使い捨てカイロが温かくならないワケ

 寒くなってくると、多くの人がお世話になる使い捨てカイロですが、せっかく封を切ったのに全然温かくならなかった経験はありませんか。
 考えられる原因はいくつかあるのですが、せっかく使う使い捨てカイロなのですから、上手に温かくする方法を確認しておきたいと思います。

1.揉んではいけない

 使い捨てカイロ、封を開けて早く熱くしようと揉んだりした経験は誰もがあるのではないでしょうか。
 使い捨てカイロの外袋に使われている不織布は、カイロ用に作られている製品とのことで、内部に一定の酸素量を供給する加工がされているそうです。
 カイロの袋を揉むと、中の活性炭や鉄粉などが酸素を供給する穴を塞いでしまって内部に十分な酸素が入らなくなり、反応が鈍くなって温まらない事態が発生します。
 開封後にカイロを振るのはカイロの中身の反応を早くさせるためですが、温かくないからと言って激しくもんだり振ったりするのは逆効果だと言えそうです。

2.空気の通りを止めてはいけない

 1と同じような話ですが、ウインドブレーカーやビニールカッパなど、空気を遮断する服のポケットなどに入れると、やはり酸素の供給量が減ってカイロがだんだん冷たくなってくることがあります。
 冷たい空気を遮断することは保温には非常に有効なのですが、カイロを入れる場所は空気を遮断しない服の中にするようにしてください

3.外袋を傷つけてはいけない

 使い捨てカイロは鉄が水で酸化していく反応の過程で発生する熱を利用するものです。そのため、反応するための材料は一つを除いて全てが不織布の中袋の中に収められています。
 反応を開始するのに足りない材料は酸素。これが供給されると、使い捨てカイロは反応を開始します。
 使い捨てカイロの袋を改めて調べてみると、外袋は空気が抜けた状態になっていると思いますが、これは反応に必要な酸素を遮断するためにこんな構造になっています。
外袋に小さな穴でも開いてしまうと、そこから酸素が供給されて化学反応が始まってしまいます。
 そうすると、いざ使おうと思ったときには反応が終了していつまでも温かくならないという状態になってしまいます。
 保管するときには、外袋に穴が開かないように気を付けるようにしてください。

 使い捨てカイロの内容物は、鉄、水、塩、活性炭、バーミキュライトで構成されています。
 これに酸素を加えることで酸化反応が起き、鉄が酸化鉄になる過程で発生する熱を利用したものが使い捨てカイロです。
 逆に言えば、酸素を絶てば反応を止めることができるので、途中で使わないときにはチャック付きビニール袋に入れてしっかり密封しておけば、使いかけの使い捨てカイロを保存することもできそうです。
 使い捨てカイロは寒い時期には本当にありがたいものです。
 上手に使って、寒い時期でも温かく過ごせるようにしたいですね。

【お知らせ】「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が始まりました

 2022年12月16日12時から、北海道三陸沖後発地震に関する注意情報の運用が始まりました。
 これは北海道三陸沖でマグニチュード(Mw)7程度の地震が発生した際、その後1週間以内にそれ以上の大規模な地震となるマグニチュード(Mw)8以上の地震が起こる可能性があることから、大きな地震の後により大きな地震に備えるための注意を促すためのものだそうです。
 最近では2016年4月14日、16日と立て続けに大きな地震が起きた熊本地震がこのケースにあたるのかなと考えますが、マグニチュードが1上昇すると揺れる力は32倍になるので、とてつもない地震が起きる可能性があるということが言えます。
 そういった事態に備えて、大きな地震が起きた後、より大きい地震が起きる可能性があるということを周知するのが、この北海道三陸沖後発地震注意情報なのだそうです。
 報告書では実際に北海道三陸沖地震が起きて、その後1週間以内にさらに大きな地震が起きる確率は100回に1回とされていますが、たとえ空振りになっても危険性を周知したいということで、こういった注意情報が発表されることになりました。
 ただ、これを受けてどうするかは各人に任されていますので、避難するもより強い地震への対策をするも、そして何もしないのもすべてそれぞれの考え方や判断に任されることになります。
 そう考えると、大きな地震の際に気象庁が出す「今後1週間程度は大きな揺れに警戒する必要がある」という発表とどこが違うのだろうかというのがいまいちよくわからないのですが、地震が発生したらより大きな地震が来る可能性があることは事実。
 どこで起きる地震についても、大きな地震の後にはより大きな地震が来るかもと考えて備えをしておいたほうがよさそうです。

日本海溝・千島海港沿いの後発地震への注意を促す情報発信に関する検討会報告書(気象庁のウェブサイトへ移動します)

避難所は土足厳禁が基本

段ボールベッドと避難所用テントを組み合わせる。

 避難所では、生活空間は土足禁止にしたほうが健康を保ちやすいのでお勧めです。
 というのも、避難所の就寝場所がすべて床面から20cm以上の高さがある場所ならいいのですが、そうでない場合、土靴から落ちた汚れやごみ、ウイルスや雑菌などを吸い込んでしまい、呼吸器系の病気を発症することが多くなります。
 日本では床に直接寝る習慣があるために靴を脱いで生活空間に入るという習慣ができたのだと思いますが、これは理にかなっています。
 地表に舞っている病気の元であるゴミやほこりなどを吸い込まないために、靴を脱ぐ習慣になっているのです。
 逆に靴を脱ぐ習慣のない国では、寝る場所の高さを上げてベッドというものになっていて、地表で舞っているさまざまな雑菌から呼吸器系を守るようになっています。
 とはいえ、避難所は人の出入りも多く、土足を禁止してもしっかりとした衛生面の確保は難しいと思います。できるなら土足は禁止したうえで、床から少しでも高さを上げたところで寝ることにするようにしてほしいと思います。
 避難所の生活空間での土足を禁止することは、避難所で大きな病気を出さないためには大変重要なポイントです。

留守表示のジレンマ

 避難を促す人たちにとって、その家にまだ人が残っているのか、それとも避難が終わっているのかという情報は非常に大切です。
 避難が終わっている家に対して呼びかけを行うのは時間の無駄ですし、下手をすると避難を促している人の避難が遅れてしまうことになりかねませんので、避難したという情報がきちんと伝わるようにしておく必要があります。
 玄関への張り紙や軒下に印を出しておくなど、地域によってさまざまな形で避難したことを知らせる方法が決められているのですが、困ったことに、その方法が家に誰もいないということを教えている状態のため、空き巣にとってはこれ以上ないくらい仕事がしやすい状態を作っていることになります。
 ましてや、普段の留守であればいるかもしれないペット達も一緒に避難しているのですから、そういった人たちから見ると非常に仕事がしやすい状態にあるのです。
 かといって、普段通りの状態で避難をすると、避難してるのかどうかがわからないので、避難を促す人たちが困ることになります。
 避難区域を立ち入り禁止にして人も車も一切入れないこと。そして、立ち入り禁止区域に入ったものは問答無用で逮捕、というくらいの対応ができるとよいのですが、立ち入り禁止区域で出入りを規制する人をどうするのかという問題が発生します。
 緊急時には消防や警察は対応にかかりきりになりますので、なかなかこういったことにまでは手が回りません。
 一昔前なら消防団という地域をよく知っている人たちがいましたが、現在ではそこまでの力を持っているところは少ないと思います。
 手っ取り早いのは、避難するときに避難する人が、避難を呼びかける人に声をかけるようにすることです。そうすることで、避難したことがわかりますので、呼びかけるほうも楽になります。
 自己責任な世の中ではありますが、こういった避難確認をするようなところでは、地域コミュニティが生きていると思います。「一声かける」という文化も残っていると思いますので、お互いに安全な方法で対処ができるといいなと思います。

ハザードマップが読めますか

 市町村などが作っているハザードマップですが、完成したり改訂があると、多くの場合は各家庭に配られているようです。
 ただ、その中身の説明がないために、次の資源回収日には大量に出されているケースもあるとか。
 本来なら災害から身を守るために作られたはずのハザードマップがただの資源になってしまっているのは、ようするに見方がわからないからです。
 見方さえわかれば結構役に立つのですが、配られているハザードマップに書かれている解説を読んでも、よくわからないという方が多いのではないでしょうか。
 研修会などで説明すると「ああそういう意味なのか」と言ってもらえることも多いのですが、わからないから資源にされているのです。
 また、中途半端に細かいサイズになっているため、かなり使いにくいものも多いです。見やすいだろうと思って冊子にしていても、実際には非常に使いにくくわかりにくくなってしまっている残念なケースもよくあります。
 見方さえわかれば、あとは更新されても改訂されても大きく表示方法が変更されることもないですから、見方をしっかりと周知してほしいと思います。
 見方と用語。
 これがきちんと理解できるような機会の提供が少ないような気がするので、結果として理解が進まないという状態が続いている気がします。
 せっかく大金をかけて作ったハザードマップです。
 しっかりとハザードマップが役立つような、そういった心配りがいるのかなと感じています。

自主防災組織のお悩み

 防災の仕事をしていると、自主防災組織の方から組織運営について相談をいただくことがあります。
 最初は地域の人を災害から守るという熱い思いで結成された自主防災組織も、時がたって災害が起きなければ、だんだんと熱も冷め、次世代への承継もうまくいかないことが多いようです。いただくご相談は、今後どうやればうまく活動ができるのかとか、人がいない、集まらない、動けないといった内容で、あまり明るい内容ではありません。
 ただ、聞いていると不思議に思ってしまうことが一つあります。
 それは、なぜ身の丈にあった計画に変更しないのかということ。
 ご相談いただくときの前提が「この活動計画ができなくなっている」というのが大半なのですが、できないのであれば、できるような活動計画に変更すればすむのではないかと思います。
 自主防災組織の中には、非常に立派な行動計画を作って毎年それを更新しながら組織をうまく運営しているところもあります。
 でも、地域によってはその行動計画を実行するだけの力がなくなっているところもありますので、そういった状況で持っている行動計画をやろうとするとどうしても無理が来ます。
 自主防災組織はあくまでも「共助」のために結成されている地域のボランティア的な組織ですから、実行することが難しい行動計画でできないというのであれば、行動計画自体を変えてしまえばいいのです。
 基本的な考え方は「できることをできる範囲で」です。
 理想を掲げても物理的にできない場合にはできませんので、できることをできる範囲で設定しなおすことで、無理のない自主防災組織の運営が続けられることになります。
 もちろん、人が増えたりやる気のある人たちがたくさんいる状況になれば、活動計画を組み替えて大きなものにすればいいだけなので、その時々に応じてやる活動を変動させるくらいの気持ちでいればいいと思います。
 よく誤解されているのですが、自主防災組織は自主防災組織に所属する人たちを守るために存在しています。
 自治会や自治体とは異なる任意組織ですので、あくまでも自主防災組織に加入している人をどうやって守るのか、を基礎にしてください。加入していない人を相手に考える必要はないのです。
 自主防災組織に加入している人達が、お互いにできる範囲でできることをして助け合うだけでいいと考えると、何となく肩の荷がおりませんか。
 自主防災組織を難しく考える必要はありませんん。地域の人間関係がしっかりと生きているなら、存在しなくてもいいくらいの組織であり、あくまでもお互いをできる範囲で助け合うために作られているのです。
 できることをできる範囲で、無理なくやり続けること。
 これからの自主防災組織はそれを前提にして活動計画を作ったほうがいいのではないか。そんな風にお話をしています。

被災地外でできることとしてはいけないこと

 大規模な災害が起きると、その地域の人の手助けがしたいと思う方も多いのではないでしょうか。
 東日本大震災の後、しばらくはあちらでもこちらでも募金活動をやっていて、募金する人が寄付疲れを起こしてしまうようなこともありましたが、大規模な災害のあと、被災地が復旧・復興するための支援はさまざまな形でできます。
 被災地への支援というと、多くの人は直接的な支援ということで現地ボランティアや支援物品の送付を行ってしまいますが、これらは現地の受け入れ態勢ができていないとかえって混乱を起こしてしまいます。
 もしも直接的な支援をするのであれば、現地の受け入れ態勢が整ってから支援を開始してください。
 少なくとも大規模災害の場合には、災害発生から3日間程度は現地の混乱や救助作業が優先されることから、素人が現地入りしたり、支援物資を送られても道路や物流に混乱が生じるだけで被災地に負担をかけるだけです。
 特に支援物資を送るのはご法度です。
 SNSやマスメディアで「〇〇が不足している」と報じられても、個別に自力で現地に持ち込める人以外は絶対に送ってはだめです。
 物流に負担をかける上に、届いたころには現地で必要なものは変わっています。
 そして、どうかすると届いた時には腐ったり痛んだりしていることもありますし、大量に余ったものは現地で処分することになって余計な負担をかけることになります。
 同じ物品を送るのであれば、例えば大手通販サイトがやっているような、被災地から要求された物品を購入して届けてもらうようなシステムを活用してほしいと思います。
 また、被災地の復旧・復興は非常に時間がかかります。
 一過性の寄付だけではなく、被災地の物品を購入したり、被災地の被害から復旧したところへ旅行に出かけてみたりして、直接的・間接的に被災地にお金が回るようにしてください。
 継続して支援することが、被災地の復興にはもっとも大切になります。
 そしてもっとも難しいのも、この継続してする支援で、どこまで、いつまで続ければいいのかはあなたの判断次第です。
 被災地への支援は有形無形、いろいろとできますので、できる範囲で、できることを、現地に負担をかけない形でしてほしいなと思います。

交通規制に気を付けて

 

チェーン規制が行われている区間でチェーン規制がかかると出される道路標識。

寒くなりました。
雪が降っているところもあるようですが、車をお持ちの方はスタッドレスタイヤをきちんと履いて、安全運転で移動をお願いします。
よく「四輪駆動車だから問題ない」とノーマルタイヤで雪道に突っ込む方がいらっしゃいますが、いくら四輪駆動でも、道路と接しているのはタイヤです。
四輪駆動でも前輪駆動でも、ノーマルタイヤだと駆動形式に関係なく滑ってしまいますので、雪道は必ずスタッドレスタイヤ、またはタイヤチェーンを履くようにしてください。
ところで、冬タイヤ規制は雪の降る場所では普通に行われていますが、今年も大雪で車が動けなくなるような場所ではそれに加えてチェーン規制が行われます。
チェーン規制が該当する区間を走る人は、スタッドレスタイヤに加えてチェーンも持参するようにしてください。
チェーン規制の区間や使えるチェーンの種類など詳しくは国土交通省のウェブサイト内にある「チェーン規制Q&A」をご確認ください。

チェーン規制Q&A(国土交通省のウェブサイトへ移動します)

揺れやすい地形、揺れにくい地形を知る

 地震では震源から同じ距離であっても同じ震度や同じ揺れになるわけではありません。
 揺れを拾いやすい地形だとより揺れますし、逆に揺れにくい地形だとほとんど揺れません。
 揺れを拾いやすい地形は、俗にいう「軟弱地盤」と言われるような場所で、硬い岩盤の上に柔らかな地盤が乗っているため、本来の揺れ以上に揺れてしまいます。
 そのため、震源から離れていても、建物が倒壊したり大きな被害が発生します。
 建物の構造自身がよく問題になりますが、実は建物の構造よりも建物が乗っている地盤の状態のほうが、地震に対して大きな問題となるのです。
 1995年に神戸や淡路島が大きな被害を受けた阪神淡路大震災や2004年に新潟県の中越地方が大きな被害を受けた新潟県中越地震では、この地盤の脆弱性が建物の倒壊を増やしてしまったと言われています。
 では、地盤の柔らかさや固さはどうやって調べればいいのでしょうか。
 実際には専門家に地盤調査をしてもらうのが一番ですが、おおざっぱに見るのであれば、「地震ハザードカルテ」というものがあります。
 これは全国を250mのメッシュで区切って、揺れやすい場所や揺れにくい場所の診断をするもので、大まかな参考になると思います。
 さまざまなところで言われているところですが、地震は起きた時には勝負がついています。
 建物の倒壊や半壊といった被害を防ぐには、こういった地味な調査も重要になってきますので、よかったら参考にしてみてください。

地震ハザードステーション(防災科学技術研究所のウェブサイトへ移動します)

あるものでなんとかするには

ゴミ袋と養生テープで防寒着を作る。ここまで本格的である必要はないが、やってみると結構楽しい。

 災害が起きた後は、とりあえずあるものでなんとかするしかありません。
 ですが、あるものでなんとかするには、あるものの活用法を知っておかないとなんとかすることができません。
 一番いいのはあるものでなんとかする羽目にならないような準備がされていることなのですが、なかなかそこまで準備のできている人は少ないような気がしています。
 あるものでなんとかするためには、その場にないが必要になったものの特徴を考えてみる必要があります。
 その特徴を満たすような代替品を探すと、案外となんとかなったりします。
 例えば、座布団で考えてみます。
 座布団の機能は床の固さの緩和、床の冷気の遮断といったところになると思います。
 そうすると、その場にビニール袋と新聞紙があれば新聞紙をくしゃくしゃにしてビニール袋の中に入れれば、とりあえずの代替品になるかもしれません。
 大き目のボールがあれば、その空気を抜くことで代替品ができるかもしれません。
 緩衝材があれば、袋にいれれば手軽に座布団ができるでしょう。
 こんな風に、機能を考えることで代替品を用意できることがあります。
 もちろん代替品の候補がどんな機能を持っているのかを知っていないとそもそもどうにもならないので、いろいろなアイテムの機能や特徴を調べて知っておくといいと思います。
 例えば、極端な例ですが、穴が開いているからと言ってちくわをストローの代わりにすると、ちくわストローを使って飲んだ飲み物はみんな魚の味に染まってしまいます。
 つまり、素材の特徴も知っておかないといけないということです。
 あるものでなんとかすることは、ないに越したことはありません。
 あくまでも代替品を作ることができるという前提で、必要なものの準備を怠らないようにしてください。