西日本豪雨での県内被災地の避難状況を島根県がとりまとめました

 平成30年7月豪雨では、岡山県真備町や広島県坂町、呉市、安芸太田町などが浮かぶと思いますが、島根県内でも江川を中心にして水害が発生しました。

越水した川の水の力によって倒れてしまった対向車警告表示器。水害発生時には、2m以上の高さがあるこの表示器が完全に水没してしまったらしい。川本町内にて。

 被災地に住んでいた人たちはどのように判断してどのように行動したのかについて、島根県が被災地の住民に対してアンケートを採り、その結果が先日公開されました。
 詳しい内容はリンク先の調査結果をご覧いただきたいと思うのですが、普段からハザードマップや避難所、避難経路などを意識していた人ほど避難をし、そうで無い人は自宅で危険の無い場所に避難を行ったという結果が出ているようです。
もっとも、意識していた人でも避難するために必要な非常用持ち出し袋は用意していなかった人たちが大半で、今後の課題になる部分かなと感じました。
避難の引き金になったのは地域の人たちの声かけがもっとも多く、次いで家の中に引かれた防災無線受信機からの情報ということでしたが、被災した地域は比較的地域コミュニティがしっかりとしていたところだったのでこのような結果になったのかなと思っています。
ここから見えてくるのは「非常用持ち出し袋の準備」と「いつ避難を開始するか」「どこへ避難するのか」を決めておくことではないかと思います。
そういう意味では、最近はやっている「マイタイムライン」を作成する必要があるのかなと感じます。
ともあれ、先日からまたあちこちで大雨や大風が吹くようになってきています。
身近に、いつ起きるか分からない災害に備えて準備しておく必要はあるのだろうなと思います。
ちょっと遠くになりますが、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所が公開している「マイ・タイムライン」をリンクしておきます。
このサイトはタイムラインの考え方や作り方が丁寧に説明されているので非常に参考になると思います。
マイ・タイムラインの手引きの中にはword形式の「マイ・タイムラインノート記入用紙」もありますので、自分の住んでいる地域にデータを置き換えて作ってみるのも面白いと思います。
大切なのは「命を守り、命を繋ぐこと」です。それを忘れずに準備したいですね。

災害とプロパンガス

 オール電化のおうちで無ければ、大抵の場合どこかでガスを使っているのではないでしょうか。
 家庭で使うガスには都市ガスとプロパンガスがあるのですが、石西地域ではプロパンガスしか該当が無いので今回はプロパンガスについて触れてみたいと思います。

プロパンガスのボンベはチェーンで固定していないと災害時に凶器になる。
左上に見える四角いのがマイコンメータ

■プロパンガスの性質

①空気よりも重い
プロパンガスは空気よりも重いので、漏れたら低いところにたまる性質があります。そのためガス警報器は低い位置に取り付ける必要があります。
ちなみに都市ガスは逆に空気より軽いためガス警報器は高い位置に取り付けています。
②臭いがついている
プロパンガスそのものは無臭ですが、漏れたときにわかるようにガス特有の臭い(いわゆるガス臭)がつけてあるそうです。ちなみに、タンクの残量が少なくなったときにもこのガス臭いにおいがすることがあります。
③燃焼には大量の酸素が必要
プロパンガスは燃焼するのに大量の酸素を必要とします。そのため、しっかり換気がされていない環境で使用すると不完全燃焼となって一酸化炭素が発生することがあります。
一酸化炭素は無臭で、異常に気づいたときにはすでに一酸化炭素中毒により体が動かなくなっていることがありますのでご注意ください。
④ボンベ(容器)に入っている
プロパンガスは圧力をかけて液化した状態でガスボンベに詰められています。そのため、ボンベをゆすると液体の動くような音がします。
ただ、危険ですので家にあるガスボンベはゆすらないようにしてください。

■災害時にはどうなるのか

 最近のプロパンガスのメータは電子化(マイコンメータ)されており、ガス漏れや震度5以上の揺れを感知したときにはガスを自動的に遮断する保安機能が搭載されています。
 そのため、以前は「地震だ、火を消せ」と言われていましたが、現在では「まずは身を守る」に変わっています。
 もし地震に遭遇したら、まずは身を守り、揺れが収まってから、点火スイッチ(器具栓といいます)がオフであることを確認し、ガス栓を閉め、容器についている容器バルブも閉めてから避難します。容器バルブに表示されているはずですが、バルブは右側に回すと閉まります。
 水害や土砂災害など他の災害の時にも、容器バルブは可能な限り閉めて避難するようにしてください。
 これが閉まっていないと、建物が被害を受けてバルブに繋がったホースが外れてしまったときにそこからガスが噴き出し、ボンベが火炎放射器になったり、水の上だと魚雷のように動き回ったりしてかなり危険な状態になります。

■復旧のさせ方

 まずは器具栓が完全にオフになっていることを確認します。そして、使っていないガス栓が閉まっていることを確認し、使うガス栓を開放します。
 それから容器バルブを左に回して開放し、マイコンメータの復帰ボタンを押します。
 すると、マイコンメータの赤ランプと液晶が点滅しますが、これはマイコンメータがガス漏れのチェックをしている状態ですので、およそ1分から3分くらい様子を見ます。
 異常がなければ赤ランプと液晶の点滅が消えますので、そうなったらとりあえずは安全に使うことができます。もしもこのときに復帰しない場合には、どこかに異常が起きていますのでその状態ではガスは使えません。
ガス取扱業者さんに来てもらって速やかに点検してもらいましょう。

■災害に使えるプロパンガス

 プロパンガスは要するにでっかいカセットコンロなので、最悪ボンベとコンロがあれば使うことが可能です。
 ボンベの容器バルブをきちんと閉めていれば、仮にボンベが流されても中のガスは無事であることが多いですので、ガスコンロとの組み合わせで比較的早い段階から火を確保することが可能になります。自治会などで防災用品を用意されるときには、屋外用の大火力なガスコンロを準備しておくと、いざというときの選択肢が広がると思います。
 また、プロパンガスは建物一軒ごとに設置されているため、その家屋のガス供給系統が無事ならすぐにでも利用を再開することができますし、仮に家が被災して使えなかったとしても、ボンベは移動させることができるため、安全な場所へ移動して使えるという非常に災害に強いという特長を持っています。
 交換の手間がかかりその分単価も高いとされるプロパンガスですが、上手に活用できれば非常に頼もしい存在であることは間違いありません。
 ガス漏れには十分に気をつけて、安全に使っていきたいですね。

災害遺構を訪ねて5・昭和拾八年大水害関係の記録集

 最近でこそさまざまな人がさまざまな形で災害の記録を残すようになってきていますが、過去を調べていくと、ある期間資料が殆ど無いという時代にぶつかります。
 それがちょうど太平洋戦争のころで、昭和十七年から昭和二十一年くらいまでに起きた災害の詳しい資料というのは、軍事統制下にあったせいか殆どお目にかかることがありません。
 石西地方でも、この時代に大きな水害があったことは人伝えの話ではっきりしているのですが、それがどのようなものだったのかについては、調査をしていてもはっきりしていないなと感じています。
 聞き取りをしようと年配の方に話を聞いても、ある人は昭和十六年、また違う人は昭和十七年、さらに別な人は昭和十八年と謂われ、その全てで水害が起きたのか、はたまた全て記憶のあやだったのか、正直なところわかりません。
 で、困っていたところ、高津小学校の校長室の前にある展示コーナーでびっくりするものを見つけることができました。
 それが今回ご紹介する「昭和拾八年大水害関係」と書かれた一冊の冊子です。

 何気なく飾られていた過去の書籍や書類の中にあったこの冊子。個人情報がてんこ盛りで、関係者の方がおられるかもしれないため、冊子の中は撮影していません。

 校長先生以下の許可をいただいて中身を斜め読みさせていただいたのですが、小学校の生徒の被害状況に始まり、地域の被災状況や支援要請その他、高津小学校の管轄区域でどのようなことが起きたのかについて、早い段階のものがまとまっていました。
 この当時、郡役所ではなく小学校が行政機能を持っていたという話は聞いていましたが、この冊子を見るとそのことがはっきりとわかります。
 もしかしたら、他の小学校にもこのような資料が眠っているのかもしれませんが、過去の災害を知るという点で一級品の資料だと思います。
 災害遺構というのとはちょっと違うかもしれませんが、当時の記録という点では同じものだと考え、今回ここに許可を得て掲載をさせていただきます。
 なお、今回の資料は「事前連絡の上、学校の対応が可能であれば見せることも可能かも?」とのお話でしたので、興味のある方はぜひ連絡してみてください。
 当研究所でも、折を見て内容を解析していきたいと考えています。
 最後に、今回の掲載についてこころよく許可をくださいました校長の大橋先生、教頭の中尾先生、主任の大畑先生にこころからお礼申し上げます。

避難所が対応している災害を確認しておこう

 「災害発生→避難所」が一般的なイメージになりつつありますが、避難所でも災害によって使えたり使えなかったりすることがあることをご存じですか?
 あらゆる災害に対応できる万能な避難所があればいいのですが、そんな場所は実際のところ殆ど無いといっていいでしょう。
 避難所のある場所によって、水没したり土石流に襲われたりする危険があったり、火事や津波に襲われたりする危険など、何らかの問題があることが殆どです。
 そのため、避難所に「避難所として使える災害」を明記することが求められています。
 石西地域では吉賀町がこのルールに従った表示をしており、その避難所の性格がその場でわかるようになっています。

吉賀高校に掲示されている避難所の適用表示。この表示に従えば、土石流や崖崩れ・地すべりのときにはここは避難所として使えないと言うことが一目で分かる。

 益田市と津和野町では「災害避難場所」「避難所」という表示しかされていないため、住んでいる地域の避難所がどのような災害に対応しているのかを役所が作成した防災計画により事前に確認をしておかなければなりません。

津和野町と益田市の避難所表示。どのような災害にその避難所が使えるのかが、この表示ではわからないため、現在の吉賀町のような表示が標準化された。余談だが、益田市→津和野町→吉賀町と避難所表示の変遷が分かるのは面白い。

 例えば、当研究所のある場所の避難所は「高津小学校」と指定されていますが、ここは水害では思い切り水に浸かってしまうことがハザードマップからわかっています。

益田市作成のハザードマップより該当部分を抜き出し。凡例は該当部分のみ抜き出した。これによると高津小学校と高津地区振興センターはともに1.0m未満の水没が予測されている。

 では、実際に防災計画の中の避難所の種類を確認してみましょう。

「平成30年度益田市避難所開設予定場所」より該当部分を抜粋。

 あれ? 「水害」のところにはなぜか「○」がついています。同じ状況の高津地区振興センター(高津公民館)は「水害」の欄が空欄です。なんでだろう???
 周囲が完全に泥地と化した中、1メートル水没している校舎の中に1,000人の避難者が押し合いへし合い・・・。
 あまり考えたくないので、この際行政の計画はあてにしないで自主的に避難先を「高津中学校」に設定することにしました。
 こんな風に、避難計画がきちんと検証されていない場合も想定されますので、市町の避難所開設予定一覧だけを鵜呑みにするのではなく、平時にハザードマップや地形を見ながら「どの災害はどこへ避難する」をあらかじめ決めておくようにしたいですね。
その際には、避難所までの避難経路も複数設定し、あわせて確認しておくようにしましょう。

災害警報の種類について考える

 ここ最近、九州や沖縄地方では大雨が降った場所があり、さまざまな被害が出ているようです。
 大きな被害がないことを願うところですが、平成の最後に政府が大雨や土砂災害についての防災情報や避難情報を5段階にレベル分けするという方針を出したことをご存じでしょうか。
 遅くとも梅雨時期となる6月までには運用を開始したいという話だったのですが、現時点ではまだ情報が確認できず、内閣府防災のホームページからもデータが削除されている状態です。
 ちなみに、予定されている防災気象情報(仮)の表示は次の通りです。

これに対して、今までのは次のとおり。

 平成30年西日本豪雨では、各行政機関が今までにないくらいさまざまな情報を提供していました。
 ところが、マスコミや住民といった情報を受け取る側が、提供される情報の整理ができなくなったため「情報を簡単にわかりやすくしろ」となり、「警戒レベルを作る」という流れになったようです。
 ただ、どのように情報をシンプル化したとしても、最終的には自分で判断するしかないというのは変わりません。
 行政が出す情報は、ピンポイントになってきているとはいえ「○○市○○町」や「○○町○○」といった「小さな面」の情報であり、あなたが考えないといけない「自分の居る場所という点」がどうなるかは自分で判断しなくてはなりません。
 このことを忘れてしまうと「避難勧告が出て避難しようとしたらすでに周りは水没してた」とか「避難の途中で遭難したが家はなんともなかった」といった事態になりかねません。
 自分の居る場所でどのような災害が想定できるのか、そして、どの情報に注意しなくてはいけないのかについて、今のうちに整理をして備えておいた方がよさそうです。

(2019年5月28日追記)
 本文中で情報が消えていると書いていましたが、どうやら当研究所の調査不足だったようで、内閣府から2019年3月29日付で警報のガイドラインに関する改正が出されていました
 ただ、実施時期については「出水期」という規定しか無く、実際にいつから運用されるのかはよくわかりません。
 ガイドラインを見る限りでは、「レベル」と「そう判断している状況」を併記して発表するような形になるようですが、発表の方法は各地方自治体によるようですので、混乱が起きなければいいなと思います。
調査不足だったことをお詫び申し上げます。

(2019年5月29日追記)
 いつから始まるか分からないと昨日書いたところですが、本日5月29日から気象庁でこのレベル表示を開始するという報道が朝のNHKラジオニュースで報道されました。その後報道各紙でも同様の内容が報道されているため、事実だろうと思われます。
気象庁のホームページ内の報道発表資料には伝え方改善の一環として「5/29より土砂災害警戒情報や指定河川洪水予報に相当する警戒レベルを記載して発表する」との記載も確認できました。
 各市町村は準備ができ次第順次導入されるとのことですので、お住まいの地方公共団体の報道発表に注意をしておいておいたほうがよさそうです。
 重ね重ね、情報が不備であったことをお詫びいたします。

雷にご用心

 ゴロゴロという雷の音と入道雲。夏の風物詩ですが、最近では夏以外でも見かけることが起きるようになりました。
 ゴールデンウィーク期間中でも、山に登っていた人が稜線で雷に打たれて亡くなるという事故が起きています。
 どのようにすれば雷を避けることができるのか、今回はそれを考えてみたいと思います。

1.雷の仕組み

 雷が空中放電現象だということは知られているところですが、瞬間的に数億ボルトという強力な電気が流れるものですから人に直撃すると死んでしまいます。
 ただ、電気ですから電流が流れやすいところを流れていくという特性があります。そのため、人間の身長よりも高い位置に人間よりも電気を通しやすい物質があれば、そちらへ誘導されますので、建物や車の中にいるととりあえずは安全ということになります。
 詳しいことはウィキペディアの「落雷」の項を参考にしてください。

2.いつまでに逃げればいい?

 一番良いのは気象庁が「雷注意報」を発令しているときには広い公園や海などには出かけないことです。
 AMラジオで番組を流しているときに大きく短く番組が途切れるような雑音が入るときには雷が近づいている証拠ですので急いで屋内へ避難します。
 ただ、ラジオの雑音にはさまざまなものがありますから、一度安全な場所にいるときにAMラジオから聞こえる雷を示す雑音を聞き、知っておくことをお勧めします。
 また、「雷の音が聞こえたら逃げろ」と言われることもありますが、自分の耳で雷の音が聞こえるとしたらすでに落雷を受ける可能性があります。
 遅すぎることはないと思いますが、速やかに安全と思われる場所、例えば建物の中や自動車の中などに逃げるようにしましょう。
 広い公園だと、避難するための場所が指定されていることが多いので、その表示に従って避難します。

万葉公園では避雷案内看板があちらこちらに立っている。

 なお、玄関ポーチや軒下、テントの中などは壁がないため外と同じだと考えて、壁に囲まれた場所へ避難するようにします。
 建物や車の中に逃げ込んだら、絶対に壁やドアといった外部と繋がる部分に手を触れてはいけません。
雷雲は、早ければ10分程度、遅くとも1時間程度で通り過ぎていきますので、音が聞こえなくなるまでは避難場所でじっとしていてください。

3.いくつかの謂われについて

「雷が近づいてきたら金属のものを手放せ」

 これはあまり意味が無いようです。金属のものを手放す暇があるなら、一刻も早く屋内への退避を行ってください。

「長靴や雨合羽を着ていれば大丈夫」

 これは間違いです。長靴や雨合羽はゴムや電気を通しにくい物質なので着ていれば大丈夫ということなのでしょうが、実際のところ完全絶縁体ではなく、落雷の電気の力も非常に大きいため、遮ることのできる以上の電気が流れてしまうために意味がありません。実際、長靴と雨合羽をつけていた人が雷に打たれて亡くなってしまうという事故も起きています。

「避雷針の下は安全」

 うそではありませんが完全に安全であるとも言えません。避雷針の安全圏は避雷針の先端から45度より大きな角度の場所だとされていますが、避雷針を支える柱から4mは離れていないと、「側撃雷」という柱から飛んでくる雷を受けることがあります。また濡れていたりすると避雷針から雷が人体に流れてきますので、濡れていないことが絶対条件になりそうです。

「低い姿勢を取れば安全」

 うそではありませんが、例えば寝そべるような姿勢を取ると、地面に落ちた落雷が体に流れる可能性があります。しゃがんで地面に接している面積をなるべく減らした方が安全だと言えるでしょう。

「雷は高いところから落ちる」

 間違いではありません。ただ、地上から空へ向けてのものや水平に飛ぶものなどもありますので、気をつけることは大切です。

「金属には近づくな」

は基本的には正しい話です。例えば金属柱や金属フェンスなどは雷が落ちやすいのは確かですから、これら金属製の背の高いものからは離れた方が無難です。

 いろいろと書いては見ましたが、ぴんとこない人もいらっしゃると思います。
 一般財団法人電力中央研究所さんがわかりやすく映像で雷のことをまとめていますので、お時間があるときに一度見ておくとよくわかると思います。

(一財)電力中央研究所
雷のふしぎ「1/3」~雷のしくみと威力~

雷のふしぎ「2/3」~雷の性質と身の守り方~

雷のふしぎ「3/3」~雷から家電製品や電力設備を守る~

缶の開け方あれこれ

 最近は缶切りの入らない缶が殆どで、レトルトパウチ食品の普及などもあって「缶切り」を知らない人もいるようです。
 普段ならばそれで支障は無いのですが、実は災害用備蓄品として準備されている缶詰は缶切りが必要なものがかなり多いので、せっかく食べられるものをもらったのに、開け方がわからなくて食べられないという悲しい事態に陥る可能性があります。
 そこで、今回は缶の開け方についていろいろと考えてみたいと思います。

1.缶切りを使う
これは王道中の王道。缶を開けるために作られた道具なので非常に使いやすいです。いくつかのタイプがありますが、非常用持ち出し袋に一つ入れておいてもいいかもしれません。

2.こする
缶詰は筒に底とふたをつけた構造になっています。そのため、筒と底の継ぎ目が取れれば開けられるということです。
レンガやコンクリートブロックなどのざらざらした面に缶を押しつけてひたすらこすると、やがて継ぎ目が取れて開けられます。
ただ、作業の効率的に底を押しつけることが多いと思われますので、缶詰の中の汁はこぼれてしまうと思ってください。

3.とがったものを使う
時間はかかりますが、釘や錐、ナイフでも缶を開けることができます。
やり方は簡単で、ふたにとがったものを押しつけてひっぱたき、穴を開けます。
その作業を繰り返すことで、いつかは缶のふたが開きます。かなり面倒ではありますが・・・。

十徳ナイフやサバイバルセットの中には缶切りがついているものもありますから、余裕のあるときに一度やってみてどんな感じになるのかを体験しておいた方がいいような気がします。

使える布テープ

 非常用持ち出し袋には布テープを一巻入れておくと非常に役立ちます。
 ものを貼り付けたり組み立てたり補強したりすることはもちろん、名札ややぶれたものの修繕、案内表示や網戸などの作成にも使えます。
 また、避難の時に肩掛けカバンなどを体にテープで固定することで、迅速な避難が可能になります。
 粘着力と防水性があり、使うときには加工しやすいのに強度も十分。
 重量があるのが難点ですが、数メーターを巻き取っておけば、手軽に使うことができます。
 避難所だけでなくさまざまなシーンで使える布テープ、ぜひ用意しておいてください。

キッチン用ラップとアルミホイル

 非常用持ち出し袋に必ず入れる必要はありませんが、非常用備蓄品としてキッチンラップとアルミホイルは予備を一つ準備しておいてください。
 これらはさまざまなアイテムに化けることができ、あるのとないのとでは生活レベルに格段の差がでます。
 キッチン用ラップは食器に被せれば洗い物を出さなくてすみますし、くしゃくしゃにすると食器洗いにも使えます。
 体にまきつけた新聞紙の上から巻けば体の保温ができますし、ねじってこよりにするとひもの代用品、布テープと組み合わせれば割れた窓の補修にも使うことが可能です。
 アルミホイルはフライパンに敷けば、汚れ物を出さずに焼き物ができますし、四隅を立てれば立派な食器になります。
 丸めればタワシになりますし、光や熱の反射板としても使うことができます。
 普段何気なく使っているキッチンラップとアルミホイルですが、いざというときにはとても頼りになるアイテムです。
 非常用備蓄品として、いつも一つだけストックを増やしておけるといいですね。

救急箱の作り方

 非常用持ち出し袋の中にいれる救急箱にはどのようなものを入れますか?
 一般的なセットだと、ばんそうこう、包帯、滅菌ガーゼ、三角巾、消毒液といったところだと思います。

 防災用品として売られているDr.Kの巾着型救急袋。コンパクトにまとまっていて外傷用品が一通り入ってはいるが、これだけだと心細い。

 ちょっとした怪我だとこれで対応ができるのですが、被災時にはなかなか治療部分のケアが難しいものです。
 例えば、やけどや擦り傷などにはキズパワーパッドなどハイドロコロイド素材の絆創膏や包帯があると、傷口のケアのあと、一度貼れば直るまでそのまま放置できて助かります。

キズパワーパットだけでなく、さまざまな大きさや形のハイドロコロイド素材のアイテムが出ている。
大きいものがあると、擦り傷からやけどまでいろいろと使えて便利。医薬品なので、使用期限は定期的にチェックが必要。

 また、状況によってはかなりの出血を伴う怪我をする可能性もありますので、傷口を圧迫止血し続けることのできるエマージェンシーバンテージ(イスラエルバンテージ)があれば、応急救護所までの命をつなぐことが可能です。
 これらのアイテムを使うためには傷口のケアができないといけませんので、ピンセットやはさみ、とげ抜き、綿棒といったアイテムを収めたケアセットも入れておいた方が無難です。
 内服薬としては、自分が普段使っている薬のある方は最低3日分準備します。また、ビタミン剤や目薬などが入っていると体調の維持管理に使えます。
 ただ、ケアセット以外はいずれも使用期限が設定されていますので、1年に1度くらい点検し、使用期限が切れないように注意をしておきましょう。
 そして、せっかく用意した救急箱ですから使いこなせた方がいいですよね?
 日本赤十字社がやっている救急法講習の「救急法救急員養成講習」を受講すると怪我の手当の仕方を正しく身につけることができますから、時間を作って、是非受講してください。