避難先はどこですか?

 災害で最優先されるべきは人の命であり、ハードもソフトもその前提で対策をとっています。
 ただ、いろんな大人の事情があるみたいなので「避難=避難所」という図式を変えずに表現しようとして、「自宅避難」などという不思議な言葉が登場してきています。
 「避難」という言葉の意味は「難を避ける」ということなので、「自宅避難」という表現でも問題はないという見解をしているみたいですが、「避難=屋外退避」ということを言い続けていたのが行政だったわけで、その見解を変えずに無理やりつじつま合わせをしているような、なんともいえない気分に「自宅避難」という言葉を聞くたびになってしまいます。
 言葉遊びをするのではなく、前提条件として、そもそも「避難」は自宅にいると何らかの命の危険がある場合に自宅以外の場所に逃げるのだということをはっきりと言わなければなりません。
 過去には自宅は安全だったのに、避難勧告が出たので避難を開始してその途中で遭難してしまった人がいます。
 まずは安全なら自宅待機。自宅が危険だという人だけが避難行動をとらなければいけないということをあらゆる機会に言わなければいけません。
 ともすれば、防災関係者でも簡単に「避難所に避難しましょう」などと言ってしまっていますが、その結果として、避難所は人であふれかえって収容ができなくなり、いくつもの避難所をめぐる避難所難民が誕生します。
 もともと流域人口を考えずにテキトーに割り振られているのが避難所や避難場所なので、避難所難民が出てくるのは当たり前なのですが、それらの人たちの命も当然守られなければなりません。
 ではどうするかといえば、まずは「自宅が安全であるかどうかを確認する」ことから始めて、安全であれば自宅で待機、危険であれば、そこで初めて避難するという選択肢が登場するのだと考えてください。
 避難でも、例えば親せきや友人が安全な場所に住んでいるのなら、そこに移動するのが一番確実です。普段から良い関係であるなら、あらかじめお願いしておくことでトラブルを防ぐこともできるでしょう。
 予算に余裕のある方は、被害地域から出てしまうのも手です。影響のないところに移動して、状況が収まってから戻れば、心身ともに元気な状態で復旧作業に入ることができます。
 また、安全な場所にある宿泊施設などに移動して、そこで過ごすのもいいと思います。経費はかかりますが、避難所と違って宿泊するための設備があるので、かなり快適に避難生活を送れると思います。
 最後に、何らかの理由で今まで書いてきた避難先が確保できない人だけが避難所に避難する。こうすることで、避難所に集中する人数はそれなりに減ると思います。
 「避難=避難所」ではなく、避難所は「どうにもならない場合の最後の砦」という意識で、避難所以外の避難先を平時から探しておくことをお勧めします。

トップダウンと合議制

 災害が発生して初期の初動時には短時間にさまざまなことが起きるため、迅速な判断と行動が求められます。つまり「完璧な判断だが遅い」ことよりも「7割でしかないが早い」ことが求められる世界。常に完璧でなくてはいけない行政職員にその判断をさせるのはかなり難しいと思います。
 平時に自治体や自治会、避難所となる施設の運営関係者などで構成する避難所運営委員会を立ち上げて初動対応のことや避難所の内容について予め決めておき、その内容に従ってリーダーが全体の指揮を執って動いて必要以上の混乱を起こさないようにする必要があります。万が一、リーダーが避難所にこれなくても、予め決めておいた手順があれば物事を進めていくことができるので、非常に順調に運営を進めることができます。
 そうで無い場合にはどうするかというと、避難所運営を理解している人か指揮能力の高い人がその場で判断して支持していくことになりますが、大抵の場合情報がなくて判断できないか、もしく判断する人が多すぎてまとまらないかのどちらかになります。
 理想なのは予めさまざまなことを取り決めておき、それに従って判断し、指揮を執る人がいること、そして何かあったときには相談ができる体制になっていることです。もちろんその相談者もできれば予め決めておくことで、スムーズな合議ができると思います。
 トップダウンと合議制、これを上手に切り替えて避難所の運営を行っていくことになりますので、例えばHUG(避難所運営ゲーム)などで判断基準の訓練をしておくことが必要なのではないかと思います。