火を作る

鉄製の鉢置きを使って簡易炉を作りお湯を作る。外遊びごはんの会の一コマ

 災害時にはいろいろなことに使える火は絶対に確保すべきものの一つになります。
 停電し、カセットガスなどがない状態では裸火を使うことになりますが、普段からその取扱いになれていないとせっかく作った火から出火することになって余計な被害を増やすことにもなりかねません。
 常にやれとは言いませんが、チャンスがあれば薪などを使ったたき火を作って火の使い方を習熟するのと同時に、火を楽しめればいいと思います。
 残念ながら野焼きは禁止になっているところが殆どだと思いますので、キャンプ場や火の管理のできる場所で、実際にやってみてください。
 火の作る方などはユーチューブなどにいろいろ出ていますので、それらを見て覚えて、いろいろなつけ方をやってみてください。
 ちなみに、当研究所でも外遊びごはんの会などでファイアスターターを使ってたき火を作ることがありますが、実際にやってみると大人よりも子供のほうがはるかに上手です。機会があったら、ご家庭で親子でチャレンジしてみても面白いと思いますよ。

イノシシと豚熱

イノシシの駆除は根気のいる作業。なかなかかからないので、知恵比べになる。

 当研究所では通年で有害捕獲許可を持つ猟師が有害捕獲活動をしています。
 普段なら猟期には猟もするようですが、今年はひたすら有害オリの管理に徹して自分ではワナはかけないとのこと。
 どうしてかと思ったら、地域で豚熱が発生していました。
 豚熱が発生してしまうと、その地域で捕獲したイノシシは販売ができなくなります。
 自家消費用として食べることは問題ないようですが、解体したイノシシの残渣についてもその場で埋められないなど厳しい対応が求められるため、とてもではありませんが捕獲する手間がかけられない状態になっています。
 ここ何年もイノシシが増えてきて農作物に被害を与えるということで、徹底的な駆除を求められ、ジビエの普及についても躍起になっているさなかでの豚熱発生。
 清浄化宣言が出るまでは猪肉を売ることができず、捕獲しても手間ばかり増えて赤字になってしまうため、猟期になっても猟をしないという選択を取る猟師が多いです。
 問題は、豚熱が発生しても、イノシシの増える数はそんなに変わらないということ。
 つまり、捕獲する圧がかからなければどんどん増えてしまうことになってしまい、農作物への被害も甚大になるのではないかと感じています。
 島根県農畜産課のウェブサイトによると、食べても害はないそうですから、捕獲して食べるという今までのやり方で問題なさそうなのですが、他方で流通はさせないとも書いてあります。
 「食べてもよいけど流通はさせないよ」となると、選択肢は自家消費しかないのですが、売れないものを手間をかけて捕獲する人はそうそういない気がします。
 ある程度まで増えれば、餌の取り合いになって自然淘汰されていくとは思うのですが、そこに至るまでに何が起きるのかが気になるところです。

豚熱(CSF)に関すること(島根県のウェブサイトへ移動します)

屋根の雪下ろしと安全帯

当研究所のある地域は降ってもこの程度。でも屋根からの落雪で怪我をすることはある。

 大雪が収まると、大量の雪が屋根に積もっている場所では雪の重さによる家屋の倒壊や落雪による怪我などが起こります。
 そのため雪下ろしをするわけですが、雪下ろし中に転落事故等により怪我をすることもよく起こります。
 雪下ろし中の転落防止のため、最近のNHKラジオの中で「安全帯をつける」ように放送がされていて、気になったことが一つ。
 確かに、転落を防ぐために利用されている安全帯は屋根など高所での作業では絶対に装備しておく必要のある道具の一つです。
 ただ、安全帯をつけるためにはその安全帯をつなぐためのアンカーという設備を準備しておかないと、もしも転落した時に安全帯が役に立たなかったという事態になりかねません。
 調べてみると、豪雪地帯である新潟県などでは屋根に雪下ろし用のアンカーを取り付けることや、そのアンカーを設置するために必要な工事代金の補助などが行われているようです。
アンカーを作る工法にもいろいろとあるようで、その場にあった工事をしてもらえるようです。
では、突発的に大雪が降った場合にはどうすればいいのか。
国土交通省のウェブサイトを見ると、「アンカーがない場合には反対側の柱や固定物にしっかりと固定する」となっていて、安全帯は必須であることと、固定するものの強度については特に問われていません。
 固定してみたら壊れてしまったということがないように、大雪が降りそうな場所にお住いで屋根にアンカーの取り付けができない場合は、冬に入る前に屋根から雪下ろしをする場合にはどこに安全帯を固定させるのかについて考えておいたほうがよさそうです。また、安全帯をつけていても転落時に救助してもらえなければ意味がありませんので、作業は必ず複数人で行うようにしてください。作業ができなくても、安全を確認するための見守り要員は準備しておきましょう。
 毎年大雪が降った後はほぼ必ずと言っていいくらい除雪時の転落事故が起きています。転落しないような対策について、大雪が積もる場所にお住いの方はしっかりと考えておくようにしてください。

「雪下ろし作業用具(安全帯、命綱、アンカー等)の入手、使い方について」(新潟県のウェブサイトへ移動します)

「雪下ろし安全10箇条~除雪作業中の事故に注意しましょう~」(国土交通省のウェブサイトへ移動します)

枕元に着替えを置こう

 ちょっと前くらいまでは、お年寄りが子や孫に「枕元に着替えを置くこと」を口を酸っぱくしていっていたのではないかと思います。
 かくいう筆者の家も、祖母が健在のころにはやはり着替えをすぐに着ることのできる場所に置いておくように言われていましたが、着替えの話とセットでよく空襲や災害の話をしていましたので、これは戦争時に何か起きたら、すぐに着替えて避難できるように準備しておくようになったのかなと思っています。
 突発した非常時に逃げなければいけなくなったとき、寝巻のままで避難をするのはいろいろな意味で危険だなと感じます。枕元に着替え、そして避難用の靴を置いておくことで、いざというときに迅速に行動ができると思います。
 また、これが準備できていると、夜間に停電して暗いときにでも着替えがあるのはわかっているので慌てなくてすむことも利点です。
 寝る前のちょっとした工夫で、災害時や翌日に迅速に行動ができる習慣として、枕元に着替え、そして非常時に履いて逃げるためも靴を備えておくといいと思います。
 ちなみに、非常用の靴は普段使いのものとは異なります。まっさらな靴を準備しておいて、今履いているのがダメになったら買っておいたその靴を使い、また新しいのを非常用の靴として使います。
 使っている靴を枕元に置くと、雑菌が辺りに舞うことがありますので、靴を準備するときにはその部分について気を付けてください。

JPCZってなんだろう

 ここのところ気象情報でJPCZ(ジェイピーシーゼット)という言葉が頻繁にでてきています。
 このJPCZ、日本語にすると日本海寒帯気団収束帯(Japan-sea Polar air mass Convergence Zone)となるのですが、日本語にしても意味がよくわからないと思います。
 気象用語なのですが、簡単に書くと、冬の日本海側の東北から山陰にかけて大雪が降るような状態と考えてください。
 大陸から吹く冷たい風が、朝鮮半島北部にある長白山脈で南北の二手にわかれ、日本海で再びぶつかるのですが、その際、日本海で暖かな水蒸気を吸収して大きな積乱雲が発生します。
 その積乱雲がほぼ同じような場所を通過していくため、その場所で大雪が降ることになります。

赤丸で囲った部分がJPCZの部分。

 天気図で見ると、西高東低の冬型の気圧配置で、等圧線が「く」の字状になっている部分、ここに発生します。
 そのような天気図を見たら、早めの雪対策をとるようにしてください。

冬型の気圧配置(気象庁のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

 2022年12月21日に益田市立高津小学校で防災クラブを開催しました。
 今回は二本立てで、最初は火災について、その後は大きなゴミ袋を使った防寒着を作ってみました。
 火災については、前回の防災オリエンテーリングで消火器の表示を見た子が「電気火災ってなんだ?」と呟いたことから、油火災や電気火災の時にどうして水を使ってはいけないのかについて、映像を交えながら確認してもらいました。
その後は、火を使わずに温まれる方法ということで、ごみ袋を使った防寒着を作ってみました。
 毎年この防寒着づくりをやるといろいろな防寒着ができて面白いのですが、今回は時間がなかったこともあって割と普通のものができていました。
 実際に着用した子からは「あったかいね」という感想をくれました。

 ちょっとしたことなのですが、物事には理屈があってからくりがあります。
 それを知ることで、災害時にも元気で過ごせるような子供たちになってくれるといいなと思います。
 参加してくれた子供たち、そして担当の先生、手伝ってくれているスタッフに感謝します。

ペットの避難所問題

 岡山県総社市でペットとの共生を掲げてペット避難所を作ること、そして行方不明になったペットの捜索を掲げた条例が議会で否決されたそうです。
 記事によれば、市長さんは「ペットの問題で毎回現場が揉めるので明文化しようとした」ということだったのですが、議会では「人命救助に支障が生じる」「人的資源がない」などといった理由で現状維持でいこうという判断をしたようです。
 避難所の収容人員がコロナ禍でかなり減っており、この上ペットの収容まで考えるとパンクするという考え方も、そうでなくても手が足りない災害時に行方不明になったペットの捜索をするのは物理的に無理です。
 ただ、ペットと避難については、いつの災害でも必ず避難所運営者を悩ませる問題になってしまっていて、関係性を明文化しておくということは大切なことなのではないでしょうか。
 その避難所がペット避難可なのか、ペット可だとして、同行避難なのか同伴避難なのか、収容する場所や収容できる動物は何かなど、考え出すと結構問題がたくさんあるのですが、現状でうまくいっていない状態はどうにかしないといけないと思います。
 とはいえ、ペット問題は本当に多岐に及ぶので、一律的に決めるのも難しいことは事実。さまざまな団体や避難所運営者が試行錯誤していますが、なかなかこれだという解決策は出てきていません。
 ペットは家族の一員であり、人によっては家族以上の存在になっている場合もあります。そしてペットの避難ができいのであれば自分も避難しないという人が多いのも事実です。
 人間が一時避難所で難を避けた後、指定避難所に移動するように、ペットも一時避難したあと、しばらく過ごせるような場所について選択肢を作っておくのは一つの方法なのではないかという気がしています。

停電時の寒さ対策

 最近の住宅はかなり電化が進んでいて、何をするのも電気がないと困る状態のおうちも多いのではないでしょうか。
 ただ、何らかの原因で停電になってしまうと、途端に何もできなくなるという怖さはあります。
 寒波の来ているようなときに停電になってしまうと家の中は冷蔵庫になってしまうので、低体温症や凍死を防ぐために、自分の体を冷やさないための対策が必要になります。今日はその方法を考えてみたいと思います。

1.発電機や蓄電器を使う

最低限の暖房器具が動かせるような発電機や蓄電器があれば、それを使うことで家の暖房器具を動かすことができます。
ただ、発電機は十分な酸素がないと一酸化炭素が発生してしまいますので、風通しの良い屋外でのみ使うようにして、屋内では絶対に使わないでください。
毎年1件以上の死亡事故が起きているくらい頻発していますので、屋外でも、風通しの悪い場所では使わないようにしてください。
蓄電池の場合には、その蓄電池が使える定格出力を超えない範囲で使うようにしてください。

2.別の熱源を使う

 ちょっと前までは割と普通に複数の熱源が家の中で使われていました。
 例えば、調理はガスで、暖房は石油ストーブ、灯りは電気という風に。
 少なくとも、暖房としてカセットガスストーブ、または石油ストーブを準備しておくようにすると、とりあえずをしのぐことができます。
 火を使って熱を作る暖房器具の場合、多くは調理にも使えるようになっていますので、停電時には暖と調理のできるありがたい器具となります。
 ただし一酸化炭素中毒になる危険性がありますので、30分に1回程度は換気をするようにしてください。
 炭や練炭などは大量に酸素を必要とするため一酸化炭素が発生しやすいです。そのため、屋内での使用はお勧めできません。
 また、お湯が作れるなら湯たんぽや、使い捨てカイロも暖を取るための優秀な道具です。

3.体の熱を逃がさない

 人間の体はかなりの熱量を出していますので、これを逃がさなければしっかりとした暖を取ることができます。
 例えば毛布や羽毛布団など、中に大量の空気を閉じ込められるようなものに包まれば、かなり寒さをしのげます。また、ウインドブレーカーや、何もなければ大きなゴミ袋を着ても、寒さしのぎはできます。
 ただ、体が冷え切ってしまうと熱を作りにくくなってしまうので、いくら着込んでも温かくなりにくいです。もしも着込むのであれば、停電してから部屋の熱が逃げるまでの間にしっかりと着込むようにしてください。
 また、汗をかくと冷えてしまうので、汗をかかない程度に着込む調整をすることも大切です。

 他にもあるとは思うのですが、停電時に暖を取る方法はあらかじめ準備をしていないといざというときに使うことができません。
万が一に備えて、しっかりとした準備をしておきましょう。

【活動報告】研修会「持ち歩き防災セットを作ろう!」を開催しました

自分が必要だと考えるアイテムを選んで持ち歩き用防災セットを作っていく

 2022年12月18日に益田市の益田市民学習センターにおいて、研修会「持ち歩き防災セットを作ろう!」を開催しました。
 当日は雪の舞う寒い中、5名の方にご参加いただき、持ち歩くための防災セットの考え方や実際に用意してあるさまざまなアイテム類の中から自分が必要だなと思うものを選んでもらって自分用の防災セットを作ってもらいました。
 これらの防災セットを普段使いのカバンなどに入れてもらって使ってもらい、しっかりとアップデートしていってほしいなと思います。
 寒い中、熱心に参加してくださった皆様にこころからお礼申し上げます。

使い捨てカイロが温かくならないワケ

 寒くなってくると、多くの人がお世話になる使い捨てカイロですが、せっかく封を切ったのに全然温かくならなかった経験はありませんか。
 考えられる原因はいくつかあるのですが、せっかく使う使い捨てカイロなのですから、上手に温かくする方法を確認しておきたいと思います。

1.揉んではいけない

 使い捨てカイロ、封を開けて早く熱くしようと揉んだりした経験は誰もがあるのではないでしょうか。
 使い捨てカイロの外袋に使われている不織布は、カイロ用に作られている製品とのことで、内部に一定の酸素量を供給する加工がされているそうです。
 カイロの袋を揉むと、中の活性炭や鉄粉などが酸素を供給する穴を塞いでしまって内部に十分な酸素が入らなくなり、反応が鈍くなって温まらない事態が発生します。
 開封後にカイロを振るのはカイロの中身の反応を早くさせるためですが、温かくないからと言って激しくもんだり振ったりするのは逆効果だと言えそうです。

2.空気の通りを止めてはいけない

 1と同じような話ですが、ウインドブレーカーやビニールカッパなど、空気を遮断する服のポケットなどに入れると、やはり酸素の供給量が減ってカイロがだんだん冷たくなってくることがあります。
 冷たい空気を遮断することは保温には非常に有効なのですが、カイロを入れる場所は空気を遮断しない服の中にするようにしてください

3.外袋を傷つけてはいけない

 使い捨てカイロは鉄が水で酸化していく反応の過程で発生する熱を利用するものです。そのため、反応するための材料は一つを除いて全てが不織布の中袋の中に収められています。
 反応を開始するのに足りない材料は酸素。これが供給されると、使い捨てカイロは反応を開始します。
 使い捨てカイロの袋を改めて調べてみると、外袋は空気が抜けた状態になっていると思いますが、これは反応に必要な酸素を遮断するためにこんな構造になっています。
外袋に小さな穴でも開いてしまうと、そこから酸素が供給されて化学反応が始まってしまいます。
 そうすると、いざ使おうと思ったときには反応が終了していつまでも温かくならないという状態になってしまいます。
 保管するときには、外袋に穴が開かないように気を付けるようにしてください。

 使い捨てカイロの内容物は、鉄、水、塩、活性炭、バーミキュライトで構成されています。
 これに酸素を加えることで酸化反応が起き、鉄が酸化鉄になる過程で発生する熱を利用したものが使い捨てカイロです。
 逆に言えば、酸素を絶てば反応を止めることができるので、途中で使わないときにはチャック付きビニール袋に入れてしっかり密封しておけば、使いかけの使い捨てカイロを保存することもできそうです。
 使い捨てカイロは寒い時期には本当にありがたいものです。
 上手に使って、寒い時期でも温かく過ごせるようにしたいですね。