災害用トイレは使えますか

自治会や自主防災組織の研修会では、仮設トイレの組み立てを実際にやってみてもらうことも多い。

 災害が起きると、断水や停電、浄化槽や下水道管の破損などでトイレが使えなくなるケースが結構多いです。
 トイレが使えない状態なのに無理やり使うと、トイレの中は大惨事になってしまいますので、できるならトイレがちゃんと使えることが確認できるまでは使用を禁止するようにしてください。
 そうなると必要になってくるのが仮設トイレや携帯トイレ。
 ただ、個人や自治会、自主防災組織などで準備はしていても、これを組み立てたり使ったりすることはほとんどないのではないでしょうか。
 普段使っていないものは、いざというときにも使えませんので、防災訓練のときには実際に使ってみてください。
 また、避難所で設営が必要な仮設トイレは、訓練のたびに出して組み立て、使いかたをしっかりと確認しておくことはとても大切です。
 トイレは我慢ができません。そのあたりに穴を掘ってすることにしてしまうと、周囲の衛生状態に深刻な問題が発生します。
 災害時のトイレ設営は最優先されることの一つなのです。
 いざというときに慌てなくて済むように、携帯トイレの準備、そして実際に使ってみること。
 仮設トイレは実際に組み立てて、これも使ってみること。
 この部分の訓練は手を抜かないようにしたいですね。

【活動報告】津和野町で防災教室を開催しました

会場の養老館。幕末の津和野藩の学び舎を再現した建物とのこと。

 2023年3月16日に津和野町の養老館でつわぶきワクワク広場様主催のイベントに講師として参加しました。
 当日は5人の小学生と一緒に、蚊取り線香を作り、その後地域のハザードマップを見ながら水害や土砂災害、地震からどうやったら自分の安全が確保できるかについて一緒に考えていきました。
 参加してくれた子たちは、初めて見たハザードマップを見ながら考えてくれ、その時に感じたいろいろな疑問や質問に答える形で進めていきました。
 講師としての反省点はたくさんありましたが、新しい視点で教えてもらったことがたくさんあって、とても楽しい時間を過ごすことができました。
 参加してくれた子ども達、今回お声がけいただいたつわぶきワクワク広場様に心から感謝いたします。

【終了しました】研修会「となりのマイタイムライン」を開催します

 2023年4月8日に益田市の益田市民学習センターにおいて、ワンコイン研修会「となりのマイタイムライン」を開催します。
 最近、防災の話の中でよく出てくるマイタイムラインですが、何をどのように書いたらいいのかに悩む方も多いようです。
 各個人ごとに作ることが求められているマイタイムライン。
 日本語にすると「災害時行動計画(人によって違いあり)」を作っておくことで、いざというときの自分の行動に見落としがなくなり、より安全が確保できるものですが、災害時の行動がわからないとなかなか書きにくいものです。
 そこで、今回はさまざまな人が作った「その人のマイタイムライン」を覗いてみて、どんなことを書いておいた方がいいのか、何を書いておくといいのかについて考えてみます。
 資料の準備の都合上、事前申込をお願いします。
 チラシでは電話またはLINEとなっていますが、Fecebookのメッセンジャーでのお申し込みでも大丈夫です。
 興味のある方のご参加をお待ちしております。

【活動報告】NHKラジオに理事長が登場しました

 去る3月10日、NHK松江放送局の「しまねっとラジオ」の中の知る防災のコーナーにゲストとして当研究所の理事長を呼んでいただき、司会の澤田アナウンサーやパーソナリティーの江上さんと一緒に工作やクイズなどをやってみました。
 東日本大震災の起きた3月11日に近かったこともあって、特に今回は地震がテーマでしたので、まずは自分の身の安全を確保することが大切だというお話をいたしました。その人がいる状況によって身の安全という動作は異なるのですが、まずは死なないこと、怪我をしないことを最優先で行動してほしいと思います。
 なかなかマスメディアに当研究所が登場することはないのですが、今回お声がけいただきましたことに感謝します。ありがとうございました。

周囲の間違い探し

 土砂崩れ、土石流、地すべりといった土砂災害は、多くの場合事前になんらかの予兆が起こりますが、それに気づかずに災害に巻き込まれるというケースが多いようです。
 注意してみていると、焦げ臭いにおいや斜面のふくらみや斜面からの小石の崩落など、さまざまな小さな変化が起こっています。
 先日、この話を子供向けの防災教室でしたところ、ある子が「それって間違い探しだね」と言ってくれて、なるほどなと思ってしまいました。
 小さな変化に気をつけようといっても、なかなか難しいかもしれませんが、例えば子供たちに「毎日観察して間違ったところ(普段と違った変化のある場所のこと)があったら大人に教えてね」と言っておくと、彼らは楽しみながら観察をしてくれるのではないかなと思います。
 小さな変化は間違い探し。
 これを意識して小さな変化に気づきたいですね。

備蓄する飲料水のサイズ

水にもいろいろなサイズがある。

 非常用持ち出し袋や備蓄品を用意するときに悩むのがお水のことです。
 一日2~3リットルの飲料水を準備するとなると、それだけで2~3kgの重さになりますので、非常用持ち出し袋に入れて歩こうと考えると結構大変です。
 とはいえ、水は生き延びるために必須のものですから、非常用持ち出し袋だけでなく、普段使いのカバンや車の中、職場のロッカーなどにも準備しておきたいところです。ただ、よくあるのが、2~3リットルだからといって1リットルや2リットルのペットボトルで準備してしまうこと。
 分量的には問題ありませんが、持ち歩くときや飲むときに大変なのであまりお勧めしません。
 300mlから500mlの容器で複数個持ち歩くようにすると、非常用持ち出し袋の中でもおさまりがいいですし、飲むときも楽です。
 また、一度封を切ってしまうと一日もたつと飲料不適の水になってしまいますので、小分けすることで飲めない水の大量生産も防ぐことができます。
 家の備蓄品などで料理などに使用するのであれば2リットルでも問題はありませんが、直接の飲料用は持ち歩けるサイズにしておきましょう。
 また、お茶やジュースではなく、あくまで水を持ち歩くようにしてください。
 水なら傷口の洗浄や手洗いなど、ちょっとしたことにもいろいろと使えます。お茶やジュースだとこうはいきませんので、もしお茶やジュースを持ち歩くのであれば、それとは別にお水も用意しておいてください。
 ほんのちょっとした工夫ですが、これを意識するかしないかで本番ではかなり変わってきます。
 備蓄する水の量とサイズ、少しだけ意識するようにしてください。

いかに自己完結できるか

 大規模災害時における被災地支援では、支援者がどれだけ自己完結できる装備を持っているのかがカギとなります。
 衣食住については、被災地では当然不足している状態ですので、被災地に負荷をかけないようにすべて持ち込むことが推奨されます。
 水害のように地域がある程度限定されている状態であれば、被災地域外から通えばすむのでそこまでの負担にはなりませんが、大きな地震だと被災地のエリアが非常に大きくなるため、被災地外から通うというのはかなり難しくなります。また、宿泊用のテントや車を持参していても、それらを展開する場所が確保できない場合も想定されます。
 大規模災害で被災地支援に入る組織は全て似たような悩みを抱えていて、例えば消防や警察はそれぞれの敷地内に輸送用バスや支援車両を置き、そこで寝泊まりしていますし、自衛隊は事前に行政側が幕営地を確保したうえで派遣を受けています。
 一般の被災地支援者は行政側に頼るわけにはいきませんので、早い段階で被災地支援に入るのならば、それなりの覚悟をしていかなければなりません。
 保温、食事、給水、排せつ、睡眠。
 自前でこれを確保できない場合には、被災地がある程度落ち着くまでは立ち入ってはいけません。
 被災地支援するための前提は、どこまで自己完結できているかです。
 被災地や周囲の状況を確認しながら、被災地支援に入るようにしてください。

地震に備える

 日本ではさまざまな災害が起きますが、その中でも地震は起きた時には勝負がついているためにどれくらい事前にしっかりと準備をしておくのかが大切になります。
 地震への備えとして、一番大切なのは何かの下敷きにならないことです。
 地震の揺れでも、揺れだけで死んでしまう人はほとんどいないと思いますが、揺れによって生じる建物の倒壊や家具などの転倒では、怪我をする人がでてきます。
 つまり、何かの下敷きにならないように対処しておけば、とりあえず命を守ることはできるはずです。
 例えば住んでいたり出かけていく先がきちんと耐震化されていることで、建物の下敷きになる可能性を下げることができます。
 また、家具や電化製品の配置を考えたり、寝室から撤去することで、それらの下敷きになることを防ぐことができます。
 机などの遮蔽物の下に身を隠すのもいいとは思いますが、まずは落下物になりそうなものを撤去することでより安全が確保できます。
 いつどんなときに起きるのかがわからない以上、どこにいても下敷きにならないように気を付けておくことが大切だと思います。

目的と手段

 どんなことであれ、「目的」を達成する、そのための方法として「手段」が存在しています。
 ただ、どうしたものか、よくこの目的と手段がひっくり返ってしまうことがあるので注意が必要です。
 防災関係でいえば、最終的な目的は「自分の命が安全に確保できること」で、そのために自主防災組織やその他のさまざまな支援の形が存在しています。
 ところが、例えば自主防災組織を作ることが「目的」になってしまって、組織を作るための手段が模索されているという不思議な事態が日本のあちこちで起きています。
 自分の命が安全に確保されるのであれば、自主防災組織がなくても問題はないはずなのですが、なぜか「自主防災組織がなければ自分の命が守れない」として、無理やりに組織化しようとしているケースをあちこちで見ることができます。
 こうなってしまうと、組織化が目的なので、組織ができると目的達成となり、その後放置になってしまっているのものも、筆者の知る範囲では非常に多くみられます。
 防災に関して言えば、「自分の命を安全に確保すること」が目的で、その手段として、例えば自主防災組織があったり、地区防災計画があったり、マイタイムラインを作ったりするのです。
 そこをしっかりと理解したうえで、目的と手段を間違えないように対策を考えていきたいものです。

安心の心理

 2023年3月13日をもって、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用は個人の考え方に委ねられることになりました
 一応、これで国を挙げての新型コロナウイルス感染症対策は終了に向かうと考えていいのでしょうが、それにしてもさまざまな情報や流通の混乱に振り回された方も多かったと思います。
 今回は使い捨てマスクや消毒用アルコールが店頭から無くなって、売っているのは馬鹿高い出所の怪しい商品だけという状態が続いたわけですが、供給がされてもマスクが足りなくなることを恐れて買い占めに走った方も多かったようで、生産はしているのにマスクやアルコールが店頭にないという不思議な状態が結構長く続きました。
 買い占めする必要はないと政府や行政が言ったところで、買い占めの心理は手に入らないかもしれない不安から発生しているのですから理屈ではありません。
 不安が解消されない限りは買い占めは続いてしまうのです。
 今回はコロナ禍でしたが、これに限らず大きな災害が起きると被災地ではさまざまな商品が欠乏します。
 不思議なもので、そのうちに手に入ることは頭では理解できているのですが、それでもあるものを買い占めてしまうという心理が起こります。
 それは「いつ」「どれくらい」という情報が欠けているために起こることなのですが、海外で生産しているのでいつどれくらい入荷できるのかがまったくわからない状況が続いてしまいました。国内生産ならある程度の予測ができたのでしょうが、安さを求めて海外に進出してしまった結果、作ってもいつ届くのかが予測できなくなって今回のような騒動が起こってしまいました。
 いつ、どれくらい、どのように入手できるのかがわかれば、予測ができます。予測ができれば、善かれ悪しかれ心理的には安心するのです。
 安全は物理的にわかる世界ですが、安心は心の中の問題なのでそう思えるかどうかは個々人の考え方でしかありません。安心を担保したいなら、状況や解決する時期をしっかりとわかるように被災地の人に知らせること。
 それが大切なのではないかと思っています。
 ちなみに、マスク着用が個人の考え方に委ねられるといっても、無制限にマスクをつけなくていいという話ではありません。少なくとも、咳が出るようなときには、マナーとしてマスクをつけるようにしてほしいなと思っています。