避難所と避難場所と福祉避難所

避難所と避難場所と福祉避難所。
よく似た名称ですが、中身はちょっと違います。
今回は、この3つについて、その違いや中身について触れてみたいと思います。

1.避難所と避難場所の違い

避難場所と避難所。同じじゃないかと思いませんか?
少なくとも、防災のことをやり始めるまで、私はそう思っていました。
災害対策基本法の中でこの二つの違いについては、実はきちんと定義されています。
「避難場所」は法律上は「指定緊急避難場所」となっていて、該当する災害に対して安全な建物や公園などとりあえず逃げ込める「場所」が指定されています。
「避難所」は法律上は「指定避難所」となっていて、災害後、家が壊れたりして住む場所を確保できない人に提供される「施設」のことです。
同じ場所が指定されていることも多いのですが、例えば益田市の場合には「避難場所」は「校庭」、「避難所」は「屋内運動場」というような整理をしているようです。
益田市吉賀町は避難場所及び避難所は施設と住所の一覧表になっていましたが、津和野町は一覧表の他に位置図も作っていて、わかりやすいなと感じました。

2.避難所と福祉避難所の違い

避難者のうち、高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦、傷病者、内部障がい者、難病患者など特別の支援が必要な人(これらの人は「要配慮者」と呼ばれています)のために支援が受けられる施設を避難所として指定するのが福祉避難所です。
避難所と異なるのは、福祉避難所は災害発生当初から自動で設置されるものではなく、被災自治体からの要請で開設されるということです。
福祉避難所として指定できるのは一般避難所内の一部、老人福祉施設、障害者支援施設、保育所等の児童福祉施設、保健センター、特別支援学校、宿泊施設となっています。
自治体と各施設の間で協定を結ばなければ福祉避難所として指定できないのですが、災害時、収容する被災者支援に必要な職員数や資機材を確保できないことから難色を示している施設も多く、なかなか指定が進まないようです。
そのため、福祉避難所という名前は存在しますが、実際に運用できるのかという大きな問題があります。
また、要配慮者に対する配慮は配慮の必要な内容によって収容できる施設が変わるはずですが、現在のところそのような考え方はされておらず、妊産婦も障がい者も高齢者も一緒に収容するような感じになってます。
石西地域では吉賀町のみ福祉避難所の指定を確認できました。

3.支援はどう異なる?

食料や物資などの支援は「指定避難所」に対して行われることが原則になっています。
そのため、自治体の定めた「指定避難所(福祉避難所)」以外に避難した場合、そのままは物資やその他の支援が受けられない事態が発生します。
例えば、地域や有志で設置した「避難所」は支援の対象から外されることが多いようです。津和野町ではこれを「一時避難所」とし「行政の支援がない避難所」と定めていました。
ただ、災害対策基本法では避難所以外の被災者に対しても支援は行わなければならないと決められていますので、実際には自分たちの避難しているところから指定避難所に物資を受け取りに行くような形になると思われます。
また、避難場所に多数の避難者がいる場合には「指定はされていないが指定避難所扱いされる」場合もありますので、細かい運用は各自治体によって変わってきます。
ところで、人工透析や酸素吸入などの医療設備を必要とする人達への支援は、優先度は高いのですが支援はかなり遅れます。できれば被災地外に域外避難して安全を確保するほうが良いでしょう。
妊婦については、かかりつけの病院での出産が不可能な場合、最悪避難所での出産という可能性があります。
かかりつけの産婦人科医に、どのようなものが必要なのか、どのような支援が受けられるのかについて確認しておきましょう。