています。
 どのような災害であっても「死ぬ可能性」というのは絶対に0にはなりませんが、災害対策というのは「死ぬ確率をできる限り0に近づける」ためにできうる限りの手を打っておくことです。
 この「死ぬ」というのは物理的な死だけでなく、経済的な死や人や地域との関わりが死んだり、心が死ぬことも含めています。一口に「死」と言ってもいろいろな切り口が存在するもので、いろいろと考えておく必要があることです。
 困ったことに、当事者になって初めて「こんなはずではなかった」と困惑したり文句を言ったりする人がいます。そしてそういった人は決して少数ではありません。
 リスクマネジメントでは、最悪の事態に備えてさまざまな準備をします。被災した影響を限りなく0に近づけるための努力をしておくことでいざ災害のときにも慌てずに対処ができます。
 「怖いから」「準備が無理だから」「考えたくないから」といった理由で、今までは災害は起きないことにしてきました。現在の新型コロナウイルスについても、自分たちが被災することは想定していなかったために現在の大騒動が起きています。
 そして、残念ながら現在大騒ぎしていても、収束して数年もすれば過去の出来事の一つとなって備えを忘れていくのではないかと思います。

「備えよ、常に」

 いざとなって後悔しないように、どうすれば自分の死ぬ確率をより低くできるのかを考えながら、今自分にできることをしていけばいいのではないかと思っています。

不安を見える化する

 災害後、被災した方は一様に不安に駆られてしまうようです。特に高齢者や病気を持っている人などは、どうかするとこの世の終わりのような感じになってしまうこともあり、この不安解消というのはかなり重要な位置を占めています。
 不安の解消方法はいろいろとありますし、ひょっとすると解消できないものもあると思いますが、とりあえずは自分が何に不安を感じているのかについてしっかりと確認をする必要があると思います。
 そこでお勧めするのが不安を書き出してしまうこと。
 避難先や避難生活、復旧時のドタバタの中で、眠りが浅かったり、眠れなかったり、落ち着かなかったりするときには自分の抱えている不安を紙に書き出してしまいましょう。どんなささやかな内容でも、どうしようもないことでも、とにかく自分が不安だと思っていることを次々に書き出していきます。書いているうちにいやになってしまうかもしれませんが、それでもひたすら書いていくうちに、書くべき不安がなくなっていくと思います。
 そうしたら、次はその不安がどうなっていれば自分が安心できるのかを考えてみます。できるかできないかではなく、自分が不安が無くなって安心できる感じる条件を書き出してみるのです。
 それを続けていると、いろいろな解決策が浮かんできますし、もし何も浮かばなくても、書き出すことで不安が見える化しますから、他の誰かに話をすることで助けてもらうことができるかもしれません。
 逆に言えば、何が不安なのかがわからないからいつまでも不安が消え去らないのです。その時々に応じて起きる不安というのは違うと思いますが、不安で眠れないときには不安を書き出してみると、案外と大したことないなと思えたりするものです。
 不安は、そのままにしておくといらいらの原因になったりこの世の終わりを感じて自ら命を絶ってしまったりするきっかけになってしまいます。そしてボランティアや行政といった支援活動をしている人達も、あなたが何に不安なのかわからなければ手助けのしようがありません。
 不安はとりあえず見える化してみる。そして自分が安心できる条件を確認する。そうすると、次に打つ手が見えてくることもよくあります。
 「不安の見える化」は、なにも被災したときに限りません。日々のちょっとしたときにでも書き出す癖をつけておくと、生きていくのがさほど悪くないと思えると思います。不安にとらわれたときには、ぜひ一度見える化をしてみてくださいね。