缶詰と非常食

 非常食でアルファ米と同じくらい良く登場するのが缶詰です。
 重いという点ではハンデがありますが、手を加えずにそのまま開けて食べることが可能という長所があります。

缶詰各種。景品でもらったお隣の浜田市の缶詰はいずれも絶品。アンチョビは、寝かせているものを出してみた。もう一缶も寝かせている普通のサバ缶。

 さて、缶詰はできたてよりも賞味期限に近いほうがおいしくなることが多いということをご存じですか?
 缶詰の中の食材や調味液がじっくりと混じり合うことで、個人的には安い缶詰でも高級品の味わいで食べることができると思っています。
 オイルサーディンや鯖の味噌煮などは、人によっては期限切れの缶詰をわざわざ探す人もいるそうですよ。
 他の防災食の場合には、賞味期限が切れると食べるのに躊躇してしまいますが、缶詰は割と安心して食べることができます。
 食品衛生法上、食品は全て賞味期限または消費期限を明記する必要があるので記載されていますが、缶詰の場合には相当余裕があるようで、海外では114年前の缶詰も食べることができたという記録があるそうです。
 缶詰が食べられるかどうかは次の点に注意する必要があります。

1.缶が錆びたり変形したりしていないこと
2.缶の蓋及び底が膨れたり、押したときにペコペコしないこと

 缶詰は基本的には缶詰にしたあとで高温殺菌処理されるので、内部の菌はほぼ死滅します。
 ですが、何らかの原因で発酵が進むと、やがて内部にガスがたまって膨らむため、その缶詰が傷んでいるかどうかがわかるというわけです。
 ちなみに、世界でもっとも危険な缶詰と呼ばれる「シュールストレミング」は、内部で発酵を進めているために蓋と底がぱんぱんに膨らむそうで、いつ爆発するかわからないために航空機への持ち込みは禁止されているのだとか。

ご飯の缶詰。一缶で二食分の分量がある。これは加熱する必要があるが、一度加熱すると一日程度はそのまま食べることができる。

 ともあれ、どうかすると避難用持ち出し袋に入れたまま忘れられてしまうこともある非常食。
 缶詰であれば、避難先で出してみて、賞味期限切れでがっかりというのは防げるかもしれませんよ。

ビスを使わずに家具を固定してみる

 以前にL字金具とビスとで家具をどうやって止めるかについて考えてやってみたことがありますが、今回は「ビスを使わずにどうやったら家具を固定できるか」について考えてみます。

仮止めのような突っ張り棒。これでもないよりはましと考えている。

 上の写真は以前我が家で取り付けた家具転倒防止の突っ張り棒。本来高いところに置くべきではないものがいろいろとおいてあります。
 まだ防災のことを知る前にとりつけたものなので、鉄棚の真ん中を押さえていますが、本来は動かないように壁側に一番近いところを固定しなくてはいけませんが、忙しさにかまけて放置したままにしていました。
 実は取り付けた後に起きた大阪北部地震で「突っ張り棒が天井を突き破って家具がひっくり返ってしまう」という事例が起きてしまったと聞きました。そこで、この鉄棚を確実に固定するため、二種類の違った方法で固定をすることにします。

 まずは突っ張り棒を正しい位置に移動させます。

不二ラテックス製の「不動王」。いろいろなバージョンがある。

 今回使うのは、この「不動王」。壁と家具を特殊な粘着テープで繋いで固定するため、壁を傷つけにくいとの触れ込みです。

柔らかい壁紙やセメントモルタル、石膏ボードなどには、不動王が粘着テープを使う構造上使えないことが書かれています。

 ふわふわした厚手のスポンジが振動を上手に吸収して本体がひっくり返るのを防ぐようです。 取付方は、L字金具と一緒です。違うのは「ビスをもむ必要がない」こと。その部分が特殊な粘着テープになっているわけです。

 壁側、家具側の両面テープをはがします。

 で、L字金具とは逆に「家具→壁」の順番に固定していきます。
 ぎゅっと押さえたら完成。とっても簡単で力も不要です。

もう一つも同じように取り付けて、これで完成。突っ張り棒と不動王の二種類の固定具で固定を多重化しました。
「不動王」の寿命は5年くらいとのことですが、固定部分がはがれていないかの確認は一年に一回くらいした方がいいかもしれません。
これで家具倒れるまでに逃げ出す時間を稼ぐことくらいはできそうです。

不二ラテックス 不動王家具転倒防止器具L型固定式 FFT-001

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責任は誰が取る?

 災害対策を考えるとき、地域での「自主防災組織」の整備が脚光を浴びていますが、ちょっと考えさせられることがあります。
 それは、そもそもの自主防災組織の位置づけのことです。
 自主防災組織が立ち上げられた地域では、災害が発生しそうなときにはこの自主防災組織が組織のある地区の住民に避難を呼びかけることになっているところが非常に多いと感じます。
 新聞などで災害特集を見ると、自主防災組織が住民に避難を呼びかけるためにどうしたらよいかという記事が非常に多い気がしますが、私自身はこの考えはちょっとおかしいのではないかと思っています。
 そもそも、自分の命は誰が守らないといけないのでしょうか?
 今行われている災害への対応をどうするかという議論では、避難の実行役が自主防災組織や消防団が担わされるような方向付けになっていないかと気になります。
 本来は、「自分の命は自分で守ること」が大前提となるはずです。
 避難が難しい人や支援が必要な人に対して支援を行うというのが、自主防災組織の位置づけだったのではないでしょうか?
 通常時の避難訓練や、避難所の開設や運営などが本来の自主防災組織の仕事だと思います。
 住民に避難を呼びかけることや避難させることが設置の目的ではないはずです。
 自分が避難するためにどれくらいの時間がかかり、避難するためにはどのようなものを準備しておかないといけないのか。
 そしてどのタイミングで自分が避難を開始しないといけないのかということは、本来自分自身で考えて決めて、準備しておかないといけないことのはずです。
 ですが実際には、自主防災組織に判断を丸投げし、自分は自主防災組織に声をかけられるまでは知らん顔という人があまりにも多いような気がします。
 自主防災組織は決してその人のためにだけ作られた組織ではありません。
「自分の命は自分で守る」
 そのために自分が避難の判断をする情報の集め方や避難の仕方、そして避難所での自分の役割などを周囲の人と共有し、お互いに助け合って災害を乗り切るために作られているのが自主防災組織なのではないでしょうか。
 最近のさまざまな報道や行政の動きを見ていると、どうも何か勘違いしているような気がして、この先うまく行かなくなるのではないかと、余計な心配をしてしまいます。
 繰り返しになりますが、自分の命に対する責任は自分自身が取らなければいけません。
 「大丈夫だろう」ではなく「危ないかもしれない」という考え方で災害が起きるかもしれない時の行動を決める癖を付けておきましょう。
 何か起きたとき、悪いのは自治会でも行政でも自主防災組織でもなく「自分自身」なのだということを肝に銘じて、災害への備えをしたいものだと思います。

灯りを作ろう~ツナ缶の場合~

 災害DIYでは結構有名なツナ缶ローソク。
 今回はそれにチャレンジしてみます。が、その前に。
 ツナ缶ローソクに使えるツナ缶ですが、なんでもいいわけではないことをご存じですか?

最近はノンオイルのものが多く、間違えるとやっても火がつかないという悲喜劇が起きる。

  写真の3種類のツナ缶ですが、ローソクになるのは「いなばライト」だけです。
 他の二種類は「水煮」と「ノンオイル」でいずれも油は含まれていません。
 ツナ缶ローソクはツナ缶の中の油を燃料にするので、油が入っていないものは使えませんのでご注意ください。
 それに注意すれば、あとはとても簡単です。

要は油を使うだけなので、オイルサーディン缶などでも可能だと思われる。

 用意するのは、油漬けのツナ缶、穴を開けるための道具、そして芯となる紙です。今回は、穴開けに押しピン、芯にはキッチンペーパーを使うことにします。

押しピンでも開けられるが力が必要。釘や錐、千枚通しなどでも開けられる。

 油を使い切った後のツナ缶はおいしくいただけますので、開放部分の真ん中に穴を開けます。

たこ糸があればそちらの方が簡単。ティッシュペーパーでもいいが、食べるときに注意が必要。

穴が開いたら、キッチンペーパーをねじって芯を作ります。

あとはできあがった芯をツナ缶に開けた穴にねじ込むだけ。ツナ缶に使われている油は粘度が低いので、あっさりと芯のてっぺんまで油が回ります。

芯が長く太いと火も大きくなる。使う目的によって調整した方がよい。

 火をつけるとこんな感じ。使うツナ缶と必要な光量によりますが、一缶で1時間から4時間程度は燃えます。

 途中で消すとこんな感じ。しっかり芯まで油が回っているのがわかります。
火力を上手に調整できれば料理にも使えそうです。

芯を短く補足すると火力も小さい。これくらいなら数時間は確実に燃えてくれる。

 昨今の健康ブームのあおりを受けてか、油漬けのツナ缶は減ってきているようですが、災害対策として準備しておくのもありかもしれませんね。

ほうきとちりとりは必須です

 災害が発生した後、家の内外を問わずさまざまなものがひっくり返り、埃が舞って積もって状態になります。
 災害が収まったらお片付けをすることになるわけですが、普段なら掃除機で吸い込んでしまうものでも災害後は停電で電化製品は使えないと思った方がよさそうです。
 そんな状態で大活躍するのがほうきとちりとり。
 1セットあると、おうちの片付けがはかどります。
 さまざまな割れたものや壊れたものは素手で触ると怪我をする可能性がありますが、ほうきとちりとりで回収してそのままゴミ袋に入れれば効率的で安全に処理が可能となります。
 ほうきは消耗品なので定期的に更新する必要は出てきますが、さほど高いものでもありませんし、災害後に手に入らないものの一つでもありますので、事前に確保しておいたほうがいいと思います。
 穂先や柄がさまざまですので、自分が使いやすいものを選んで備えておくようにしましょう。

携帯用トイレを考える

 最近はさまざまなところで携帯用トイレを見かけるようになり、百円均一ショップなどでも「男女兼用」な携帯用トイレを見かけるようになりました。
 これだけ見かけるところを見ると、いざというときに備えて準備している人も多いのかなと思いますが、使ったことのある人はどれくらいいるでしょうか?

携帯用トイレ各種。一番左は百円均一ショップのもので小専用。真ん中と右は大にも対応しているが、真ん中のものはバケツなどが必要。右はセットに段ボール製のミニ便器が入っているが、座ると壊れる。

 基本的なことですが、百円均一ショップなどで売られているコンパクトな携帯用トイレは「小用」です。「大きい方」の時には使えないので気をつけておいた方がよいと思います。
 さて、この携帯用トイレは排泄時には投入口の口を開いて中に排泄を行うわけですが、男性はともかく、女性はかなり使いにくいようです。
 一応「兼用」とされていて受け口が広く折り返せば安定するのではありますが、うまく投入口に排泄部分が当たらずに周りに飛び散ってしまったりすることも多いとか。

ペットボトルの飲み口に取り付けて使う尿受け用のジョウゴ。携帯型トイレの受け口に差し込むと安定して小用を足すことが可能

 「小」を受けるためのジョウゴなどを使うなど、ちょっとした工夫が必要な場合もあるようです。
 また、子どもの場合になるともっと大変です。普通にトイレでできる子でも、小さな投入口に注ぐのは勝手が違います。
 子ども達に任せると、中には一滴も入らずに周囲が大洪水ということも起こりますので、場合によってはトイレで用が足せるようになっても「おまる」を準備しておくことも有効ではないかと考えます。

 座るタイプのおまるなら、おしりが収まればある程度大きな子どもでも使うことができる。そして大小どちらでも可能なため、あるなら準備しておいてもよさそう。

  準備したらまずは使ってみること。防災用品の基本ではありますが、簡易トイレもさまざまなものがありますので、使ってみて自分や家族にあったものを用意しておいてくださいね。

雨の日に散歩してみよう

 天気がめまぐるしく動く季節ですが、自分が住んだり仕事をしたりしている場所の周りの様子は知っていますか?
 晴れの日や曇りの日にはよくお散歩したりすると思いますが、濡れない、寒くない格好をした上で、雨の日にも散歩してみてください。
 晴れの日と雨の日では、見慣れた景色であっても随分と異なる感じがするものです。
 特に激しい雨が降ったときには、知っている場所なのかと思うような感じになることもあります。
 低地の水のたまり方や排水の流れ方を知っているだけでも、いざというときに役に立ちます。
 また、避難時に用意してある雨具を実際に使ってみることも大切です。
 防災士や他の人が勧めた製品だからといって、それがあなたにもあっているとは限らないからです。
 傘やカッパやポンチョ、長靴や運動靴やウォーターシューズなど、何度か使ってみることで自分の好みもわかるようになります。
また、散歩先を避難先にしておくと、雨の時にはどんな風に見えるのかイメージがしやすくなります。

 危険の無い範囲で天気の悪いときの周りの様子も確認しておいてくださいね。

災害時にこれでは困る

 緊急時に避難をするにあたっては、避難先がきちんと決められていて使えるようになっていることが大切です。
 でも、出されている情報が矛盾している場合にはどうすればいいのでしょう?
 今回はそんな困った状態を一つ指摘してみたいと思います。

 しっかりした画像データを出したかったので、今回はかなり重めです。申し訳ありませんが根拠をはっきりさせたかったので、こんなことになりました。

 この写真は益田地区振興センターの前に掲示されている避難所の位置図です。
 気づかれた方がいらっしゃるかもしれませんが、赤線で強調している避難場所はすでに存在しないところです。

 ここに記載されている益田高等技術校も泉光寺も別な場所に移転していて、この地図どおりには避難できない状態です。

平成30年度益田市防災計画の中に避難所一覧から該当部分抜粋。

上記は平成30年度益田市防災計画の中の「避難所」の一覧です。
ここには益田小学校が「避難所」として書かれています。赤線部を見て欲しいのですが、片方では水害でも避難可、もう片方は避難不可となっています。

 益田小学校の前には「災害避難場所」の表示がされています。看板奥左手の建物が、恐らく避難所として使われることになる体育館です。

 しかしその体育館入り口には「避難先は益田地区振興センター」と記載された貼り紙が貼ってあります。
 そして、問い合わせ先として益田市役所の危機管理課の電話番号が書かれています。
 ちなみに、益田市防災計画の中の避難所の収容人員は益田小学校400人、益田地区振興センターは50人です。収容予定50人の施設にどうやってあと400人も入れるのかは正直「謎」です。

益田市役所が作成したハザードマップから該当部分を抜粋。

 でもって、益田市が提供しているハザードマップでは避難所として「益田小学校」も「益田地区振興センター」も表示されています。

 いったい何を信じたらいいのやら。
 地元の人さえ分かっていればいいということなのかもしれませんが、避難してくる人は地元の人ばかりとは限りません。
 何らかの問題が起こったのだろうと推測はしますが、平成30年度益田市防災計画は平成31年3月25日付けで公開されているので、それ以前から益田小学校に貼られている張り紙(少なくとも10月には貼ってあったのを確認しています)と矛盾する内容になっています。提供する情報はきちんと最新のものにし、矛盾が無い状態にしておかなければいけないと考えます。
 もっとも、あまり災害は起きないということで、ひょっとしたら益田市は本気度が低いのかもしれませんが・・・。

2019.11.07追記 少し前に益田市役所の方に確認したところ、防災計画は年度末にその年度の防災計画として作成しているそうで、おかしな点は気がついた年度末の益田市防災計画で修正するそうです。その都度直す方がいいのではないかと思うのですが年度中途での修正はされないそうなので、これらの資料を参考にされる方は充分に気をつけてください。

国産液体ミルクが発売されます・その2

 以前に江崎グリコさんから液体ミルクが紙パックで発売されるというご案内をしたところですが、明治さんからも液体ミルクが発売されました。
 こちらは缶入りで賞味期限は1年。内容量は240mlで、価格は215円(税別)。
 江崎グリコさんは賞味期限半年で内容量は125ml。価格は200円(税別)ですから、 一度開封して使い切りということを考えると、小さい乳児は江崎グリコさん、大きくなると明治さんの方が向いていることになります。
 どちらも別にほ乳瓶がいるので、災害時への備えとしては使い捨てのほ乳瓶の用意がいるような気がしますが、災害で無くても、ちょっとしたときに調製しなくても飲めるミルクがあるというのは非常に助かるなと感じます。
 現在、一部店舗での先行販売が開始されたとのこと。
 一般発売は4月になるとのことですが、慣れ親しんだ国産ミルクの中で選択肢が増えるのはいいことだと思います。
 詳しくは、リンク先をご覧ください。

非常食に「お麩」はいかが?

お麩にはいろんな種類がある。うちでよく買っているのはこの二種類。たまに山口の安平麩が混じる。

 食材として目にすることはあってもあまり使われることがない気がする「お麩」。
 でも、災害時の非常食として考えた場合、このお麩は非常に優秀なのです。
 今回はこのお麩について考えてみたいと思います。
 「お麩」にはさまざまな種類がありますが、そのいずれもさほど手間がかからずに保存できる食材です。
 砕いて水にふやかせば緊急用の離乳食に使えますし、そのままかじることも料理に入れてもおいしく食べられ、少量でもしっかりとお腹もふくれます。

上で紹介したお麩の原材料表示。日光と湿度に気をつければ長期保存が利く。

 値段も他の非常食に比べると格安ですし、原材料は小麦粉とグルテンくらいなので、アレルギーにさえ気をつければ非常に使い勝手のいい優秀な非常食だと思います。
 あまりに身近すぎてなかなか気にとまることのない食材かもしれませんが、日常の生活に取り入れて、いざというときにも使えるようにしておくといいですね。

「「お麩」ってなんだ?」という方、お麩のレシピを知りたい方は以下のサイトを参考にしてください。

協同組合 全国製麩工業会

お麩研究部