リュックサックを背負いやすくする

 防災用リュックサックは、非常に持ち歩きがしにくいものが多いです。
 最近でこそだいぶ改良されてきてはいますが、背中に当たる部分や肩に食い込みやすい構造など、やっぱり背負いにくいというのが私の印象です。

市販品の子ども用非常用持ち出し袋。胸当てなのか腰ベルトなのかわからない位置にチェストベルトがついている。

 登山用のリュックサックなら、元々荷物を入れて歩くために設計されたものですから、少々の重量物を入れても問題なく歩くことができますが、デザイン的に普段使いできるものが少ないなと言う印象を受けます。
 街中では、かわいいリュックサックを見かけることも多いのですが、これらのリュックサックは、デザイン重視のために中にものを詰めて歩いたときに非常に重たく感じることが多いです。
 リュックサック全体のバランスの問題もありますし、リュックの重量を全て肩で受けるような構造をしているので、長い距離を重たいものを入れて歩くのには向きません。
 また、背中に当たる部分を保護するものが無いためにリュックサックの中身が背中に直接当たって痛い思いをすることもあります。
 重たいものを入れて歩く登山用リュックでは、こうした点の対策が取られていて、腰を固定するベルトや胸当て、背中板や肩パットがついていて歩きやすくするための工夫がされています。

 でも、腰ベルトや胸当てがついていないリュックサックでも、上の写真のような「チェストストラップ」というアイテムを肩ベルトに固定することで、胸当てや腰ベルトを作り出すことができます。この写真では胸当てとして取り付けています。

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 また、登山用で無いリュックサックは肩ベルトのパットがないか薄いため、リュックサックの重量が増えると肩にベルトが食い込んで痛いです。この食い込みを押さえるためのアイテムは「肩パット」。

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これを装備すれば、安いリュックサックでもある程度までは使い勝手の良いものに修正することができます。
 また、背中の部分はバックパックパッドというアイテムを使ったり、リュックサックの背中側に新聞紙や段ボールを入れておくことで痛いのを防ぐことができます。
もしお気に入りのリュックサックがあるのなら、こういった製品を使ってお気に入りをより使い勝手の良いリュックサックにするのも面白いのでは無いかと思います。

募金する先を考える

 災害が続くと、さまざまなところに募金の窓口が開設されますが、窓口の数が多すぎてどこへ募金すればいいのか悩むことも多くなってきました。
 東日本大震災のような大きな災害が起きると、街頭募金がめったやたらと増えて募金する人が募金疲れしてしまうようなことも起きたりします。
 また、募金した人の思いと募金が使われる目的が違っていたりすると、募金した人の違和感が発生したりすることも起きます。

そこで、今回は募金の窓口とその性質について考えてみたいと思います。

【本日のお品書き】
1.募金とはなんぞや?
2.募金の方法と募金先
3.思いと募金する先を一致させるためには

1.募金とはなんぞや?

 募金とは「浄財」、平たく言うと「お金の寄付」です。
 いろいろと大変な思いをしている人たちを助けたいけれど、一人でできる寄付金の金額はしれています。ですが、さまざまな人たちの寄付を集めればまとまったお金となって人助けができるため、共同募金会などの大きな公益法人は常時「募金」という形でお金を集めています。
 災害が起きると、あちこちの組織や団体がその災害限定の募金が立ち上げられることがあります。
 被災地で必要なものは時間や状況の経過によってめまぐるしく変わっていくため、物資を送るよりも募金として現金で届く方がより現地のニーズに合った対応が可能になることが多いです。
 被災地で物資が欠乏するのは、殆どの場合物資の輸送手段に問題が発生しているためなので、自分たちでの直接持ち込み以外の場合には、物資よりも義援金の方がいいと私自身は考えています。

2.募金の方法と募金先

 募金の方法は大きく分けると「募金箱による街頭募金」「寄付口座に振り込む」にわかれます。
 街頭募金はお手軽ですが、やっている団体や個人がいただいた募金をきちんと届けてくれるのかという疑問は残ります。街頭募金に募金するときには、集まった募金をどこへ届けるのかについて、募金する前に確認した方がいいかもしれません。
 街頭募金の届け先は、共同募金会か日本赤十字社になることが多いです。
 これらの団体は集まった募金をきちんと届けてくれるという信頼と実績があり、手続きも簡単なため、さまざまな募金が集まりやすくなっています。
 寄付口座への振り込みは、振り込み手続きをするという手間はかかりますが、間違いなく自分の思う募金先に募金ができるというメリットがあります。最近では被災自治体による「ふるさと納税」やNPOによる「クラウドファンディング」でも災害への募金が設定されることが増えてきており、より思いに即した対象に募金することが可能になってきています。また、募金する先によっては確定申告時の税額控除が受けられるようなものもあります。
 また、AMAZONでは「欲しいものリスト」というシステムを準備しています。
 これは東日本大震災や熊本地震のような大規模災害時、物流回復後に運用されるもので、避難所から出された「欲しいものリスト」の中の品目を支援者が購入すると、該当商品が避難所に届くようになっており、避難所のニーズと支援物資が一致しやすいという利点があります。
 大きな災害時にはそちらを確認してみるのもいいと思います。

3.思いと募金する先を一致させるためには

 募金する人にはさまざまな思いがあります。そして募金を届けるところにもやはり思いがあります。
 募金を届けるところがどのようなことを考えているのかは、それぞれのホームページを確認してみるとよくわかります。
 一般的には大きい組織は全体に広く浅く、特定のことを目的とする組織は狭く深く支援を行います。
 あなたが何のためにその募金をするのかを一度考えてもらって、あなたの思いに沿った組織や団体に募金し、効率的に募金が使われるように考えていただければと思います。

【活動報告】「ストローハウスを作ろう!」を開催しました。

 去る9月17日、高津地区の放課後児童クラブ「いちごクラブ」様にご協力をいただき、「ストローハウスを作ろう!」を開催させていただきました。
 ストローハウスとは、名古屋大学の福和教授が考えた地震に強い構造物を考えるというもので、柱や桁をストローで、継ぎ目をクリップで留めて家の骨組みを作り、揺らしてどこまで耐えられるかというのを競うものです。
 1年生中心の第一クラブと、2、3年生の第二クラブの二カ所で実施させていただきましたが、どちらも最初は「今地震が来たらどうする?」という質問をしてみました。
 1年生達は「ダンゴムシのポーズ&机の下」と全員回答。対して2、3年生は「机の下に潜る」ということで、ダンゴムシのポーズは出てきませんでした。忘れているのか、それとも、そのあたりで防災教育の切り替えが行われたのか、そのあたりはよくわかりませんでしたが、地震の時には頭を護ること、そして頭、首、手首、太ももの付け根といった大きな血管のあるところを守るようにしようという説明と、一緒にダンゴムシのポーズを取ってみました。

机の下に逃げ込もうと押し合いへし合い擦る子ども達

 その後はストローハウス作りです。設計図を書いて、それにあわせて組み立てていくのですが、書いた設計図にきっちりとあわせてストローを刻む子や、繋げて釣り具にしてしまう子、組み立ててもうまく自立せず、崩壊が続いて諦める子といろいろでした。

 事前に当研究所でやった限りではさほど苦も無く組み立てていたのですが、どうやらクリップの保持力が悪かったようで、結局うまく組み上がったのは12組中わずか2組。

最後に「もう二度とやりたくない人?」と尋ねたらほぼ全員の子に手を上げられてしまって、今回の当方の手際の悪さを痛感しました。
あとで文具屋さんに尋ねたら、メーカーや品質にかなりばらつきがあるそうで、有名メーカー製でも製品によっては保持力が少ないものもあることを教えていただき、今回のことが納得いきました。
試しに文具屋さんのお勧めのクリップで作ってみたのが写真の「赤い家」。

 保持力があるせいか、かなりおおざっぱに作ってもうまく自立させることができました。
 この次もしさせてもらえる機会があれば、今度はもっと子ども達に楽しんでもらえる企画にできるかなと思いながら、今回のイベントを終了いたしました。
 提案を快く受け入れていただき、実施させていただきました高津地区放課後児童クラブの先生方と、今回のストローハウス作りで倒れても倒れても作ろうと頑張ってくれた子ども達に、こころからの感謝をいたします。
 ありがとうございました。

生ゴミの臭いを消すあれこれ

 広域災害が起きると、ゴミの収集の再開までにはかなり時間がかかります。
 かといって、ゴミの回収が再開されるまで生活を止めるというわけにも行きませんので、虫のわかないゴミ処理、臭いの出ない・出にくいゴミ処理は必須となります。
 水と電気が使えない状態ではできる選択肢はかなり限定されてしまいますが、今回は臭いを消す方法を考えてみたいと思います。

使い捨ての容器なども食べ残しがついているので臭いの元になる。

1.なぜ臭いが出るのか?

 生ゴミは、そのままにしておくとひどい臭いがするようになります。
 これは菌が活躍するときに発生するもので、人に役立つものは「発酵」と呼ばれ、役に立たないものは「腐敗」と呼ばれます。
 「発酵」も「腐敗」も原理は同じで「栄養」「水分」「pH、酸素などの環境」の3要素のバランスにより「発酵」にも「腐敗」にもなります。
 不思議なことに、腐敗する臭いはハエやその他の不快な昆虫を呼ぶ臭いを出します。恐らく分解を早めるために自然界が作り出した知恵なのではないかと思いますが、これをそのまま放置しておくと衛生環境が悪化していくことになります。

2.どうすれば臭いは出にくくなる?

 腐敗が進む3つの要素、「栄養」「水分」「温度や酸素、pHなどの環境」がコントロールできれば腐敗を止めることは無理でも腐敗しにくくすることが充分可能です。
 普段腐りやすいものを冷蔵庫で保管するのは「温度という環境」を腐敗菌が活動しにくい状態に変更してやることで腐る速度を遅らすものですから、電気が切れてただの箱になった冷蔵庫の中は腐敗菌の温床となってしまい、いろんなものが腐っているカオス状態になっていることは容易に想像がつくと思います。
 さて、常温で腐敗するのを防ぐ方法を考えてみると、「栄養」を無くすことは無理なので、「水分」と「環境」をコントロールすることになります。
 例えば、何らかの方法で水分をなくすとか、本来はやるべきではありませんが、生ゴミをある程度の深さに土中埋設すれば酸素が遮断できるので発生する腐敗臭を大幅に減らすことができます。
 また、pHをコントロールしてもいいわけですから、塩や酢、消石灰を大量投入してやれば、やはり腐敗を遅らせることは可能です。
 それらのアイテムが用意できない、または使いたくない場合には、臭いが漏れない魔法の袋「BOS」を使うしかありませんが、この袋、そこまで大きなサイズはありません。

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 そのため生ゴミが発生するたびにしっかりと水を切って、新聞紙など吸水性の高い紙に包んで袋に入れ、中からできる限り空気を抜き、口をしっかり縛ってゴミ袋を入れた蓋のできるバケツに貯めておくという方法になります。
 ここでは介護施設等で実績のある袋をご紹介しましたが、他にも臭いの漏れない袋があるようですので気になった方は調べてみてください。

3.生ゴミを出さない方法を考える

 野菜や魚、肉などは上手に使うと発生する生ゴミをかなり減らすことができます。災害時だけで無く、普段の生活でも充分に役に立つことだと思いますので、普段から意識しておくといいと思います。

 参考になるかどうかはわかりませんが、他にもいろいろな方法があると思います。きちんと回収してもらえる時にいろいろと試してみて、自分が納得のいく方法を見つけてみてください。

何が初動を遅らせたのか?

 台風15号の被害は時間を経過するごとに明らかになってきています。
 情報集積地である東京のすぐそばの千葉県や島嶼部の情報がなんでこんなに遅れているのか。先日の佐賀県の災害の方がよほど早く、大きく報道されているような印象を受けます。
 では、なぜそうなってしまったのか。
 これは今回東京も被災しており、東京のキー局がお膝元である東京の情報ばかり出して台風15号の報道が終わってしまったことに原因があるような気がします。
 佐賀県の災害は遠くなので客観的に情報を集め、提供することができましたが、台風15号では当事者となりました。それにより自分たちが体験したこと、見聞きしたものの提供が中心になってしまい、情報を客観的に見ることができなかったのではないかと考えます。
 また、自治体からの情報もかなり発信が遅れていますが、これは被災自治体が現場対応に手一杯になってしまうことが原因です。
 「だれが」「どこで」「何をする」は各自治体の事業継続化計画で決められているのですが、被害通報は時間が経過するとある期間までは加速度的に増えていくため、行政の限られた人員では対応が追いつかなくなることがその原因です。
 過去には、熊本地震で一番被害のひどかった益城町からの情報発信がかなり遅れていたことが指摘されていましたが、これも現場対応に追われて全体の状況把握ができていなかったことが原因であるとされており、その後、国や都道府県は積極的に情報収集要員や災害対策支援職員を被災自治体に送り込むようなルールになりました。
 プッシュ式と言われる方法ですが、市区町村の災害対策本部が立ち上げられない限り派遣された情報収集員の集められる情報は断片的なものになります。市区町村の災害対策本部が機能していなければ、市区町村の情報を使う都道府県や国の災害対策本部も機能できません。
 そのため、本来されるべき状況の把握と分析がうまくいっていないという現状が見て取れ、結局SNSの拡散により初めて被害状況が社会的に認知されました。
 現地では「電気がない」「水がない」「ものもない」のないないずくしになっているようですが、被災地外からどのように支援したらいいのかがまだ見えてきません。
 全体を俯瞰した情報がないため、どこまでが無事でどこからが被災しているのか、何がどこで必要なのか、どこが通れるのかなど、わからないことだらけ。
 本来は災害が起きたら各自治体の所有する防災ヘリが空から被災状況を確認しますが、千葉県は防災ヘリを所有していません。
 上空からの被災状況確認は効率的な災害復旧指揮には不可欠なものですが、被災地全体を俯瞰した情報収集がなされていなかったのではないかという気がします。
 初動対応として自治体職員が現場に出かけるのは正しいと思います。ただ、それとは別に初動からひたすら情報を収集・整理して提供する人員が必要です。
 何があっても現場対応をせずに情報をひたすら収集・整理するだけというのは結構大変ですが、その結果、さまざまな情報がうまく発信されて被災現場の復旧が早まることになります。
 こういった機能は、被災自治体そのものが持つのは住民感情的になかなか難しい部分がありますので、被害が広域であれば都道府県や国が積極的に情報を集め、発信していく必要があると思います。
 初動が遅れると後々まで尾を引くというのは災害復旧では常識なのですが、今起きていることを今後しっかりと分析、検討し、大都市で発生する災害への対応について、もう一度整理して備えておく必要があると思います。

情報が入らない

 台風15号の被害では、都市災害のテストケースのような問題がいろいろと発生しています。
 一番の問題は、長期間の大規模停電による情報遮断ということでしょうか。
 携帯電話基地局やテレビ・ラジオの中継塔では非常用発電装置や非常用蓄電池を持っていて、停電になっても1日から1日半は機能を維持できるように作られています。
 ですが今回のように長期間にわたる停電となると、自家発電機の燃料も蓄電池の電源も切れてしまって機能が止まってしまいます。
 本来であればそうならないようにいろいろな手が講じられるのですが、今回は全てが後手に回っている状態で、現在も混乱が続いています。
 なぜ後手に回ったのかと言えば、指揮する場所のある東京が被災したから。
 他の災害では災害はよそ事なので、冷静に判断して指示を出すことができますが、今回は自分たちが被災したため、その状況確認をしているうちに災害対応が終わってしまったと勘違いしてしまったのです。
 また、大規模な被害が出た地域はそもそも情報すら発信できませんので、外部から調査が入って初めてひどいことになっていることが判明することが殆どです。
 今回台風15号による東京以外の被害をマスコミが報道したのは発生から2日目以降でした。SNSからの発信で、東京以外に被害が出ていると言うことに初めて気づいたといった感じです。
 「災害時にはテレビやラジオ、ネットから情報を取る」「行政からの被害情報は防災無線やインターネットにより適宜発信を行う」というのが最近はやりの自助による情報収集なのですが、被災していることに気づいてもらえなければインフラの復旧がされず、被災者が情報を受け取ることができなくなります。
 今回はとにかく「情報が無い」ことが一番の問題となっています。
 行政や支援団体がいくらインターネットに情報を出しても、被災者が確認に使う携帯電話基地局の電源が無ければ通信環境がないので、そもそもそれを見に行くことができず、どんな情報も集めることができません。
 役場の広報車や街頭での貼り紙、口伝えによる情報拡散くらいしか手がないのですが、正直なところ自治会や自主防災組織がない地域では情報の広がりは期待できません。
 地域のつながりの薄いところだと、話を聞いた人が同じ地域の他の人に伝えることは考えにくいでしょう。
 もし東京23区内や大阪市内で同じような被害が起きたとしたら、今回以上に悲惨なことになるのは目に見えています。
 インターネットが使えない場合に、どこへ行けば情報を得ることができるのか、どこへ貼り出せば地域の人が見てくれるのか、アナログ手法を再確認しておく必要があるのではないでしょうか。

温かい言葉

 災害が起きると、さまざまな人が従来の生活を取り戻すために復旧作業を行います。
 行政機関はもとより、電気、ガス、水道、道路、輸送、交通など、その作業は多岐に渡ります。
 でも、普段からその仕事に従事している人たちでも、被害の状況によっては思ったように復旧が進まないことも多々あります。
 そんなとき、もし復旧作業をしている人たちを見かけたなら、一言「ありがとう」や「お疲れ様」の声をかけてみてください。
 どれだけ作業している人たちの励みになるかわかりません。

 以前、災害復旧で給水支援をしたことがあり、他の街からきた給水車の方と一緒に断水した街を回って水を配って回りました。
 その時に、水を受け取った人たちから異口同音に「ありがとう」「助かった」と言われて、他の街から来た給水車の方々はびっくり!
 曰く「断水した地域に給水支援に出て、お礼を言われたのは初めてだ」と。
 その日は朝8時から給水作業を開始、終了は午後4時30分だったのですが、給水車の方達は「被災して大変なのにありがとうと言ってくれるこの地域の人たちを助けたい」と言って、結局夜9時過ぎまで給水支援を続けられました。
 被災した人の暖かい言葉で、作業をしている人たちが奮い立ったのです。

 くたびれたとき、焦っているとき、そして先の見えない作業で気持ちが折れそうなとき、被災した人からの温かい一言が作業をしている人たちの気を奮い立たせることができます。
 大概の場合、復旧作業している人の中には被災した人も含まれているのですが、自分のことは後回しにして、その地域の人たちのために作業をしてくれているのです。
 困っているときほど、対応してくれている人に温かい言葉をかけてほしい。
 それによって自分も助かることになるのだということを、こころの片隅に置いておいてほしいなと思います。

行かないという選択肢

 台風15号は首都圏にさまざまな有形無形の被害を与えたようです。
 今回、首都圏の鉄道会社は事前に計画運休する旨を告知していましたが、蓋を開けてみれば運休していることを知らずに駅にやってきた人がたくさんいました。
 速報値のようですが、首都圏全体の6割の会社や学校が計画運休に対してどのように対応するのかという指示がされていなかったそうです。
 去年関西で続いた地震や台風で企業や学校の災害時対応が騒がれたところですが、今回もやっぱり指示なしによる通勤通学難民が大量発生してしまいました。
 テレビやラジオのニュースでは「情報が提供されていない」と騒ぐ人たちが取り上げられていましたが、果たしてどこまで情報提供すればこの人達は納得するのだろうかとかなり疑問に感じています。
 それはともかく、台風が来るということと、鉄道が計画運休するということは事前にわかっていたのに、そして強風吹きすさぶ中、駅に向かって移動して動きの取れなくなった人たちは何を考えていたのかと言うことに興味があります。
 発表されているさまざまな情報が自分に影響があるという意識ができないということ、言い換えれば「全ての事実は他人事」なのかなと感じます。
 もっとも「計画運休時は休んでよし」と言えない企業や学校に基本的な問題があります。
 安全を意識して「行かない」という選択をしたら、後になって「何故来なかった?」と言い出しかねない風土が、通勤通学難民を生み出す大元になっているのかなと思います。
 社員や学生の安全を意識できないような企業や学校は、このご時世ではこの先、おそらく生き残ることは無理でしょう。
 社員や学生を危険にさらし、社会的インフラに負担をかけ、さらに社会インフラを維持するため出勤する人たちをも妨害している状態が果たしてまともなのでしょうか。
 鉄道も無意味・無計画に計画運休しているわけではありません。
 計画運休するのは、乗客の安全を確保し、災害発生後の復旧を手早くするために行うものです。
 その意味がわかれば、社員や学生を交通手段の途絶している中、通常どおり来させるという行為がいかに無謀かということが理解できるのではないでしょうか。
 今後しばらくは、災害は増えることはあっても減ることはありません。
 そろそろ企業や学校、そして自分自身も災害時対応計画を作って、計画運休時には不要不急の出社や登校はやめるということを決めておく必要があるのではないでしょうか。

体を冷やす方法あれこれ

 台風15号による停電は想定以上の被害が出ているようで、復旧に時間がかかっているようです。
 電力関係の方々が昼夜問わず復旧作業をされていますが、なかなか困難な状況とも聞きます。ぜひ安全第一で作業を続けていただければと思います。
 そして、台風一過で真夏並みの暑さが戻ってきました。その結果、冷房なしで殺人的な暑さを耐えないといけなくなるという過酷な状態になってしまいました。熱中症により亡くなる方も出てきています。
 熱中症の傾向については以前触れたことがありますが、今回は遅ればせながら「体の冷やし方」についていくつか方法を考えてみたいと思います。

1.なぜ体を冷やさないといけないのか

 人間の体は体の機能を維持するために体温を調整する能力を持っています。
 ただ、まだ調整能力が発達していないこどもや、調整機能が衰えている高齢者の方は、体の調整機能が環境の変化についていけず、熱中症になってしまうことがあります。
 そのため冷房などの外的要因で体を冷やしてやる必要がありますが、最近はやりの携帯扇風機にはお気を付けください。
 周囲の空気を顔に吹き付けると汗の気化熱で涼しく感じるのですが、高温になると汗が出る前に熱風で乾いてしまって熱中症を誘発してしまう危険性があります。もし使うなら、水をミスト上に吹き出せる構造を持ったものを使うようにしてください。

2.どこを冷やせばいいのか

 体温を下げるということを考えると、大きな血管が集まっている場所を冷やすのが効率的です。
 背中の肩甲骨の間、脇の下、太ももの付け根などがよく言われる部位ですが、冷やすのが難しい場所でもあります。
 また、夏場にできる野菜や果物には体を冷やす働きがありますから、そういうものを食べて体を冷やすこともいいでしょう。氷やアイスクリームなどの冷たいものも同様ですが、どちらも食べ過ぎるとお腹を壊したりします。
 今回、簡単に誰でもできてお勧めしたいのが「手のひらを冷やす」こと。
 手を水につけるだけでも体温を下げる効果が期待できます。
 手に冷たくしたペットボトルを持っているだけでも、体温が確実に下がります。先日テレビで実験していましたが、冷えすぎているとよくないようなので、凍っているペットボトルの場合はタオルを巻くなど、温度を少し上げる方がいいようです。
 また、濡れたタオルで熱を吸収しやすい頭などを冷やすのも効果的ですが、びちゃびちゃのタオルを使うと周囲の熱で逆に煮えてしまうこともありますので注意してください。
 また、いっそのこと水風呂に入ってしまうというのも涼を取るという点ではいいと思います。

 停電区域全域に電気を行き渡らせるのは無理でも、電源車や発電機を使えば、特定の施設を通電させ、冷房を稼働させることはできるのではないでしょうか。
 また、停電していない場所まで被災者を移動してしまう広域避難を行うのも効果的だと思います。移動手段を提供できれば、小さい子ども連れや高齢者を移動させることも用意だと思います。。
 停電も災害の一つと考えると、地域への支援や地域外への避難という選択肢はできると思うのですが、あなたはどう思いますか?

被災後の段取りあれこれ

 ここのところ災害が続いていますが、被災した後、片付けを始める前にいくつかやっておいた方がいいことがあります。
 以前「被災物件の調査と証明あれこれ」で行政の調査については少し触れたことがありますが、被災後の片付けと段取りについて思いつくことを書いてみたいと思います。

1.被災したものの写真をしっかりと撮影しておこう

 被災した後、罹災証明書の申請や各種災害保険の請求などには写真が必要です。
 大規模災害になると、行政や保険会社が確認にくるのが被災してからかなり期間が空いてしまうこともあるため、その間片付けができない事態に陥ります。
 その際、写真が撮影されていると、その写真を使って罹災証明書や保険手続きを進めることができる場合があります。
 予め自治体や保険会社に確認して写真OKの了解をもらえば万全ですが、とにかく写真を撮っておきましょう。
 被災したものは4面と斜め、上部など、角度を変えて撮影し、被災したものの被災した様子がわかるようにします。
 建物や車両などは内部の写真や被災部分の写真も取っておくといいと思います。
 あと、建物の場合には簡単な見取り図と被災部分がわかるようなものを作っておくと、後々いろいろと役立つと思います。

2.業者による修理が必要かどうか確認しよう

 破損している場所やものによっては、専門の業者の方に修理をお願いしないとどうにもならない場合があります。
 まずは自力で修繕できるかどうかざっくりと被災したものを確認し、業者さんによる修理が必要だと判断したら、修繕の必要な場所と内容をリストアップして、すぐに業者さんへ依頼をかけましょう。
 被災してすぐなら業者さんもある程度余裕がありますから、自分のところができなくても、場合によっては他の業者を紹介してくれることがあるかもしれません。
 また、修理箇所と修理内容をリストアップしておくことで業者さんは修理部材や必要な期間が見積もれるので、手早くやってもらえることも多いです。
 全て業者さんに確認してもらおうとすると、時間が取れないために後回しにされることも多いのでご注意ください。
 そして、片付けが終わってから依頼すると、今度はいつ来てくれるかわからないくらい待たされますし、被災地外から入ってきたおかしな業者に異常に高価な金額で適当な修理ををされてしまうことも発生します。
 専門家が必要な作業は、早めに手配するようにしておきましょう。

3.ゴミ捨て場の確認をしておこう

 被災した後の片付けは、まず被災して壊れたものを家から搬出するところから始まります。
 その際、大型ゴミを処分する場所が確認できないと家の前や周囲に放置することになってしまい、衛生的にも景観的にもよくない状況になります。
 大型ゴミの処分場所・回収場所は変更されることが多々ありますので、処分する前に自治体に搬入先を確認するようにしましょう。
 また、自治体によっては処分場所・回収場所がいっぱいになって個別回収に変更するケース、回収を一度中止するケースなどもあります。
 前の日に確認したとおりにいかない場合もありますので十分注意してください。

4.人の手当を考えよう

 被災した後の片付けでは、自分一人ではどうにもならないような大型ゴミの搬出やいろいろな場所の掃除、片付けなど多岐にわたる後片付けが待っています。
 そのため、どのようにして片付けを始めるのかを考えておかないと途中で力尽きてしまいます。
 近所の人と一緒にみんなでお互いの家を片付けるのか、ボランティアを要請するのか、親戚縁者を総動員するのかなど、人によってやり方はいろいろだと思いますが、間違っても一人でやろうとは思わないでください。
 間違いなく途中で挫折します。

5.水が使えるかどうか確認しよう

 掃除につきものなのは水です。特に水害で被災した場合には家具や建物に貯まった汚泥を流すのに必須のものです。
 飲料に適さなくても構いませんが、それなりにきれいな水を確保するようにしましょう。
 水が使えない場合には、どんな方法ならきれいにできるかを資材を見ながら考えてみてください。

 注意しておきたいのは、全てにおいて作業をするのは自分だということです。
 自分一人では挫折すると書いていることと矛盾すると思われるかもしれませんが、周りはあくまでもお手伝い。
 全体の流れや段取りは自分で組むしかありません。
 誰かに頼ろうとすると、「災害関係の保険手続きは自分でするようにしよう」で触れたようにどこかからやってきた変な業者があなたの保険金をごっそり奪っていったりすることもあり得ます。
 あくまでも主体は自分。周囲はそのお手伝いということを忘れないでください。
 そして、どうしてもわからないことがあればご近所や社会福祉協議会、行政の窓口で確認してみてください。
 被災したことは終わったことですから、その事実は変えることができません。
 でも、被災からそれまでの生活に復帰するまでの時間を短くすることは可能だと考えます。
 早め早めに段取りをつけて、日常生活を取り戻せるようにしたいですね。