考え方の違いを理解する

 多くの人が当たり前だと思っていることでも、100%の人がそう思っているとは限りません。
 特に災害後で情報が錯綜しているときには、自分を守るためにどうしても周囲が困ってしまうような行動をとってしまうことがあります。難しく考えなくても、例えばコロナ禍で使い捨てマスクがどういう状況になっていたのかを考えれば理解できるのではないでしょうか。マスクの供給が止まってしまうような報道が出たとたん、店頭でマスクを買い占める人が続出して店では売り切れていた状態。状況がわからずに不安になったので、目につくものをすべて手に入れようとしてしまうことは、迷惑な話ではありますが、感覚としては理解ができませんか。
 さまざまな感覚を持つ人がその所属するコミュニティーに関係なく避難所に避難してくるのが災害です。「そんなことは常識」と考えるのは簡単ですが、思ってもみないところでお互いの悪気のないトラブルが起きるのを回避するためには、ルールをきちんとわかるようにしておくことです。
 全ての手順を誰にでもわかる表示で見えるところに張り出しておくことで、考え方の違う人でもどのような行動をするべきなのかがわかります。
 考え方が異なる人たちが同じ空間で生活するためにはルールを決めることとそのルールをわかるようにしておくこと、なによりも、全ての人がわかる手順を踏んでルールを決めることが大切です。
 緊急時にはそんなことをしている余裕はないと思いますので、できるだけ事前に避難所運営委員会などを設置して、避難所におけるルールを決め、すぐにわかるところに貼りだせるように、場所やポスターなどを準備しておくようにしてください。
 非常時には、ちょっとしたトラブルが大きなトラブルに発展しやすいです。
 できるだけトラブルが起きないような準備をしておきたいですね。

弱者ほど厳しい避難所生活

 災害の避難情報では「レベル3・高齢者等避難」と「レベル4・避難指示」に別れています。
 このうち、レベル3の高齢者等の「等」には障がい者や乳幼児、妊婦といった生活に対してさまざまな配慮のいる人達が含まれていて、そういった人達は元気な人よりも早く避難を促されています。
 その理由はいろいろとあるのですが、一番大きな理由は、元気な人と同時に避難を開始したら、生活に配慮のいる人達は元気な人に避難する速度が負けてしまうからです。
 生活に配慮のいる人いない人の区別は、避難所にはありません。考え方としては、避難者は平等に避難者としての取り扱いがされてしまいます。
 そのため、生活に配慮のいる人達は元気な人と同時に行動を開始すると、どうしても速度で負けてしまって、避難しても避難所等に収容してもらえないという事態が発生します。また、元気な人に交じって避難するのが難しい場合もありますのから、せっかく避難したにもかかわらず、結局自宅に戻ってしまう例も起きています。
 これはまずいということで、現在は配慮のいる人達は最初から福祉避難所に避難できるように法改正されているのですが、普段から施設を利用している人達はともかく、乳幼児や妊産婦を最初から受け入れてくれる場所は、保育園や病院、助産院などになり、福祉避難所としてはあまり聞きません。
 また、元気な人でもアレルギーを持っている人がいますが、避難所で避難者に支給されるさまざまな支援物資はアレルギーの配慮はありませんので、自分でものを見て判断していくしか手がありません。
 これも避難者として平等に扱われることから発生する問題です。
 一般的に生活になんらかの配慮がいる人達は避難所では隅に押しやられ、その上生活再建することも時間がかかってしまうために最後まで避難所にいる羽目になることが多いです。
 あなたがもし、生活になんらかの配慮が必要な人だとしたら、避難所に避難するとひどい目に遭うことは目に見えていますので、避難所以外で自分が安心して過ごすことのできる避難先を用意しておくことをお勧めします。
 生活弱者ほど厳しい生活になってしまうのが避難所です。
 避難しなくても済むような場所に住んでいることが一番の理想ですが、さまざまな事情でそれが難しい場合には、最低1カ所、できれば複数箇所、自分の安心できる避難先を見つけておいてください。