吸水土のうを考える

 防災訓練に出ると、心肺蘇生訓練と同じくらいの頻度で登場するのが土のう作りです。特に水害の発生しやすい地域では、必ずと言っていいほど訓練に組み込まれていて、参加した方もいらっしゃるのではないかと思います。
 この土のう。土のう袋と砂があれば誰でも作ることができ、水防工法を上手にすると、家や店舗の水没をある程度までは防ぐことが可能なのですが、水害が発生しそうなときに都合よく土のう袋と砂が充分に手元に準備できるのかという問題があります。また、土のうを積むのも災害時には自分のところは自分でやることになるでしょうから、効果的な土のう積みをしようと思ったらかなりの困難が予測されます。特に高齢者や女性などが土のう積みをできるかと言われれば、ちょっと難しいのではないかなと考えます。
 かなり以前に吸水ポリマーを使った土のう、吸水土のうが出たという話を聞いて、これで土のう積みは今までの土のうではなくこの吸水土のうに変わっていくんだろうなと思ったのですが、その後話をとんと聞かなくなり、水防工法では相変わらず普通の土のうを使っての作業。いったいどうなったのかと思っていたところで、近くのホームセンターで見つけてしまいました、吸水ポリマー土のう。

 まずは値段が高いです。そして基本は使い捨て。吸水土のう一つで普通の土のうが何個準備できるかなと思えるくらいの値段では、さすがに訓練では使えませんし、量の必要な本番の水防工法では登場しないでしょう。
 ただ、軽いのはメリットです。買ったのは4枚入りでしたが、軽々と持てます。また、薄いので持ち運びも保管も簡単。この吸水土のうの場合、吸水すると40cm×50cm×10cm、20キロくらいの重さになるそうなので、しっかりと役には立ちそうです。

裏の注意書き。いろいろと細かな注意が書かれている。

 でも、この吸水土のう。使う前に水を吸水させないと使えません。溢れてきた水に放り込むとそこで膨らんで水を止めてくれるようなイメージがあったのですが、給水時間が2分かかるそうなのでそのまま放り込むと流されて全く違う場所に土のうができてしまいそうです。

洗面器との比較。かなりでっかい。

 一袋が結構でっかいので、この吸水土のうに水を吸わせようと思ったら、お風呂の湯船くらいしか場所がなさそうです。湯船で水を吸った20kgの吸水土のうを必要な場所まで抱えて移動はかなり厳しいなと感じます。
 ちなみに、膨らませるときには真水でないと駄目との記載がありましたので、ひょっとすると入浴剤の入ったお湯だとうまく吸水できないかもしれません。
 この吸水土のうの外袋に書いてあったのですが、あくまでも「非常用」として普通の土のうを補うような使い方になるのかなと、実物を見る限りでは思いました。
 とはいえ、保管が楽で誰でも簡単に移動・展開できる吸水土のうは便利なものではあります。普通の土のうが作れない、間に合わない事態に備えて、準備しておくのもいいのではないかと思います。