自分が死なないための対策をしておこう

 災害対策というと、訓練でまず最初に出てくるのが避難または避難後の生活の組み立て方です。ですが、実際のところ、どんな災害であれ生き残れなければその先は意味がありません。地震や台風、大雨、水害といった災害が起きたとき、どうやって自分の命を守るのかを自分で考えて決めておかなければなりません。
 自分と地域の状況を確認し、どんな災害が発生したら自分はどうすれば助かるのかを整理し、実際に訓練を繰り返すことで自分が死ぬ確率を可能な限り下げていく。その行動が必要なのです。
 例えば地震であれば揺れたときに立っているよりも座っている方が転んで怪我をする確率は下がります。水害であれば、水があふれる前、どのタイミングでどこへどのように避難するのかを決めて行動することで、遭難する確率を下げることができます。
 自分が死なないために何ができるのかを考え、それが無意識にできるようになるまで練習をしておくこと。
 それが自分の生き残るために最初にしておくことです。
 建物の耐震補強や家具の転倒防止、飛散物の撤去など、やるべきことはたくさんありますが、もしもさまざまな事情でハード的なものに手がつけられなくても、自分の行動を決めておくだけでも生き残る確率は変わります。
 災害なんかで死なないために、まずは自分と住んでいる地域、出かけている地域の特性を確認し、災害が起きても死ななくても済むように準備しておきましょう。

情報は早めに収集を始める

 インターネットが普及して、災害に関係する情報は個人で集めやすくなりましたが一斉に情報を集めようとした結果、通信回線がつながらなくなったという笑えない状態が多発しています。
 私も経験したことですが、台風や大雨などで雲の動きが気になると、気象庁や日本気象協会、ウェザーニュースなどといった気象情報を提供しているサイトへのアクセスが集中してつながらなくなります。
 また、地元自治体のホームページも同様で、情報が必要になったときほどインターネットがつながらない状態になっています。
 これを防ぐためには、早めに情報を集めて予測し、被害が起きる可能性のある地域に住んでいるなら、被害が想定される前に安全な場所へ避難してしまうしかありません。自分の安全が確保されていれば、テレビやラジオといったマスメディアが発信する情報でも充分間に合うので、つながらないネット環境に焦る必要はなくなります。
 災害が起きそうなときに知りたいのは、自分がいる場所がどうなっているのか、そしてどうなるのかといった内容ですが、残念ながらそれがピンポイントで分かるものというのは、なかなかありません。
 ただ、自分が欲しい情報がどこにあって誰が提供しているのか、そしてその内容の精度や発信間隔はどうなっているのかなど、事前に調べておけばいざというときに困ることも迷うこともなくなると思います。情報はどこでどのように集めるのか、そしていつの時点から収集を始めるのかなど、あらかじめ自分の中でルールを作って決めておくと困らなくて済みます。
 インターネットで情報を集めようと考えている方は、ぜひ平常時に情報を見に行く先を選んでおいてくださいね。

家庭科でやりたい災害食

 農林水産省が「災害時の食」をテーマにした中学家庭科向けの指導集を作成したそうです。
 内容は過去の避難所での食事やその状況、災害に備えて準備しておく物やその調理方法など、一通りやれば非常食の考え方が身につくものになっています。
 災害対策教育については、大人よりも子どもにした方が効率的だなと筆者は感じていますが、内容は中学家庭科向けとあっても汎用性があり、料理できる年齢であればいろいろと使えそうですね。防災教育が必須とされてきている状況ですので、こういった資料を上手に活用して学校教育に活かして欲しいなと思います。
 授業で使えるようにパワーポイントの資料も作られていて至れり尽くせりですが、利用報告も求められていますので、お使いの際には農林水産省に使用報告もお忘れ無く。

中学校家庭科向け学習指導案「災害時の食」(農林水産省のページへ飛びます)

非常用持ち出し袋は家のどこにおくか

 非常用持ち出し袋を作っても、押し入れにしまっておいたのではいざというときに持ち出すことができません。
 では、どこに置いておくのがいいのでしょうか。これが正解というものはなく、おうちによって違うのですが、木造の一戸建てであれば一階よりは二階に置いておく方が目的にあった使い方ができるようです。
 地震でつぶれるのは殆どの場合1階ですし水害で浸かるときも1階からです。特にさまざまな理由で家の外ではなく、家の中で上の階に避難するような場合、非常用持ち出し袋を二階に移動させる手間がないのでその分安全に避難ができます。
時間との勝負となる津波の場合はちょっと考える必要がありそうですが、その場合には非常用持ち出し袋を二つ準備しておくのもいいかもしれません。
 災害対策では、耐震補強していない場合には2階で就寝する方がいくらか安全だという話をすることがありますが、寝室が二階にあるのなら、寝室のどこかに非常用持ち出し袋を置くスペースを作っておけば安心です。また、被災後の生活再建で必要となってくる備蓄品は、二階以上の場所にストックしておくことをお勧めします。もし何らかの事情で建物が倒壊したとしても、二階であれば取り出せる可能性があるからです。
 非常用持ち出し袋と備蓄品、それぞれに目的が違いますがいづれも命を支えてくれる大切なものです。避難所にあらかじめ置いておくことが理想ではありますが、それができないのであれば、被災しづらい二階以上の階に防災グッズを置いておくことをお勧めします。

災害に対応する保険に入っていますか

 災害に備えた保険はいろいろとありますが、生活の中で一番身近なのは「火災保険」なのではないでしょうか。
 名前だけ聞くと家屋の火災だけの保険に聞こえますが、内容は地震や風水害、落雷といった自然災害で被災したときに発生する損害もカバーができるようになっています。最近首都直下型地震や南海・東南海地震などで目立つようになってきた地震保険は、この火災保険に付帯してかけられるようになっているもので、実は地震保険単独ではかけることができないことに注意してください。
 さて、この火災保険、内容はピンキリで補償の内容によっては火事以外では支払いがされないものから、地震や風水害、破損や盗難までカバーのできる手厚い物までさまざまで、もちろんお値段もさまざまになっています。何にでも対応できる保険は当然高くなりますから、保険をかけるにあたってはハザードマップなどから家のある場所のリスクを確認し、そのリスクに対応した保険を準備しておけばよいと思います。
 住宅の再建には多額のお金が必要であり、公的な被災者支援制度ではとても再建できる金額にはなりません。ですから、被災後の自分の生活再建をイメージし、自分の復旧に必要な保険をかけておくことは、自分の生活を保障する基本となります。
 火災保険をかけている方は、自分の保険がどのような災害に対応しているのかいないのかについてしっかりと確認し、いざというときにそれが使えるのかどうかをチェックしておいてください。
 借家やアパートにお住まいの方は、家財の補償がどうなっているのかをご確認ください。ものがないようでも、いざ復旧するとなると思わぬ金額がかかるものです。保険をかけるのがもったいないと考えるなら、その分を積み立てて自分の生活再建が確実にできるようにしておきましょう。
 大規模災害では、住宅の再建の可否がその後の生活に大きな影響を与えています。家屋の耐震強化とともに、家が使えなくなった場合に生活の拠点をどう再建するのかについて、保険の見直しのときでいいので検討してみてはいかがでしょうか。

地震から命をまもる方法

 地震の時に命を守るポーズとして有名なのはダンゴムシのポーズですが、このポーズにもさまざまな流派があります。
 基本的なところは変わらないのですが、両手で頭を押さえたり、片手が頭、もう一方の手が首だったり、足首を立たせていたり寝かせていたり、どれもそれらしいもので、どれも間違いではないよなと思います。ただ、ダンゴムシのポーズを取ることができる前提条件は、ものが倒れてこない、ものが飛んでこない、ものが落ちてこないこと。つまりは周囲の安全確認が最初となります。そして、ある程度安全だと判断して初めてダンゴムシのポーズを取ることになります。
 もしもその場所が危険なところであったなら、より危険が少ない場所まで移動するしかありませんが、そのときに一月をつけて欲しいことがあります。それは、地震が来たらとにかく自分の重心を下げること。
 人間はその構造上どうしても頭が重いので、どんな人でも揺れで足下が不安定になると転倒する危険性が高くなります。そこで、まずは身体の重心を下げること。
捕まる場所があれば捕まっておくとより安定しますし、安全圏まで逃げられたなら、ダンゴムシのポーズをとればより安全を確保できます。
 学校や事務所などでは、上からものが落ちてきたりしそうであるなら、緊急避難として机の下に隠れるという方法もありますが、机がひっくり返ったりすることもありますので、その場合にはしっかりと脚を支えておくことをお勧めします。
 発生した場所によりますが、海溝型地震の場合には警報から数秒は余裕があります。その数秒でいかに自分の安全を確保するかが、そのあとに続く揺れで怪我しない、死なないための大切な手段がとれますので充分に気をつけておくようにしましょう。
余談ですが、直下型地震の場合には警報はまず間に合いません。異常を感じたらすぐにしゃがんで重心をさげるくらいしか対抗する方法がないのが現状です。

災害とSNS

 台風19号のとき、長野県庁がtwitterを使った災害の救援要請を受け付け、50件近くの救助を行えたそうです。

長野県ツイッターの救助要請収集で約50件救助に(NHKニュースにリンクしています)

 「#台風19号長野県災害」とタグ付けされた記事を拾い、そのなかの救助要請について個別に確認し、救助隊にその情報を提供していったそうですが、行政が行うSNSの使い方として一つの方法だなと感じました。SNSは双方向性が特長ですので、こういうときには状況がすぐに確認できて迅速な行動につなげることができます。もっとも、このときに6人程度の人が専任でこの作業ができたことや、情報を上手に現場につなげる方法を持っていたことなど、どこででも応用するためには少しハードルが高い部分も見受けられました。
 SNSで問題となるのは、その情報が正しいのか否か、そしていつ時点の情報なのかということがはっきりしないというところです。特にツイッターでは古い救助要請もそのままになってしまうため、どうかすると情報が錯綜してしまいます。
 今回の長野県では、対象案件には「#台風19号長野県災害」とつけること、それからいわゆる5W2H(いつ、どこで、だれが、なにを、どうした、なぜ、いくら)をきちんと確認すること、そして双方向で情報を確認し続けることができたのが大きいです。
 情報の発信という点では、より具体的であればあるほど救助隊は的確な救助を行うことができますから、発信する側は最低限「いくつ(年齢)」「だれが(人数)」「どこで(位置情報)」「どうなっている(状況)」を含んだ情報を発信する必要があります。ただ「助けて」では何が起きているのかわかりません。より情報を具体化してどうしてほしいのかまで伝えられるといいと思います。
 基本は110番や119番の非常通報を使うことになると思いますが、いざというときに通信環境が生きていれば、SNSを使った情報発信も一つの手だということは覚えておいて損はないと思います。
 受け取る側である行政の人員体制や技術力、救助隊との連絡体制など問題も山積していますが、それでも、上手に使えば情報が入り乱れている被災現場ではかなりの威力を発揮するのではないかと感じます。

 長野県のtwitterというと、もう一つ面白いことをされているようです。
それは、「やさしい日本語」によるツイートを行ったこと。これが各国語に翻訳されてリツイートされ、情報を入手しにくい被災した外国人達を助けてくれたとのこと。

「こまったらでんわして」ひらがなツイート、台風の長野で起きた奇跡(withnewsのサイトへ飛びます)

 SNSというと、行政機関が使うものは普段から情報は一方通行。非常時には閉鎖や運用停止と言うことも多いのですが、使い方を明確にして発信し続けることは、多くの人を救うこともできるのだなと思いました。
 いろいろといわれるSNSではありますが、上手に使えば多くの人が助かることは事実ですので、よい運用方法が広がってくれるといいなと思います。

災害とボランティア

 阪神淡路大震災から今年で25年経過しました。四半世紀が経ち、現地の様子もずいぶんと様変わりしています。この大震災では多くの人が災害ボランティアとして現地入りし、試行錯誤しながらさまざまな被災者支援をしていき、ボランティアの重要性が注目されることとなり、「ボランティア元年」と言われた年でもありました。
 この後、さまざまな災害が発生し、その都度さまざまな形でボランティアが被災地の復興を支え、ボランティアを組織的に活用するための団体もできてきましたが、ここのところ立て続く災害で、ボランティアする人たちにも若干の疲れが見えてきているような気もします。
 現在の行政機関が作成する防災計画では、政府の支援にあわせてさまざまな形でボランティアが被災地支援に入る計画になっていることが多いですが、首都直下型地震や南海・東南海トラフによる地震などの大規模な災害が起きてたくさんの人が被災した場合、ボランティアが足りなくなる事態が想定されます。
 頼みの行政は必要最低限度以下にスリム化された結果として、現地の支援はおろか災害対応でさえ手が回らない状況になるのは確実です。行政の言う想定外は「住民の支援は想定されていない」という風に受け止めた方がよさそうです。
 つまり、頼りになるのは自分だけになるのですが、そう考えて準備している人は果たしてどれ位いるのでしょうか。地震に限らず、近年はさまざまな災害であちこちが被害を受けています。自分自身の命を自分で守るために、今一度自分の備えを確認してみてください。また、自分にできるボランティアがないかを、この機会に考えてみてくださいね。

小さな火を作るポイント

小さな火の代表「ローソク」。どれくらいの人が使ったことがあるだろうか?

 災害時に停電などのライフラインの停止が発生すると、暗いときにどうやって灯りと暖を取るかということが問題となってきます。
 焚き火の場合には、燃えるものと火をつけるものがあれば火がつくので簡単に灯りと暖房を得ることができますが、安全の問題から普通の家の屋内でやるわけにはいきません。

焚き火は屋内でやると酸欠と引火の問題が起きるので外でやること


 小さくて安全な灯りを作って、それでそれなりの暖をとるということになるのでしょうが、小さな火を作るためにはいくつかの条件があります。
 一つは可燃性の高いものは使わないこと。ガソリンや灯油、アルコールなどは非常に揮発性が高いので、小さな火を作るのには向きません。専用のランタンやランプの機材を準備できない場合には使えないと考えてください。
 揮発性の低い可燃性のあるもの、例えばサラダ油やバターといったものを使うことになりますが、これらは単体では燃えることは殆どありません。
 これらを燃やすためには、燃える場所となる芯が必要です。たこ糸やティッシュペーパーを撚ったものなどを芯にして、そこに油を吸わせて燃やすことで、小さな火を作ることができます。ロウソクをイメージすればよくわかるかもしれませんし、最近すっかり有名になったツナ缶ローソクもこの理屈で燃やしています。

ツナ缶ロウソク。燃えた後の中身は食べられるので無駄がない

 この方法のいいところは、危険が少ないこと。引火点が高いのでひっくり返っても簡単には引火しません。火力は小さいですが、灯りとしては充分に使うことができます。
 この理屈を知っていると、非常時に「ある温度で液になる燃えるもの+芯」で簡単に小さな火を作ることができますので、どんなものが燃えるのか、興味のある方はいろいろと実験してみてもよいのではないかと思います。

リップスティックも非常時には使うことができる。ただし燃焼時間は短い

避難所で子どもとどう遊ぶか

 突然やってくる地震を除けば、殆どの災害は事前に避難が可能なものばかりです。あらかじめ危険箇所の分析ができていれば、自分のところが避難しなければいけない災害に対して早い段階で安全な場所への移動を完了することができるのですが、その安全な場所が自宅ではない場合、そして子ども達が一緒に避難している場合には、その子ども達が退屈しないように少し知恵を絞る必要があります。
 普段から彼らが遊んでいるものを持参することと、電源が不要な遊びを一緒に楽しめるようにしておくこと。
 例えば、ネットゲームやアニメ、インターネットといった電源や通信環境が必要な遊びでは、災害が発生して電源や通信環境を失ったしまうと遊ぶことができなくなります。そこで電源不要な遊びをできるように準備し、また、ある程度は一緒に遊んで慣れ親しんでおくことも必要です。
 例えば、折り紙やあやとり、落書き帳や筆記具、絵本、カードゲーム、ボードゲームなどを持ち出しセットに準備しておき、一緒に遊ぶことで、子どもだけでなく大人も気が紛れます。
子どもが大騒ぎしたり暴れたり泣いたりするのは退屈ですることがないせいの場合が多いので、彼らを退屈させないように準備をしておくのです。
 もしもそういったものが準備できなかった場合には、新聞紙やその辺にあるものでどうやって遊ぶかを子どもと一緒に考えて、周囲に迷惑がかからない程度に遊ぶのもよいと思います。
 避難所の運営が始まれば、彼らも立派な戦力です。仕事をどんどん割り振って、退屈にさせないようにしましょう。