エマージェンシーシートを考える

百円均一ショップのエマージェンシーシートを広げてみたところ。結構大きいので、大人でもしっかり包まることができるようになっている。

 アウトドアショップや防災用品売り場、百円均一ショップでも見かけることのできる銀色の薄い大きなシート。
 エマージェンシーシートと言われるもので、最近の非常用持ち出し袋にはこれを入れておくように書かれている書籍もあります。
 ただ、同じような大きさなのに、百円均一で百円で買えるものから、アウトドアショップで数千円するものまで、なぜ値段が何十倍も違うエマージェンシーシートが存在するのか考えたことがありますか。
 今日はさまざまなエマージェンシーシートを少しだけ比べてみることにします。
 前提として、同じサイズであるならば値段が高くなるほど重たくなってきます。これはシートの厚みの違いによるもので、これがさまざまな違いをもたらしています。

1.保温能力

エマージェンシーシート本来の目的である、風や外気に体温を奪われることを防ぎ、身体に巻き付けて保温をする使い方です。
当然ながら値段の高いものほど保温力は上がりますが、極端に差が出るものではありません。
エマージェンシーシートと名乗っているものであれば、一応風や外気を防ぎ、体温をシートの中に閉じ込めることができるようになっていますので、そんなに心配はいりませんが、当然厚い方が外気を感じにくいので、快適感はあると思います。
もし両面の色が異なっているのであれば、保温に使うための面は銀色のはずなので、使う前には確認しておいてください。
逆に暑さを防ぐためには銀色の面を外側に向けることになりますので、両面で色の違うものは、基本的に暑さ寒さのどちらにでも使えるということを覚えておいてください。

2.目隠し能力

薄くて持ち運びしやすいエマージェンシーシートは、避難所での生活では、とりあえずの仕切り布として使うことができます。
包まれば中での着替えも可能ですし、何枚かつなげれば簡易テントを作ることもできます。
ここでも厚さが問題となります。薄いものになると透けてしまうため、灯りの位置に気をつけないと何をしているのかが丸見えになってしまいます。
その場合には、2枚以上重ねて使うようにしてください。

3.携行のしやすさ

非常用持ち出し袋などにいれるならあまり影響はありませんが、普段使いのカバンに収めるのであれば、薄くて軽い方が場所を取りません。
こういったときには、アウトドアショップなどのものよりも百円均一ショップのものの方が持ち運びしやすいと思います。
値段と大きさから、防災ポーチなどにセットすることも可能です。

4.カサカサ音

値段が高くなり、厚みが出るものではカサカサ音のしないような加工がされているものが多いです。
逆に百円均一ショップで売られているものではビニール買い物袋のようなカサカサ音がするため、静かな場所だと耳障りかもしれません。

 こういった非常用アイテムは、やはり「性能=値段」となります。高価なものほど性能が高く使い勝手もいいということになります。
 ただ、何も持っていないよりは遙かにマシなので、使うときの特性を知った上で準備しておいてくださいね。

 余談ですが、このエマージェンシーシートは宇宙食などの宇宙関連用品を売っているところでもよく取り扱っています。
 人工衛星の温度変化を抑えるために使われているそうで、そう考えると安いものでもそれなりの保温効果を期待しても良いのかもしれません。
 気になったら、一度使ってみて自分の気に入るものを見つけてくださいね。

【活動報告】有害生物への対応作業を行いました・その2

 先日イノシシ対策についてご依頼いただいた作業の続報です。
 4月7日の説明後、地面にたくさん落ちていたドングリ類については、依頼主様が一生懸命回収され、土に埋もれているもの以外は殆ど片付けてくださいました。
 4月10日に監視カメラを確認したところ、ドングリを回収した後はイノシシが寄ってきていないことがわかりましたが、彼らは定期的にえさ場を確認しにくるため、念のため檻をかけてみました。
 当初研究員始め依頼主様達にもご協力いただき、現地にイノシシ檻を一基展開させていただきました。
 人がかなりばたばたした痕跡が残るので、この後イノシシは出ないかなという気もしていますが、しばらくはこれで様子見をすることにしました。


 檻をかけることは、そこにえさを撒くことになるので、ターゲット以外にもさまざまな動物を不用意に寄せることになってしまうので、設置についてはよく検討を行う必要があると考えています。
 これでイノシシが来なくなれば依頼は終了ということになりますのですが、しばらくは定期的に監視カメラの映像確認と檻の維持管理をすることになりそうです。
 また動きがあれば報告したいと思っています。

【活動報告】真砂の城山で地質と自然観察の学習会を開催しました

まさ土の塊を壊してどんな石が含まれているか調べているところ

 益田市馬谷町では、良質の真砂土が取れることで知られています。
 実は、地質図を見るとこの地域だけ真砂土で構成された少し不思議な場所になっていて、ここだけこの地質になった理由は諸説あってよくわかりません。
 真砂土は花崗岩が風化してできたもので、災害時には、水を含んである瞬間一気に崩れてしまう非常にやっかいな性質も持っています。
 庭土などに使われることから分かるように、水を含み水を保持する能力も持っており、広島などの土砂災害は地質がこの真砂土であったことが一つの原因として考えられています。
 今回選んだ城山と呼ばれる山は別称高嶽山ともいわれていて、中世の頃には城が築かれていたそうです。
 久しぶりに晴天だった4月11日に、会員様と一緒に自然観察、地質観察をしながら山頂まで登山をしました。

 春の山野草であるゼンマイやワラビ、アザミやスミレ、その他の花々を眺め、食べられる山野草の見分け方を確認したり、道ばたのスイバを囓ったりしながら、ゆっくりと登山をし、途中花崗岩でできたコアストーンなども確認。


 結構急な上り坂や城だった頃の堀割、倒木やキノコなどもあって、里山でありながらいろいろと登山の楽しみを味わうこともできました。
 史跡としてはあまり知られていないこの山ですが、山の恵みや土地の形成、そして地域と山が共存していることがよくわかる学習会。
 予定よりは遅れたものの、無事に下山まですることができました。
 今回参加して下さった皆様にお礼申し上げます。

初期消火と消火器

 大規模な火災があちこちで起きています。
 被災された方にお見舞い申し上げるとともに、いち早い生活の再建ができることを願っております。
 ところで、あなたの家には消火器が準備されていますか。
 また、その消火器はきちんと管理されていますか。
 そして、その消火器を正しく使うことができますか。
 大きな被害を与える大規模火災も、最初から大規模なわけではありません。
 最初はみんな小さな火で、それがさまざまな要因によって大きくなり、あちこちに類焼して大規模火災となります。
 つまり、小さな火のうちに消火することができるのであれば、大規模火災にはならないということで、消火器はそのための重要なアイテムとなります。
 消火器の使い方については以前触れたことがありますが、最近の家庭用消火器は能力が上がっていますので、使い方さえ間違いなければ、ある程度までの火ならば消すことが可能な能力も持っています。
 ただ、気をつけておかないといけないのは、使用期限が切れていること。
 家庭用消火器ではよくあることですが、高圧ガスを使って消化剤を噴霧する構造上、使用期限が切れた消火器は危険ですので、期限を見て更新をしていく必要があります。
 消火器の維持管理と使い方の習熟。
 これができれば大規模火災の発生を減らすことが可能です。
 また、あなたの周りで火災が起きたとき、周囲への延焼を防ぐことができるかもしれません。
 あくまでも消火器で消せるサイズの火ということになりますが、まずは家庭に消火器を備え付けることと、機会を見つけて消防署などが開催する消火訓練や防災センターで行われている消火訓練などで使い方の習熟を図って下さい。
 そうすることで、あなたの命も財産も、守れる確率があがります。
 地味なアイテムですが、ご家庭に最低一本、備えておくようにしたいですね。

日常と非日常の境界線

 普段の生活である日常と災害などが発生しそう、または発生した際の非日常の境界線はどこにあるのでしょうか。
 妙に哲学的な話になりますが、日常と非日常を切り替えるための境界線を決めておくことが災害対応の鍵となります。
 いきなり来る地震はともかく、その他の災害については何らかの事前の予兆がありますから、その予兆のどこで非日常に切り替えるのかを決めておくことで、行動の遅れを防ぐことができます。
 そして、決めたらその境界線をとりあえず愚直に守ってみること。
 災害では、ほんの数分の判断の遅れが致命的な事態を招くことが多々あります。
 「まだ大丈夫」や「とりあえず様子を見る」といった判断は、非日常になったと判断する基準を超えたら考えず、まずは事前に決めておいた行動を取ることです。
 修正や反省や改善は災害が終わった後でも充分な時間をとることができます。
 行動を取って状況が終了してから、あらためて非日常に切り替わる条件を見直せばいいだけの話。
 普段から緊張していても身体が持ちませんし、非常時に日常を押し通そうとすると危険です。
 日常と非日常との境界線を決めておくことは、災害対策の基本の一つだと思います。

普段使う道の安全点検

例えば、こういった道で地震に遭遇したとしたら、あなたならどうやって身を守りますか?

 新学期になり、入学式もあり、さまざまなところで生活環境が変わっている方も多いと思います。
 住むところや通勤・通学路が変わった方もいるのではないでしょうか。
 せっかくなので、散歩や周辺の調査も兼ねて、お住まいの地域や通勤・通学路の安全点検をしておくことをお勧めします。
 普段はあまり意識しない道路ですが、よく見ると同じ道路でも安全な場所危険な場所があることに気づくと思います。
 危険な場所は誰でも気づくと思いますが、身を寄せることのできる安全な場所は、点検のときでも案外と見落としていたりするものです。
 安全点検では、危険な場所、安全な場所、そして役に立ちそうなものを見つけて確認していきます。いざというときにいきなり安全な場所や役に立ちそうなものを見つけるのは難しいですから、最初にしっかりと調べておいて、いざというときに備えておきたいものです。
 また、もしお子様がいらっしゃるのであれば、ぜひ一緒に通学路の点検をしておいてください。そうすることで、安全や危険について同じ目線を持つことができます。
 災害が起きたとき、どこでどうやり過ごし、どこで合流するのか。
 常に大人の目があるとは限りませんし、周囲の大人が正しい判断をするとも限りません。
 どんなに小さくても、自分の判断で自分の命をしっかりと守れるように、しっかりと安全点検をしておいて欲しいと思います。

【活動報告】有害生物への対応作業を行いました

 当研究所の定款には「有害生物への対応」というのがあります。
 有害生物と言ってもさまざまなのですが、基本的には人の営みを行う上で問題となる野生生物が人の営みに影響を与えないような対応を行う作業で、現在のところは陸生生物を対象にしています。
 このたび、敷地にイノシシが出ており、人に被害を与えては困るので対処をしてほしいというご依頼をいただき、去る4月7日の早朝、現地確認をさせていただきました。
 当研究所での有害生物対応は「防除」が基本です。そのため、まずは防除ができないかを確認します。
 防除と言ってもそんなに難しい作業ではなく、誘因物を撤去する、通り道を潰す、隠れ場所をなくすといったことで、やり方さえわかればどなたにでもできる内容です。
 今回のケースでは、土地が肥えていて地中に大量のミミズがいてあちこち掘り返していること、敷地におおきなシイの木などを中心とするドングリの木が複数あり、地面に落ちたものだけでも相当な量であることから完全な撤去は困難と判断しました。


 ご依頼主様には敷地への侵入阻止を提案しましたが、人が出入りできないのは困ると言うことで、侵入阻止も対応が無理だということになりました。
 電気牧柵についても敷地内で子ども達が遊ぶことがあるため難色を示され、やむを得ず捕獲を行う方向で作業を行うことになりました。
 現地での生態を確認するためにトレイルカメラを設置。出ているイノシシが同一個体なのか、出没する時間やどのような動きをしているのかについて確認をしていきます。

イノシシが来そうな場所にセンサーカメラを仕掛ける。何が映るのかは仕掛けてみないとわからない。

 状況が特定できた時点で捕獲作業を開始しますが、捕獲駆除はうまくいかないこともありますので、今後のことも考えて不要な木の伐採、イノシシが嫌がるような目線の通る空間を作るための剪定などを依頼主様にはご説明し、検討していただけることになりました。
 今後どうなるのかはわかりませんが、敷地に出なければいいというご依頼主様のご希望ですので、そのご要望にそった形で対応したいと思います。
 余談ですが、有害鳥獣の駆除については該当市町村から有害駆除許可を受ける必要があります。当研究所は所長を含めて複数の猟師がおり、益田市役所様との協議で指定エリアの有害駆除許可を得ることができたため、今回は捕獲という選択肢がとれました。
 許可を得ずに野生鳥獣を捕獲することは、特定の条件を除いて鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(通称:鳥獣保護管理法)違反となりますのでご注意ください。

「週間地震ニュース」をご存じですか

最近毎日のように日本のどこかが揺れていて、そのたびにニュースになっています。
ところで、どこでどのような地震が起きてどうなったのかをまとめているNPO法人があることをご存じですか。
その法人の名前は「NPO法人環境防災総合政策研究機構」。
災害に関するさまざまなことをされているところですが、ここが毎週「週間地震ニュース」をウェブ上で公開しています。
毎週どこでどのような地震があったのかが一目でわかる図や簡単な分析結果などが掲載されていて、地震を知る際には参考になると思います。
興味のある方は一度見ていただければと思います。

NPO法人環境防災総合政策研究機構

(週間地震ニュースは下の方にリンクがあります)

【活動報告】秋吉台でカルスト台地について学習しました

湧水の流れる川に自制する「ベニマダラ」を確認している様子

 あいにくの荒天の中でしたが、去る4月4日に山口県美祢市にある秋吉台及びその周辺でカルスト台地について会員向け学習会を行いました。
 最初は別府弁天池にて湧水と、それに伴うマスの養殖や普段あまり見ることのできない「ベニマダラ」という藻類の自生している様子を見学しました。


 その後、秋吉台科学博物館に移動して秋吉台の形成や生態系、植生について学習し、ニャンモナイトやパンモナイトといった珍種の化石(?)も見ることができました。
 昼食後は天候が回復してきたので長者原に移動して、冠山、北山、長者原を回り、石灰石や秋吉台について体感してもらいました。

山焼きの後だったこともあって非常に見晴らしが良かった。でもかなり寒かった!

 それから秋吉台エコミュージアムで鍾乳洞などのでき方や秋吉台の成り立ちを再確認した後、景清洞で実際に鍾乳洞に潜って学習会を終了しました。
 なかなか雨にたたられて思ったようなフィールドワークができていない現状ではありますが、さまざまな地形を見て確認し、考えることは重要だと思っていますので、今後も開催していきたいと考えています。
 今回ご参加下さった皆様に感謝します。

支援物資の送り方

 災害が発生すると、被災しなかった地域からさまざまな支援物資が被災地へ送り届けられています。
 ただ、多くは善意で送られたはずのこれらの支援物資が被災者に届かなかったとしたら、あなたはどう思いますか。
 被災地で支援物資を差配するのは行政ですが、ずいぶんとマンパワーが不足しています。そのため、いくら思いのこもっている支援物資であっても、すぐに仕分けができなければそのまま放置されてしまいます。
 落ち着いてきたらいろいろな詰め合わせを作って送るのもいいと思いますが、被災してすぐ、もっとも支援物資が必要とされるときに自分で直接届けない場合には、次のことに気をつけてください。

1.生鮮食料品や賞味期限の短いものは絶対に送らない

 どうしたものか、被災地でも普通に物流が動いていると考える人は多いようで、普段使う宅配便のような感覚で生鮮食料品や賞味期限が短い食品を送る人がいますが、これは非常に迷惑になるので絶対に止めてください。
 大規模災害では道路損壊や交通のマヒ、トラックや運転手不足などで届けたい被災地にいつ届くのかはまったく予測ができません。
 そのため、生鮮食料品などを送ると、届くまでに腐ってしまう場合が殆どです。
 生鮮食料品や賞味期限の短いものは絶対に送らないようにしましょう。

2.一つの箱には一種類、ワンサイズのものだけを詰める

 一つの箱にさまざまなものを入れると、それらを詰め替える手間が発生します。そのため、そういった手間のかかるものは後回しにされることが多いです。
 一番手っ取り早いのは、お店で箱買いしてそのまま被災地へ送ること。
 そうすると割と早く被災者に届くことが多いです。被災地で困っている人のことを考えるとあれやこれや入れたくなるものですが、なるべく仕分けの手間がかからない状態で送って下さい。

3.送る箱には中身が分かるように全ての面に内容物の表示をしておく

 平常時に荷物を送るときには、内容物の説明は書いても上か横の一面くらいだと思いますが、非常時にはすぐに中身がわかるようになっていることが重要です。
 そのため、底辺を除く全ての面に内容物がなにかわかるように油性ペンなど消えないものでしっかりと記載するようにしてください。

4.宅配便業者が物資搬送可の合図を出すまでは業者に搬入しない

 被災地に輸送されるものは優先順位が定められていて、個人や団体での支援物資の位置づけは割と低いです。
 業者の発送案内で到着が「未定」となっている場合や「不明」となっている場合に依頼すると、本来優先される支援物資を保管すべき倉庫の場所を取ってしまうことになります。
 支援物資を購入する前に、必ず宅配業者に状況を聞き、届くようになってから送り出して下さい。

5.送るものは原則新品で

 被災地向け支援物資でもっとも困るのが、実は衣類です。
 大規模災害になると、これ幸いとタンスの肥やしになっていた衣類を大量に送りつけてくる人がいますが、被災者がそれを着ることはまずありません。
 そして、送りつけられたものはゴミとなり、そうでなくても災害ゴミでてんてこ舞いしている自治体のゴミ対策を一層混乱させます。
 政府や行政機関の送る支援物資は全て新品ですので、もしあなたが善意で衣類を送るのであれば、お店で新品を調達して送るようにしてください。

 正直なところ、SNSやマスメディアで避難所が取り上げられ、そこで「○○が足りません」というと、数日後には処理できないほどの「○○」が届いてしまい、最終的に処分に困る事態が毎回起きています。
 一番良いのは、物資ではなく現金を送るか、もしくは自分や仲間達で直接避難所まで届けることでしょう。
 被災地での渋滞という問題はありますが、流通に負担をかけた上にゴミになるよりは遙かにマシです。
 被災地への支援物資を送り出すときには、あなたでなければそれを届けられないのかをしっかりと考えた上で、現地にとってもっとも助かる方法を考えて欲しいと思います。