バケツは万能アイテムです

 災害後に必要だなと思うことの多いアイテムの中に「バケツ」があります。
 水の配給時はもちろん、赤ちゃんの沐浴や洗い物、ゴミ捨て、洗濯など、一つあるのとないのでは大違いなのですが、残念ながら普段の生活ではあまり使うことがないかもしれません。
 最近では折りたたみの出るさまざまな種類のバケツが売られるようになり、アウトドア用品や釣り具、そして工具売り場などでさまざまな大きさのものを扱っています。
 欲張って大きいのを買っても大は小を兼ねない世界ですので、中身が入っても自分で持ち運びできる程度のものを選ぶとよいと思います。
 一つ気をつけるとすれば、中身が入っていなくても自立するタイプのものを選ぶようにしてください。
 中にはとてもコンパクトなものもありますから、赤ちゃんがいるおうちでは、そういったものをお出かけセットに一つ加えてもいいかもしれません。

 非常用持ち出し袋に折りたたみバケツを一つ。忘れないでくださいね。

防災グッズを揃える優先順位

 立て続く災害のせいか、防災グッズや災害対策の本や特集を見かけることが増えているような気がしますが、これらの記事を見ていくと、さまざまなものが取り上げられていて、全部揃えようなどと思えないような金額に積み上がってしまうこともしばしば。「防災グッズを揃えたいけれど、何から準備したものやら・・・」と途方に暮れてしまうことも起きてしまいます。
 当研究所で「防災グッズ、何から準備をすべきか」ということを聞かれたとしたら、まずは「絶対に必要なものの備蓄を増やす」ことから始めてほしいと思います。
 例えば、紙おむつや生理用品、常備薬、眼鏡やコンタクトレンズ、アレルギー対応のあれこれなど、各家庭、各個人で絶対に必要なものの種類は変わってきますが「絶対にないと困るもの」はないと困るのですから、ある程度の補給が期待できるまでの物資は備蓄しておく必要があると思うからです。また、自動車の燃料であるガソリンもないと困るものの代表格です。
 当研究所の記事もそうなのですが、防災関係の記事では代替手段や代替品の紹介をすることが非常に多いです。
 そのため、代替品があればなんとかなると考えてしまいがちなのですが、防災関係の記事の大前提は「絶対に必要なものは前もって準備しておくこと」です。
 例えば、おむつでよく紹介されるのはビニール袋とタオルを使った代替品ですが、実際にこれを使うとなると、赤ちゃんのおしりが蒸れてしまったり、交換用のタオルが大量に必要になったりと、紙おむつを準備しておいた方が楽だったというような結果になってしまいます。
 また、赤ちゃん用ミルクでは、味によっては赤ちゃんがいやがって飲まないという場合もあるでしょう。ですが、行政が手配して届いた赤ちゃん用ミルクがあなたの赤ちゃんが嫌がっているミルクだとしたら、どうしますか?
 無理矢理飲ませようとして赤ちゃんとあなたが疲労困憊するよりも、普段使っているものが準備してあれば、ミルクの問題により発生するあれこれを気にしなくてもすみます。余談ですが、母乳の場合でもショックやストレスで一時的に母乳が出なくなることもありますので、折に触れて赤ちゃんが飲める赤ちゃん用ミルクを見つけて慣らしておいたほうが安心です。
 生理用品も全く同じで、災害が起きたことによるショックで生理が始まってしまうこともあるようですから、自分の普段使っている生理用品を1周期分は用意しておくと、これも安心です。
 長袖シャツとキッチンペーパーなどで代替品を作るというような記事もあるのですが、普段でさえ、少しデリケートな方は合わない生理用品でかぶれたりすることもあるようですから、いっそう衛生的な環境を意識する必要のある災害時には、提案されている代替品は正直なところ現実的ではないと思います。
 今書いてきたような代替品は、別に嫌がらせやネタとして考えられたわけではなく、どちらかというと「どうにもならない状態なのでないよりはまし」という前提で考えられた代替品ですので、それを作ればいいんだから安心とは、絶対に思わないようにしましょう。
 また、常備薬として普段から飲んでいる薬がある人は、その薬はなくなると困るはずです。これは他のもので代替が効くものではありませんから、絶対に必要なものの最右翼と言えるでしょう。
 日々の生活の中では、他に代替の効かないものや、代替品を作るまたは維持することによって他に発生する数々の問題が生じてしまうものは、できるだけ必要なものそのものを用意しておきます。そのことによって、そうでなくてもさまざまなストレスにさらされてしまう災害後の生活でよけいなストレスをため込まなくてすみます。
 さまざまな防災用のあれこれを準備するときには、まず最初に自分の日々の生活の中で使うもののうち、「絶対に必要でないと困るもの」を最優先で多めに備蓄していくと間違いがないと思います。

防災ノートとエンディングノート

 先日「終活ノート」、いわゆるエンディングノートを見せてもらう機会がありましたが、その内容を見ていてどこかで見たことがあるなぁと妙な感覚になりました。
 ちょうどその頃に「我が家の防災ノート」という埋め込み式で自分の災害対策の計画ができるノートを作っており、そのときにこの防災ノートが終活ノートの内容にとてもよく似ていることに気がつきました。
 どちらも「私にもしものことがあったら」という想定で作るものなので似てくるのでしょうが、一つ作っておくとどちらにも使えるのかと妙に納得してしまいました。
 違っているのは防災グッズや避難経路、周囲の避難所を記入する欄がないことと、付録の情報部分でしょうか。防災ノートでは災害時伝言ダイヤルや被災証明書の取り方などがかかれているのに対して、終活ノートはお葬式の形式や遺産相続の手続きなどが書かれています。
 防災ノートの作り方がわからない人や何を書いたらいいかわからない人は、一度エンディングノートを買ってきて内容を埋めてみてください。
 その中に防災グッズの管理表、避難経路と避難所の位置図を追加して、表紙に家族写真を貼っておけば、立派な防災ノートができあがると思います。
 一度作れば、あとは作った人が必要な情報を追加していくのはどちらも変わりがありませんので、お時間を作って作成してみることをおすすめします。

イエローゾーンとレッドゾーン

 一昨年くらいから、石西地方でも土砂災害特別警戒区域、これを「レッドゾーン」と呼ぶそうですが、その指定についての説明会が進められています。
 現在は土砂災害警戒区域というのが指定されているのですが、このうち家などの建築物に損害がでそうな区域を土砂災害特別警戒区域として指定をし、建築制限などの規制を行うことになったそうです。
 現在の土砂災害警戒区域を「イエローゾーン」、土砂災害特別警戒区域を「レッドゾーン」として指定し、被害を未然に防ぐ対策を取っていくとのことで、人的被害の防止を最優先に取り組んでいくとのことでした。
 自分が住んでいる場所や地域がイエローゾーンやレッドゾーンに当たっているかどうかは、市町役場や支所、一部公民館、島根県の各県土整備事務所に備え付けてある地図で確認ができるそうです。
また、島根県の運営する島根県危険箇所検索システム内の「土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域」でも地図の確認が可能だそうですので、一度確認をしておくことをおすすめします。
 イエローゾーンやレッドゾーンは大雨が降ったときなどに土砂崩れや地滑りが起きる可能性の高い地域ですので、もしもあなたの住んでいる場所や避難経路にこれらの土地が含まれていた場合には早めの避難や避難路に組み込まないなどの対策が必要となってきます。
 なお、イエローゾーン、レッドゾーン等、土砂災害防止法の細かい内容については島根県土木部の該当ページのリンクを張っておきますので、そちらをご確認いただければと思います。

【活動報告】避難訓練を見学させていただきました【益田市立高津小学校】

屋上に避難する生徒たち。写真は加工してあります。

 10月23日に益田市立高津小学校で実施されました避難訓練を見学させていただきました。
 この避難訓練は毎年されているそうですが、去年から定型通りのものではなく、実際に災害が起きて避難したらどうなるかということで、想定に基づいて避難先まで避難する訓練をされているそうです。
 今回の想定は地震から津波が発生、4分以内に屋上へ避難という設定で、実際に屋上まで想定時間内に避難が可能かどうかを確認されていました。
 生徒たちの動きはかなり素早く、段取りよく避難がなされていましたが、狭い廊下で人が合流する場所ではどちらが優先になるのかを迷ったり、各所の点検で未確認の場所があったりと、予定調和ではない訓練なのでさまざまな小さな問題が起きていました。
 これらの問題を解決することで、より確実に避難できる、安全確保をすることができる方向に進んでいくとよいなと思います。
 人間はやったことしかできないし、知っているだけでは実際には動けないものです。本気で実施する訓練は駄目出しの繰り返しですので、どんなに回数を重ねても完璧ということはありません。 難しい想定はいらないと思いますが、誰もが何か起きたとき、無駄のない動きと判断を行えるようになるといいなと思います。
 お忙しい中、見学について快諾いただきました益田市立高津小学校の大橋校長先生、担当の岩田先生始め各先生方と生徒の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

スマートフォンを使うための3点セット

 災害時には、ネットワークが寸断されなければスマートフォンをはじめとする通信情報端末は非常に役立つものです。
 でも、情報をとり続けていると、電池切れを起こす心配があります。
 そこで、防災用品の準備では充電池が推奨されているわけですが、あと二つ追加しておくといいなというものがあります。
 一つは、充電用ケーブル。
 当たり前のような気がするのですが、この充電用ケーブル、案外と忘れることが多いものです。 最近はずいぶんと規格がそろってきてはいますが、それでもマイクロUSBのAタイプ、Cタイプ、iphone用のライトニングケーブルなどいろいろな種類があり、いざ人に借りようと思ってもなかなか貸してもらえないものでもあります。 充電池と充電用ケーブルは自分のスマートフォンの充電口の形状にあったものをきちんと用意しておくことです。
 最後はイヤフォン。
 スマートフォンのスピーカーを使い続けていると、その音が他の人に迷惑をかけることもありますが、イヤフォンを使うことで、自分が必要な情報を自分の好きなときに聞くことができるという利点があります。
 また、スマートフォンによっては、このイヤフォンを使うことでそれを受信アンテナ代わりに使うことができる機能を持っているものもあるようです。

いるものを揃えておくと精神的に楽ができる。

 これらを一つの袋に入れて普段から持ち歩くようにしておくと、いざというときも慌てなくてすみますよ。
 余裕があれば、これにUSB付きコンセントを加えると、避難所で許可があれば充電することだってできます。
 せっかく準備するのでしたら、それを使えるような装備も一緒に用意しておけるといいですね。

くどいようですが、防寒の考え方

 日中日差しがある間はまだ暑いときもありますが、だんだんと寒くなってきました。
 寒い時期に災害が起きると、その寒さが最大の敵となります。
 寒さを感じないためには、焚き火などの大きな熱源の近くにいるか、暖かい食事や飲み物などで体内から暖めるか、それとも体から発生する熱を逃がさないようにするかというどれかになりますが、避難所の運営開始時点では、一番有力なのは体から発生する熱を逃がさないことが自分でできる一番の寒さ対策です。
 そのためにはどうすればいいのか。
 それは体の周りに空気の層を作り、その空気を体温で暖められるように風が当たらないような対策をしておくことです。
 よくある羽毛のジャケットなどは、別に羽毛尾が暖かいわけではなく羽毛の間にある空気が体温で暖められて暖かく感じるのです。ですから、羽毛の入っている防寒着を着るのであれば、その羽毛を潰さないような着方をしないと意味がないということになります。
 風が当たらなければ体の周りの空気の層は逃げないわけですから、雨合羽でも充分に保温ができます。使い捨て雨合羽で激しい動きをした後にカッパの中が蒸し風呂になってしまうのでは保温がしっかりとできているからなわけで、これを利用しない手はありません。
 薄い服でも、重ね着をすれば服と服の間に空気の層ができるので、分厚い服一着よりも保温効果が高いこともありえます。
 もしそれもなければ、大きなゴミ袋に頭を出す穴を開けてそれを上着としてきてみたり、新聞紙を着てみることもいいかもしれません。
 とにかく風を防ぐことと、体から出る熱を逃がさないこと。
 頭なども面積が広く毛細血管も多いですから、しっかりと保温をしておきましょう。
 この対策をした上で、できることなら体がしっかりと熱を作れる食べ物や飲み物を取れば、ある程度までなら充分に防寒ができていると思います。
 飲み物は、あまり取り過ぎると用足しの回数が増えてそのときに排泄物が体の熱を持って出たりするので、取り方に気をつける必要があります。
 ドラマなどで出てくるような肌を合わせて体温を確保するという方法は、あまり現実的ではありませんのでご注意ください。
 また、毛布やエマージェンシーシートがある場合には、体→毛布→エマージェンシーシートという風に、空気の層を確保できる順番で身にまとうようにしてくださいね。

防寒には気をつけよう

 寒暖の差の激しい時期になってきました。
 夜中の気温は一桁台でも、日中の気温は二十五度前後と、一日の間に二十度以上の差がある日もありますので、健康状態には充分に気をつけていただければと思います。
 そんななかで気をつけたいのは「体を冷やさないこと」です。
 風に当たらないことはもちろんですが、体から発生した熱を逃がさないことも大切です。
 例えば、避難所での生活で、床がもし板張りやコンクリートなどの冷たさを感じる素材であれば、新聞紙や段ボールを体との間に入れるだけでも体感温度がずいぶんと変わります。
 体には毛布やエマージェンシーシートなどを巻き付けることで熱を逃がさず、体の周りの空気を体温で暖めて、ぽかぽかと過ごすことができます。
 服装でも同じことで、羽毛を使ったダウンジャケットが暖かいのは、別に羽毛が暖かいのでは無く、羽毛が保持している大量の空気が体から熱が逃げ出すのを防ぐことで暖かさを維持できているのです。
 服も同じで、厚手の服を一枚羽織るよりも薄手の服を重ね着する方が体温の保持はしやすいです。
 薄手の重ね着でもう一ついいのは、気温の変化による体温調整をしやすいこと。暑ければ脱いでいけばいいですし、寒ければ着込めばいいわけですから、そのときの最適な温度を維持することができるわけです。
 もちろん、体の内部から温めることも大切ですので、お鍋や汁物などの温かい食事をしっかりと取るようにしましょう。ただ、いくら暖まると感じても、お酒は止めた方が無難です。お酒でぽかぽかを感じるのは抹消の血管がアルコールによって広がることで温かく感じるためで、その間に体の熱がどんどん逃げていくので、気がついたら飲む前よりも寒かったという事態に陥ってしまいます。
 最後に、頭の保温を忘れないようにしてください。頭は面積もそれなりに大きく、多くの血管が集まっている場所でもあります。できれば毛糸の帽子のようなものを被って、できるかぎりの保温に努めるようにしてくださいね。

【活動報告】防災訓練を見学させていただきました【神田地区防災会】

 10月13日に益田市神田地区で実施されました神田地区自治会防災会の防災訓練を見学させていただきました。
 今回初めて実施されるということでどのようにされるのかなと思っていましたが、タイムスケジュールにこだわらず、さまざまなことを確認しながら進行されていました。
 想定される避難者の誘導や避難所への収容、自治会所有のトランシーバーの不感地域の確認など、手順や問題点を相互に確認しておられ、本番に備えた確認がしっかりされていました。
 今回の訓練は主に防災会の役員様方の手順の確認ということで模擬避難者の方々は手ぶらで来ておられましたが、実際にはそれぞれに非常用持ち出し袋を持参してもらうとのこと。
 今後それをどのように普及されていくのかが鍵になるかなと感じました。
 避難完了後、神田地区のハザードマップを元にした避難について、自治会長様から模擬避難者の方に説明がされ、各組ごとに避難先や避難のタイミングについて決めておいてくださいというお話をされていました。

非常食を配布する準備をしている防災会の人

 また、非常食体験ということで飲料水とアルファ米を配られていましたが、模擬避難者の方からはこれらの非常食はどこで買えるのかという質問が出ていました。普段「非常食を準備しましょうね」という説明はしますが、地元での調達先についても知っておいてもらったほうがいいということがわかり、非常に勉強になりました。
 最後に消防団の方の指導で土のう作りを体験されていました。
 自治会が主体的に実施する防災訓練をじっくりと見させていただいたのは初めてでしたが、さまざまな気づきと発見がありました。
 お忙しい中、見学について快諾いただきました神田地区の自治会長様はじめ地区防災会の方々に、この場を借りてお礼申し上げます。

安全を比較して避難する場所を決める

 自分の住んでいるところがどのような災害に対して弱いのかを考えたことがありますか?
 最近の災害では「避難所への避難」をやたらと呼びかけていますが、避難しなくてはいけないかどうかは、お住まいの環境や条件によって異なります。
 隣り合う家でさえ、避難すべきかどうかの条件が異なるのですから、周囲のことは全く参考になりません。あくまでもあなたがお住まいの家がどのような災害に弱いのかをあらかじめ知っておくことが大事なのです。
 ハザードマップやお住まいの建物の強度や補強状況、土地の成り立ち、避難経路の危険箇所や避難所の状況などを確認して、家にいるのか避難所にいくのか、「より安全な方」を選択すること。
 そして、「安全な方」をより安全にするためにはどのようにしたらよいかを考えてください。
 マスメディアなどでよく取り上げられているように「災害発生予測=早めに避難所へ避難」というのは間違いではありませんが、避難所によってはお住まいのところよりも危険度が高いという場合もあります。
 また、家にはなんの被害もなかったのに、避難途中で遭難してしまうようなケースもあります。
 もちろん家の耐久度が低い場合や水没しそうな地域の場合には早めの避難が必須ですし、台風のような大規模災害が予測されるような場合なら、いっそのこと勢力圏外へ避難するのも大切なことです。
 安全は自らが確保するもので、誰かが守ってくれるものではありません。
 どの災害ならどこが強いのか、どの災害はどこへどうやって避難したらいいのかを何でも無いときに確認し、いざというときに備えておきたいですね。