デマの怖さ

 街中からマスクが消えています。気がついたら、トイレットペーパーやティッシュペーパーもなくなっています。どうやらSNSでマスクの増産をするので他の紙が供給されなくなるというデマを流した方がいらっしゃって、それを信じた人が買い占めに走り、それを見た他の人がさらに買い占めて・・・、という悪循環に陥ってしまっているようです。どういうものか、全国的に影響のある出来事が起きるとなぜかトイレットペーパーが無くなります。それだけ生活に必要と思われているのでしょうか。確かに、トイレに行って紙がないというのは考えたくないですから、買い占めに走る気持ちもわかります。
 まぁそれはいいのですが、非常時には普段なら信じないようなおかしなことが本当のように思い込まれてしまってパニックになってしまうことも多いです。その情報がどのような根拠によるものかを確認すると怪しいかどうかある程度予想ができるわけですが、大抵の場合、ぱっと見はもっともらしい理由がくっついていたりします。
 今回の場合は不織布と紙。使い捨てマスクは材料が紙のように見えますが、実際のところはプラスチック繊維です。不織布を作る材料として紙を使うこともあるのですが、マスクに関しては紙は使っていません。つまり、プラスチック繊維を使うマスクの生産増強と紙を使うトイレットペーパーの不足には何の因果関係もないということが分かると思います。

マスクの素材表示。いずれも本体はポリプロピレンというプラスチック繊維。

 「使い捨てマスクは紙のように見える=原材料は紙」という先入観と「材料の量は決まっているから、増産すれば減産されるものもある」という思い込み、そして「無くなったら困る」という不安感が現在の事態を招いていると考えられます。
 こういうデマが発生すると、なぜか義憤に燃える人が、その人が騒動の原因となったと考えている対象に強烈なクレームを入れたり、不買運動がされたりして、根拠のないはずのものが深刻な影響を周囲に発生させてしまい大問題が起きてしまうこともよく起こります。
 困ったことに、デマを拡散する人は殆どの場合、善意からその行動が起こします。よかれと思って拡散した情報によってさまざまなパニックが起こりうるわけです。そこで必要なのは、事実だけを見るということと、憶測や推測による発言はしないこと、そして不安感をあおらないこと。順当に行くと、この次は食料品不足の情報が出てくるのではないでしょうか。お米や缶詰、カップラーメンが不足するような情報が出てくると、また買い占めに走る人が現れます。
 適正な情報と適正な準備、そして意味不明に義憤にかられないこと。これだけで殆どのデマは沈静化できます。デマがデマを生むような事態だけは避けたいものです。そして、他の人に情報を提供するときには、その情報が正確なものなのかどうかを自分できちんと検証してから伝えるようにしてください。