救助される確率をどうやってあげたらいいか

 災害が起きて今いる場所が安全でないと判断されたとき、自分の安全を確保するために避難をすることになりますが、最悪の事態として、「そのときにいる場所が危険ではあるのだが、避難することができない」という事態も当然起きえます。
 そんなとき、周囲の救助者に自分がここにいることをどのように伝えればいいのか。
 携帯電話がつながって話せる状況であれば、知り合いに連絡をして救援要請を行います。GPSで位置情報を共有している人がいるのならそれを使うこともできるかもしれません。何か音の出るものがあれば、それを使えば救助者に気づいてもらえるかもしれませんから、笛があればそれを、そうでなければ何かをたたいて自分の存在を知らせます。もしその位置から外部が見えるのであれば、鏡の反射を使えば気づいてもらえるかもしれません。
 いずれにしても、あなたの声を出すのは最後の手段です。声を出すためには息を吸い込まなくてはいけませんが、その際埃や粉じんを吸い込んでしまうとのどや肺を痛めてしまいますし、そうすると肝心な時に声がでないということになります。 気がついてもらおうと思って、人の気配がするとついつい大声を上げてしまいがちですが、人の声というものは案外と届かないもので、それよりも笛やその他の音の方が気づいてもらえる可能性が高いことを知っておいて欲しいと思います。
 ところで、非常用持ち出し袋によく笛を入れている人がいます。これは素晴らしいことだと思うのですが、被災したときに常に非常用持ち出し袋が手元にあるとは限りません。いつどこで被災してもいいように、できればシンプルな形の笛を持ち歩くようにして、いざというときに備えたいですね。

■災害時のBCPを見直そう

本日のNHKニュースで災害時の金融機関の臨時休業についてやっていました。

災害時の「臨時休業」 地方銀行でも進む(NHKニュースサイトに飛びます)

 これによると平日は原則営業しなくてはならず、臨時休業する場合には金融庁に事前に届け出をしないといけないと定めた銀行法が10月に改正され、災害時には届け出不要で臨時休業できるようにしたそうです。
 いくら銀行であっても災害時に備えて職員を守る必要がありますから、BCPを備えた金融機関の中には、例えば鉄道が計画運休したときなどは臨時休業すると行った取り組みをしていたそうですが、今回の改正を受けてもう少し柔軟に臨時休業できるようにするそうです。
 公共交通機関、特に鉄道が計画運休することが増えてきている現状ですが、今回の改正で金融機関が臨時休業した場合にどうするかということを自社のBCPに取り込んで見直し、改定していく必要があります。
 最近はさまざまな災害が続いており、大手企業は従業員や顧客の安全を優先するような方向で対応しつつあります。出退社時に被災した場合には雇用主の責任問題にもなってくると思いますので、きちんとしたBCPを作成して自社が問題なく経営が続けられるような方策を準備しておくことが、経営者には求められています。
 ところで、あなたはいざというときにどうするのかをきちんと決めていますか。
 あなたの安全を守るのはあなた自身しかいませんので、あなたのBCPについても考えてみて欲しいなと思います。

カセットボンベの寿命を知っていますか

  先日ラジオでやっていたそうですが、東日本大震災の後、カセットガスを備蓄品として準備したお宅が多いそうです。
 その後備蓄品を使いながら補充する、いわゆる「ローリングストック」をしていれば問題なのですが、大量に買ったカセットボンベを備蓄品としてそのまま保管していた場合、ボンベの中で使われているゴムパッキンが劣化してしまってガス漏れが起きたり、カセットコンロにセットして使おうとしたときに爆発してしまうような事態が発生するそうです。
 劣化したというチェックポイントとしては、「外見にさびが浮いていない」「容器が変形していない」「缶を振ったときにジャプジャプといった感じの液の音がする」などの確認はしておく必要があります。カセットボンベは鉄製で防錆処理はされていませんので、経年劣化によりさびが浮いてくることがよくあります。使う前には必ずチェックしてください。

詳しくは「IWATANI・カセットボンベ:よくある質問」をご覧ください。

 せっかく常備しているのにいざというときに使えなかったというのでは悲しいですし、また、ボンベの劣化によって火災や爆発が起きても困りますので、もしも備蓄品で長期間未使用のカセットボンベがあるようでしたら、必ず点検をしておいてください。

少し見にくいがこのカセットボンベは2017年12月17日製造。2024年までは通常保管なら大丈夫と思われる。


 保存期間は7年が目安だそうです。なお、製造年月日は缶の下部に記載されています。少し見にくいのですが上の写真を一例としてあげておきます。前述のIWATANIのリンク先の記事の中にカセットボンベの裏面に記載された数字の見方も出ていますので、併せてご確認ください。

 ちなみに、以前ご紹介しましたが、カセットコンロにも寿命があります。こちらはガスとの接続口に使われているOパッキンが劣化してそこからガスが漏れてしまうそうで、使用頻度にかかわらず10年で買い換えるように勧めてられています。

詳しくは「株式会社ニチネン:よくあるご質問」をご覧ください。

備蓄品は永年保存できるものではありません。どんなものでも経年劣化により使えなくなっていきます。いざというときに備えて準備したのに本番では使えないと言うことがないように、充分気をつけてくださいね。

避難所の区画整理について考える

体育館が避難所になる場合は、最初は大きな空間しかない。ここを区画整理する。

 避難所で最初に決めないといけないことは、区画整理です。
 これを最初に行っておかないと、避難した人たちが好き勝手に場所を占拠してしまうため、移動をさせられずに後で四苦八苦する羽目になります。
 では、区画整理でどんな場所を決めなければいけないのか。
 最初は通路です。どんな場所であっても通路の確保は最優先に行います。さもないと、導線が混乱して非常に使い化っての悪い状態になります。
 次に、本部と資材置き場を確保します。これらはある程度しっかりとした面積と空間を確保する必要があります。避難者で施設が一杯になっても、そこを運営する場所がないと大混乱を招くことになりますので、最初に本部の設置場所を確保してください。避難所の出入口付近で、人の出入りが監視できる場所が望ましいです。また、掲示物の掲示場所も近くに作れるとよいです。

 資材置き場は運ばれてくる資材ごとに分類できるように、ある程度広いスペースが確保できると作業がしやすくなります。例えば避難所が学校の体育館なら、資材が勝手に持って行かれないように周囲から見通しのきくステージなどに置くとよりよいと思います。
 施設によっては仮設トイレの場所を確保する必要があります。人目につきやすく、明るさを確保でき、かつプライバシーが守られるような場所が選択できるとベストです。


 あとは談話スペース。足の不自由な方や独りで避難された高齢者の方などがそこで時間を過ごせるような空間を作っておきます。いすや机を置き、誰でも使えるようにしておくとよいと思います。

 また、授乳やおむつ替えできるスペースも確保したいです。診療エリアとしてそのうちに回ってくる医療者を受け入れられる場所を確保しておき、そこを使えるようにしておくと当座をしのぐことができます。
 洗濯物を干す場所や学習をする場所など、他にもさまざまな必要な施設がありはしますが、とりあえずはこれくらいの場所を確保した上で、初めて避難者にエリアを割り当てていきます。
 本番時にこんなことを決めていてはとても対応が間に合わないので、これらのレイアウトは事前にきちんと形にしておくと作業が早くなります。

区画の中をさらに家族単位で過ごせるように段ボールで仕切る。これだけで快適性が格段に変わる。

 さて、避難者への区画の割り方ですが、できれば地区ごとにしておくと後でいろいろと作業がしやすくなりますので、大ざっぱでいいので地区ごとの割り当てを考えていきます。もしも収容者が多数になってくるようなら、空いている区画を割り当てるなど、別にゾーンを設定するとよいでしょう。また、各区画ごとに代表者を決めて貰い、その人が本部と避難者との間でいろいろな連絡用務を請け負ってもらうことになります。
一口に避難所と言っても、運営開始までには決めることがたくさんありますし、ここで上げたことが絶対とも思いません。避難所の数だけ事前に準備した方がいいことはあると思います。災害の時に決めたとおり運用できるとは限りませんが、いきなり本番で避難所を開設をしてもごたごたしてうまくいきませんので、できる限り事前にさまざまな段取りを詰めておくようにしましょう。

野菜ジュースとビタミン剤

 大規模災害が起きて被災してしまい避難所での生活になると、食事の問題が必ずついて回ります。最初は非常食、おにぎりやパン、そして某コンビニの災害用幕の内弁当へという流れで、大体決まっているようです。
これは行政機関が備蓄している非常食が初めの頃は配布され、補給路が安定すると被災地区外から大量のおにぎりやパン、弁当が供給されるようになるためですが、被災者が多いので大量生産品、しかも衛生状態維持のために冷たい状態で供給されるので食べにくい上に単調な味で飽きてしまいます。
  「災害時なのだから贅沢を言うな」という方もいらっしゃるのですが、被災者に供給される弁当は1食300円から350円程度で供給される大量のお弁当は油ものやインスタントもののオンパレード。その上衛生管理上保冷されてくるのですから我慢強い人でもそのうちに耐えきれなくなると思います。これらのお弁当は栄養状態は二の次、とにかく飢えないことを優先したメニューとなっていますので、食べやすさではなく数を稼げるものが使われ、そういうメニューは圧倒的に繊維質やビタミンが不足する食事です。
 そのため、自衛の手段として野菜ジュースや粉末の青汁、総合ビタミン剤などを非常用持ち出し袋に準備しておくようにしましょう。
 たくさんの人が集団で生活する環境ではさまざまな病気が流行りますが、それらから身体を守ってくれる働きをするビタミンは不足しがちです。身体を元気に保つためにも、必ず不足するビタミンを補給できるものを準備しておきましょう。
 ただ、ビタミン剤にも身体に合う合わないがありますので、できれば平時に自分が飲んでも大丈夫なのものかどうかを実際にちぇっくしてみることをお勧めします。

トップダウンと合議制

 災害が発生して初期の初動時には短時間にさまざまなことが起きるため、迅速な判断と行動が求められます。つまり「完璧な判断だが遅い」ことよりも「7割でしかないが早い」ことが求められる世界。常に完璧でなくてはいけない行政職員にその判断をさせるのはかなり難しいと思います。
 平時に自治体や自治会、避難所となる施設の運営関係者などで構成する避難所運営委員会を立ち上げて初動対応のことや避難所の内容について予め決めておき、その内容に従ってリーダーが全体の指揮を執って動いて必要以上の混乱を起こさないようにする必要があります。万が一、リーダーが避難所にこれなくても、予め決めておいた手順があれば物事を進めていくことができるので、非常に順調に運営を進めることができます。
 そうで無い場合にはどうするかというと、避難所運営を理解している人か指揮能力の高い人がその場で判断して支持していくことになりますが、大抵の場合情報がなくて判断できないか、もしく判断する人が多すぎてまとまらないかのどちらかになります。
 理想なのは予めさまざまなことを取り決めておき、それに従って判断し、指揮を執る人がいること、そして何かあったときには相談ができる体制になっていることです。もちろんその相談者もできれば予め決めておくことで、スムーズな合議ができると思います。
 トップダウンと合議制、これを上手に切り替えて避難所の運営を行っていくことになりますので、例えばHUG(避難所運営ゲーム)などで判断基準の訓練をしておくことが必要なのではないかと思います。

地域の安全マップを作ってみる

地図作りは災害対策の基本です。

 避難路を知ること、そして確認することを目的として避難マップを作ってみることは今までに何度もお勧めしていますが、今回はちょっと視点を変えて、地域にある安全を確保するために必要な資源に何があるのかについて洗い出してみることを考えてみます。
 地域の安全資源というと、真っ先に出てくるのは交番や消防署、病院といったところですが、他にもAEDや公衆電話、水が確保できるところ、高台や避難が可能な土地、使えそうな物資がある場所、いざというときに逃げ込める施設やお宅といったものも一覧にした安全マップで見える化しておくと、いざというときに役に立ちます。
 危険な場所やものはよく洗い出しされるのですが、いざというときに使える資源を専門に洗い出しているものは少ないと思いますが、事前に災害時や被災後、自分たちにはどんなものが必要なのかを確認し、それがどこにあるのかを知っておくことは、復旧復興の迅速化にもつながりますし、それを知ることで自分が安心できるということが一番の目的でもあります。
 よく作っている避難マップや危険マップは地域の弱みを確認する作業ですが、この安全マップは地域の強みを見つける作業です。そしてこれらの地図を組み合わせると、地域の災害に対するさまざまな問題や備えを簡単に見つけることができるようになります。
 避難マップや危険マップのついでに確認されることの多い安全資源ですが、それだけを抽出して地図を作ってみると、また新たな気づきがあるのではないかと思いますので、興味のある方は是非一度作ってみてください。

緊急連絡先は覚えていますか?

 自分の家族や職場、友人や関係者といった、もし自分に何かあったときに連絡しなくてはいけない人たちの電話番号を覚えていますか。携帯電話の普及前は手帳などに電話番号記入欄があってそこに必要な人の電話番号を書き出しておいたものですが、携帯電話やスマートフォンが普及してからは、おそらく電話番号ではなく名前や履歴で電話をかけている人が多いのではないでしょうか。
 災害発生時には着の身着のままで逃げる人がかなりいます。特に地震だと、揺れや衝撃で携帯電話がどこかに行ってしまったり壊れたりすることがあったり、他にも電話番号の記録されているスマートフォンや携帯電話を持って避難することを忘れてしまったり、電池切れで立ち上げることができなくなったとき、どうやって連絡をしますか。
 電話番号を全て覚えているのならいいのですが、できれば重要な人を紙に書き出し、非常用持ち出し袋に入れておくことをお勧めします。そうすることで、いざというときのリスク分散になり、慌てて避難しても緊急連絡先を持っている可能性が上がります。
 災害時には通信規制が行われることも多く電話のかけ直しが続いたり、基地局が電気切れで動かなくなると、スマートフォン等は電波を探すためにかなりの勢いで電池を消費します。
 その点、紙に書いておけば電池切れで見られなくなる心配はありません。個人情報が気になるようであれば、自分だけが分かるような場所に隠しておいてもいいかもしれません。
いざというときに備えて緊急連絡先がわかるように、紙や手帳に書き出しておくといいですね。

液体ミルクとほ乳瓶

 以前に国産の液体ミルクが発売されるという記事を書きましたが、あれからおよそ1年が経過しました。
 実際に使った方からの意見では、「調整しなくて済むので衛生的に使える」と概ね好評だったようですが、「ほ乳瓶の衛生を保つのが難しい」という大きな問題がありました。対策として、紙コップとスプーンを使った飲み方や、使い捨てのほ乳瓶が提案されたりもしていたのですが、今回液体ミルクのパッケージにそのまま取付のできるほ乳瓶が開発されたと聞いたので記事にしてみます。
 国内で製造されているのは、江崎グリコが製造している紙パックの「アイクレオ」と、明治が作っているスチール缶の「ほほえみ」の2種類です。


 それぞれ形態が違っていて容量も異なっているので月齢や好みによって使い分けることになっているのではないかと思いますが、どちらもそれぞれ紙パックや缶に直接取付のできるほ乳瓶ができました。
現在はアイクレオで使う紙パック用ほ乳瓶が発売されている状態ですが、こちらは同じサイズであれば麦茶や水といった他のものに転用することも可能だとのこと。
また、缶につける方は令和2年3月から発売されるようで、缶と乳首の間にスペーサーが入り、乳首は交換できるようになっているようです。
ほ乳瓶の瓶の持ち歩きや消毒という手間や容量が減る分、保護者にとっては使うメリットがあるのではないかと思います。
災害時だけで無く、授乳者の体がくたびれているとき、普段お世話したことのない方にお願いするとき、そしてお出かけ時にも安心して使えるアイテムですので、機会を作って一度使ってみるのもよいのではないかと思います。
詳しい記事はこちらのリンクからご確認ください。

「赤ちゃんには選択肢がないのは不公平」 ほ乳瓶いらずの紙パック装着用乳首はこうして生まれた (ねとらぼ)

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1912/04/news019.html

缶入り乳児用液体ミルクで“哺乳びん用乳首”のアタッチメント開発、「明治ほほえみ らくらくミルク」を移し替えずそのまま(食品産業新聞社)

ttps://www.ssnp.co.jp/…/milk/2019/11/2019-1129-1510-14.html

避難訓練と本番の違い

 避難訓練と本番では、やる内容が大きく異なるなと思うことがあります。
 避難訓練での子ども達への合い言葉は「お・は・し・も」で、これは「押さない」「走らない」「しゃべらない」「戻らない」の頭文字を取ったものです。
 でも、いざ本番の時にこれをこなしたらどうなるかというと、逃げ遅れたり周囲の人が気づかなかったりすることが起きるでしょう。
 災害時の避難は「身を守る」「急いで逃げる」「周りを巻き込む」「戻らない」が基本となると思います。まずは身を守り、そして安全な場所に逃げる、そのときにはできるだけ周りの人も避難するように声かけて巻き込み、避難した後は安全確認ができるまで絶対に戻らない。東日本大震災では、釜石の子ども達がこの行動をとり、多くの人たちを救うことができました。
 ではなぜ避難訓練では「お・は・し・も」になってしまうのでしょうか。
 これは訓練を実施する側の都合と、近所から紛らわしいという苦情が入るからではないかと思われます。
 訓練する側は、できるだけ統制のとれた避難をしたいと考えます。そのため走らせないししゃべらせないのだと思います。また、単独訓練で「津波だ、逃げろ!」と子ども達が騒ぐと、学校の周囲のお宅はパニックになってしまうかもしれません。いっそのこと、ご近所も巻き込んだ避難訓練を行えば実戦さながらの訓練になると思うのですが、なかなか準備が大変なようで、そこまでの訓練を大規模校でやっているところは少ないのではないかと思います。
 避難訓練というと、訓練のための訓練になってしまいがちです。できれば専門家を交えてより実戦的な訓練を行ったり、そこまではしないまでも、訓練の様子を見てもらって講評を受けるだけでも緊張感は変わると思います。もちろん当研究所でもそういった業務を行っていますので、お気軽に相談いただきたいと思いますが、せっかく避難訓練をするのですから、「問題なし」で終わるのではなく、小さな問題でもいいので見つけて改善していくようにしていければなと思っております。