地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

燃焼器具と一酸化炭素

 冬には一酸化炭素中毒による死者が毎年出ています。
 原因は燃焼器具を換気不十分で使った事によることが殆どなのですが、この一酸化炭素ってどのようなものかご存じですか。
 今回は最近よく耳にする一酸化炭素について、ちょっとだけ考えてみたいと思います。

1.一酸化炭素とは

 化学式は「CO」で、炭素1つ、酸素1つが結びついてできあがる炭素化合物です。
 人間が何もなしに生存できる範囲では気体で存在し、無色、無臭で水にはほとんど溶けない性質を持っています。
 理論上、炭素を含む物質が完全に燃えるときには二酸化炭素と水蒸気になるはずですが、火の内部では酸素の供給が追いつかないために燃焼時には常に少量の一酸化炭素が発生しています。
 そして空気中の酸素が不足した状態で燃焼すると、不完全燃焼になって一酸化炭素が大量に発生します。

2.一酸化炭素中毒とは

 一酸化炭素は人が吸い込むと血液中のヘモグロビンに結合し、酸素を運搬する能力を極端に低下させます。そのため、吸い込み過ぎると、酸素欠乏の症状である頭痛や吐き気、眠気や錯乱などが起き、そのうちに昏倒して死に至ります。
 特に小さな異変に気付きにくい就寝中や酒に酔った状態では、気付いたときには逃げたくても身体が動かないような重篤な一酸化炭素中毒の症状に陥ってしまうことがあります。
 一酸化炭素中毒は、早期であれば新鮮な空気を吸うことで症状は改善されるようですが、ひどくなると入院治療が必要な上、さまざまな後遺症も起こるようです。

3.一酸化炭素中毒が発生する主な原因

 換気が不十分な状態で火気を使用したことによるものが多いようです。特に石油ストーブやガスコンロ、七輪などの燃焼機器では換気が不十分だと不完全燃焼が起きて一酸化炭素が発生することがあります。
 他にも、車庫など換気の悪いところでのエンジンや発電機など内燃機関の使用により一酸化炭素中毒が発生しています。過去には大雪による停電のため屋内で発電機を稼働させ、その排気で一酸化炭素中毒が起きて死亡する事故も起きています。

4.一酸化炭素中毒にならないためには

 燃焼器具を使う場合には充分な換気が一番の対策です。
 また、豪雪や大雨などで充分な換気ができない状況の場合には、燃焼器具を使わないようにすることです。
 それから、燃焼器具を使う場所には一酸化炭素警報器を取り付けておくことも有効です。その際、一酸化炭素は空気よりも比重が軽い(0.967)ため、警報器は部屋の上部に取り付けるようにしてください。

 燃焼機器の注意書きでほぼ必ず書かれている「定期的にしっかりと換気をする」というのは、この一酸化炭素の発生を防ぐためで、特に最近の高密閉住宅の場合には、より注意が必要なのではないかと思います。
 ちなみに、東京消防庁の資料によると、一酸化炭素中毒は空気中の濃度が0.5%を超えると数分で窒息死するそうです。
 これからの時期、寒いので窓を開けることはあまりないかもしれませんが、一酸化炭素中毒を避けるためにも、燃焼器具を使っているときにはこまめな換気を心がけていきたいですね。

煙の特性について(東京消防庁のウェブサイトへ移動します)

避難の場所を考えておく

車内での保管は、クーラーボックスに入れて非常食と飲料水を保存しておくといろいろ便利。

ハザードマップなどに記載されている避難所や避難場所に避難するのに自動車がないと無理、というおうちは多いのではないかと思います。
特に地方に行けば行くほどその傾向が強くなるので、自治体が開設する避難所や避難場所に避難を考えているのであれば、避難レベル3が発表された時点で避難を開始しないと、避難できなくなる可能性が高いです。
でも、あなたの住んでいる場所に災害発生危険箇所、いわゆるハザードがないのであれば、家にいた方が安全です。
また、遠くにいかなくても、近くに安全な場所がないかを確認しておいて、いざというときにはそこへ避難するのもいいと思います。
避難するための施設がなければ、その安全な場所へ車で移動して、車で過ごしてもいいと思います。
車を避難施設と考えて、車の中に防災グッズを載せておけば、避難先でも安心して過ごすことができると思います。

おしりふきは万能です

 おむつ替えの時におしりをきれいに吹くために使うおしりふき。
 防災セットには必需品の一つではないかと筆者は考えています。
 ウエットティッシュでもいいのですが、おしりふきは厚手の不織布を使っているので、非常に破れにくくしっかりと使えます。
 ウエットティッシュと同じように、水や消毒用アルコールなどが染みこませてあるのですが、肌触りがよく、湿り気があるのに吸水力もあるので、非常に多用途に使えて便利です。
 例えば、身体を拭くのに使ったり、テーブルや食器類を拭いたり、もちろんおしりを拭くときにも使うことができますし、使った後も快適です。
 防災セットに入れるおしりふきは、多目的に使うことを考えて影響の少ない水だけを染みこませたものを使うようにします。
 本来のお尻ふきが必要な人は、一日で一パック程度は使ってしまうようですが、ちょっとした用途ならば一人最低一袋あれば支援物資が届くまでのつなぎには充分だと思います。
 名称で抵抗のある方もいるかもしれませんが、何かを拭くという行為には最適のおしりふき。
 防災セットだけでなく、普段使いでも便利な気がします。

冬の感染症対策

 厚生労働省のデータを見ていくと、2020年度の冬はインフルエンザの発生状況がほぼなかったに等しいくらい少なかったそうです。
 これは新型コロナウイルス感染症対策として、多くの人が手洗いやマスクの着用、人との接触を極力避けるなどした結果で、多くの感染症の発生が激減しているところからみると、どの感染症であれ、対策は同じということなのでしょう。
 アルコール消毒はどこでも見かける普通の光景になりましたが、石けんを使ってしっかりと手を洗うことや、マスクの着用、体調不良時の早めの休息などが習慣化すると、感染症にかかる人は今年も少ないのかもしれません。
 ただ、最近ではアルコール消毒があればそれでいいような風潮もあり、新型コロナウイルス感染症の騒動も一応終息しつつあることから考えると、どうかするとインフルエンザが大流行などということになるのかもしれません。
 この手の話を書くと、いろいろとややこしいことを言い出す人が出てくるのですが、必要なのは感情論でも出所不明で検証不可の情報でもなく、客観的で誰でも確認できる公開情報からみた知見です。
 インフルエンザが流行しなかったことと手洗いとマスク着用の因果関係は新型コロナウイルス感染症が流行る前から比較的しっかりと検証されていることです。

この冬がどうなるのかはわかりませんが、少なくとも手洗いとマスクについては、引き続ききちんと続けておいたほうがよさそうです。

インフルエンザの発生状況(厚生労働省のウェブサイトへ移動します)

トイレットペーパーの誤解

 災害時に使用する仮設トイレでは、トイレットペーパーは便器に流さずに別に用意されたゴミ袋にいれるようになっている場合があります。
 猫砂や吸水材を使った非常用のものならともかく、それなりにしっかりしているように見える仮設トイレにそのような取扱があるというのは納得いかない方も多いようなのですが、これはトイレットペーパーに対する誤解があるからなのかなと感じています。
 実は、トイレットペーパーは水に溶けてなくなるわけではありません。
 試しに、トイレットペーパーをちぎって平たい皿の上で水をかけ、指でかき混ぜてみてください。
 トイレットペーパーの原型はなくなっても、かき混ぜている指には紙だったものが絡みついてくると思います。
 トイレットペーパーに使っている紙は、繊維が水でほどけやすいようにして作ってあるため、水で溶けているようにみえているだけなのです。
 つまり、充分な水量が確保できなければほどけきらずに塊が残り、それが続くと塊のかたまりができて詰まってしまう事態になります。
 また、拭くときにはちぎったままではなく、ある程度厚さのある塊にして使うと思うのですが、塊になれば水の中でほどけにくくなりますから、ちぎったままの状態に比べると詰まりやすくなってしまうのです。
 もちろんティッシュペーパーに比べれば格段に水に流れやすいのですが、災害時、すぐに修理ができないような状況で、流せる水に限度のある仮設トイレとなると、万が一を考えると紙を流さずにゴミとして処分する選択をしなければならないのです。
 災害時、生命線とも言えるトイレを守るためにも、トイレの水が確保できるまでは指示に従い、トイレットペーパーは便器に流さないようにしてください。

子どもの世話ができますか

スプーンで飲んだり食べたりできるかどうか知っているだけでも大事

 あなたがもし親で、小さな子どもが居るとしたらと考えてください。
 あなたはその小さな子どもをどのようにお世話すると思いますか。あなた自身が全てのことを任せきりにされるでしょうか。それとも、誰かに任せきりにしてしまうでしょうか。あるいは、周囲の助けを借りながら自分でも頑張ってみるでしょうか。
 実は、その子のお世話を普段しているかしていないかで、災害後にどれくらい家族の生活が安定するかが決まります。
 というのも、普段は仕事や用事で子どもを誰かに任せることができていたとしても、災害時にはあなたが子どもの面倒をある程度の間みなくてはいけないことになるのです。
 そのときにあなたが一人ででも子どものお世話がきちんとできないと周囲や家族の間でさまざまなストレスが溜まってうまく行かなくなるのです。
 災害時には、さまざまな普段の状況が先鋭化して浮き彫りになります。
 いいことも悪いことも、災害という事実が隠れていたさまざまなことをさらけ出してしまうのです。
 子育てでも同様で、さまざまな事情で誰かに子育てを押しつけていたら、災害時にはそのしっぺ返しを受けてしまうことになります。
 生活リズムや、食事、排泄、そして表情の読み取りまで、普段見ていないものは非常時にも見ることはできません。
 最低限、育児の一通りはできるようにしておきましょう。
 そして、もしも周囲に任せきりの人がいるようであれば、30分でも1時間でもいいので、その人に子どもを預けて面倒を見させてください。
 実際に動かないと、口でどのように言っていても行動はできません。
 自分でやってみること、その人に任せてやらせること。
 どんなことでもそうなのですが、特に育児では普段からしっかりと関わっておきたいですね。

コンタクトレンズと眼鏡

 目の悪い人にとって、コンタクトレンズや眼鏡などの視力矯正具は身体の一部になっていると思います。
 目が見えないというのは不安ですし、危険です。その上、見えないことがストレスになることもありますので、どんな状況であれ視力矯正具を複数確保しておくことは大切なことだと思います。
 ただ、気をつけておいて欲しいのが、コンタクトレンズの場合。
 災害時や災害後は、平常時に比べると衛生環境が悪化することが多いです。
 流水で手を洗ったりすることができない場合、コンタクトレンズの脱着時に目に汚れが付着して目に傷をつけたり目の病気になったりすることも起こりえますので、コンタクトレンズ派の人も、普段持ち歩くカバンや非常用持ち出し袋には眼鏡を用意しておくことをお勧めします。
 ちなみに、さまざまな理由でコンタクトレンズも眼鏡もなしになってしまった場合には、紙に小さな穴をあけてその穴を通して周りを見ると、ちょっとだけですが視力が良くなります。
 よく知られていることではあるのですが、こういったときに使えるというのは意外と知られていないので、念のため覚えておくといいと思います。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

 去る11月17日、益田市立高津小学校で第6回目となる高津小学校防災クラブを開催しました。
 今回は防災オリエンテーリングと題して、校内のさまざまな安全設備や場所、そして道具などについてチェックポイントにある問題を解きながら回ってもらいました。
 これは参加してくれている子どもからリクエストがあったもので、地図を片手にそれぞれが校内に散って、いろいろな場所に貼ってあるチェックポイントの問題を探して回答を考えていました。

保健室にあるAEDを確認。ここにあるのを知らなかった子もいた。

 AEDや消火器のある場所、図書館での安全な場所の見つけ方、避難場所になる災害が何かなど、結構考えるような問題も多く、30分くらいを想定していたのですが、「おさない・走らない・しゃべらない」の「おはし」を守りながら、一番早い子は10分、もっとも時間のかかった子でも15分程度で全部のチェックポイントを回って戻ってきたのには驚きました。
 最後に答え合わせをしていったのですが、思ったよりも子ども達がいろいろなことを知っていて、彼らがいろいろと教えてくれ、また想定していなかったものが出てきたりと、こちらも驚いたりすることのできた回となりました。
 校内を走り回ることや各部屋の立ち入りについて、いろいろと調整してくださった担当の先生、それをこころよく承諾してくださいました管理職の皆様、そして楽しんでくれた子ども達に感謝します。

AEDにご注意ください

 いざというときに備えて設置されている「AED」。
 正式名称は「自動体外式除細動器」といって、心蔵がけいれんを起こしているような状態を正常化し、心蔵の正常な活動を再開させるために使う道具です。
 これは年齢を問わずに発症しますが、早期に除細動すればほとんど助かるため、誰にでも簡単に使えて除細動できるAEDが普及しています。
 さて、AED用のパッド、あるいは設定モードには「小児用」と「大人用」があるのですが、「小児用」と聞いて、あなたはどんな年齢の人まで使えると思いますか。
 医療関係では「小児」というと15歳未満を指すことが多いのですが、このAEDパッドの「小児用」は「未就学児」を指していて、これが緊急の時に判断を迷わす要因になっているようです。
 小児用パッドは大人用よりもパッドの大きさを小さくし、パワーを1/3にしています。未就学児に設定をあわせていることから、6歳から14歳までの子どもには「小児用」ではパワーが不足していて充分な除細動ができないのです。
 日本赤十字社や消防署などがやっているAEDの訓練では、パッドが大人用しか無い場合には未就学児にも大人用パッドを使っても問題ないとされていますので、判断に迷ったら大人用パッドを使うようにしてください。
 また、パッドが同じで本体の設定で小児用と大人用に切り替えるAEDもありますが、こちらも小児用は未就学児です。
 学校に行くようになったらAEDは「大人用」を使うこと。
 新しいAEDでは「未就学児」と「小学生~大人用」という書き方に変わってきているようですが、殆どのAEDでは「小児用」「大人用」という表示です。
 迷ったときは「大人用」。忘れないようにしてくださいね。