想定外に備える

 災害は想定外の連続だと言われることがあります。
 確かに、様々な対処を準備していても、予想できないことはたくさん起きますし、事前に準備していても結果としてピントがずれているものになっていることもあります。
 ただ、災害大国である日本はさまざまな災害の経験知がありますから、それらを上手に活用することで想定外を減らすことはできます。
 現在さまざまなところで作られているBCPは、本来予測されるさまざまな事態で普遍的な部分を手順化することで、予測できる部分に備えるという性格のものです。
 ただ、このBCPはどうにも両極端になっているようで、誰でも出来る手順書を作成しているところから、「責任者に確認すること」のオンパレードになっているものまで本当にさまざまです。
 災害では想定外は必ず起きますが、想定されていた事態に対処できていないと、そこからまた想定外が生まれて収集がつかなくなります。
 想定されるような事態は、解決策も事前に用意できますから、手順書を作って誰がその対処をしても大丈夫なようにしておくことで、本当に最初から想定外な事態に対処すべき人が専念できます。
 発生するさまざまな事態をまだ被害の小さなうちに対処していくことが、素早い復旧には必要です。
 作業手順を細かく仕分ければ、殆どの対処は誰にでもできるようになります。
 BCPは、その作業手順書の集合体なのです。
 全ての業務を可視化することで、作業工程や手順がわかり、やるべきことに悩む必要がなくなります。
BCPを作るときには、必ず「何をしなくてはいけないのか」と「どのようにするのか」をしっかりと把握し、できる限り細かく手順を決めておくことをお勧めします。

輸送を軽視しない

 災害が発生して大規模な被害が発生すると、国からプッシュ式と言われる支援物資のお届けが行われます。
 必要なものを必要な場所へ限りなく早く、というのがこのプッシュ式の目的ではあるのですが、残念ながら被災地までは届いても被災者までは届かないというのが殆どの自治体の現状です。
 支援物資は被災者に届かなければ意味がありません。
 では、被災地まで届いた支援物資はどうやって被災者に届くのでしょうか。
 通常は中間物資集積場所(以下「デポ」といいます。)が作られて、国からの支援物資はそこへ届きます。
 そして、そこで仕分けされて各避難所などの持つ物資集積所(以下「地区物資集積所」といいます。)へ送られ、そこでさらに仕分けされて被災者に届くことになっています。
 それでは、これをシステム的に設計している地方自治体の防災計画がどれくらいあるかというと、非常にお寒い状況で、デポと物資集積所の輸送手段については全く考えていない地方自治体もあります。また、考えている自治体でも、宅配業者などと協定を結んでいて、その輸送力を使って輸送する計画にしているので、業者に丸投げ状態。
 業者はいつの段階でどこから何がどのようにくるのかを把握できていなければ、受け入れ計画を立てられませんし、業者の施設をデポとして利用する計画になっている場合、発災時点でその施設の中に置かれている荷物をどのようにするのかは考えられているのでしょうか。
 デポになるであろう施設は防災計画に明記されていますが、デポから地区物資集積所への輸送手段は特に書かれていないことが非常に多いのです。
 被災地でまず最初に不足するのは輸送力ですから、届けられるのを待つのではなく、最悪デポまで受取に出向くような動きが必要になってくるかもしれません。
 田舎の場合であれば、最悪地元の軽トラックなどを使うことが可能だと思いますが、それにしても事前にその軽トラックを動かすための燃料や保険、何か起きたときの補償などを決めておかないと、後で揉める元になります。
 物資は放っておいたら勝手に運ばれるわけではありません。
 デポと地区物資集積所、そしてそこから被災者の手に渡るまでの輸送手段についても、自治体の防災計画や地区防災計画の中で考えておきたいですね。

避難の場所を考えておく

車内での保管は、クーラーボックスに入れて非常食と飲料水を保存しておくといろいろ便利。

ハザードマップなどに記載されている避難所や避難場所に避難するのに自動車がないと無理、というおうちは多いのではないかと思います。
特に地方に行けば行くほどその傾向が強くなるので、自治体が開設する避難所や避難場所に避難を考えているのであれば、避難レベル3が発表された時点で避難を開始しないと、避難できなくなる可能性が高いです。
でも、あなたの住んでいる場所に災害発生危険箇所、いわゆるハザードがないのであれば、家にいた方が安全です。
また、遠くにいかなくても、近くに安全な場所がないかを確認しておいて、いざというときにはそこへ避難するのもいいと思います。
避難するための施設がなければ、その安全な場所へ車で移動して、車で過ごしてもいいと思います。
車を避難施設と考えて、車の中に防災グッズを載せておけば、避難先でも安心して過ごすことができると思います。

避難は大丈夫?

避難レベル4の高津川。これ以上水位が上がると橋が水没する。こんな状態で橋を渡っての避難は危険。

 気象災害が起きそうな予測が出ると、被災する可能性のある地域の人に対して避難指示が出されますが、あなたは自分の避難先について決めていますか。
 また、避難するための経路と方法をきちんと決めていますか。
 自治体から避難指示が出されたときにいくつかの避難所が避難先として開設されますが、お住まいの場所によってはその避難所に避難するのに、例えば氾濫するかもしれない川にかかっている橋を越えたり、土砂崩れするかもしれない崖の横を通るなど、発生が予測されている災害で危険な状態になりそうな場所を通らなければいけない場合ががあります。
 避難レベル3での早めの避難開始であれば危険度は低いですが、避難レベル4での避難となると、避難経路に危険が生じる可能性について考えておかなければなりません。
 そして、避難は避難所に行くために行うのではなく、あなた自身の身を守るために安全な場所へ移動するものです。
 もしも自治体が開設した避難所に行くのに危険が伴いそうなら、近くの安全な場所を選んで避難してください。
 また、そもそもあなたに避難が必要な災害なのかも、ハザードマップや地域の地図を見て確認しておくようにしましょう。
 日本は災害列島であり、どこにいてもなんらかの災害は必ず起こりえます。
 何も無いときだからこそ、非常時に備えて地図を見て、避難先や避難経路を決めておくようにしてください。

地震のときの家具の危険度を下げよう

 地震が続いていますが、あなたの家の地震対策は大丈夫ですか。
 ご家庭や職場の地震対策の重要なものとして家具の固定がいわれているところですが、実際のところ、さまざまな事情から固定が進んでいないようです。
 ただ、家具を固定できなくても、倒れてくるときに人的な被害を防ぐことは可能です。
 それは、家具の向きを人のいない方向に向けておくこと。
 地震の時に倒れてしまうような家具は、家具の面の大きさが異なっているものが殆どです。
 つまり、家具の狭い面を人がいる方向からずらせば、家具が倒れてきても怪我はしなくてすむということになります。
 これは家具が動かせなくても、人がいる空間を動かせばいい話なので、さほと手間無くできるのではないでしょうか。
 また、家具の固定ができない理由の一つによく挙げられているのが家具の上に荷物を置く必要があるからというのがあります。
 この場合には、天井と家具の間を荷物で完全に埋めてしまっておけば、その家具が倒れる確率はかなり下がります。
 家具が倒れるのは揺れを受けた家具が動き出してしまうことによって起こるわけですから、荷物で家具が動かないようにしてしまえば、転倒する確率はぐっと下がります。
ポイントは、天井と家具との間に隙間を作らないことと、家具の上に置く荷物は滑りにくいようにしておくことです。
 一番の理想は家具を撤去してしまうことで、二番目が家具の固定ですが、家具が倒れて怪我をしないようにしておけばとりあえずは大丈夫です。
 最後に、家具をきちんと固定していても、中のものが飛び出さないようにしておかないとやっぱり危ないですから、家具の対策をするのにあわせて、中身が飛び出さないような処置もあわせてやっておくと良いと思います。

多目的ってなんだろう

 最近あちこちで目にする「多目的」な設備。
 有名なところでは「多目的トイレ」があります。
 本来は障害のある方も障害のない方も、男性も女性も誰でも使えるトイレという意味なのですが、多目的の意味をはき違えている人もいていろいろと困ったことが起きたりもしています。
 それはともかく、災害が起きて避難所が設置されると、やたらと多目的を主張する設備が増えてくるのが困りものです。
 食堂兼交流スペースくらいなら全然問題ないのですが、よくあるのが、授乳室とおむつ交換室、それに更衣室が兼ねられているもの。
 時間がかかるものがセットにされていると、いつでも何かで使用中になって、他の目的で使いたい人が困ることになってしまいます。
 優先順位をつけるといっても、授乳とおむつ交換と着替えの優先順位をどうやってつければいいのか、また、優先する事態で待っている場合には入っている人を追い出すのかなど、多目的であるか故の問題が発生するのです。

パーテーションで仕切ってでも単独機能の方が使いやすい

 利用目的のはっきりしているものや利用者が多いものは多目的にするべきではありません。
 目的ごとに部屋を仕切って、その目的のみに利用すること。
 そうすることで、同じ目的の利用者が複数同時に使えたり、違う目的の人から文句が出たりすることもありません。
 多目的で問題ないのはトイレだけ。
 避難所の設計時にこのことを頭の中においておくとよいと思います。

避難所は健常者しか避難できない

 大規模災害が長期化すると、避難のための場所が生活のための場所に変わります。
 そういった避難所でよく観察してみると、避難している方がほぼ健常者だということに気付くと思います。
 妊産婦や赤ちゃん連れ、身体やこころに病気を持っている人を見かけることはほとんどないと思います。
 避難所で過ごす人達は、災害前の生活と比すと自分の思ったようにならないことから大なれ小なれこころに不満や不安を持っています。
 それが自分の常識の外の事態に出会うと、その対象者に対して言葉や物理的な暴力が振るわれ、危険を感じた人は避難所から退去することになります。
 例えば、乳児は泣くことでしか自分の意思を伝えることができません。おなかが空いたり、おむつが濡れているだけでなく、不安を感じたときにも大声で泣くのです。
 その泣き声は、普段鳴き声に接することのない人の耳にはものすごく耳障りに聞こえ、なかでも不満や不安を押し殺しているような人にとっては格好の攻撃材料になってしまいます。そしてそれが続くと、乳児を持つ親は危険を感じて退去することになり、それが続く結果、避難所は健常者だけになってしまうのです。
 同じ事が障害をもつ方にも言えます。結果として、本来は避難が必要な人が避難所を追い出され、避難しなくても生活できる人が避難所を占拠するという困った状態になるのです。
 現在避難レベル3で高齢者や障害者、乳幼児などを持つ親は避難するようになっていますが、そういった人達は避難準備を始めてから避難ができるようになるまでに時間がかかります。
 そして避難所に避難したときには健常者で溢れていて入れないということもよく起きます。
 そのため現在福祉避難所を避難所開設と同時に設置して支援が必要な避難者を専門に受け入れるような整備が進められているのです。
 地方自治体の中には、この福祉避難所の設置が地域に混乱をもたらすと消極的だと聞きますが、役割をしっかりと決めて説明しておくことで、無用な混乱が起きることは防げると思うのですが、あなたはどう考えますか?

やってみないとわからない

 「訓練しなくても理解しています」といわれる方がそれなりにいます。
 話を伺うと、確かに回答は具体的ですし、マニュアルは頭にきちんと入っています。
 面白いのは、そういった人に訓練の一コマをやってみてもらうと首をひねるが多いこと。
 「こんなはずでは・・・」と言われることが非常に多いです。
 例えば、消火器の使い方で見てみます。
消火器は、
1.上部の安全ピンを外す
2.ホースを火元へ向ける
3.放射レバーを押し込む
 これで消火器は仕事をしてくれます。
 でも、実際にやってみてもらうと、この手順に入る前に消火器の重さに驚く人がいます。
 他にも消火器を抱えて運ぶときに落としてみたり、消火器の操作をど忘れしてしまう人、ホースの押さえる場所を間違えて見当違いの方向に薬剤を散布する人など、頭で理解していても実際に動いてみるとずいぶん違うのです。
 訓練は、意識しなくても身体が動くように動作をたたき込むことが目的ですが、理解していてもそれだけでは行動はできません。
 何事もやってみないとわからないのです。
 例えば、とある場所の避難所設営訓練で妊婦さん用に用意された休憩用テントの入口が狭く、かがまないと中に入れませんでした。
 実は妊婦さんはかがむのが難しいのですが、男性だけでなく、妊娠・出産を経験した人でさえもそのことに気付いていなかったのですが、たまたま訓練に参加していた妊婦さんがそれを指摘し、その後立ったまま中に入れるテントに変更したということがありました。
 これらも、実際にやって該当する人が実際に体験したからこそわかった問題です。
 頭の中や図上で考えてみることには限界があります。
 組み立てて設計をしたら、実際に訓練をやってみること。それにより、本番のときに必要なものを確実に使うことができるのではないかと思います。

停電とライフライン

 先日、当研究所のある地区の一部で停電があったそうです。
 幸い当研究所では影響はなかったのですが、電気が止まってしまうと、現在の私たちの生活は非常に困ったことがたくさん発生します。
 例えば、オール電化のおうちだと、大型の蓄電池が設置されてでもいない限り、家の中のライフラインは水以外止まってしまいます。
 田舎などではまだまだ多くのご家庭が使っているガスも、ガスコンロは使えますが、ガスボイラーは電源が必要なため使うことができません。
 また、火災の危険性や手軽さから暖房器具を電化製品に頼っているおうちも多いと思いますが、これから寒くなる時期に停電になると、当たり前ですが電気を使う暖房器具は一切使えなくなります。例えば、普通の灯油ストーブなら使えますが、灯油ファンヒーターは電源が使えないので駄目だということ。
 こんな状態になったとき、あなたはどうやって暖を取りますか。
 寒くて暗い状態は、人間の精神にも身体にも良い影響は与えません。
 布団に湯たんぽを入れたり、使い捨てカイロなどで身体を冷やさないようにすることが大切です。気をつけたいのは、身体が冷え切ってしまうとどれもあまり効果がないということ。身体が冷え切る前に、温めるための手を打って下さい。
 ちなみに、湯たんぽは専用の道具がなくても、瓶やペットボトルで代用できます。温かいものを入れても大丈夫であることと、密閉性があることが前提条件になりますので、使う前にはしっかりと確認しておいてください。
 私たちの生活で非常に重要な位置を占めている電気。
 できる限り停電にならないように電力会社の方々は日々頑張ってくれてはいますが、万が一停電になった場合に備えて、身体を冷やさなくても済む方法を準備しておきたいですね。
 最後に、停電したからといって、屋内で炭や発電機の使用はは絶対に止めてください。現在の家は非常に密閉性が高いので、炭の燃焼や発動機の排気ガスに含まれる一酸化炭素で死んでしまいます。

車と道路の冬支度

 山頂のほうでは雪が観測されるようになり、山沿いの道ではみぞれも降ったりしてきていますが、車の冬支度はお済みですか。
 夏タイヤをスタッドレスタイヤに履き替えることや、ウォッシャー液の濃度を変更するといった機械的な作業に加えて、冬場に山越えをする方については念のためのタイヤチェーンの確認と、不幸にして動けなくなった場合の生存対策、例えば毛布やカイロ、水や非常食などもしておいてくださいね。
 ところで、道路の冬支度も進んでいますから、冬期通行止めの路線の閉鎖が進み、冬季限定の道路カメラの運用も始まって道路の降雪、凍結の有無などをインターネットで見ることができるようになりました。
 お出かけの際にはそういった情報もしっかりと取得して、状況に応じてさまざまな準備を進めておいてくださいね。
 ところで、冬場に急カーブの続く場所や凍りやすいところ、傾斜の厳しい場所などでは冬タイヤ規制が行われますが、いくつかの条件が揃うとタイヤチェーンを装着していない車は走行ができないチェーン規制区間も存在しています。

タイヤチェーン規制の表示。この看板が出ると、タイヤチェーンの装着が必須となる。


 近くでは浜田道の「大朝IC~旭IC」間。それから国道54号線の赤名峠も対象になっていますから、そういった道路を利用する人はきちんと備えておくとともに、万一の通行止めに備えて一般道の確認もしておくといいと思います。
 それから、タイヤチェーンは持っているだけでは駄目ですから、チェーンの点検もかねてシーズン前に装着の練習もしておくようにしてください。
 いざというときに困らないように、しっかりと準備しておきましょう。

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