熱中症対策で摂る飲み物あれこれ

 熱中症対策と言うことで、毎年夏はさまざまな飲み物が飲むべきとか飲まない方がいいとか言われ、同じ飲み物でも評価が分かれることがあります。
 もうそろそろ夏も終わると思いたいのですが、今回は熱中症対策で誰がどんな飲み物を飲むべきなのかと言うことについて考えてみたいと思います。

1.スポーツドリンク

 ポカリスエットやアクエリアスと言ったスポーツドリンクは、熱中症対策としてまずあげられる飲み物ですが飲むべきという人と飲むなと言う人がいる飲み物でもあります。
 浸透圧が調整されているため体に吸収されやすく、水分だけで無く他に体に必要な塩分や糖分といったものも入っているので熱中症対策としては一番手近で一番飲みやすい飲み物です。
 問題になっているのは、その糖分です。元々スポーツドリンクですので、運動している人に必要とされる糖分がしっかりと入っています。そのため、体を動かさない人が多量に飲むと、糖分の過剰摂取が起こってしまうのです。
 糖分の過剰摂取が起きると吐き気や腹痛、意識がもうろうとしたりするペットボトル症候群になるのですが、これを熱中症の症状と勘違いしてさらにスポーツドリンクをがぶ飲みし、救急搬送されてしまったケースもあるようですので、炎天下で大汗を流して仕事をする方や走り回っている人には向いていますが、屋内の冷房の効いたところで飲む場合には、あまり向いているとは言えません。

2.経口補水液

 割と最近登場したスポーツドリンクよりも糖分を押さえ、ナトリウム分などの電解質が強化された飲み物です。
 元々下痢や嘔吐、発熱と言った病気に伴う脱水症状に対して使われているため医師の指導の下で使用するようになっている製品もありますが、そうでないものもあってちょっとややこしいです。
 医療用のものがあるくらいなので、正しく使えば非常に効果的。ポイントはちょっとずつ定期的に飲むことです。
 最も、経口補水液を口にしたときにこれがおいしく感じる状態であれば、軽度の自覚の無い脱水症状を起こしていることが考えられますので多めに飲むことをお勧めします。
 スポーツドリンクとは逆に、炎天下で激しい活動をしている人には糖分が不足しているので向きませんが、屋内の冷房の効いたところでの水分補給には非常に向いた飲み物です。
 市販品も多いですが、「水・1リットル、砂糖・40g、塩・3gを合わせてかき混ぜる」と経口補水液を手作りすることもできます。

3.麦茶

 夏場の飲み物の代表格というとこの麦茶です。割と最近までは「麦湯」と呼ばれていて夏場の滋養によいと飲まれていました。麦茶の原料は大麦で、体温を下げる働きがあることが知られています。
 塩分以外のミネラル分が豊富ですが、塩分と糖分が不足しており、今はどうかわかりませんが、30年前の運動部などではこの麦茶に塩をひとつまみ加えたものが定番アイテムとなっており、糖分を補うためにはレモンや梅干しのハチミツ漬けがよく出てきていました。
 安価で飲み過ぎても体調を崩さずに済むという点では安心して飲むことができ、誰でも安心して利用することが可能です。

4.水

水分のみ補充することができます。安心して飲むことができますが、飲み過ぎると下痢したりします。塩分やミネラル分、糖分といったものを何らかの形で補う必要がありそうですが、塩分飴などが摂取できれば、水で充分という考え方もできます。

5.ビール、コーヒー、紅茶、日本茶

 これらの飲み物は脱水症状を助長します。ビールはアルコール、コーヒー等はカフェインに利水作用がありますので、いくら飲んでも脱水症状がひどくなるだけです。よく「最初の一杯をおいしくするために汗をかいて水分は摂らない」という飲んべえの猛者がいらっしゃいますが、下手するとビールにありつく前に倒れますし、ビールを飲んでも体の脱水症状を助長するだけですのでお勧めはしません。

6.清涼飲料水

 さまざまなものが発売されていますが、いずれも糖分過多です。飲み過ぎるとペットボトル症候群になる確率が高いですし、乾きが満たされることもありませんので、熱中症対策としてはお勧めできません。ただ、水気のものがとりにくいときに自分が好きな味のものを飲むことで脱水症状を遅らせることはできるかもしれません。

7.甘酒

塩分を始めとするミネラルや糖分を効率よく摂取することができ、飲む点滴という方もいます。ただし水分の補給にはなりませんので、別途何か水分の取れる飲み物が必要です。

以上、いろいろと書きましたがそれぞれの飲み物の得手不得手があると思います。
一種類に固執するのではなく、いろいろな飲み物を組み合わせて上手に脱水症状を回避するようにしたいものです。
そして、調べられる範囲では調べていますが、ここに書いたのはあくまでも私見ですので、書いてある内容は鵜呑みにせず、裏付けを確認した上で自己責任で摂取してくださるようにお願いいたします。

熱中症対策を考える

 全国的に梅雨明けした途端、気温が軒並み30度越えという暑さに見舞われていますが、あなたの体調管理は大丈夫ですか?
 急激な暑さのためか、熱中症で緊急搬送されている人が多いようですので、今回は熱中症対策について考えてみたいと思います。

1.熱中症ってなんだろう?

 熱中症は気温や湿度が高い環境にいることで発生します。
 原因は体内の水分や塩分などのバランスが崩れて体温調節機能が働かなくなり、熱が排出できなくなることによって起きるもので、体温の上昇やめまい、体のだるさ、ひどくなると意識障害や失神、けいれん、吐き気などさまざまな症状が起きます。
 炎天下にいなければならないと思われがちですが、家の中であっても室温や湿度が高い状態が続いていると熱中症になる場合がありますので注意が必要です。

2.対策は?

 とにかく無理をしないこと。寝不足や疲労があると危険です。
 また、室温や湿度がコントロールされていれば、熱中症を発症する確率は殆どありませんので、なるべく28度以下の涼しいところに身を置くようにしましょう。
 そして、意識的に水分と塩分をとることも大切です。このときに気をつけないといけないのは、スポーツドリンクを飲み過ぎないことです。スポーツドリンクは運動で消費したカロリー補充の目的もあって糖分が大量に含まれています。そのため、飲み過ぎると糖分過多によるめまいや吐き気、意識障害が起きることがあります。飲むのであれば、スポーツドリンクでは無く、経口補水液や塩を少し加えた麦茶などをお勧めします。

3.熱中症かなと思ったら

熱中症の分類と対処方法は次のとおりです。

 会話の受け答えがおかしくなったり、けいれんや運動障害、体が熱いなどの異常がある場合には、涼しいところに移動させて冷やしながら、大至急救急車を要請するようにしましょう。
子どもや高齢者などは体温調整機能が未熟だったり反応が落ちてきたりしているので、自覚の無いままに熱中症になっていることがあります。気温や湿度が高い状況の時には特に意識して気をつけるようにしてください。

なお、今回の記事は総務省消防庁の作成したパンフレット「熱中症を予防して元気な夏を!」を参考にしております。わかりやすく書かれていますので、ぜひご覧になり、熱中症にならない対策を行ってください。

避難後の温度対策

 避難した先に冷暖房があればいいのですが、体育館のような場所だと大抵の場合は冷暖房の装置がありません。
 また、災害のときに何らかの形でエネルギーが途絶えてしまえば、機械のスイッチを入れることができませんから避難所は外の環境と同じような状態になります。
 そうすると暑かったり寒かったりして体調を崩してしまう人が出てくるのですが、なかなか対策がうまく見つからないものです。
 実はこの温度管理に重要なのが「風」。
 寒いときには風を遮断し、熱いときには風を通す。それだけで環境の快適さがずいぶんと変わります。
 寒いときには風を遮断して体の周りに空気の層を作り出すこと。それだけで充分に暖かく過ごすことができます。よく防災グッズに入っている銀色のエマージェンシーシートは、なるべく体に巻き付けて体の周りにある空気を逃がさないようにするためのもので、エマージェンシーシートを身につけたからといっても体の周りに動かない空気の層ができなければただ寒いだけでちっとも暖かくはなりません。体を温めるための熱は体温であり、エマージェンシーシートが暖かくなるわけではないことに注意が必要なのです。
 また、夏場の暑いときには建物の中を風が抜けるようにします。窓を開け放ち、風の通り道を確保することで、居住環境がずいぶんと変わります。
 この場合は、例えば外の温度の方が低ければ建物内部から外に向けて扇風機を回すと内部の熱を追い出すことができますし、逆に中の方が涼しいのであれば、建物内部で扇風機を回すようにするとそれなりに快適な空間を確保できます。
 避難所で体調を崩す理由の一つが、この温度管理にありますので、なるべく快適な環境を作り出せるように、「風」を意識して準備をしておきたいものですね。

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。

応急手当をwebで学ぼう

 応急手当については先日ちょっとご紹介したところですが、消防庁のサイトに「応急手当web講習」というのがあります。
 インターネットで応急処置の流れを映像で見ることができ、非常にわかりやすく作られています。
 終了後は修了証がインターネットから印刷することも可能になっており、いつでも見ることができて便利です。
 実地講習は各消防署や日本赤十字社が行う講習を受けなければ体験できませんが、どんな感じでどんな風に判断すればいいのかだけでも理解していると、万が一の時に活用できます。
 普段忙しくてなかなか講習会に参加できない方も、この「応急手当web講習」で応急処置について学んでみてください。

コミュニケーションボードを準備する

 避難所の運営で一番問題になってくるのは、コミュニケーションです。
 避難者は普段から顔見知りの人ばかりでなく、旅行者や通りすがりの人、住んではいるが面識のない人、日本語がうまく通じない人、障害を持つ人などが避難してきます。
 この人達とどのようにコミュニケーションを取ったらいいのでしょう。
 日本語が話せる人であれば、会話することでお互いにどのように考えているのかわかることができると思いますが、日本語が話せない、聞き取れない人とのコミュニケーションは、次々に人がやってきて大騒ぎになっている状況ではかなり困難なのではないでしょうか。
 だからといって、その人が理解できる言語で会話できる人を常に受付に配置することもかなり難しいです。
 そのため、受付にはコミュニケーションボードを準備しておくことを勧めます。
 このコミュニケーションボードというのは、最近あちこちで見かけるようになりましたが、簡単な行動や問い合わせ内容、ひらがな、数字、時計などを一枚のボードにして、それを指さすことでお互いの意思を確認できるという道具です。
 このボードに地域で多い国の人の母国語も併せて表示させておくと、会話が通じなくても最低限の意思疎通ができることから、災害対策の一つとして各自治体や社会福祉協議会などで作成されています。
 もちろん、文字が理解しにくい方もいらっしゃいますので万能ではありませんが、それでもこれを予め用意しておくことで会話が通じないというお互いのストレスを軽減させることができ、一度にたくさんのことをこなさなければならない避難所開設時には威力を発揮するのではないかと考えています。
 また、避難所を開設してからのさまざまなお知らせも、音声だけでなく、大きく書き出して貼り出すことで、伝わらない、聞いていないというトラブルを防ぐことが可能です。
 どのようなものかイメージがつかないという方のためにいくつかのリンクを貼っておきますので、自分の地域で使えそうなものを見つけて、試しに使ってみてもらえるといいなと思います。

横浜市社会福祉協議会のコミュニケーションボード

八王子市のコミュニケーションボード

公益社団法人明治安田こころの健康財団のコミュニケーションボード

蘇生法を知ろう

心肺蘇生の練習をするために作られた”actor911”

 災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
 ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
 大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
 今回は、その方法について書いてみたいと思います。
 ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
 それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。

1.処置にかかるまでの準備

(1)まずは安全確保

 負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
 負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。

(2)負傷者の全身の状態を確認する

 どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。

(3)意識の確認をします

顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。

(4)支援者を呼ぶ

 周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。

(5)呼吸の確認

 胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
 一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
 意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。

2.処置の優先順位

放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。

3.処置の方法

(1)心臓マッサージ

両手で胸骨を圧迫する。少々力を入れて押さえても凹まないことが体験できる。

 胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
 1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。

(2)人工呼吸を行う

直接口同士を触れると感染症の心配があるので、ハンカチなどを間に挟んで人工呼吸を行う。

意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。

(3)AED

蓋を開くだけで起動するAEDの例。

心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。

①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること

  AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
 また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
 注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
 それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
 AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
 使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。

(4)止血処置

圧迫止血を包帯がしてくれる機能を持っているものもある。写真はイスラエルバンテージ、もしくはミッキーバンテージと呼ばれるもの。

 止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
 止血処置の方法は、次の3つがあります。

①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。

4.処置を止めてもよいとき

 基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。

(1)生き返ったとき

 当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。

(2)救急隊に引き継ぐとき

 救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。

(3)自分の安全が確保できない状態になったとき

 災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。

5.その他

 心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
 また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
 消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
 なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。

救急箱の作り方

 非常用持ち出し袋の中にいれる救急箱にはどのようなものを入れますか?
 一般的なセットだと、ばんそうこう、包帯、滅菌ガーゼ、三角巾、消毒液といったところだと思います。

 防災用品として売られているDr.Kの巾着型救急袋。コンパクトにまとまっていて外傷用品が一通り入ってはいるが、これだけだと心細い。

 ちょっとした怪我だとこれで対応ができるのですが、被災時にはなかなか治療部分のケアが難しいものです。
 例えば、やけどや擦り傷などにはキズパワーパッドなどハイドロコロイド素材の絆創膏や包帯があると、傷口のケアのあと、一度貼れば直るまでそのまま放置できて助かります。

キズパワーパットだけでなく、さまざまな大きさや形のハイドロコロイド素材のアイテムが出ている。
大きいものがあると、擦り傷からやけどまでいろいろと使えて便利。医薬品なので、使用期限は定期的にチェックが必要。

 また、状況によってはかなりの出血を伴う怪我をする可能性もありますので、傷口を圧迫止血し続けることのできるエマージェンシーバンテージ(イスラエルバンテージ)があれば、応急救護所までの命をつなぐことが可能です。
 これらのアイテムを使うためには傷口のケアができないといけませんので、ピンセットやはさみ、とげ抜き、綿棒といったアイテムを収めたケアセットも入れておいた方が無難です。
 内服薬としては、自分が普段使っている薬のある方は最低3日分準備します。また、ビタミン剤や目薬などが入っていると体調の維持管理に使えます。
 ただ、ケアセット以外はいずれも使用期限が設定されていますので、1年に1度くらい点検し、使用期限が切れないように注意をしておきましょう。
 そして、せっかく用意した救急箱ですから使いこなせた方がいいですよね?
 日本赤十字社がやっている救急法講習の「救急法救急員養成講習」を受講すると怪我の手当の仕方を正しく身につけることができますから、時間を作って、是非受講してください。

防塵マスクあれこれ

 災害時に付きものなのが粉塵です。
 東日本大震災や熊本地震の時には地上から1mくらいは粉塵で満たされました。
 水害などでは被災後はそうでもありませんが、ヘドロが乾いてくると車や人が通るたびに粉塵が舞い上がります。
 気管支の弱い方だけでなく、普通の人でも喉が痛くなるような環境となりますので、それに備えてマスクを用意しておきましょう。
 普通のマスクでも問題ありませんが、気管支が弱い方などはN95やDS2といった防塵効果の高い高規格のものを用意しておくと安心です。
 ちなみに、N95もDS2も防塵・防護マスクとしての基準で、N95は米国労働安全研究所(NIOSH)が、DS2は日本の厚生労働省がそれぞれ定めたものですが、能力としては殆ど互角のものです。

DS2規格とN95規格の使い捨て防塵マスク。医療用マスクだと市中では手に入りにくいが、ホームセンターに行くと普通に売っている。N95の方が単価は安い気がする。

 このマスク、防塵対策だけではなく、PM2.5やインフルエンザウイルスを吸い込みにくい効果もありますから冬場や春先でも威力を発揮します。
 ただ、せっかくのよいマスクを買ってつけていても自分の顔にちゃんとフィットさせられていないとマスクの本来の能力は発揮されませんので、あらかじめきちんとつけられるように練習しておくことが大切です。
 非常用持ち出し袋には数個、家の備蓄としては2週間程度準備しておくことで、気管支のトラブルを防ぐことができますよ。

要支援者と域外避難

 災害が発生すると、国の計画では発生後3日以内に必要と思われる物資を被災地に送り込むことになっています。
 この物資は命をつなぐためのものが最優先であるため、主に食料と水が中心となります。
 それから日用品に移行していきますが、全ての人が必要としない物資についてはどうしても遅れてしまう、または届かないという特性があります。
 たとえば、大人用おむつや乳児用ミルク、生理用品、アレルギー対応食などがこれに該当し、必要とする人の数が少なければ少ないほど支援物資として届く優先順位は下がります。
 これは医療現場でも同じで一般的でない病気や資機材のいる病気などへの対応はやはり遅くなってしまいます。
 東日本大震災では酸素吸入や透析が必要な方への手配が問題となりました。
 さまざまな理由で特殊な資機材や物資の支援が必要な人、つまり要支援者が一定数存在することを考えると、災害時には被災地以外の場所へ一度待避してしまったほうが支援が受けやすいのではないかと思います。
 受け入れの問題もありますが、都道府県や市町村といった行政機関や病院でお互いに受け入れ体制を作り輸送手段の確保さえすれば、要支援者への対応を被災地で考える必要がなくなり安全性も増すのではないでしょうか。
 復旧や復興にどれくらいかかるのか、いつ地元へ戻れるのかがわからない不安はありますが、資機材不足、物資不足による命の危険と併せて考える必要があると思います。
 行政機関同士では対口支援(たいこうしえん)と呼ばれる行政職員の相互支援協定が作られて、平成30年の西日本豪雨でも活用されました。
 行政職員を被災地へ送り込む制度ができるのですから、要支援者を被災地外へ搬出する制度もできるのではないか。
 いろいろと問題はあると思いますが、検討しておく重要なことの一つではないかなと考えます。