古の災害を知る研究

 日本では昔からさまざまなものが記録として残されていますが、自然災害についても直接被災した人や話を聞いた人が文献として記録を残しています。
 特に地震に関してはその周期の長さから、過去の文献を読み取っていつ頃どのような規模のものが起きていたのかを確認していくことで、現在の地震学とあわせてより精度の高い地震の予測ができるのではないかと考えられています。
 京都大学や東京大学が中心となって「古地震学」を研究しているそうですが、webを使って様々な人が共同で文献を読み解いていくプロジェクト「みんなで翻刻」が京都大学古地震研究会主催で実施され、災害に関する古文書が日々読み解かれているとのこと。
先日、東京大学地震研究所の古文書の一部の解読が完了したという記事も見つけました。
過去が紐解かれていくことで、今まで分からなかった、または知られなかった地震や災害のことがこれからわかってくるかもしれません。
翻訳支援ソフトも使えるようですので、興味のある方は是非一度「みんなで翻刻」プロジェクトのサイトを覗いてみてください。

 なお、「みんなで翻刻」に参加するには、FacebookやTwitterのアカウントが必要なのと、現時点ではパソコンからしか見られないそうですので、あらかじめお知らせしてきます。

 また、東京大学地震研究所図書室のホームページ内「著名地震別「地震資料」」「浜田地震」に関する資料を見つけましたので、併せてリンクを貼っておきます。興味のある方はこちらもご覧ください。

簡易型感震ブレーカーを付けてみる

パナソニック BQE8507Z 住宅分電盤 感震ブレーカー搭載マルチボックス 7回路 50A価格:26,916円
(2019/3/21 23:36時点)

 地震後、電力会社さんは被災したエリアの電源供給を止めることになっています。
 そして一軒ずつ確認して電気を復旧するのですが、通電火災を起こさないように、発災時には電気のメインブレーカーを切っておくことが必要とされています。
 可能であるならば、感震ブレーカーは電気工事屋さんに上記のような感震機能を持ったブレーカーに交換してもらうのが一番いいと思いますが、家が古かったり、借家だったり、面倒くさかったりするとなかなかそうもいかないのが現状です。
我が家も古い借家で、感震ブレーカーに交換することはできませんでした。
そこで、簡易型の感震ブレーカーを取り付けてみることにしました。

手に入る感震ブレーカーでは一番構造が単純なもの。

 今回取り付けたのはこちらの感震ブレーカー。
 構造は単純で、メインブレーカーに重りに繋がる紐をくっつけて、地震で揺れたら重りが台座から落ち、その勢いでブレーカーを落とすというもの。

材料もシンプルです。

この輪を取り付けることで重りが落ちにくくなる。

 引き金となる玉は結構重いです。台座は、震度によって大きさが変わります。一番大きいと震度6強、真ん中が震度6弱、一番小さいのが震度5強で玉が落ちるような構造になっているそうです。

 まずは台座をまっすぐに貼り付けます。台座には水平計がついているので、真ん中に空気の○が来るように調整します。
この台座と、紐を誘導する環のついた誘導装置は両面テープでの貼り付けなので、一度貼り付けたら強度が安定するように一日放置します。

 次の日、ブレーカースイッチに引っかけるカバーに重りを結びつけ、台座に重りを乗せたら出来上がり。至って簡単です。
 さすがにメインブレーカーを試験で切ると問題が発生するので、まだ試験はしていませんが、うまく作動するといいなぁと思います。

 この商品は以下のお店で調達しました。

感震ブレーカー スイッチ断ボール3 家庭用 電源遮断装置 コンビニ受取可 (防災備蓄の倉庫番 災害対策本舗)価格:3,240円
(2019/3/21 23:40時点)

災害遺構を訪ねて1・「58災害防災祈念碑」

 先日、震災伝承碑の地図上の記号が新設されたという記事を書いたわけですが、そこでちょっと考えたのは、果たしてこの石西地方にどれくらいの震災伝承碑があるのだろうかということです。

 そこで、どれくらいの数、どれくらいの災害があるのかはわかりませんが「災害を示す遺構」を探してみようと考えました。
 今回は、益田市本町にある市立益田小学校敷地内にある防災祈念碑です。

 この祈念碑は昭和58年7月20日から23日にかけて起きた島根県西部水害のうち、益田川の氾濫により発生した水害のものです。
 碑が置かれている益田小学校も水没し、その時の最高水位が石碑の横の物差しのような石に刻まれています。

 この碑は益田青年会議所が義援金により建立したという記事が書かれています。
 碑の手前には、旧益田市の地図と市内の被害状況が刻まれた石が置かれています。

被災したせいなのか、台座がかなり痛んでいる二宮尊徳像。説明文の石はその台座に後から貼り付けられた様子。

 この碑の横、益田川に向かって二宮尊徳像があるのですが、これも被災したらしく、台座にはそれを刻んだ石が置かれています。
 ちなみに、碑の右側には徳川夢声さんの碑もあったりしますが、今回は割愛します。
 この水害をきっかけにして、普段湛水しない水害対策に特化した益田川ダムが建造されました。
 場所は益田公民館の向かい、益田小学校の体育館の横です。通りに沿って置かれているので、また近くに行かれたときには思い出してください。

昭和58年島根県西部水害が分からない方のためにリンクを用意してきます。
興味がある方はこちらもご覧ください。

wikipedia「昭和58年7月豪雨」

昭和58年災害 – 島根県砂防課

「1983年7月梅雨前線による島根豪雨 災害現地調査報告 」、防災科学技術研究所)

防災アプリを入れてみる

 スマートフォン用の防災アプリというと有名なところでは「NHKニュース・防災」や「yahoo!防災速報」などがあります。
 地方ローカルでは「東京都防災アプリ」や「大阪市防災アプリ」などがありますが、津和野町と吉賀町についてもこのアプリがあることはご存じですか?
 2016年から運用されているそうですが、津和野町と吉賀町をエリアにしている「サンネットにちはら」さんのアプリの中にこの機能が組み込まれています。
 ここではAndroidで説明しますが、iPhoneにも対応アプリが用意されています。

 これが起動画面。初回時のみ津和野町か吉賀町かの確認があり、アプリが起動。その後は画面下の「地域選択」で切り替えることができます。

雨量と水位は島根県防災システムからデータをもらっている。

 防災情報をタップすると、さまざまな情報が見られるようになっています。
 「最新防災情報」では気象情報を中心とする災害関係の情報が、「定点カメラ」では道路や河川にある監視カメラからの映像を簡単に見ることができるようになっています。

カメラは道路と河川にわかれている

 「雨量一覧」や「水位一覧」は選択した町の河川や降雨のデータが、「避難所」では同じく選択した町が決めている各種避難場所のメニューが出てきて、行きたい避難所名をタップするとナビで誘導までしてくれるようになっています。

各町で指定されている避難所の種類が違うため、それにあわせた表示になっている。
避難所の一覧。ナビボタンをタップすると、GPSのスイッチが入っていれば現在位置からタップした避難所までの誘導を始めてくれる

また「消防・防災」では役場からの消防・防災関係に特化した情報が掲載されています。
 いざというときに使える情報が使いやすくわかりやすく作られていますので、該当する地域にお住まいの方でスマートフォンをお持ちであれば、ぜひ一度インストールして使ってみてください。

 Androidの人はGooglePlayから、iPhoneの人はAppStoreで「サンネットにちはら」と入力すると見つかります。
 ちなみに、益田市は調べた範囲ではこういったアプリの存在がわかりませんでしたので、国土地理院の避難所マップに頼るしかなさそうです。

医療トリアージの悩み

 先日、医療トリアージについてちょっと触れてみましたが、益田日赤に用事で出かけると「高津川だより」という益田日赤の広報誌が置いてありました。

 特集は「平成30年度院内災害対応訓練」ということで、手に取ってみてみました。

 平成30年12月16日に津和野町を中心とする震度6の活断層連動型地震を想定しているということなので弥栄断層が動いた場合のことだと思われますが、院内災害対策本部の立ち上げ、情報伝達訓練、トリアージの実施、負傷者搬送などを訓練されたようです。

 詳しくはリンク先の広報誌をご覧いただければと思いますが、写真から判断すると1階ロビーが応急救護所で玄関前にトリアージエリアが作られた感じですので、大規模災害発災時には通常の診療は全て中止し、完全な災害対応体制に入ることがわかります。
 発災時に診療を受けに来ている人たちをどうするのかなということが少し気になりました。
 この訓練の感想として、トリアージを行う人手が足りないというのが書かれています。今後、人手が足りない場合の訓練も行っていきたいと書かれていますが、トリアージを行う人手をどう確保するのかが問題となりそうです。

 ところで、大規模災害で行われる医療トリアージには、実は法的な根拠がないのだそうです。
 つまり、大規模災害時でも通常の医療行為と同じ扱いとなるため、医療行為を巡ってはさまざまな問題が起きそうです。
 例えば、トリアージは患者の状態を判断する作業ですが、これが医療行為と認定される可能性があり、医師法に抵触する可能性がありそうです。
 そういえば、東日本大震災で行われた石巻赤十字病院のトリアージを巡って現在裁判になっています
 この裁判の結果がどうなるのかが気になるところですが、少なくとも、大規模災害時における医療行為と責任の所在については法制化しておかないと、いざというときに医療関係者が手を出さなくなることも起き得ます。
 この問題に限らないのですが、非常時には通常時の理論が通用しないことをきちんと法的に整理しておく必要があると感じます。

両開きロッカーの扉の固定法

 保育園さんで使っているロッカーの扉をロックできるようにしようということになりました。

 これがロッカーの全景。扉の内側には固定具はありません。扉のちょうつがいのスプリングで扉を固定する構造で、上下の二段となっています。
上の段は普通の金属製のドアストッパーで止めることにしましたが、問題は下のロッカー。高さ的に子どもの頭が当たるかもしれない場所なので、普通のドアストッパーでは事故が起きる可能性があります。

 そこで安全面を考えてプラスチック製のドアストッパーを用意したのですが、今度は強度でいまいち不安が出てきました。
 そこで、プラスチック製のドアストッパーを小改造して皿ねじを使えるようにし、しっかりと取り付けられるようにしてみました。
 作業と取付、万一の場合は自己責任になりますが、改造は次のとおりです。

 まずはキャップを外します。

 そして、内部のピンを切り取り、その部分に錐で穴を開けます。

ねじの皿部分がキャップ内に収まるように皿に合わせて形を作り、皿ビスを貫通させてうまく収まるかを確認します。

 ビスを貫通させた状態がこれです。ロッカー側には今日粘着タイプの両面テープに取り替えています。

ビスで取り付けます。皿部分はなんとかうまくキャップ内に収まりました。

 全体につけるとこうなります。
 上部ロッカーは内容物の重量と扉の精度によって固定具を変えています。
 同じようなロッカーが3カ所あり、取付自体は正味1時間で完了しました。
 このロッカーの下でお昼寝する子どもさんもいるということなので、とりあえずはこれで安全が確保できそうです。

 できるところから始めて行くことで、準備は進んでいきます。とりあえずの第一歩を踏み出すことが、実はとても大切なのだろうと思います。

灯りを作ろう~ごま油の場合~

 前回はサラダ油で灯りを作ってみました。
 油ならとりあえず燃えるのはわかっているわけですが、その種類によって燃え方や使い方が違うのではないだろうかということで、今回はごま油を使って灯りを作ってみることにしました。

ごま油ランタンの材料

材料は、ごま油、芯を支えるアルミホイル、油を入れて燃やす皿、そして、今回は芯にキッチンペーパーを使ってみることにしました。

こよって芯を作る

まずはキッチンペーパーをひねって芯を作ります。

芯に油を吸わせる

次に芯をアルミホイルで包み、 皿にごま油を注いで芯を浸します。分量は、前回のサラダ油と同じくらいにします。

芯全体を油に浸す

・・・10分経っても油が吸い上げられないので、全体を油に浸します。サラダ油も吸い上げが悪かったので、こんなものかもしれません。

火をつけるとちゃんと燃える

火をつけてみました。ちゃんと燃えます。

 しばらくすると、油が吸い上げられていないみたいで芯が燃え尽きてしまいました。アルミホイルが油の吸い上げを邪魔しているかもと考えて、今度は外して芯に火をつけてみます。

 灯りの雰囲気はなんだか江戸時代のような雰囲気です。ただ、油の吸い上げは相変わらず悪くて芯が燃えている感じです。そのうちに芯全体に燃え広がりそうな感じになったので、危険と考えて今回は中止しました。
 ごま油はサラダ油に比べて粘度があるのでそのせいなのか、それともキッチンペーパーの油の吸い取りが悪いのか、少し悩むところです。
 また、そのうち確かめてみたいと思います。

地図で「自然災害伝承碑」がわかるようになります

 現在、国土地理院の地図ではさまざまな「碑」が以下の同じマークで表示されています。

国土地理院の地図で表示される「碑」のマーク

 このたび、その中の「自然災害伝承碑」について新たにマークが作られることになりました。
 2019年3月15日以降、市町村等の地方自治体に情報提供を受け、自然災害伝承碑と判明した碑については順次表示が切り替えられていくとのこと。
 これから先、世代が変わって記憶が薄れていっても、地図に自然災害伝承碑が明記されていれば何かの災害がそこであったということだけは伝わっていきます。
 こういう形で地図に災害の記録が残されていくということはすごいことなのではないかなと思います。

今回追加される「自然災害伝承碑」のマーク。碑の中に縦線が入っている

 今後「碑」の中にこういう記号を見つけたら、そこで過去に災害が起きたのだなと思っていただければ、これから先の備えにもなるような気がします。
 さまざまな情報提供も考えられているようですので、気になった方はぜひ下記のリンクから国土地理院のホームページをご確認ください。

http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/bousaichiri190315.html

耐震と免震と制振構造

 建物の構造のお話をしていると、耐震と免震と制振がごちゃごちゃになっていることがよくあるなと感じます。
 ここでは整理を兼ねて、耐震と免震と制振の違いについて確認してみたいと思います。

1.耐震構造
よく言われる「この建物は耐震構造です」というのは、文字通り「地震に耐える構造になっている」ということです。
1981年以前は震度5強、それ以降は震度6強から震度7まで崩れない構造になっているものを指します。
建物が倒壊しないというだけですので、普通に揺れますし、建物内の家具などはひっくり返ったりします。
大きな地震が重なると、建物の強度が落ちて崩れてしまう可能性があります。

強度の足りない場合には力のかかる部分に補強をして倒壊を防ぐ耐震補強工事が行われることが多い。
写真は耐震補強工事後の島根県庁益田合同庁舎。

2.免震構造
地面と建物の間を切り離してその間にゴムなどの揺れを吸収する免震装置を置いた構造になっており、大きな地震でもあまり揺れを感じることはありません。
地震に対する効果はは絶大ですが、地下に空洞を作るため、台風や竜巻、水害などには弱い構造となっています。

建物の下につけられる積層ゴム型免震装置。上下左右の動きを受け流せる構造を持っている。
名古屋市立科学館の展示より

3.制振構造
地震の揺れを建物につけたダンパーなどで吸収して建物の揺れを押さえ、破壊を防止します。
エネルギーをダンパーなどで吸収するため、建物の強度が落ちにくく、大きな地震が重なっても崩れにくい特徴があります。

制振用ダンパー。建物構造物にかかる力を制御してダメージを抑える。
名古屋市立科学館にて

 免震構造や制振構造は大規模な建物や高層ビルなどによく使われる技術で、一般住宅にも一部採用されているようですが各装置の設定などが難しく費用も嵩むため普及するまでには至っていないのが現状です。
 2×4などの一般住宅は柱だけで無く壁全体で建物を支える構造になっているため、比較的地震には強いとされています。

 法的に決められているのは耐震基準だけで、その中に免震や制振があると考えてください。

L字金具+ビスでの家具固定

家具を固定しようという提案をすると多くの方はL字金具+ビスというイメージになるようで「どうせ抜けるから無駄」とか「やっても役に立たない」と言われることが多々あります。
前提条件として、固定方法はできれば二つ以上の異なる方法を使うということをご理解いただいた上で、これらを使ってどのように固定するとうまくいくのかについて考えてみたいと思います。
1.まずは家具の素材を確認しよう
固定したい家具がどのような素材で作られているのかによって固定方法も変わります。まずは固定したい家具の背面を見てみましょう。
背面になる部分の外側がどのような材料なのかを確認します。
ここから見える部分が一枚板や集成材なら大丈夫ですが、パーティクルボードのような端材を圧着接着しているようなものならこの時点でL字金具+ビスの固定は無理です。揺れると簡単に抜けてしまいます。

固定に使う木の堅さによってビス留めできるかどうかが決まる

2.壁の構造材を確認する
次に固定したい壁がどんな構造物でできているのかを確認します。とはいっても、木造モルタル構造の一軒家の場合だと、殆どの場合壁紙の下は石膏ボードかベニヤだと思います。
家具をしっかりと固定するためには、この壁を構成する構造材の下にいる間柱や横胴縁にビスを打ち込む必要があります。
そのためには壁の厚さ+αの長さをもつビスと、下地を調べられるセンサー類を準備しましょう。また、電気の配線なども通っていますので、電源の位置関係も気にするようにします。

縦方向が間柱、横方向が横胴縁。壁の中はこの部分以外スカスカなのに注意。

3.L字金具の向きに注意する
L字金具を取り付ける際には、壁側のL字のビスを家具で隠すような取り付けを行います。強度を確保するため、できれば家具の両端と真ん中を止めるようにします。

L字金具の取付例。黒い金具の取付方法のほうが強度があるとされる。

 私自身は家具の床部分の手前側に必ず新聞紙をたたんだものを挟むようにしています。
 家具の重心を中央部よりも気持ちだけ壁側にすることで、他の固定方法がより活きるのではないかと考えているからです。
 家具の固定方法はさまざまです。
 今回はよく言われるL字金具+ビスでの固定方法をご説明しましたが、これで固定できない家具は案外と多いものです。
 他の固定方法については、また後日考えてみることにします。