避難する人の心構え

高いところへ避難するのを習慣づけておくと、少なくとも洪水や津波対策はできる。

防災訓練などでは、高齢者を始めとする要配慮者は自主防災組織などがお迎えに出かけて避難させることがよくあります。
ただ、毎回の訓練でそれを毎回やってしまうと、要配慮者の方は「迎えに来るまで待っていればいい」といった判断をしてしまい、津波などに対する避難が間に合わないことが発生します。
避難に支援がいる方々ですから、急いで避難させるためにはどうしてもそういった行動になってしまうのですが、緊急時に迎えが来ず、いつまでも自宅にいると危険な場合も想定しておく必要があります。
ご本人が判断に迷うような場合もありますので一概には言えないのですが、そういった場合には、ご近所の方が危険が迫っていることだけでも知らせるような仕掛けを作っておいた方がいいでしょう。
もっとも、危険が迫ってくることを知らせると、なし崩しにその人の避難支援を行うことになる場合が想定されますので、最終的には非常時に備えて自主防災組織だけでなく、普段地域に在住している人たちもそういった支援を行えるようにしておく必要があるかもしれませんね。
そして、避難訓練では災害発生のタイミングや避難行動開始をすべて主催者が説明してしまうこともよくあります。
時間内に終わらせようとするとどうしてもそうなってしまうのですが、本番では誰も避難開始など教えてくれませんから、何が起きたら避難を開始するのかについて「行動するための鍵」を自分の中で決めておくことが大切です。
言うまでもありませんが、自分の命を守るための行動は自分が主体的にとらなければ誰も助けてはくれません。
そういう意味では、要配慮者の方であってもできる範囲での行動はやってもらったほうが安心です。
訓練のための訓練ではなく、本番の状況に合わせた訓練も、慣れてくるとやってみたほうがよいですし、発生する災害の想定も変えてみる必要があります。
その避難所が、想定されるすべての災害に対して安全だとは言えないのです。
避難する人は、自分の命は自分で守るという心構えを持って、行動をしていきたいですね。

どこに避難しているのかを知る

避難先や避難経路を知るには、防災マップを作ってみるのも一つの方法。

 あなたは津波などで避難が必要な状況になったとき、自分がどこへ避難すればいいのかを知っていますか。
 また、ご家族がどこへ避難するのかを知っていますか。
 学校や施設などにいるとき、そこからどこへ避難しているのかについては、案外と知られていないことが多いですので、どこに避難するのかをしっかりと確認しておきましょう。
 できれば避難経路もあわせて確認しておくといいと思います。
 どのような判断でどこへどんな経路で避難しているのかを知っていると、いざというときにもある程度どこにいるのかが予測がつきます。
 そして、探しに行ったり迎えに行ったりするときにも迷わなくて済みます。
 また、自分の子供が遊んでいるときに避難すべき状況が起きた時にはどこへ避難すれば安全なのかを、子供と一緒に現地で確認しておくと安心です。
 誰がどこにいてどうなっているのかがわからないことは、人の心に不安を招きます。
 その結果、その不安を解消するために助けに出かけて遭難するというケースは過去の災害でもたくさん起きています。
 いざというときに誰はどこに避難しているのかを事前に知っていることで、そういった不安を排除することができますから、お互いにどのような行動をするのかについて、しっかりと話をしておくようにしてください。

避難は大丈夫?

避難レベル4の高津川。これ以上水位が上がると橋が水没する。こんな状態で橋を渡っての避難は危険。

 気象災害が起きそうな予測が出ると、被災する可能性のある地域の人に対して避難指示が出されますが、あなたは自分の避難先について決めていますか。
 また、避難するための経路と方法をきちんと決めていますか。
 自治体から避難指示が出されたときにいくつかの避難所が避難先として開設されますが、お住まいの場所によってはその避難所に避難するのに、例えば氾濫するかもしれない川にかかっている橋を越えたり、土砂崩れするかもしれない崖の横を通るなど、発生が予測されている災害で危険な状態になりそうな場所を通らなければいけない場合ががあります。
 避難レベル3での早めの避難開始であれば危険度は低いですが、避難レベル4での避難となると、避難経路に危険が生じる可能性について考えておかなければなりません。
 そして、避難は避難所に行くために行うのではなく、あなた自身の身を守るために安全な場所へ移動するものです。
 もしも自治体が開設した避難所に行くのに危険が伴いそうなら、近くの安全な場所を選んで避難してください。
 また、そもそもあなたに避難が必要な災害なのかも、ハザードマップや地域の地図を見て確認しておくようにしましょう。
 日本は災害列島であり、どこにいてもなんらかの災害は必ず起こりえます。
 何も無いときだからこそ、非常時に備えて地図を見て、避難先や避難経路を決めておくようにしてください。

逃げ道マップを作ろう

当研究所が行っている防災マップづくりの一コマ。実際に地域を歩いて確認するところから始まる。

 災害対策として、地域の危険な場所を洗い出してそこから早めに避難するというのは割と言われるようになってきていますが、避難する道をどうするかということと、その道が安全かどうかの点検までちゃんとできていますか。
 実は同じ避難所に避難するとしても、大雨と地震では避難に使える経路が異なることが殆どです。
 例えば、大雨では低地では無く高い場所を繋いで避難を考える必要がありますし、地震では地面の高さよりも周囲の構造物が壊れたり倒れたりしないことが重要です。
 そういった避難経路の情報というのは、意識しながら実際に歩いてみないとわからないことがたくさんありますので、実際に歩いてみて、逃げるための道、逃げ道マップを作っておく必要があるのです。
 地域の安全点検とあわせて、実際に歩いてみて確認してみること。
 地図上では歩けるはずなのに、道がでこぼこだったり、溝があったり、草に埋もれていたり、急な坂道の連続だったりと、逃げ道を決めるのは案外と大変なことがわかると思います。
 その上で災害の種類に合わせて逃げ道を変更するのは、正直言って大変な作業になります。
 ただ、大きな災害時には避難中に遭難してしまうことがよく起きていますので、それを防ぐためにはこういった作業が必要です。
 危険なくらい暑い時期ですので、日中出歩くわけにはいかないかもしれませんが、早朝や夕方、ご家族や友人と一緒に散歩しながら逃げ道を確認してみるのもよいのではないでしょうか。

ハザードマップを確認しよう

2019年に実施した当研究所の防災マップ作りの一シーン。ハザードマップを確認するだけで無く、実際に歩いてみないとわからないことも多い。

 そろそろ梅雨の声が聞こえてくる時期になりました。
 ここ数年は毎年どこかで大雨による災害が発生していますが、あなた自身の備えはできていますか。そして、安全な場所の確認はできていますか。
 自分が長時間過ごすところ、例えば自宅や職場、学校がどのような場所にあってどこに避難すれば安全なのかを知る一つとしてハザードマップがあります。
 浸水害、土砂災害の危険区域が色分けされていて、その場所でどのような危険があるのかが見ればわかるようになっています。
 もし自分のいる場所が安全を確保できない場所であるなら、安全を確保できる場所、例えば指定避難所までの安全な道順を確認してください。
 もしも浸水害や土砂災害の危険地帯を避けて避難することが無理なら、どのタイミングで避難を開始するのかについて決めておきましょう。
 災害は必ずしもハザードマップのとおりに起きるとは限りませんが、ある条件下で災害が起きそうな場所について一目で分かるようにしたものですから目安にはなります。
ハザードマップに普段の生活で感じている危ない場所を書き込んでいくことで、より安全な自分だけのハザードマップを作ることができます。
 大雨が降る前に、一度ハザードマップを確認し、念のために避難経路を一度歩いてみてください。
 災害は待ってくれません。安全なときに自分の安全を確保するようにしましょう。