高齢者などの要支援者ほど事前訓練をしっかりしておこう

 最近あちらこちらで自主防災組織の立ち上げが進められています。
 地域のことは地域で行うという前提の自主防災組織が編成されると、まずはその地域の避難についての計画や訓練がされるようになります。
 その避難計画や避難訓練、避難所運営訓練には、いったいどんな人の参加が予定されているでしょうか。
 多くの場合は自治会役員や地域の元気な人達が中心だと思いますが、高齢者や障害者といった支援の必要な方もちゃんと参加していますか?
 自主防災組織が作る避難計画書では、多くの場合「避難準備・高齢者避難開始情報」が発令された段階で、高齢者や障害者と言った要支援者を最初に避難所に移動させることになっているからです。
 つまり、避難所に一番最初に避難してくるのは要支援者の方々であり、恐らく一番長い時間避難所にいることになる方々なわけです。
 この最初に避難してくるはずの人達も訓練にきちんと参加していますか?
 「寝たきりだから」とか「足が悪いから」とか、「人が多いところへいくと何が起きるかわからないから」といって、要支援者が参加を拒んだり、参加を見送ったりしていませんか?
 でも、要支援者が実際に参加しないとどんな支援や準備が必要なのかわかりません。
 やってみたら、設備や資機材の関係でその要支援者がその避難所では受け入れることができないということもあるでしょう。
 それは実際にやってみないとわからないことなのです。
 要支援者によっては「家以外は病院でないと無理」という方がいるかもしれません。 そんな人は、ちゃんと非常時に病院に収容してもらえる手はずを整えているか、受け入れてもらえない場合はどのタイミングでどこへ移動させるのかを決めているか確認しておかないといけません。
 また、避難してくる要支援者の人たちは、ちゃんと持出用防災セットを準備して持ってくることができるでしょうか?
 彼らが身一つで避難してきた場合、食料や寝具といった物資の準備は避難所に備わっていますか?
 準備できていない場合、どこから誰がいつまでに用意するのか、きちんと取り決めてありますか?
 また、避難所内を安全に移動したり、トイレを使ったりすることができますか?
 食事や寝ることが問題なくできますか?
 それらはやっぱり実際にやってみないと分からない部分なのです。
 いざというとき、助かろうと思って避難してきたが、自分が生きるために必要なものが何も無い避難所で死ぬことになってしまったというのでは悲しすぎます。
 立場の弱い要支援者の人たちほど事前訓練が必要だと言うことを、自主防災組織の方は基本的な事項としておいてほしいなと思います。

 余談ではありますが要支援者の方は生活弱者でもあるので、行政の人間が一緒に参加することで地域に隠れている、本来行わないといけないさまざまな支援ニーズを掘り起こすことも可能になります。
 行政、特に福祉関係の方が参加してもらえれば、要支援者が避難所に避難できない場合の受け入れ先の問題も考えてもらえると思いますので、避難計画を作るときや避難訓練をするときには、防災関係だけで無く、福祉関係の部署にも声をかけてみてください。

天井が落ちてくる?!

建物の中の落下物と聞くと、どんなイメージがありますか?
照明器具、高いところに置かれた本や食器、テレビや窓ガラス、いろんなものが浮かぶと思います。
その中に「天井」が落ちてくるという意識があったでしょうか?
一般家屋ではあまり問題にならないのですが、施設では天井そのものが危険ではないかという認識が持たれています。

1.天井が問題になっている理由
天井のうち、「吊り天井」と呼ばれる構造のものが問題になっています。

吊り天井内部
吊り天井内部。石膏ボードをビスやクリップで支えています。

「吊り天井」とは本来の天井から下がったワイヤやシャフトに下げられた鉄骨にビスやクリップで別の天井が作られているもので「安価で音の遮断や断熱、防炎効果」ができ、天井裏の配線などを隠すことができることからあちこちの施設で採用されています。

ここに使われている主な素材は石膏ボードでは7kg/㎡程度、ロックウールでは4.9kg/㎡と重量のあるものです。
地震や経年劣化によりこの天井素材と鉄骨を止めるビスやクリップが外れ、素材が落下することにより事故が発生するもので、東日本大震災では東京の九段会館で2名の方が亡くなっています。

天井用石膏ボード
天井用石膏ボード。持ってみると結構重いです。

建物の耐震基準では、柱や梁は倒れたり落ちたりしないことが絶対的な要件になっていますが、天井は内装物とされ、とくに基準がありませんでした。
平成28年に建築基準法が改正され、初めて吊り天井の強度や構造について決められましたが、それまでに建てられた建物については「増改築時に基準として適用すること」という取り扱いになっています。
2.解決する方法
一番手っ取り早いのは、吊り天井を撤去してしまうことです。構造物が無くなれば問題は解決します。

天井用ワイヤメッシュ
石膏ボード落下対策のワイヤメッシュ

とはいえ、防音防炎断熱をここまで安価にできる代替素材もありませんので、その機能が必要な場合には落下防止対策をする必要があります。
石膏ボードの下にネットやメッシュワイヤーを置くことで、破壊されたときに大きな破片がいきなり落ちることは防げます。
また、軽量化された代替品も出ているようですので、それらに置き換えていくのも一つの方法です。

いずれにしても、施設では天井の落ちる可能性があると言うことを頭の中において行動することが必要なようです。

通電火災を防ごう

地震が起きると、電力会社は被災した一帯の送電を止めます。
発災後、電柱や電気施設の確認をした上で通電を再開するわけですが、この時、地震で壊れた電化製品や断線した電気コードがショートしたり、電気ストーブなどの暖房器具が倒れてきた洗濯物や本など可燃物と接触したりして火災が起きることがあります。
これを通電火災と呼びますが、1995年の阪神淡路大震災で起きた出火はこの通電火災が原因とされているものが数多くあります。
また、東日本大震災でも、発生した火災の6割が通電によるものとされ、中には避難所として使われていた施設も、通電火災により閉鎖になったケースもあります。
電力会社でも対応は進めていて、2016年4月の熊本地震では通電火災は0件となっています。
これは通電前に通電予定箇所を広報して回ったり、倒壊した家屋への引き込み線を撤去することにより達成できたものです。
とはいえ、規模が大きくなったり被災範囲が広範囲になってしまった場合には、全ての場所に電力会社が対応できるとは限りません。
そのため、自衛手段として配電盤を「感震ブレーカー付き」にしておきましょう。
感震ブレーカーと言ってもさまざまな種類があり、配電盤内に感震装置を内蔵しているものや設定した揺れが起きた段階でボールやバネの力によりにブレーカーのスイッチを切るするものなど、いろいろあります。


GV-SB1 リンテック21 感震ブレーカーアダプター【簡易タイプ】 YAMORI(ヤモリ)



簡易型感震ブレーカー「スイッチ断ボール3」 SWB03


感震ブレーカーはその名の通り地震に対して有効な電源切断装置ですが、他の災害では機能しません。
そして、地震以外の災害時でもブレーカーで電気を遮断しなくてはいけないことは変わりません。
ただ、いきなり来る地震ではブレーカーによる電気遮断のことを忘れがち。
そのため、自分の財産を守るためにも、周囲を燃やさないためにも、感震ブレーカーを設置するようにしましょう。
また、当たり前ですが普段から電気ストーブやファンヒーターの周りには可燃物を置かない、使っていない電化製品はプラグを抜いておくといったことも意識しておくようにします。
東京消防庁の調査では、東京消防庁管内で発生したストーブ火災のうち、電気ストーブによるものが実に7割を占めていたそうです。
災害時だけでなく、普段からも火災を出さないように意識したいものですね。

ゴミ問題を考える

災害が発生すると、やがて大きな問題になってくるのが「ゴミ」です。
災害の後片付けが始まると、一斉に粗大ゴミが集積場に出されます。
また、避難所など多数の人が生活する場では、一カ所で大量の生活ゴミも発生することになります。
上手に処理しないと、臭いや害虫、害獣の巣になったり処分場がなくなったりして環境が不衛生になってしまいますので、ゴミ処理についてどうするかを考えてみます。

1.粗大ゴミと生活ゴミ

災害で発生するゴミは、大きく分けると二つにわかれます。
一つは被災した建物等からだされる「粗大ゴミ」、もう一つが人が生活していく上で発生する「生活ゴミ」です。
どちらも普段から出されるものではあるのですが、災害時にはそれが極端に増えることになります。

2.粗大ゴミの処分

タンスや食器棚、テレビといった粗大ゴミは通常であればそれぞれに回収され、それぞれリサイクルや焼却処分に回されています。
ですが災害時にはその仕分けが難しいため、集積場にいろいろなものが一緒くたに出てくるのが普通です。
少し前までは集積場から直接埋立場に運び込み、すべて埋め立てゴミとして始末していましたが、支援自治体の受入体制不備や処分場のパンク、有害物質の流失という問題が発生することがありました。
そのため集積場から仮置き場へ運んで、本当に埋め立てるしかないゴミと燃やしたりリサイクルできるゴミを仕分けることで、かなりの問題を防ぐことが可能になりました。
ただ、仮置き場に一気に粗大ゴミが入ってくるので、スムーズな仕分け作業にはそれ相応の人手と時間が必要となります。
そのため、ゴミを仕分けるボランティアが募られるようになってきています。
また、生活の糧のなくなった避難者にもここで仕事をしてもらうことで、ある程度の収入を確保してもらうことも可能です。
問題としては、仕分けを行う広大な敷地が用意できるかどうかという点でしょう。

2.生活ゴミの処分

生活ゴミは普段の生活でも出てくる「暮らすために出るゴミ」です。
書類や手紙などの紙ゴミ、食事で使った弁当の空き容器や割り箸、残飯や余った食材のような生ゴミ、トイレやおむつで出された汚物などがこれにあたります。
紙ゴミは、環境的には問題がありますが、暖を取る燃料として現地で燃やすことも可能ですし、弁当の空き容器や割り箸は、供給業者に回収もお願いすれば済みます。
問題になるのは生ゴミと汚物で、これらのゴミは放っておくと悪臭を放ち、非常に不衛生になります。
そのため、廃棄するルール作りと処分するための回収計画を作っておかなくてはなりません。
廃棄するためには、面倒でも普段と同じように各自治体の回収方法に沿ってゴミを区分する必要があります。
生ゴミと汚物の取り扱い、あなたの住む自治体はどのようになっていますか?
処理方法について事前に確認しておき、きちんと回収してもらえるようにしておきましょう。
生ゴミと汚物については、二段階で処理をします。
まずは発生したら必ず新聞紙に包んでビニール袋に入れ、その口をしっかりと縛ります。そのとき、袋の中の空気をしっかり抜くと悪臭をかなり防ぐことができます。
これらのゴミは大きなゴミ袋と大きな蓋付きバケツで作られたゴミ箱に入れますが、このゴミ箱は昼夜使うので、居住区からは少し離れた、でも人目につくところに置きます。
そして、中身が一杯になったらゴミ袋の口をしっかり縛り、居住区画から離れた風下でかつ人家のない場所に作った保管場所に収めておきます。
保管場所は野生動物等に荒らされないように密閉できる容器、もしくはゴミに触れないような容器で作るようにしましょう。
そしてこららのゴミがどういうタイミングで回収されるのかを、自治体とつめておきます。
避難所以外で生活している人は、同じように仕分けしたゴミを避難所の保管場所に集めることで、回収する手間を省くことができます。

人が生きて行くには、どうしてもゴミが出来ます。
特に災害時には、衛生の問題からどうしても使い捨てのものが増え、あわせてゴミも増えることになります。
紙皿にラップをかけて使うことや、ペットボトルの再利用、ゴミの出にくい食事や災害用品をパッケージから出して備えておくことなど、なるべく災害時にゴミを出さないように考えて準備しておくことが大切です。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。

BCPってなんだろう?

災害対策においてよく出てくるのがこのBCPというものです。
大企業から中小零細、個人商店に至るまでこれを作成して欲しいという話が、政府から一時期かなりの勢いで発信されていたので、あなたも名前だけはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
BCPとは「BusinessContinuePlan」の略で、日本語では「事業継続化計画」という言い方が多いようですが、名前から見ると商売をしている人や組織が作っておけばいいような印象を受けるかもしれません。
でも、このBCPはお仕事をしている方のみならず、全ての人が作っておくとよいものです。
今回はこのBCPについて触れてみたいと思います。

1.そもそもBCPって何?

「BCP」=「事業継続化計画」とは一体何か?
これは「災害が発生したとき、何が問題になるのか、どう対応したらいいのか、何から処理していくのか、何に誰が対応するのか」ということをあらかじめ決めておく作業のことです。
要するに、「被災してから復旧完了までの手順を決めておく」ということです。
この手順を決めて関係する全ての人が知っておくと、もし社長に何かあっても知っている人が手順通りに段取りをして事業が止まらないように復旧することができるというもので、途中の過程では自分の財産の洗い出しも行うことになります。
災害が発生すると、一度にいろいろなことへ対応しないといけなくなります。
あらかじめ対応を決めておくことで、やらないといけない手順を自動で動かすことが出来、想定していなかった事態への対応に専念できるようになります。
また、これが出来ると誰に何を頼んでおかないといけないのかも分かるため、さまざまな支援を受けやすくなります。
たまたま経営関係なので「Business」となっていますが、地域だと「Community」=CCP、医療現場なら「Medical」=MCP、学校なら「エデュケーション」や「スクール」となり「ECP」や「SCP」と略されます。
個人なら、さしずめ「人生=Life」となり、「人生継続化計画」=LCPと呼ぶのかなと思いますが、ここでは代表的な「BCP」と書くことにします。
ここの表示は、あなたが必要なものに読み替えてください。

2.BCPはどうやって作る?

BCPは次の順番に決めていきます。

1)自分は「いつ」「何を」「いつまでに」提供するのが仕事なのか、を確認します。
2)(1)で確認した仕事をやり続けるためには「何が無くなると困るのか?」を確認します。
3)(2)で確認した「無くなると困るもの」を「いつまでに、どうやって、どの順番で、誰が、どこで確保して使えるようにするか」を決めます。
4)(3)で決めたことを、やる人や確保する先にお知らせして協力をお願いします。その際、相手には「そこで確保が困難な場合に他に確保できそうな先」も確認しておきます。
5)(4)で決まったことを踏まえて、計画書を文章化します。
6)文章化したものがその通りにできるかどうか実際にやってみます。
7)問題が発生しそうなら、(3)に戻ってもう一度考えてみます。

(1)では「仕事」になっていますが、あなたが個人や家族で作成するのであれば、(1)は「自分の命を守ること」になります。
また(2)では「どうなると死んでしまうのか」を考えてください。
(3)の「無くなると困るもの」は「(2)で考えた死んでしまう条件を防ぐためには?」と読み替えます。

3.出来たらどうしよう?

できたら、とにかく一度その継続化計画を試してみましょう。
実際に動いてみると、思った以上にいろいろな問題が出てくるはずです。
問題が出たら、「それはどうやったら解決できるのか?」を考えて、計画書に組み込んでいきます。
発生する災害は一つでは無いので、さまざまな災害や複合的におきる災害も想定して考えてみます。
場合によっては「もうどうしようもない」ということが出てくるかもしれませんが、語尾に「?」をつけておくと、そのうちによい解決策が浮かぶかもしれません。
また、あなた一人で考えるのでは無く、複数の人に作った計画を見てもらって、さまざまな角度から考えてみることが大切です。
ここまでくるとおわかりだと思いますが、BCPは作って終わりではありませんし、あなただけで完結するものでもありません。
出来上がったものを定期的に見直し続けること、関係先にどうしたら動いてもらえるかを確認し続けることが大切なのです。

4.全ての継続化計画が繋がる世の中に

個人や組織、企業、地域、行政がそれぞれに継続化計画を作ってそれを繋げていくと、驚くほど地域復興が早く進みます。
いちいち場当たり的な判断をしていては、いつまでも何も決まらずに時間だけが過ぎていきます。
素早く復旧、復興し、受ける影響を最小限に留めるためにも、事業継続化計画を作っておきましょう。

発災時の行動と連絡手段について考える

災害発生時、何が起きたらどうするかの確認ができていますか?
そして、どのような連絡手段が確保されていますか?
身近なところから、防災を考えていきます。

おつとめの方であれば、災害が起きたとき、出社する必要がありますか?
あるいは、出社する手段がありますか?
学生さんだと、学校がどんなとき、どう判断するか知っていますか?
子どもさんが居る家庭では、保育園や学校はどう対応するか知っていますか?
預けているとき被災した場合には、どこへ迎えに行けば知っていますか?
これがはっきりとわかっているだけで、無駄な通信や無駄な移動を防ぐことができます。
また、人間は習慣性の生き物ですので、非常時にどうするかを決めていないと、「平時と同じ行動をする」か「動かない」かのどちらかになります。
無用な混乱を避けるためにも、あらかじめどうするのかを決めておくことが大事です。

1.会社や組織の場合


会社や組織が何があっても出社を義務づけているのであれば、その出社する方法まで決めておかないといけませんし、そうでないなら、基本的には出社はさせないと決めておくことが大切です。
公共交通機関は、被害の出るような災害時には全て止まります。
その状態で出社を要求すると、自分で移動する手段を確保しなくてはなりませんので、自家用車やバイク、自転車や徒歩、タクシーの利用者で道路が大渋滞となり、
緊急車両が移動できずに二次災害が多発することになります。
企業のBCPとしては、災害時に社員をどうするのかということをきちんと整理し、社員に伝え、それを徹底しておく必要があります。
社員の側から見ると指示が無い以上、後で「あいつは来なかった」と言われるのも嫌なのでなんとか出社しようとしますから、経営者は自社の仕事が、災害時に大渋滞を起こし、
二次災害を誘発してまでやらなくてはいけない仕事なのかどうかをよく考えておきましょう。
決めたくないというのなら、その代わりに社員にいつまでに判断し、どのように連絡するのかを伝えておくことが必要です。
輻輳すると電話は使えませんので、その場合はどのように連絡を取るのかを、きちんと決めておいてください。
また、業務時間内に被災したら、どのように社員の安全を確保しますか? 社員の安全確保は経営者の大切な業務の一つです。
帰宅させるのか、社内に留めるのか、外回りしている社員や学校等に子どもを預けている社員の扱いはどうするのか?
普段から意識して、さまざまなケースを想定して準備することが必要です。
もしもトラブルが発生したとしたら、それは社員では無く、経営者に問題があることを肝に銘じておきましょう。

2.学校・デイサービスなどの場合


学校やデイサービスでは、被災したときにどのように対応をするのかしっかり決めているところと、全く決めていないところの両極端になっているのが現状です。
決めているところは、ホームページやSNSなどの伝達手段も明示していますから、対象者はそれを確認すれば事足ります。
決めていないところはどうする気のでしょう?
大阪北部地震では、対応を決めていない学校の教諭が、休校を決めた市長に対して「勝手に決めるな」と噛みつくコメントをしていたようですが、教育委員会や行政府との通信手段や
災害対応への判断基準を明確にしていなかった自分の落ち度を、きちんと考え、再発防止対策を考える必要があると思います。
学校や幼稚園、保育園、デイサービスといった施設は、休校や休園の判断基準をあらかじめ明確にし、周知し、徹底することが求められています。
職員と保護者、そして出入りの業者に対しても、きちんと伝えておくことで余計な手間をかけなくても済みます。
とはいえ、判断に迷うこともあるので、できればホームページやSNSといった通話以外の手段で連絡が取れればよりよいでしょう。
電話やメールという手段は、特定の交換機や場所を通らないといけないため、非常時には通信量が激増してしまって、思うように繋がりません。
普段から連絡手段の一つとして、ホームページやSNSを確保しておいた方がよいでしょう。

3.家族や友人間の場合


その場にいない人がどう行動するのか、どうやって連絡するのかの手段は確保されていますか?
災害が発生すると、被災区域外から安否を確認する電話が被災地に殺到し、輻輳状態になります。
そのため、通信事業者が通信制限をかけ、自社のシステムがパンクしないように通信量をコントロールします。
大きな災害が発生すると、各通信事業者は輻輳を防ぐため、災害時伝言ダイヤルを開設します。
そして一般的に「被災地→被災地外」の方が繋がりやすいので、被災者がこの災害時伝言ダイヤルに安否を吹き込み、被災地外の人はその伝言ダイヤルを確認することで、緊急の通信量を
維持することができます。
また、SNSは比較的繋がりやすいので、そちらを使って安否確認を発信してもいいでしょう。
大切なのは、不急不要なことで通信インフラに負担をかけないことです。
被災地では、救助や救援を求める人が電話を使います。
区域外から連絡をして輻輳状態にしてしまうと、被災地内の通信が思うようにできなくなってしまうのです。
また、被災した家族や友人にすぐに支援物資を届けようとすることは絶対に止めてください。
少なくとも、状況が落ち着いてからにしないと、二次災害に巻き込まれる可能性があります。
被災地にすむ人は混乱を避けるためにも、被災地外で心配している人達に対してなんらかの情報を発信して安否を明らかにしてください。
また、あらかじめ避難先を決めておいたり、避難先の書き置きを家などに残しておくことで、他の人が後を追いかけることもできます。
大事なことは自分の安全確保の次に、自分の安否を知らせることなのです。

いかがですか?
被災地で発生する渋滞や通信回線の輻輳、さまざまな混乱は、あらかじめどうするのかが決まっていないことから発生することが非常に多いです。
発災時の行動を決めておくことと、通信手段の確保。
今日からでも遅くはないので、きちんと考えて整理し、みんなで共有しておきましょう。