視線を遮るものを用意する

小学校の防災クラブで試して見た視線を遮るための場所づくり。思ったよりいろいろなアイデアがでる。

 避難所に避難すると、ある程度落ち着くまでは基本的にプライバシーはないと考えた方が良さそうです。
 最近でこそ気の利いた避難所であれば授乳室やおむつ交換場所、着替え場所などを準備するようになってきてはいますが、多くの避難所は場所の提供だけという考え方ですので、広いスペースにあちこちでごろ寝というのが現在の日本の避難所のスタイルなので、授乳や着替えなど、他人に見られたくないと感じる行為をする可能性があるならば、視線を遮る道具を準備しておくようにしてください。
 例えば、自立型テントがあればプライベート空間を簡単に作り出すことができるので非常に便利です。
 ただ、避難所はすし詰めになることが多く,テントが建てられない場合も多々あります。
 そういった事態に備えて、大きめのバスタオルやエマージェンシーシート、レジャーシートなど物理的に視線を遮ることのできるものを用意しておくようにしてください。
 退屈になると、動きのあるものを無意識に目で追ってしまいがちです。
 そうすると、見ている側は意識していなくても、見られている側は落ち着かないものです。
避難所にそういった道具を備蓄するのは現実的ではないので、とりあえず自衛のために、自分の非常用持ち出し袋にはそういった道具を入れておくことをお勧めします。

災害と常備薬

 新型コロナウイルス感染症がかなり流行っているようですが、この感染症にかかると、現在は無自覚・無症状でも最低10日間の自宅待機が必要となります。
 当然のことながら、外出はできないわけで、そうなると日常生活で薬を必要としている人は死活問題となります。
 医療機関や薬局との連携がうまく取れていればいいのですが、現在の様子から見ると、しばらくは今までの想定よりも長め、10日から15日前後の薬の余裕が必要と考えた方がよさそうです。
 ただ、基本的に薬というのは手元に在庫があるようには処方されません。
 薬を手元に残すためには、かかりつけ医と相談して事情を説明し、一度多めに処方してもらうことです。
 あとは通常通り処方してもらえば、手元には多めに処方してもらった分だけ薬が残っていることになります。
 いくつかそういった取り扱いが難しい薬もあるようですが、あなた自身の健康状態を維持するために、常備薬が必要な方は備えておいてはいかがでしょうか。

アレルギー対策を整えておく

 災害が発生して避難所に長期滞在する必要が出てくると、さまざまな問題が出てきます。
 見た目や動きなどで分かる問題なら良いのですが、内臓疾患やアレルギーのある人は、ぱっと見何が問題なのかわからないために健常者とトラブルになりがちなので気をつけなければいけません。
 特に食事制限や食べものからのアレルゲンの摂取を控えるという行動は、行政などからの配給食のとき、お残しや食事をしないという選択肢になることもあって、見る人によっては「何の不満がある」と文句を言われてしまうこともあります。
 そして、避難所で配られる食料品ではアレルギーや食事制限に配慮されたものが出る可能性はまずありませんので、そういう人は自分であらかじめ食事を準備しておく必要があります。
 現在は3日から1週間程度は自分の備蓄を用意するように言われていますが、アレルギー体質の人は、それ以上に準備しておくようにしてください。
また、最悪に備えて何が食べられて何が食べられないのか、どれ位摂取してもいいのかは、あらかじめ平時に試しておいたほうが安全です。
 それから、万が一に備えて抗アレルギー薬は常に携帯しておくようにしてください。
 非常用持ち出し袋に入れておいてもいいのですが、いざというときにそれを常に持ち出せる環境にいるとも限りません。
 普段必ず持ち歩くカバンや財布などに、最低1回分は入れて持ち歩くようにして下さい。
 アレルギーは未だにたいしたことが無いと考える方がいますので、アレルギー持ちの人は、自衛手段をしっかりと確立しておいた方が無難です。
 せっかく災害から助かったのに、食べ物のアレルギーで倒れてしまっては何にもなりません。
 悲しいことですが、自分の身は自分で守るを基本にして備えるようにして下さい。

感染症の感染者数を考えてみる

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が急速拡大しているようです。
 ようです、と書いたのは、普通の風邪も流行っているのと、PMや花粉が原因のアレルギー症も始まっていてどれがどれだかわからない状態になっているため。
 早めの終息を祈るところですが、新型コロナウイルス感染症では人流抑制、つまり人の移動を制限して感染を抑え込もうというのが基本的な対策になっています。
 では、もし制限しなければどうなるのかを極めて大雑把に考えてみました。
 計算方法は倍々ゲーム。一人の人が一日に一人、感染させると計算しています。
 初日は1人が一人に感染させたので、感染者は2人になります。2日目は4人。3日目は8人。
 1週間、7日目では128名となります。たいしたことないなと感じますが、ここからが問題になります。
 8日目は256名、9日目は512名、10日目で1,048名。15日目で33,536名で20日目に1,073,152となり、100万人を超えます。
 28日目には274,726,912名となって、日本の人口を超えてしまいます。
 実際にはこんなことにはなりませんが、最初の一人が一か月も経たないうちに2億人を超えるというのですから考えたら怖い話です。
 では、人流抑制をするとどうなるのか。
 当たり前のことですが、感染している人をそこから動かさずに人との接触を絶たせてしまえば、基本的に感染させることはありません。
 ロックダウンといわれる都市封鎖などは、それを狙って行われているわけですが、実際には物流も止めない限りは完全な隔離はむつかしいでしょう。
 また、ロックダウンを行うと同時に、感染していない地域では、感染が始まる前に、ウイルスが入ってきても大丈夫なような予防対策を徹底しておく必要があります。
 この二つができて、初めて感染症の抑え込みが可能になるわけです。
 ちなみに、日本の感染症対策では感染源を特定してそこから発生している可能性のある人を追跡し、感染者を抑え込むという方法をとっています。
 感染者数が少なくて保健所などの行政機関が対象者を追い切れ、感染した可能性のある人すべての協力が得られる状態であれば、これは極めて有効な手なのですが、現在のオミクロン株の場合、これだけ蔓延してしまうとどこで感染したのかは正直に言ってわからないと思います。
 感染を防ごうと思ったら、当たり前ですが自分で自分の身を守るしかありません。
 具体的には、ウイルスを体内に入れないようにすること。
 不要不急の人との接触はさける、マスクは常時着用し、もし外出したなら帰宅後にはマスクを交換する、流水を使ったしっかりとした手洗い。
 自分の衛生環境のレベルを上げることで感染するリスクを下げること。
 どれだけ努力してもリスクを0にすることはできませんが、できる範囲のことはやっておくことで、あなたと周りの人の感染リスクを下げることができます。
 倍々ゲームにならないように気を付けたいものですね。

怖い感染症

 年末年始にかけて新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が蔓延しているようですが、感染症というと、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザウイルスやノロウイルス、ロタウイルスといった有名どころを忘れてはいけません。
 大規模災害で大規模避難所ができると、これらの感染症が避難所内で猛威を振るうことが非常に多くなります。
 日常生活だと、例えば風邪にかかっても家で寝ていれば直るのですが、避難所の場合だと、寝ていると避難所内の人に感染させる危険性があります。
 そこで感染者を隔離するわけですが、この手のウイルスは気がついたときには蔓延しているという場合が殆どですので、多くの場合打つ手なしの状態になります。
 これらを防ぐ方法は、しっかりとした流水によるこまめな手洗いとマスクの着用。アルコール消毒もある程度は有効で、実際に2021年は新型コロナウイルス感染症対策の手洗いが励行された結果として、感染症にかかった人が激減していました。
 ただ、大規模避難所になると充分な手洗いスペースや消毒スペースが確保できないという問題があります。元々今ある施設を避難所に転用しようという発想ですので、これは仕方の無いことなのかもしれません。
 また、日常生活の延長線上にある生活の場でもあるので、衛生概念のずぼらな人が一人いると、避難所内に感染症が蔓延することになりかねません。
 必要なことは、とにかく早期発見早期隔離なので、毎日の体調管理や検温は必須だと思いますし、少しでも体調不良な人は別室で隔離するくらいの対応が必要になってきます。
 また、トイレのような場所は不衛生になりやすくウイルスが蔓延しやすいので、しっかりとした清掃が必要になります。
 これらの管理がしっかりとできると、ある程度感染症対策はできると思うのですが、あなたの避難すべき避難先ではこういった衛生管理について、どのようにすることになっているでしょうか。

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

燃焼器具と一酸化炭素

 冬には一酸化炭素中毒による死者が毎年出ています。
 原因は燃焼器具を換気不十分で使った事によることが殆どなのですが、この一酸化炭素ってどのようなものかご存じですか。
 今回は最近よく耳にする一酸化炭素について、ちょっとだけ考えてみたいと思います。

1.一酸化炭素とは

 化学式は「CO」で、炭素1つ、酸素1つが結びついてできあがる炭素化合物です。
 人間が何もなしに生存できる範囲では気体で存在し、無色、無臭で水にはほとんど溶けない性質を持っています。
 理論上、炭素を含む物質が完全に燃えるときには二酸化炭素と水蒸気になるはずですが、火の内部では酸素の供給が追いつかないために燃焼時には常に少量の一酸化炭素が発生しています。
 そして空気中の酸素が不足した状態で燃焼すると、不完全燃焼になって一酸化炭素が大量に発生します。

2.一酸化炭素中毒とは

 一酸化炭素は人が吸い込むと血液中のヘモグロビンに結合し、酸素を運搬する能力を極端に低下させます。そのため、吸い込み過ぎると、酸素欠乏の症状である頭痛や吐き気、眠気や錯乱などが起き、そのうちに昏倒して死に至ります。
 特に小さな異変に気付きにくい就寝中や酒に酔った状態では、気付いたときには逃げたくても身体が動かないような重篤な一酸化炭素中毒の症状に陥ってしまうことがあります。
 一酸化炭素中毒は、早期であれば新鮮な空気を吸うことで症状は改善されるようですが、ひどくなると入院治療が必要な上、さまざまな後遺症も起こるようです。

3.一酸化炭素中毒が発生する主な原因

 換気が不十分な状態で火気を使用したことによるものが多いようです。特に石油ストーブやガスコンロ、七輪などの燃焼機器では換気が不十分だと不完全燃焼が起きて一酸化炭素が発生することがあります。
 他にも、車庫など換気の悪いところでのエンジンや発電機など内燃機関の使用により一酸化炭素中毒が発生しています。過去には大雪による停電のため屋内で発電機を稼働させ、その排気で一酸化炭素中毒が起きて死亡する事故も起きています。

4.一酸化炭素中毒にならないためには

 燃焼器具を使う場合には充分な換気が一番の対策です。
 また、豪雪や大雨などで充分な換気ができない状況の場合には、燃焼器具を使わないようにすることです。
 それから、燃焼器具を使う場所には一酸化炭素警報器を取り付けておくことも有効です。その際、一酸化炭素は空気よりも比重が軽い(0.967)ため、警報器は部屋の上部に取り付けるようにしてください。

 燃焼機器の注意書きでほぼ必ず書かれている「定期的にしっかりと換気をする」というのは、この一酸化炭素の発生を防ぐためで、特に最近の高密閉住宅の場合には、より注意が必要なのではないかと思います。
 ちなみに、東京消防庁の資料によると、一酸化炭素中毒は空気中の濃度が0.5%を超えると数分で窒息死するそうです。
 これからの時期、寒いので窓を開けることはあまりないかもしれませんが、一酸化炭素中毒を避けるためにも、燃焼器具を使っているときにはこまめな換気を心がけていきたいですね。

煙の特性について(東京消防庁のウェブサイトへ移動します)

避難の場所を考えておく

車内での保管は、クーラーボックスに入れて非常食と飲料水を保存しておくといろいろ便利。

ハザードマップなどに記載されている避難所や避難場所に避難するのに自動車がないと無理、というおうちは多いのではないかと思います。
特に地方に行けば行くほどその傾向が強くなるので、自治体が開設する避難所や避難場所に避難を考えているのであれば、避難レベル3が発表された時点で避難を開始しないと、避難できなくなる可能性が高いです。
でも、あなたの住んでいる場所に災害発生危険箇所、いわゆるハザードがないのであれば、家にいた方が安全です。
また、遠くにいかなくても、近くに安全な場所がないかを確認しておいて、いざというときにはそこへ避難するのもいいと思います。
避難するための施設がなければ、その安全な場所へ車で移動して、車で過ごしてもいいと思います。
車を避難施設と考えて、車の中に防災グッズを載せておけば、避難先でも安心して過ごすことができると思います。

おしりふきは万能です

 おむつ替えの時におしりをきれいに吹くために使うおしりふき。
 防災セットには必需品の一つではないかと筆者は考えています。
 ウエットティッシュでもいいのですが、おしりふきは厚手の不織布を使っているので、非常に破れにくくしっかりと使えます。
 ウエットティッシュと同じように、水や消毒用アルコールなどが染みこませてあるのですが、肌触りがよく、湿り気があるのに吸水力もあるので、非常に多用途に使えて便利です。
 例えば、身体を拭くのに使ったり、テーブルや食器類を拭いたり、もちろんおしりを拭くときにも使うことができますし、使った後も快適です。
 防災セットに入れるおしりふきは、多目的に使うことを考えて影響の少ない水だけを染みこませたものを使うようにします。
 本来のお尻ふきが必要な人は、一日で一パック程度は使ってしまうようですが、ちょっとした用途ならば一人最低一袋あれば支援物資が届くまでのつなぎには充分だと思います。
 名称で抵抗のある方もいるかもしれませんが、何かを拭くという行為には最適のおしりふき。
 防災セットだけでなく、普段使いでも便利な気がします。

冬の感染症対策

 厚生労働省のデータを見ていくと、2020年度の冬はインフルエンザの発生状況がほぼなかったに等しいくらい少なかったそうです。
 これは新型コロナウイルス感染症対策として、多くの人が手洗いやマスクの着用、人との接触を極力避けるなどした結果で、多くの感染症の発生が激減しているところからみると、どの感染症であれ、対策は同じということなのでしょう。
 アルコール消毒はどこでも見かける普通の光景になりましたが、石けんを使ってしっかりと手を洗うことや、マスクの着用、体調不良時の早めの休息などが習慣化すると、感染症にかかる人は今年も少ないのかもしれません。
 ただ、最近ではアルコール消毒があればそれでいいような風潮もあり、新型コロナウイルス感染症の騒動も一応終息しつつあることから考えると、どうかするとインフルエンザが大流行などということになるのかもしれません。
 この手の話を書くと、いろいろとややこしいことを言い出す人が出てくるのですが、必要なのは感情論でも出所不明で検証不可の情報でもなく、客観的で誰でも確認できる公開情報からみた知見です。
 インフルエンザが流行しなかったことと手洗いとマスク着用の因果関係は新型コロナウイルス感染症が流行る前から比較的しっかりと検証されていることです。

この冬がどうなるのかはわかりませんが、少なくとも手洗いとマスクについては、引き続ききちんと続けておいたほうがよさそうです。

インフルエンザの発生状況(厚生労働省のウェブサイトへ移動します)