「THE救難食料 ER」を食べてみた

 非常用持ち出し袋はなるべく軽くした方が動きやすくて避難も早いです。ただ、非常用持ち出し袋の中の重量の大半を食料品と飲料水が占めていることは確かで、ここをどれくらい軽くすることができるかというのが腕の見せ所という部分はあります。もっとも、飲料水を削るわけにはいきませんので、いかに食料品を軽くするかということになってきます。
 非常食にはいろいろとあるのですが、今回はその中でも割と有名どころの商品である「THE救難食料 ER」を試してみることにしました。

 当然地元では売っていませんので、インターネットでのお取り寄せとなります。ゼリーのついたものもあるのですが、今回はビスケットだけ購入しました。


 期限は2025年となっていますので、5年間保存です。重さは一箱500gちょっと。これ一箱で一日に必要なカロリーを摂取することができます。

 箱の中にはキューブ状の真空パックが9つ入っています。このキューブが非常食になります。

 空けてみると、キューブ状ですが手触りはざらざら。ビスケットのように焼き固められた感じではありません。粉末状のものを圧縮して固めたような感じです。

 指で簡単にほぐれます。割るのもたやすいです。
 口に入れると、塊はあっさりとほぐれて口の中に広がりますが、割と水気を持っていかれます。口の中の水気を吸うと、ねっとりとしたペースト状になったように感じます。

 味は、私自身はきなこのように感じたのですが、一緒に食べた人達は「クッキー!」「ビスケット?」「カロリーメイトの粉っぽいの」とさまざま。
 日常生活の延長線上として使うにはちょっと微妙な気もしますが、そんなに味は悪くありませんし、結構腹持ちもいいように感じます。
 避難所での食事にこだわらない人であれば、持ち歩くのには便利ですから一度試してみてもいいと思います。

THE 救難食料 ER 9食入り 【萬有栄養 非常食 災害対策 救難食糧 備蓄食糧 ER9 イーアール】《あす楽》

衛生管理は手洗いが基本

 マスクとアルコール消毒液がないということで狂騒曲状態になっている世の中ですが、災害対策という目を通してみると衛生管理をどのようにするのかということになります。
 災害後の衛生管理では、まずは手洗いが基本になります。しっかりと石けんなどで手洗いをした上で、アルコール消毒やマスクの着用をすることになります。
 水が出ない場合にやむをえずアルコール消毒液やマスクを使用することになりますが、水が得られない場合の衛生管理というのは、水がある場合に比較すると格段に状況が悪くなります。
 現在の状況は、「被災してはいるが水はある」状態なので、アルコール消毒液やマスクがないとしても、比較的衛生管理はしやすいと考えます。
 ただ、一口に手洗いと言っても適当にやっていたのでは意味がありません。石けんを使い、手全体を30秒以上しっかりと洗浄し、流水でしっかりと流す。これだけで最近やウイルスに起因する病気にかかる確率は格段に減ります。30秒といってもぴんと来ない方は「もしもしかめよ~♪」の歌を1番歌うとそれくらいの時間になると思ってください。
 実は細菌やウイルスに感染する感染経路で一番多いのは「手から」です。普段はどんな人であれ、5分程度で何かしら顔を触っているものです。そこから体内に侵入してくることになりますので、手をしっかりと洗浄することで感染症になる確率を下げることができるということなのです。
 マスクやアルコール消毒液がないという事態から、手洗いをしっかりとする人が増えています。細菌やウイルスによる感染症の発症はずいぶんと押さえられているのではないかと思います。
 上手な手洗いについては、下のリンク先を参考にしてくださいね。

しゃぼん玉石けん「シャボンちゃんの手あらいうた(前半は手の洗い方、後半は一緒にやってみようになっています)(リンク先:youtube)

花王ビオレu ビオレu泡ハンドソープ「あわあわ手あらいのうた」練習編CM(リンク先:youtube)

非常用持ち出し袋をどう作るか

市販品の非常用持ち出し袋セット
毎度おなじみ子ども用の非常用持ち出し袋。実際にはいるものいらないものを整理していくので、内容の参考程度に見ておくといい。

 研修会や勉強会などで「非常用持ち出し袋には何をいれたらいいのか?」とか「○○を入れろとあったが、何に使うのか?」というご質問をいただくことがあります。
 答えを先に言ってしまうと「生活に最低限必要だと思うものを入れてください」です。非常用持ち出し袋は何のためにあるのかというと、あなたが家から避難した後、避難先であなたの生活を維持するのに必要なものを入れておくためです。そのため、内閣府防災消防庁などで推奨されている非常用持ち出し品が揃っていれば大丈夫と言うことではありません。あなたが使わないものや使えないものが入っていても仕方ありませんし、あなたが必要なものが入っていないようでも困ります。
 最近はネット通販などで「防災士が考えた非常用持ち出し袋」や「被災地の経験から作られた非常用持ち出し袋」などというタイトルで売られているものもあるのですが、それらを買ってもあなたに必要なものが全て過不足無くはいっているわけではないのです。あなたが使い方がわかっていて、そして避難先で必要なものを揃えていくのが非常用持ち出し袋を作る基本ですし、実はその方が値段も安かったりします。
 では、あなたの生活に最低限必要なものはなんでしょうか。「衣・食・住」で考えれば、着替えが一セット、食事が1日分、寝るための毛布や寝袋といったところでしょうか。これに懐中電灯や雨合羽、救急箱、新聞紙、充電器、ラジオ、ゴミ袋などを組み合わせて自分の非常用持ち出し袋を作っていくのです。
 避難所では時間がたくさんありますから、文庫本や携帯できるボードゲームやカードゲーム、塗り絵、折り紙などが入っていてもいいと思います。スマートフォンが生活に欠かせない人であれば大容量の充電池も必要でしょう。テレビが趣味なら、携帯テレビが必要かもしれません。要は普段のあなたの生活が守れる最低限度のものがあればいいのです。
 人間、環境が極端に変化すると心身とも一気に弱っていきます。非常時だからこそ、いかに普段の生活の質を落とさずに凌げるかが鍵になります。
 非常用持ち出し袋や備蓄品はそのために準備しておくものなのです。
 政府は3日~1週間分の食料や水の備蓄を推奨しています。でも、これを全部非常用持ち出し袋に詰め込むと、とてもではありませんが動けません。持てないものは家に備蓄すると割り切って、非常用持ち出し袋は自分が背負える重さにしてください。
 最後に、非常用持ち出し袋となる袋は登山用等のしっかりとしたリュックサックをお勧めします。よく非常用持ち出し袋として昔のナップサックのようなものが売られていますが、あれに詰めると、紐が肩に食い込んで背負えません。

左は昔からある非常用持ち出し袋。右側は子ども用非常用持ち出し袋。
最近は右側のように普通のリュックサックになっているものが多い。

 せっかく準備するのですから、しっかりとしたリュックサックを選んで、いざというときにしっかりと背負えるようにしておいてくださいね。

家族で防災訓練

  新型コロナウイルスの騒動で休校して家にいる子ども達と、それに付き添う形でやむを得ずお休みしている保護者の方。いろいろと大変ですが、せっかく家族でおうちにいるのですから、この際家族の防災計画を作ってみてはどうでしょうか。
 災害時の避難で必要なもののリストアップや避難判断をみんなで決めたり、お散歩ついでに避難場所まで実際に歩いてみたり、お昼ご飯に非常食を試してみたり。地震に備えて家具の配置変更や固定なども、じっくりと考えることができると思います。現時点で、インフラは全て正常でありながら災害のような状態になっているので、災害を見越した訓練でも安全にいろいろなことを試せると思います。

好みの味を見つける食べ比べも楽しい

 特に非常用持ち出し袋や備蓄品の準備をするチャンスです。非常用持ち出し袋や備蓄品は命を繋ぐものだけではなく、気力をつなぐアイテムも必要ですが、それは人によってみんな違いますので、どうやったら自分が元気で過ごすことができるのかを家族で考えて準備をしておくと、各自がが納得できる非常用アイテムがそろうと思います。
 また、もしも備蓄がされているなら、この際いろいろ試してみてください。足りなかったり多かったり、実際に使ってみるといろいろとわかることが多いです。食事、トイレ、就寝、風呂や洗面など、家に避難しているからこそいろいろと試せることがたくさんあります。
 災害対策は「急がないけれど決めておかないと困ること」です。新型コロナウイルス対策で人と接触できない状況であるのなら、他の災害の準備のためにいろいろとやってみるといいと思います。
 ところで、今回の事態ではマスクやトイレットペーパーが足りないと大騒ぎになりました。でも、非常用持ち出し袋や備蓄品として備えているのであればそこから持ち出すことが可能です。そのための非常用持ち出し袋であり、備蓄品なのです。

市販品の非常用持ち出し袋セット

 大量に買い占めることがいいとか悪いとかさまざまな話が出ていますが、どうなるかわからずに何がどれだけ必要なのかもわからないという漠然とした不安の中ではどれだけ準備しても不安なのでつい買い占めたくなってしまいます。
 自分の必要とする量が把握されていれば、無駄な買い占めもしなくて済みますし、異様に高いものをインターネットで仕入れる必要もなくなります。
 普段から意識して備えておくようにしたいですね。

出す方の準備もしておこう

携帯トイレ各種

 非常用持ち出し袋や備蓄品の準備のときに、食事や寝具などは思いつくと思うのですが、トイレの準備は大丈夫ですか。
 災害時にはトイレが使えなくなることが多いです。特に下水管による集中管理のところやアパート、マンションと言った集合住宅などは災害後に点検が終わるまでは絶対に使ってはいけません。浄化槽タイプのところも、もし停電している状態であれば使わない方が無難です。くみ取り式のものは問題なく使えますが、最近はあまり見なくなりました。
 災害発生後には多くのおうちが被害を受けますので、点検には時間がかかると思った方がいいです。もし点検せずに使った場合、逆流したり階下や床にあふれ出したりと汚物による汚染が広まることを覚悟してください。
 そういう事態に備えて、非常用トイレの用意をしておいてください。非常用トイレにはいろいろなものがあり、便器がセットになっているものからご家庭の洋式便器を利用して使うものなどさまざまありますので、自分に合った準備をすることが大切です。

強力な脱臭効果のある猫のトイレ砂を使っても簡易トイレを作ることが可能。
写真はバケツにセットしたもの。
洋式便座の中にビニール袋をセットし、刻んだ新聞紙を入れても簡易トイレができる。
使うビニール袋は不透明なものがいい。

 また、準備しただけでは駄目で、一度使ってみてください。一度使ってみると、想像と使い勝手が違っていることが多々あることに気づくと思います。例えばよく百円均一などで売られている携帯トイレは、結構使うのが難しかったりします。男女兼用と謳っていても、中には女性が使うのは無理じゃないかというようなものも存在します。さらには、トイレとして使うには目隠しが必要だったとか、排泄口に上手に当てられずうまく使えなかったなど、やってみないとわからないことがたくさんあります。
 非常用トイレにはびっくりするくらいたくさんの種類がありますので、いろいろと試してみて自分が使いやすいものを選ぶようにしてください。
 最後に、排泄後には袋に入れて捨てるなどの処理が必要になります。こちらも付属している袋だとにおいが漏れたりすることがありますので、介護用に使われる防臭袋やおむつを捨てるときに使える圧着式ゴミ袋など、衛生環境が守れるような準備をしておくといいでしょう。
 大規模災害で避難所で最初に発生する問題の一つがこのトイレ問題です。特に地震ではまず下水管は損傷すると思って間違いないので、発災後、施設管理者はすぐにトイレを閉鎖し、避難者は自分の持ち込んだ非常用トイレを使うようにしたいものですね。

支援物資で送られてきて困るもの

 ある程度以上の大規模災害になると、全国各地からさまざまなものが支援物資として送られています。お互い様の精神で、それは非常に素敵なことだと思うのですが、送られたものが現地に迷惑をかけているという現状があることをご存じですか。
 一番困るのが「私はもう使わないけど、まだ使える」といった感覚で送られてくる中古の服や靴、使い古した靴下や下着など。衣類の中古はまず引き取り手がありませんので、最終的にごみとして処分することになります。
 支援物資はごみの送り先ではありません。あなたが使わないものは他の人も使いませんので、あなたが使うだろうなというものを送るようにしてください。
 次に多いのがどなたか一人に届くようにとセットされたもの。中にお手紙が入っていたりして非常に素敵なのですが、そういったものが支援物資の集積場にくると、中に何が入っていて誰がつかうことを想定しているかがわからず、場所を取るだけの死蔵品となります。中身を確認して仕分けろといわれるかもしれませんが、毎日大量の物資をたくさんの避難所、避難者に届けなければならないこの仕分け業務は、行政職員や配送を請け負った業者の方が休む暇無く行っているものです。
一つ一つ中をていねいに確認して送り先を決めている余裕は現場にはありません。どうしても個別にセットした支援物資を送りたいのであれば、外箱に中にどんなものが入っているかのリストをつけてください。それもできれば細かく記載して欲しいと思います。そうすれば、場合によってはその中身に適合した方のいる避難所に送られる可能性があります。
 それから、テレビなどで「○○が不足しています」という情報が流れた後に届く大量の「○○」。現地で不足するものは刻一刻と変わっていきます。テレビで不足していることを放映していたからと言ってその物資を大量に送りつけても、寸断された流通網では届いた頃には必要がなくなっていることも多々あります。被災地の流通網は殆ど機能していないと考えていただき、もしも不足している物資を送るのであれば、自身で直接該当する場所へ送り届けるようにしてください。
 また、生鮮食料品は絶対にやめてください。避難所で生鮮食料品が不足しているからといって宅配便で発送しても、被災地には普通にとどくことはありません。1週間から2週間、場合によっては一月以上かかることもあります。生鮮食料品は確実に腐ってしまいますので、送るのは絶対に止めてください。

 ところで、支援物資で助かるのは箱詰めされている同一品目の新品です。輸送も楽ですし、送り先も考えなくていい状態のものなので仕分けが非常に楽です。
 また、Amazonなどで商品を購入し、その商品を被災地へ送るようなシステムが作られていますので、そういったもので送っていただければ非常に助かります。
 繰り返しますが、災害後の支援物資を仕分けする集積所の機能はさほど高くありません。避難所等から送られてくる必要とされる物資を集めて送り出すだけで精一杯なので、なるべく仕分けのしやすい形にして送るようにしましょう。
 あと、寄付金なら無駄になることがありませんので、ものではなくお金を寄付するのもいいと思います。被災地で機能を回復するためにはさまざまなものにお金がかかりますが、そのお金がなかなか手配できずに困っている自治体や団体は非常に多いですから現金による寄付は非常に喜ばれます。
 災害が起きるとさまざまなものが送られてきて物資集積所は大混乱を起こします。流通経路や集積所の仕分けに負担をかけないためにも、支援物資の送り方を考えていただければと思います。

自分に必要なものと量を数字で把握しているか

 あなたは今日どれくらいの量のお水を摂取しましたか。こんな風に聞かれたら、人によっては「水は飲んでない。コーヒーだけ」というような人もいるのではないかと思いますが、ここでいうお水とは水分摂取量のこと。水に限らず、味噌汁やスープと言った食事から摂取する水分も含めての量を聞いているのですが、あなたは正確な数量を説明できますか。
 もうひとつ質問をしてみます。あなたは今日、トイレでどれくらいの量のおしっこをしましたか。
 何かの事情でおしっこの量を計測することでも無い限り、おしっこの量を答えられる人は少ないのではないかと思います。
 今回こんなことを聞いているのは、実は非常用持ち出し袋や備蓄品を揃えるときにこういった数字が必要になるからです。
 摂取する水分量は、政府の推奨では一日に2リットルということになっていますが、これは飲むだけでなく食事から摂取するようも含めてと言うことにされています。でも、お水をよく飲む人もいればあまり飲まない人もいますから、適正な量はあなた自身が把握しておくしか分かる方法はありません。おしっこの話も同じで、その量や回数によって、準備すべき簡易トイレ・携帯トイレの量や質が変わってきます。
 非常用持ち出し袋や備蓄品の内容は内閣府防災や消防庁、警視庁などがいろいろと紹介していますが、細かいところになると自分で準備しないとほぼ100%過不足が生じます。それを適正なものにするために自分に関する数値を知っておく必要があるのです。
 とても面倒くさい作業ではあるのですが、この数字を知ることによって準備に無駄がなくなり、いざ避難するときに変なものをもっていかなくて済むのです。
 自分に関する数字はいろいろありますが、食事の量、水の摂取量、トイレの回数と量など、基本に関する部分だけはきちんと押さえるようにしてください。そうすることによって、災害時や災害後に自分の体調変化を数字で把握することができ、素早い対応をすることができるようになりますよ。

デマの怖さ

 街中からマスクが消えています。気がついたら、トイレットペーパーやティッシュペーパーもなくなっています。どうやらSNSでマスクの増産をするので他の紙が供給されなくなるというデマを流した方がいらっしゃって、それを信じた人が買い占めに走り、それを見た他の人がさらに買い占めて・・・、という悪循環に陥ってしまっているようです。どういうものか、全国的に影響のある出来事が起きるとなぜかトイレットペーパーが無くなります。それだけ生活に必要と思われているのでしょうか。確かに、トイレに行って紙がないというのは考えたくないですから、買い占めに走る気持ちもわかります。
 まぁそれはいいのですが、非常時には普段なら信じないようなおかしなことが本当のように思い込まれてしまってパニックになってしまうことも多いです。その情報がどのような根拠によるものかを確認すると怪しいかどうかある程度予想ができるわけですが、大抵の場合、ぱっと見はもっともらしい理由がくっついていたりします。
 今回の場合は不織布と紙。使い捨てマスクは材料が紙のように見えますが、実際のところはプラスチック繊維です。不織布を作る材料として紙を使うこともあるのですが、マスクに関しては紙は使っていません。つまり、プラスチック繊維を使うマスクの生産増強と紙を使うトイレットペーパーの不足には何の因果関係もないということが分かると思います。

マスクの素材表示。いずれも本体はポリプロピレンというプラスチック繊維。

 「使い捨てマスクは紙のように見える=原材料は紙」という先入観と「材料の量は決まっているから、増産すれば減産されるものもある」という思い込み、そして「無くなったら困る」という不安感が現在の事態を招いていると考えられます。
 こういうデマが発生すると、なぜか義憤に燃える人が、その人が騒動の原因となったと考えている対象に強烈なクレームを入れたり、不買運動がされたりして、根拠のないはずのものが深刻な影響を周囲に発生させてしまい大問題が起きてしまうこともよく起こります。
 困ったことに、デマを拡散する人は殆どの場合、善意からその行動が起こします。よかれと思って拡散した情報によってさまざまなパニックが起こりうるわけです。そこで必要なのは、事実だけを見るということと、憶測や推測による発言はしないこと、そして不安感をあおらないこと。順当に行くと、この次は食料品不足の情報が出てくるのではないでしょうか。お米や缶詰、カップラーメンが不足するような情報が出てくると、また買い占めに走る人が現れます。
 適正な情報と適正な準備、そして意味不明に義憤にかられないこと。これだけで殆どのデマは沈静化できます。デマがデマを生むような事態だけは避けたいものです。そして、他の人に情報を提供するときには、その情報が正確なものなのかどうかを自分できちんと検証してから伝えるようにしてください。

訓練はうそをつかない

 「訓練はうそをつかない」という言葉がありますが、あなたは防災訓練に参加したことがありますか。
 人間が作った訓練設定なんぞ意味がないという方や、かっこわるい、時間の無駄などといった意見もよく聞くのですが、災害が起きたときに一番犠牲になるのがそういった理由で訓練に参加していない人達であることはご存じでしょうか。
 全てを理解した上で自分で勝手に訓練をするからいいという方はともかく、訓練に参加しない人というのはそもそも状況が理解できません。そして、何をどうしたら助かるのかと言うことも理解できていないので、まごまごしているうちに災害に襲われてしまうということです。
 防災訓練に参加すれば必ず助かるとまでは言えませんが、それでも実際に身体を動かした分だけは身になります。それが繰り返されることで、いざというときには身体が動いて自分の安全を確保する行動を取ることができるのです。
 自動車の運転を考えてみればわかるかもしれませんが、教習所に行っていたり免許を取ったばかりのときには、全ての行動をいちいち確認しながら車を動かしていたと思います。それが、毎日車を運転していると、いつの間にやら無意識に車を運転している状態になっています。これは身体が段取りを覚えてしまったからで、どんなものにでも当てはまるのではないかと思っています。
 災害はいつか必ずやってきますし、日本に住んでいる以上は何らかの災害に巻き込まれる可能性は非常に高いですから、防災訓練に参加して経験値を積んでおくことは無駄にはなりません。
 訓練はある程度想定されて条件下で行われるものですから、実際にその想定通りになることはまずありませんが、経験を積むことで予測できるものが増えていきます。そうすると、予想外の事態にも案外冷静に取り組むことができるようになるものです。

「訓練はうそをつかない」

 毎年同じ内容の訓練かもしれませんが、参加した分だけ確実に生き残る確率は上昇します。できるかぎりさまざまな機会を作って防災訓練に参加されることをお勧めします。

吸水土のうを考える

 防災訓練に出ると、心肺蘇生訓練と同じくらいの頻度で登場するのが土のう作りです。特に水害の発生しやすい地域では、必ずと言っていいほど訓練に組み込まれていて、参加した方もいらっしゃるのではないかと思います。
 この土のう。土のう袋と砂があれば誰でも作ることができ、水防工法を上手にすると、家や店舗の水没をある程度までは防ぐことが可能なのですが、水害が発生しそうなときに都合よく土のう袋と砂が充分に手元に準備できるのかという問題があります。また、土のうを積むのも災害時には自分のところは自分でやることになるでしょうから、効果的な土のう積みをしようと思ったらかなりの困難が予測されます。特に高齢者や女性などが土のう積みをできるかと言われれば、ちょっと難しいのではないかなと考えます。
 かなり以前に吸水ポリマーを使った土のう、吸水土のうが出たという話を聞いて、これで土のう積みは今までの土のうではなくこの吸水土のうに変わっていくんだろうなと思ったのですが、その後話をとんと聞かなくなり、水防工法では相変わらず普通の土のうを使っての作業。いったいどうなったのかと思っていたところで、近くのホームセンターで見つけてしまいました、吸水ポリマー土のう。

 まずは値段が高いです。そして基本は使い捨て。吸水土のう一つで普通の土のうが何個準備できるかなと思えるくらいの値段では、さすがに訓練では使えませんし、量の必要な本番の水防工法では登場しないでしょう。
 ただ、軽いのはメリットです。買ったのは4枚入りでしたが、軽々と持てます。また、薄いので持ち運びも保管も簡単。この吸水土のうの場合、吸水すると40cm×50cm×10cm、20キロくらいの重さになるそうなので、しっかりと役には立ちそうです。

裏の注意書き。いろいろと細かな注意が書かれている。

 でも、この吸水土のう。使う前に水を吸水させないと使えません。溢れてきた水に放り込むとそこで膨らんで水を止めてくれるようなイメージがあったのですが、給水時間が2分かかるそうなのでそのまま放り込むと流されて全く違う場所に土のうができてしまいそうです。

洗面器との比較。かなりでっかい。

 一袋が結構でっかいので、この吸水土のうに水を吸わせようと思ったら、お風呂の湯船くらいしか場所がなさそうです。湯船で水を吸った20kgの吸水土のうを必要な場所まで抱えて移動はかなり厳しいなと感じます。
 ちなみに、膨らませるときには真水でないと駄目との記載がありましたので、ひょっとすると入浴剤の入ったお湯だとうまく吸水できないかもしれません。
 この吸水土のうの外袋に書いてあったのですが、あくまでも「非常用」として普通の土のうを補うような使い方になるのかなと、実物を見る限りでは思いました。
 とはいえ、保管が楽で誰でも簡単に移動・展開できる吸水土のうは便利なものではあります。普通の土のうが作れない、間に合わない事態に備えて、準備しておくのもいいのではないかと思います。