避難所の準備はできているか

日本の災害でもっとも進化していない部分は、ひょっとしたら避難所なのかもしれません。
写真や絵が残っている1888年の磐梯山噴火の写真と、1959年の伊勢湾台風、そして2011年の東日本大震災、それぞれを比較すると、ほとんど同じ状況であることがわかると思います。
体育館などの広い施設に避難者が雑魚寝。プライバシーもなく、情報も生活用品の配布もでたらめ。トイレは汚くて衛生環境もかなり劣悪。
新柄コロナウイルス感染症の蔓延によってソーシャルディスタンスという言葉が生まれ、初めて避難所がすし詰めにならない状況が生まれましたが、今度は避難所に避難できない避難所難民が発生している事態になっています。
最近では自宅避難が前提だということになって、できるだけ避難所への避難者を減らす方向で国も広報を進めていますが、自宅避難できない地域もたくさんありますので、避難所にどのように収容するのか、そして避難所での生活環境をどれくらい快適なものにできるのかは引き続きの課題になっていると思います。
人によっては避難所を快適にすると避難所から出ないという人もいますが、災害という非常事態で、さらにプライバシーがなく、生活用品や生活リズムが自分の思うようにできない環境では、心身ともに疲弊してしまうのは、災害からの復旧には大変なマイナスになるということを忘れないでほしいと思っています。
海外では、大規模災害が起きるとすぐに仮設住宅などが設置され、長期にわたって避難所での生活を余儀なくされるケースは年々少なくなっています。
これは災害からの復旧にはその人が疲弊しない生活環境の確保が必要だと考えられているからではないでしょうか。
避難所を現状のまま長期間運用する気であるなら、それなりの生活環境を維持できるような整備が必要となります。
避難所の準備、当事者も管理者も、平時にしっかりと考えて準備しておく必要があるのではないでしょうか。

被災者と支援者

 行政の職員や地域の民生委員、消防団、自治会役員、電力会社やガス会社など、普段から地域に住んでいてさまざまな役をしている人たちがいます。
 災害が起きると、そういった人たちは被災者や被災地域の復旧・復興に東奔西走することになりますが、多くの人が忘れている事実があります。
 それは、そういった人たちも地域の被災者であるということ。
 他の人たちが家族の安否確認や家の片づけをしている間、役についている人たちは自分のことは置いておいて、まずは他の被災者や地域のために奔走しています。
 でも、それは当たり前のことではありません。
 誰だって家族のことが気になりますし、家の片づけだってしたいはずで、それを仕事だからということで後回しにして他の人のために仕事をしてくれているのです。
 本来は、できるだけ早く他地区から仕事が代われる人を送り込んで、被災した人は家に戻してやることが必要です。
 ここのところ災害が続いていて、だいぶ動きは早くなってきました。それでも、まだまだ遅いなという印象です。
 行政や地域で活動している人全てが一斉に自分のことをするのは難しいと思いますが、他地区からの応援が入れば、順番に自分のことをやれる時間を作ることができます。自分のめどが立てられれば、精神的には落ち着きますので、かなりよいコンディションで仕事を行うことができるようになるでしょう。
 それを行うためには、各応援部隊は数日で入れ替わるのではなく、1週間や10日くらいは被災地に腰を落ち着けて、地元の人がいなくてもしっかりと支援を行うくらいの気持ちが必要です。
 これからまだまだ災害は増えてくると思いますので、今のうちに自治体同士の相互支援協定や民生委員、消防団、自治会などの受援体制をしっかりと固めておきましょう。
電力会社やガス会社はその辺はかなりしっかりとやられていますが、今後は現在のような維持管理体制を継続することも難しいのではないかと思います。
 しっかりとした支援体制が組めるように、他地区の同業者と調整をしておく必要があるでしょう。
 そして、支援者は短期、中長期でそれぞれ支援ができるような体制づくりをしていく必要があります。軌道に乗れば被災地に業務をお返しできると思いますが、支援者もある程度腹を決めて被災地に入ってほしいと思います。
 被災地では、その地域でさまざまな仕事をしている人がすべて被災者になります。そのことを忘れずに、災害復旧をしていきたいですね。

【お知らせ】外あそびごはんの会inみと自然の森を開催します

 2023年6月25日に益田市美都町にある「みと自然の森」で防災ディキャンプ「外あそびごはんの会」を開催します。
 ファイアスターターを使ったたき火体験やご飯炊き、自然観察など、さまざまなプログラムを用意しています。
 また、現地までが遠く、途中の道が悪いので、益田市内の集合場所からバスもご用意しました。
 6月10日締め切りで、事前申し込み制。雨天時は中止となりますが、前日昼までには開催の可否を判断いたします。
 参加者は抽選ですが、益田市内限定などはありませんので、広く興味のある小学生・中学生の参加をお待ちしております。
 内容について詳しくは、別添のチラシをご覧ください。

地震とそれ以外で対応を分けること

 災害時に備えていろいろと準備するように言われていますが、気をつけないといけないことがあります。
 それは災害によって備えるべきパターンをわけておくこと。
 より具体的には、地震とそれ以外の災害にわけて考えることが大切になります。
 地震は来た時には勝負がついています。つまり、建物やブロック塀などの耐震補強や逃げ込める場所の確保といった、どれくらい事前の準備ができているかで結果が決まります。
 対して、それ以外の災害ではある程度予測や予兆がありますので、対策をする時間があります。
 「マイタイムライン」はまさにこの予測できる災害に備えた災害時行動計画になり、これを整備しておくことで自分が助かる可能性が上昇します。さらには、状況に応じてさまざまな行動パターンが作れるのも予測ができる災害対策の利点です。
 いきなり来ると言われる火山の噴火でも、さまざまな映像を見る限りは噴火の開始から1分~数分の猶予はありますのから、その間にできる限りの退避行動をとることはできます。また、事前の準備である程度生存率を上昇させることもできると思います。
 さまざまなところがやっている災害の研修会では、結構この部分がごっちゃになって説明されているので、なかなか理解してもらうのが難しいのではないかと思っています。
 地震は事前準備と発生時から治まるまでを分けて考え、それ以外の災害では時系列で行動を整理していく。
 これをわけるだけでも考えるのにかなり楽になります。
 もしも何から手を付けていいのかわからない人がおられるのなら、地震とそれ以外でまずは切り分け、それぞれにどのような対策がいるのかについて考えてみてください。

避難先はどこですか?

 災害で最優先されるべきは人の命であり、ハードもソフトもその前提で対策をとっています。
 ただ、いろんな大人の事情があるみたいなので「避難=避難所」という図式を変えずに表現しようとして、「自宅避難」などという不思議な言葉が登場してきています。
 「避難」という言葉の意味は「難を避ける」ということなので、「自宅避難」という表現でも問題はないという見解をしているみたいですが、「避難=屋外退避」ということを言い続けていたのが行政だったわけで、その見解を変えずに無理やりつじつま合わせをしているような、なんともいえない気分に「自宅避難」という言葉を聞くたびになってしまいます。
 言葉遊びをするのではなく、前提条件として、そもそも「避難」は自宅にいると何らかの命の危険がある場合に自宅以外の場所に逃げるのだということをはっきりと言わなければなりません。
 過去には自宅は安全だったのに、避難勧告が出たので避難を開始してその途中で遭難してしまった人がいます。
 まずは安全なら自宅待機。自宅が危険だという人だけが避難行動をとらなければいけないということをあらゆる機会に言わなければいけません。
 ともすれば、防災関係者でも簡単に「避難所に避難しましょう」などと言ってしまっていますが、その結果として、避難所は人であふれかえって収容ができなくなり、いくつもの避難所をめぐる避難所難民が誕生します。
 もともと流域人口を考えずにテキトーに割り振られているのが避難所や避難場所なので、避難所難民が出てくるのは当たり前なのですが、それらの人たちの命も当然守られなければなりません。
 ではどうするかといえば、まずは「自宅が安全であるかどうかを確認する」ことから始めて、安全であれば自宅で待機、危険であれば、そこで初めて避難するという選択肢が登場するのだと考えてください。
 避難でも、例えば親せきや友人が安全な場所に住んでいるのなら、そこに移動するのが一番確実です。普段から良い関係であるなら、あらかじめお願いしておくことでトラブルを防ぐこともできるでしょう。
 予算に余裕のある方は、被害地域から出てしまうのも手です。影響のないところに移動して、状況が収まってから戻れば、心身ともに元気な状態で復旧作業に入ることができます。
 また、安全な場所にある宿泊施設などに移動して、そこで過ごすのもいいと思います。経費はかかりますが、避難所と違って宿泊するための設備があるので、かなり快適に避難生活を送れると思います。
 最後に、何らかの理由で今まで書いてきた避難先が確保できない人だけが避難所に避難する。こうすることで、避難所に集中する人数はそれなりに減ると思います。
 「避難=避難所」ではなく、避難所は「どうにもならない場合の最後の砦」という意識で、避難所以外の避難先を平時から探しておくことをお勧めします。

【活動報告】救急救命講習会を開催しました

 2023年5月21日に益田市あけぼの西町にある(株)益田スイミング様を会場に、日本赤十字社島根県支部の方を講師にお招きして救急救命講習会を開催しました。
 当日は14名の方にご参加いただき、水難事故で気を付ける点や心肺蘇生法、AEDの使い方を3時間にわたってしっかりと講習をすることができました。
 心肺蘇生とAEDはほとんどセットでされることが多いので、今回の講習でも一連の流れとして行ったのですが、実際にやってみると非常に疲れてしまい、1分間でも圧迫する力が緩んでいくような大変さがありました。できる限りその場にいる人たちで交代で負担を軽くしながら命をつなぐことが重要だと感じました。
 今回の講習会でも、参加してくださった方からはさまざまな質問が出て、「夏の道路で短パン履いてる状態で膝立ちするのは難しい」とか「実際にどれくらい出くわす頻度があるのか」「心肺蘇生法をした相手が亡くなったら訴えられるのか」などといった質問も出て、講師の方も「周囲の協力を仰いでできるだけ怪我しないようにする」「講師自身はそういった現場には出会ったことはない」「心肺蘇生した相手が亡くなっても刑事訴訟にはならない」といった具体的な回答を一つ一つ丁寧に行ってくれました。


 毎回ご好評をいただいているこの講習会ですが、一年もたつと忘れてしまうというご意見も多く、できれば年内にもう一度やってみたいと考えていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
 今回の講習会に参加してくださった皆様、そして丁寧に分かりやすい講習をしてくださった日本赤十字社島根県支部の講師の皆様にこころからお礼申し上げます。

スマートフォン用の充電池を持っていますか

 好き嫌いにかかわらず、最近ではさまざまな情報を得るのに使われているツールがスマートフォンです。
 電話、といいながら、さまざまなアプリで情報交換したり、音楽を聴いたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりと、一台で何役も仕事をしてくれる優秀なアイテム。
 ないと困るという人も多いと思います。
 ところで、災害が起きると問題になるのがこのスマートフォンの充電方法。
 スマートフォンを大規模災害後もそのまま使えるようにするためには、スマートフォンを充電できる充電池を持ち歩いておくほうがよいでしょう。
 中には大容量のバッテリーを持つスマートフォンもありますが、そういったものでもない限りは、大規模災害後に電源を入れっぱなしにしておくと、びっくりするくらい電池を消耗します。
 これは基地局を探すためにアンテナの出力を自動的に上げることで起きるものだそうで、対策としては使わないときには機内モードにするか、あるいは電源を切っておくことが有効です。
 ともあれ、情報を集めるにしても安否確認するにしても暇つぶしするにしても、バッテリーが切れてしまってはただの箱。
 そうならないように、充電池を一緒に持ち歩くようにしてください。
 ちなみに、避難所では避難所にあるコンセントを勝手に使って充電することはできません。大規模災害の場合には、手持ちの電池で何とかするしかありませんので、充電池だけでなく、可能であれば太陽光発電装置なども用意しておいた方がよさそうです。
 自分のスマートフォンのバッテリーをどうやって持たせるのか、普段から意識して準備するようにしてください。

【活動報告】高津小防災クラブで「経口補水液を作ろう」を開催しました

 去る5月17日に益田市の高津小学校で今年初めての防災クラブを開催しました。
 本来は初回なので「災害ってなんだ?」というタイトルで災害の定義や種類について考えてみる回なのですが、前日から気温30度超えで熱中症が心配されたことから、急遽熱中症対策と経口補水液づくりをやってみることにしました。
 熱中症対策としては、まずは暑さに体を慣らしてしっかりと汗をかくようにすることと、こまめに水分補給をすること、できれば水や麦茶がよいというお話をし、経口補水液は脱水症状を起こしているときや起こしかけのときに使ってほしいという説明をしました。
 実際に経口補水液を作ってみたのですが、飲んでみた感想は全員「まずい!」でした。これがおいしく感じると脱水症状が始まっていますので、とりあえずは一安心。次にレモン果汁を加えて飲んでもらうと、感想がいろいろと変わって「ポカリみたい」とか、「よくわからん」「さっきよりまし」といった感じで、「まずい!」ではなくなりました。脱水症状を防止するために経口補水液を使うときには、ある程度何か味がついているほうが飲みやすいようです。
 最後は、もし熱中症で倒れたらということで、急速冷却材の説明と、冷やすのは大きな血管が肌に近いところにある場所ということで、わきの下や足の付け根、首の下などを冷やすことをお話し、意識がはっきりしていない場合には、点滴が必要となるのですぐに救急車を呼ぶことを重ねて説明し、終了しました。
 今年度初めての子ばかりで、17名中過去に参加したことのある子が1名だけという、なんとも捉えどころのない今年の防災クラブですが、そのうちには今年の個性が出てくるのかなと楽しみにしています。
 次回は改めて「災害ってなんだ?」というお話をしたいと思っていますが、状況によっては、またメニューが変わるかもしれません。
 参加してくれた児童の皆さん、そして担当の先生にこころから感謝いたします。

我が家のBCPを作ろう

 防災用語として割と定着した感じのあるBCP、事業継続化計画といわれますが、何か不測の事態が起きた時にでも事業を継続できるような段取りを可視化しておくものです。
 学校や施設、企業などで作っているはずですが、行政や業者の作ったひな型に文字を入れて、内容の確認も検証もせずに備えていますというところが山ほどあります。
 実態に即していないBCPはいざというときに助けにならず、逆に邪魔になることが多いのですが、今回はそれに対する文句を言いたいわけではありません。
 今回は、おうち版のBCPを作ってみないかというお話です。
 おうち版BCP、一時期FCP(ファミリー・コンティニュー・プラン「家族継続化計画」)と呼ぶ人もいましたが、結局定着していないようなのでおうち版BCPとしてここでは説明をします。
 内容は「誰がどこにいるのか?」「どこにいるときにはどこへ避難するのか?」「災害が落ち着いたら、どこで合流するのか?」「連絡手段はどうするか?」「収入はどのようにするか?」など、被災しても家族が安心して避難し、災害後、日常生活を取り戻すまでに必要な段取りをきちんと決めておくことです。
 これを作ることによって、いざというときに自分がどこへ避難するのかや他の人がどこに避難するのか、どうやって連絡を取り合うのか、どこで家族がまた一緒になるのかといった、災害後に問題になる部分が解決できます。
 家族と普段から生活している場合には、災害発生時にどうしても自分以外の家族が気になるものです。
 子どものいるおうちだと、子どもを引き取りに学校などに出向くということがあるかもしれませんが、迎えに行く人や迎えを待っている人が被災するかもしれません。
 でも、もしも災害発生時に子どもがどこかへ避難することを決めているのであれば、子どもはそれに従って避難しますし、危険を冒して迎えにいかなくても、状況が落ち着いてから避難先に迎えにでかけてもいいのです。
 BCPと避難計画が決定的に違うのは、避難計画は避難完了までが目的であるのに対して、BCPは避難完了後、日常生活を取り戻すまでの手順を作っておくことが目的であることです。
 作る時には、ご家族みんなであれこれ話しながら作ってください。そうすることで、参加した人は自分のこととして受け止めることができ、いざというときにもきちんと行動をしてくれます。
 我が家のBCP、作るのは結構大変ですが、ご家族の行動範囲や活動内容、生活習慣を再確認することができるので、作った後は悩んだり迷ったりする必要がかなり減ります。
 作ることが難しいなと感じたら、BCPについて書かれた書物を調べたり、BCPを取り扱っている業者などに相談してみてもいいと思います。
 当研究所でもお手伝いできますので、興味のある方がおられたらご連絡をください。
 我が家のBCP、作ってみてくださいね。

一日一度は楽しい時間を作る

 避難生活が続くと、楽しいことやにぎやかなこと、特に笑うことが不謹慎だと言われる方もいらっしゃいますが、気力を維持するためには楽しいことやにぎやかなこと、そして笑うことが何よりも大切だと筆者は考えています。
 被災者となった人にこそ、一日のうちのどこでもいいのでその人が楽しいと思える時間を作ることが未来への気力を生む力だと思います。
 携帯ゲーム機でも、スマホでも、麻雀でもおしゃべりでも、パチンコでもいいと思います。普段から自分が楽しいと思っていることを楽しむ時間を確保してください。
 笑わなければ、だんだんと気が滅入るようになり、未来への気力も失われていきます。自分を楽しませることは、生きる力を生むことではないでしょうか。
 大規模災害だと、最初は生きるので精いっぱいな状態かもしれません。でも、そういった時期をすぎたら、できるだけ自分が楽しめる時間を作る努力をしてください。
 とはいえ、被災地ではできることできないことがありますから、平時に作っておいた「自分が楽しいと思うことリスト」を使って、その場でできる自分が楽しいと思ったことを片っ端からやってみてください。
 どれかがはまればしめたもの。きっと夜は気持ちよく寝られますし、翌日もすっきりと目が覚めると思います。
 ただ、一つだけ気を付けてほしいことは、お酒だけはダメです。お酒は自分のそのときの気分を極端化にする飲み物なので、どこか心に不安を抱えた状態で飲むと、悪酔い&深酒&からみ酒となってロクなことにはなりません。お酒は、自分が本当に楽しいと思う気分のとき、その気分をより楽しくするために飲むのだと思ってください。
 不謹慎で結構。被災地だからこそ、自分が楽しまなければ気力は続きません。
 自分を守ると思って、自分が楽しいこと、時間を作って楽しむことを忘れないでくださいね。