避難所に持ってくるものはあらかじめお願いしておく

 平時から避難所運営委員会が機能している地域では、避難対象になるであろう地域の人達に「避難するときに持ってきてほしいものと持ってきてほしい量」についてあらかじめお願いをしているところもあるそうです。
 考えてみれば、避難所として指定されている場所のうち、どこを最初に使うのかやどんなものが使えるのかなど、知っているようで知らないことがたくさんあります。
 小さな集落で普段使っている公民館などが避難先であれば、ある程度どこに何があるかがわかっているので何を持って行けばいいのかイメージもつきやすいと思うのですが、例えば学校や体育館、行政施設といった場所だと、何があるのか何が必要とされているのかイメージが沸かないことも多いと思います。
 避難所が避難所として機能するためには避難が長期化したときにも対応できるだけの設備が必要となりますが、残念ながら大きな場所になればなるほど、避難者用に使える道具がなくなっていくというのが実際のところで、避難時には家からさまざまなものを持参しなくてはいけないことになります。
 でも、例えば「食料はそのまま食べられるものを2日分」とか「水は一日1リットルとして2リットル」といった風に具体的に避難所に持って行くものが指示されていれば、準備する方はそれに従って準備すれば良いのでかなり気分が楽になります。
 いつ避難所が設置され、いつまで耐えればとりあえずの救援物資が届くのかがわかっていればそれまでの命を繋げばいいだけなので、避難所運営委員会の人達も具体的な目安を指定でき、初動は各自が賄ってくれることが基本になっているので、避難所の設置初期におきるさまざまなトラブルの一部でも心配をしなくても済むようになります。
 災害時にその避難所が避難所として機能できるのかということは、恐らく災害が起きてみないとわからないところはあります。
 ですが、地域の避難者を安全確実に受け入れて困りごとをなるべく減らすためには、平時からさまざまな約束事を地域全体で共有しておくことです。
 せっかく地域に避難所が指定されているのであれば、その地域で避難者を受け入れるための避難所運営委員会を普段から開催してお互いの顔つなぎをし、さまざまな約束事を決めておくようにすることをお勧めします。
 避難所に非常用持ち出し袋を持って避難することは自助ですが、避難所の設営や補給物資の管理、そして避難者に持ってきてもらうものを消えておくのは地域における共助になります。
 自助と共助を上手に組み合わせて、避難後に飢えや渇き、睡眠不足で苦しむことがないように準備しておきましょう。

避難所のニーズと避難者のニーズ

 災害で開設される避難所は、災害で住む場所を失った人にとって生活の核となる場所です。
 また、支援物資や情報の集積地であり、場合によっては復旧支援の拠点ともなる、非常に多機能な場所でもあります。
 最近はコロナ渦で在宅避難が推奨されていますが、それでもさまざまな事情で住むところを失い、避難所へ逃げ込む人がいなくなるということは考えにくいことです。
 その時に少し注意をしなければいけないことは、避難所における支援物資の要求を始めとするさまざまな支援要請の仕方です。
 避難所での避難者が多いほど必要とされる物資やサービスは多岐におよぶことになりますが、その際にその避難所でそれを必要とする人が多いほど要求の優先順位があがるということが起こります。
 逆に言うと、そのアイテムがないと生活が立ちゆかなくなる人であっても、そのアイテムを必要とする人が少数であれば、避難所としての優先順位は下がると言うことです。例えば、乳児用のおむつが欲しいと思っても、その避難所で多くの人が必要としているのが大人用おむつであれば、届くのは大人用おむつが優先されて乳児用はいつまでも届かないことになります。
 また、避難所では避難所を運営するための運営委員会が結成されますが、その委員達が不要と判断すれば支援物資の要求さえされないということになり、過去には生理用品を始めとする衛生用品が運営委員により不要とされてしまってその避難所で生活する人達が困ったというようなことが起きています。
 こういった隠れてしまうさまざまな要求を発掘するためには避難者から直接意見を確認できる場が必須となりますが、行政はどうしても平等という部分に拘って後手に回ってしまうため、NPOや支援団体がそれぞれに立ち入ってそれぞれの対象者からニーズを引き出すという作業を行っています。
 これはどちらがいいというわけではなく、避難所としてのニーズと、避難者としてのニーズが異なっているだけですから、対応が異なってくるのも仕方が無い部分があります。
 最近ではSNSで避難所で不足しているものの支援要求をすることも増えていますが、そのSNSでの発信は「避難所のニーズ」なのか「避難者個人のニーズ」なのかをしっかりと見極めないと、SNSを見た人が一斉に支援に動くと避難所に同じものが大量に届いて逆に困ったと言った事態も起きます。
 支援要求をする際には、それが誰のニーズなのか、いつ時点のニーズなのかをはっきりさせ、具体的に必要とする数量もあわせて発信する必要があるということを情報を出す側も受け取る側もしっかりと考えておく必要があると思います。
 一番いいのは、できるだけ避難者のニーズは自分の非常用持ち出し袋に詰めておき、ある期間は自分のニーズを出さなくても大丈夫なようにしておくことです。わかっているものはあらかじめ避難所にある程度ストックしておくことも一つの方法でしょう。
 避難所のニーズと避難者のニーズは異なり、それぞれに分けた対応が必要なのだと言うことを前提にして、支援物資やサービスを届けたいですね。
 余談になりますが、避難所の支援でもっとも問題となってくるのが水です。避難した時点では確かに不足しているものなのですが、給水車や行政の支援物資として真っ先に供給されるのも水ですから、遠方で飲料水を買って宅配便などで送ったとしても届く頃には充足していることが殆どです。
 もし送るのであれば、それが本当に支援になるのか、現地の場所取りになってしまうのではないかを充分に考えた上で送られることをお勧めします。
 また、避難所支援といって古着を大量に送る人もいますが、被災者はほとんど着ません。逆の立場になってもらえればわかると思うのですが、さまざまな形で新品が供給されることが多いので、古着はただのゴミです。
 災害ゴミを処分しなければならない環境にさらなるゴミを追加することは絶対に止めましょう。

【活動報告】「災害時外国人サポーター養成研修」を受講しました

 10月4日に江津で開催された島根国際化センター主催の「災害時外国人サポーター養成研修」に当所から2名参加し、研修をうけてきました。
 「災害時外国人サポーター」というのは、主催者の説明によると災害時に島根県と島根国際化センターが共同で設置する多言語支援センターからの依頼を受けて、「掲示物の日本語をやさしく分かりやすく翻訳する」「被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出す」といった仕事をするボランティアなのだそうです。
 日本語しか話せなくても大丈夫なボランティアだということで、筆者も登録していたりします。
 災害後、避難所に掲示される情報は日々更新されていきますが、日本語がしっかりと読める人が対象の文書が多く、言い回しも特殊なものが多くなります。
 それらの文章をわかりやすく、やさしく、必要な情報に絞った日本語への再翻訳を行うことで、簡単な言葉なら理解できる外国人等に正確に情報を伝えることができます。
「やさしい日本語」といわれるこの翻訳は、普段使っている言葉の意味をわかりやすく書かなければいけないということで、結構頭を使います。正解はないのですが、どうやったらうまく伝わるのかを考えていくのはなかなか面白いものです。ある部分では普段使っている言葉を再発見しているのかもしれません。
 また、避難所へ巡回して日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出すという仕事ですが、これは避難所内での意思疎通をうまく図るために必要なことでもあります。
 避難所は避難所運営委員会が設置されてその避難所に関する必要なものや情報を避難者に提供することになるのですが、このときにどうしても少数派の意見は通りにくくなります。
 例えば、大きな声で自分の意見を主張できる人の意見は簡単に通っても、言葉がよく理解できない外国人他の、いわゆる「言葉がうまく通じない人」のニーズは聞き取るのに手間なので放置されがちですし、「言葉がうまく通じない人」は自分のニーズを自分で上手に伝えることもできません。そのため、例えば災害時外国人サポーターが避難所に立ち入って「言葉のうまく通じない人」のニーズを聞き取り、避難所運営委員会や行政などに繋いでいく必要があるのです。
 また、状況や何が起きているかわからないことからさまざまな方法で自分たちを守ろうとしますが、その姿勢が他の避難者にはうまく理解されずに軋轢が生まれてくることがあります。これらは情報がうまく伝わらないことから発生しているものなので、無用な軋轢や誤解を生まないためにも、情報を全ての人にきちんと伝わるようにする。そのために避難所巡回という形を取って被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを解決する必要があるのです。
 最近では「VoiceTra」といった優れた翻訳アプリもいろいろとありますから、通信環境が使えるのであれば、日本語しか話せなくても何とかなると思います。
 ただ、気になったことが一つ。最近はコロナ禍で自宅避難が特に推奨されていますので、避難所だけで無く自宅避難している人達のニーズのくみ上げまで考えておく必要がありますが、対象となる人がどこに住んでいるのかがわからないと手のうちようがありません。その情報がどのように提供されるのか、されないのかが不明なため、自宅で放置される外国人被災者が発生するかもしれないと感じています。
 避難所は地域の災害支援の拠点となるところです。そこを拠点としてきちんと機能させるためにも、あらゆる被災者に目を向けてニーズを吸い上げる手段を確保しておく必要があると思います。
 ところで、今日の説明では島根県内でこの制度ができて3年目。そしてサポーターは55名だそうでまだまだ支援を行うには人が不足している現状です。
 近いうちに島根県東部会場でも開催されるような話でしたし、おそらく来年も県西部で同じような研修があると思いますので、どのようなものか興味のある方は、是非一度参加して研修を受けてみてください。
 「災害時外国人サポーター養成研修」とありますが、受講後に登録書を提出して初めて登録されるので、「受講=必ず登録」ではありません。あくまで話を聞いてから判断できるようになっていますので安心して参加してください。
 そして、災害時にはさまざまなボランティアがありますが、こういうボランティアもあるのだということを知っておいて欲しいと思います。

気力の元は暖かい食べ物

 災害が起きた後、何の備えもないまま避難所に避難した場合には「飢えと渇きに悩む」から「配給の非常食+水」になり、「弁当工場の作った冷えたお弁当」となっていきます。
 どうして炊き出しが喜ばれるのかというと、こういった食糧事情なので暖かい物を飲んだり食べたりできないという生活に、できたての温かい食べ物や飲み物が支給されるからです。
 じつは避難所運営で一番ネックになるのが食料を温めるという問題です。電子レンジでもあれば冷えたお弁当を温め直して食べるという手が使えるのですが、何百人、何千人と収容する大きな避難所だと、そういった対応はまず無理です。
 弁当工場で作った物を暖かいうちに運べば良いのではという意見もありますが、弁当作成業者にとって一番怖いのは食中毒です。また、短い時間でたくさんの弁当を作ることは物理的に困難なので、どうしても冷凍保存して出火することになりますから、どうかすると冷たい弁当よりも悪い、どこかしら凍った弁当を食べる羽目になったりします。
 避難所全員の弁当は難しいかもしれませんが、せめて自分の家族分だけでも温かい食事を取ることができれば、気力を維持することは可能です。
 アウトドア用のガスバーナーやカセットコンロ、焚き火、どうにもならなければ使い捨てカイロでもいいので、非常用持ち出し袋には温める道具を準備し、食事はできるだけ温めて食べるようにしてください。
 温めた食事は心を落ち着かせ、身体もリラックスさせる効果があります。災害後に元気に復旧を進めていくためには、しっかりと暖かいものを口にすることが重要なのです。ただ、温めた食事は食べきらなければすぐに傷んでしまいますので、食べられない場合には残った物は速やかに処分してください。
 食事や飲み物をしっかりと温めて、食事で気力を失うことがないようにしたいですね 。

あると便利な段ボール

風邪対策の定番、窓を段ボールで覆う。外側から窓に貼り付けることで飛んできた物が窓ガラスに当たって割れることを防ぐ。重量物に備えて内側からも貼るとかなり安心ではある。

 段ボールというのはいろいろなところで使われています。
 どこででも見かけるもののはずなのですが、災害時にいざ使おうとするとどこにもないものの一つです。
 家でストックしておくのも場所を取って仕方が無いのですが、それでもいざというときに備えていくつか段ボール箱をしまっておくと重宝します。
 間仕切りや目隠し、壁や窓の応急処置、組み合わせれば段ボールベッド、いす、トイレ、ダンボハウス、簡易寝袋そして最後はたき付けまで、あると便利なこと請け合いです。

段ボール箱をそのまま寝袋として試してみた。段ボールの弾力で思ったほど寝心地和悪くない。また、保温効果でかなり暖かい。乳幼児が入るサイズにすると体温を維持するのが楽。


 行政では段ボールベッドや間仕切りなどは段ボール業者さんと提携して、いざというときには持ってきてもらうような協定を結んでいるところも多いのですが、段ボール業者さんも普段からたくさんストックしてあるわけではないので、大規模災害の時などには生産が間に合わないと言ったことも起きています。

市販の災害用段ボールベッド。ベッドの下は箱になっていて、生活用具をいろいろ仕舞えて便利

 平時に必要量をストックしておくのが一番良いのですが、予算と場所の兼ね合いからなかなか難しいというのが現実みたいです。
 自宅避難を考えている場合には、どこに家の中のどこに段ボール箱があるのかを確認しておくと、必要なときに使えて便利です。普段は何かを収めておき、いざというときには防災グッズとして使うというのもいいと思います。
 保温性があって、非常に使い勝手のよい段ボール箱。非常用グッズを収めておいて、災害用品の一つとして考えるのもよさそうだなと思います。

浸水家屋の片付けや掃除の方法を見てみよう

 全国的に梅雨が終わったと思ったら、今度は台風で浸水被害が発生している地域があるようです。
 家屋が浸水した後の段取りについては、当サイトでもいろいろと触れてはいますが、このたびNHKが浸水家屋について被害状況の撮影方法や片付け、清掃方法をまとめた映像を作成してくれました。
 方法や資機材、期間や再利用できるものできないものなど、とてもわかりやすく説明されていますので、被災した方だけで無く、被災地に支援ボランティアに入ろうとしている方も見ておくといいと思います。
被災地のお片付けは簡単には終わりませんが、時間はかかってもいつかは必ず終わりが来ます。
そのことがよくわかる映像ですので、是非一度ご覧ください。

NHK災害列島命を守る情報サイト「浸水した家屋の片づけと掃除のしかた

コロナウイルスと災害報道

 今年も大雨による災害が全国的に起きたわけですが、その後被災した地域はどうなっているのでしょうか。
 テレビやラジオでは新型コロナウイルスの話で持ちきりですが、今現在被災地がどうなっているのかについての報道は殆ど見ることがありません。
 災害ボランティアも自粛状態で情報がうまく伝わらず、現地の状態がいったいどうなっているのか気になるところですが、当事者以外のマスメディアにとってはすでに終わったこととして扱われているのかなと感じます。
 災害報道というのはこういった感じで大きなセンセーショナルな間は盛んに報道されますが、大きく目を引く動きがなくなると途端になかったことにされてしまっています。
 新型コロナウイルス対策+復旧作業は梅雨明けした炎天下で行うには非常に厳しいと思うのですが、そう言った報道は地味なのかあまり見ることがありません。
 地元の報道でも確認することができればいいのですが、全く関係ない地域で情報を得ようとするとほぼインターネットに頼り切りになってしまいます。
 現在何が困っていてどのような支援が必要なのか。新型コロナウイルスの影響で労働力としての災害ボランティアが現地に入れないのですが、他に何か支援できることは無いのかといった情報発信がこれから必要なのではないかと思いますが、何をどうすればいいのかといった情報が手に入らないのが現状です。
 被災者に寄り添うということは、被災した事実があることとそこでも多くの人が生きているのだということを伝え続けることなのではないかと思っています。
 被災地の今を伝え続けること。東日本大震災や熊本地震では、マスメディアはそのことを声高に言い続けていましたが、今現在、災害発生日以外にそれらの報道をみることは殆どありません。
 新型コロナウイルスの情報の確かに大切なのですが、それ以上に今困っている人達がいることを伝える必要があるのではないかと思っています。

災害と自治組織

 今年もあちこちで大雨による水害が発生しています。今までと異なるのは、今年は新型コロナウイルスの流行で人的支援の受け入れがかなり困難になっていること。
災害派遣で被災地に入った行政の派遣する支援チームからでさえ新型コロナウイルスの陽性者が出てしまったのですから、一般の支援ボランティアの受け入れに躊躇することは確かです。
 ものとお金はそれまでとさほど変わらず支援が入ってきているみたいなのですが、それを使う人がいないという状態です。
 熊本県などでは県内に限定して災害支援ボランティアを受け入れていますが、いつもは他県から支援が受けられるボランティアセンターの運営要員が足りないのと、ボランティアセンターが密になるのを避けるため、一度に動員できる数はかなり規制されている状態です。
 地元にいる人達で何とかやっていくしかないのですが、高齢化が進んでいる地域では重量物の搬出さえできないような有様で、復旧がなかなか進まないという現実があります。
 そうすると、何をどこまでやるのかそして支援に入ることのできる少数のボランティアに何を優先して頼むべきなのかをあらかじめしっかりと決めておかないと、せっかく支援に来てくれたのに全て中途半端で支援が終了するようなことになってしまいます。
 そういったことの調整をするのが自主防災組織であり自治会なのですが、これがきちんと機能しているかどうかで復旧の速度も変わってきます。
 ものや金の支援は行政でもできますが、被災地の復旧の優先順位は行政ではうまく決められません。そのため、自主防災組織や自治会が地元の被災者の間を上手に調整して支援を送り込む仕事をしなければいけません。
 それがうまくいっているところは復旧が早いですし、そうでなければい被災者全員が平等に恩恵を受けられるようになるまで一切手がつけられないことになります。
 負担金や会費を取って飲み食いするだけが自治会ではありません。定型的な訓練ばかりしているのが自主防災組織なのではありません。
 いざというときの地域の利害関係を調整できるような機能をしっかりと持たせて、自主防災組織や自治会の構成員でよかったと思ってもらえるような内容にしていきたいですね。

ボランティアと相互扶助

 あちこちで大きな被害を出している雨ですが、通常なら全国から集結するはずの災害復旧ボランティアも、新型コロナウイルスの影響で被災地が近くの人以外はお断りという状態になっています。
 被災区域で困っている被災者は割と高齢の方が多いですので、万が一を考えると少しでも感染の可能性の少ない地域に限定してボランティアに入ってもらうというのは一つの選択だと思います。
 ただ、水害の被災地ではまずは建物の泥出しと洗浄が最優先され、これは人海戦術で取り組まなければあっという間にカビや雑菌の温床が床下にできてしまい、そうなると衛生的に問題が発生しますし、泥の撤去が終わってもにおいが取れなくなってしまいます。
 そんなときは被災者同士の相互扶助で順番に片付けていくしかありません。我が家だけ片付けば良いのでは無く、地域や集落として住民が一気に作業をしてしまわないと地域や集落の中に遺恨を残すことになります。
 地域で優先すべき場所や優先すべき家屋を選定してそこから順番にやっていくことで、それぞれが作業に当たるよりも効率よく早く洗浄ができます。
 優先すべきは水源が近くに確保できて泥出しが済めば人の生活が再開できそうな家屋から。全壊判定されるような家屋は解体するだけですから後回し。水が手に入りにくいところも時間がかかるので後回し。
 地域で顔が分かっている人なら、安心して作業ができると思います。気苦労はするかもしれませんが、自分もできることで参加すればいいのです。
 現状では、ボランティアは自分が感染していると地域に影響が出ると考え、様子を見ている人が大勢います。
 条件をきちんと整備し、感染の確率ができるかぎり下がる状態でボランティアに入ってもらうこと。そしてそれまでは地域の人達がお互いに助け合って復旧を進めていくこと。
 通常の災害対応に加えて新型コロナウイルス対策も織り込まなければならないので関係機関はかなり大変なようですが、被災地の掃除ができるかぎり早くできるように検討をしていただければなと思います。

被災地の片付けで病気や怪我をしないために気をつけること

 大雨が収まると待っているのはお片付けですが、作業するときの格好に少しだけ気をつけてもらえると事故が減ると思います。
 水害でみんな流れてしまったらあるもので作業をするしかないのですが、できる限り長袖長ズボンで、底の厚い長靴と同じく厚手のビニール手袋、それにマスクとあればゴーグルを着用してください。
 というのも、水害で片付けなくてはいけない汚泥にはさまざまな雑菌が含まれており、ちょっとしたかすり傷でも膿んだりすることがあります。
 また、汚泥の中には壊れた家具や建具が埋もれていることがあります。それらについている釘や鋲、ねじなどが足や手に刺さると、その部分から破傷風菌が入って破傷風になってしまうこともあります。
 破傷風については、以前に「災害ボランティアと破傷風」で少し触れているのでよかったら参考にしてください。
 そして汚泥が乾いてくると細かな砂のような感じになって辺りに舞うことになりますから、それが呼吸器や目、鼻と言った粘膜に付着すると結膜炎や炎症を起こしたりします。作業終了後は顔や手をしっかりと石けんで洗ってきれいにしておきましょう。可能であれば、着ていた服もしっかりと洗濯していただきたいと思います。
被災後は衛生環境を維持するのが大変になりますので、なるべく怪我しない、病気にならないための対策を取ることが必要です。
 余談になりますが、建物や家具、建具については洗って乾かすことが基本です。特に建物の床下はそのままにしておくとカビの温床となってしまいますので、汚泥をどけたらしっかりと消毒して乾かしておきましょう。
 参考までに厚生労働省のウェブサイト「被災した家屋での感染症対策」をリンクしておきます。上記に書いたような内容のより詳しいものや消毒液の作り方なども出ていますので、そちらの記事をご確認いただき、怪我や病気をせずに復旧に向けて進んでいただければと思います。