復旧のための権限をどうするか?

 行政機関は基本的に災害時におきたさまざまなことについて、自分のところで管理監督しようとします。
 ですが、実際のところは時間が経過するごとに対応事項が加速度的に増えていきますので、そのうちに破綻して何も指示ができなくなり、結果的に地域の復旧が遅れて地域の崩壊も進むことになってしまいます。
 ではどうすればいいのか?
 復旧のための権限を、それに対応できるところにあらかじめ任せておくという方法は採れないでしょうか?

 例えば、災害後の道路開削の権限を地域の建設業者に任せてしまうのはどうでしょうか?
 災害時に優先して開削する道路を指定しておき、もし道路に何かあれば行政の判断をまたずに開削作業を行うようにしておくのです。
 当然その必要性や妥当性については検証しなくてはいけないでしょうが、災害が起きたときに、指示を仰げなくなった場合でも予めの指示で開削作業を進めることが可能であれば、復旧支援がその分早く進められることになります。
 また、避難所の開設についても行政からの指示ではなく、地元自治会や地元の自主防災組織に委ねておけば、いちいち連絡したり人員派遣をしなくてもすみます。
 平時には集中している権限を、災害時にはそれぞれに任せてしまうことで、素早い対応が可能になるのではないでしょうか。
 行政は災害時には全体的な情報収集に特化し、落ち着いてからは予算措置と復興、災害の検証に力を入れればよいので、そこまでの無理が生じないと考えます。
 災害時に頼りになる自衛隊はどこで何をしてもらうのかについて細かい指示が必要になるとは思いますが、できる限り対応作業を自動化することで、少ない人数でもパニックにならないようにしておくことが、これからの行政には必要なことではないのかなと考えます。
 さまざまな組織といろいろな形で協定を結んでいますが、その協定を元にして具体的にいつ何をしてもらうのかについても、自立的に動いてもらえるように約束をしておくことが重要かなと思います。

集まるべき場所を立ち上げる

 自主防災組織や自治会がしっかりしている地域は問題ないでしょうが、そうでない場合には、被災したときに何をどこへ言えばいいのかさっぱりわからない状態になります。
 そのため手近な消防団や行政に相談を持ちかけるわけですが、相談を受けた方も混乱中ですので、うまく対応してもらえずにみんながストレスがたまる状態になります。
 そこで、被災したらまずは「地域の災害対策本部」を立ち上げるようにしましょう。
 立ち上げる、といっても難しいことはありません。紙に対策本部と書いて壁か机に貼り、そこをとりあえずの窓口にしてしまうのです。
 困っている人たちはとりあえず言っていくところができますし、そこで情報を集約して行政に知らせるだけで行政の対応が早くなります。また、自衛隊やNPOといった支援組織もその本部にやり方の相談にきますので、そこでマッチングすればよいことになります。
 もちろん、災害ボランティアセンターが立ち上がったら、地域の災害対策本部で集めた困りごとをまとめて依頼して、人員を派遣してもらうことも可能です。
 いわば、必要な情報の交通整理をする場所を作ると言ったらいいでしょうか。
 災害時には、さまざまな情報が錯綜します。当然SNSなどでもさまざまな情報が飛び交うわけで、受援者も支援者もそれらに振り回されてしまうので、そこを拠点にして情報の交通整理をし、迅速な復旧に繋げていく手助けを行えばよいのです。
 最初は少し動く必要がありますが、軌道に乗ると、勝手にそれぞれの情報が集まってきます。
 ここで情報を一元化しておくことで、行政任せで手遅れになることなく、迅速に復旧・復興が可能になってくるのです。
 自主防災組織や自治会の防災訓練というと避難所運営や避難手順の確認がほとんどですが、このような機能も求められる場合が多いので、できれば併せて訓練しておくとよいと思います。

二つの避難

 災害時における「避難」という言葉には二つの定義があります。
 一つ目は、発生した災害から身を守るための「避難」。これは「一時避難所」「避難場所」「避難所」が該当します。
 ただ、万能なものは殆ど無いのが実情なので、対応している災害によって行き先を使い分ける必要があります。
 二つ目は生活環境を維持するための「避難」。これは災害後、何らかの事情により自宅が使えなくなっている場合に行う避難で、対応しているのは「避難所」のみです。
 「一時避難所」や「避難場所」は災害が収まるまでの仮の避難先ですので、生活環境を維持するための避難は「避難所」に移動する必要があるのですが、大規模災害だと避難所に収容しきれないために、しばらくの間は一時避難所や避難場所、避難所の区別無く避難者が鈴なりというになってしまいます。
 それでも状況が整理されてくると避難所への移動を順次行っていき、一時避難所や避難場所は本来の業務を再開していくことになります。
 この二つの避難がごっちゃになっているので、避難者が避難所へ移動する場合にいろいろな騒動が起きることになり、避難者も行政も施設管理者も振り回されてしまいます。
 命を守るための避難と、命を繋ぐための避難。
 何も起きていない通常期にこの避難の違いを理解して、スムーズに避難ができるようにしたいものです。

蘇生法を知ろう

心肺蘇生の練習をするために作られた”actor911”

 災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
 ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
 大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
 今回は、その方法について書いてみたいと思います。
 ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
 それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。

1.処置にかかるまでの準備

(1)まずは安全確保

 負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
 負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。

(2)負傷者の全身の状態を確認する

 どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。

(3)意識の確認をします

顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。

(4)支援者を呼ぶ

 周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。

(5)呼吸の確認

 胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
 一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
 意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。

2.処置の優先順位

放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。

3.処置の方法

(1)心臓マッサージ

両手で胸骨を圧迫する。少々力を入れて押さえても凹まないことが体験できる。

 胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
 1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。

(2)人工呼吸を行う

直接口同士を触れると感染症の心配があるので、ハンカチなどを間に挟んで人工呼吸を行う。

意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。

(3)AED

蓋を開くだけで起動するAEDの例。

心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。

①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること

  AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
 また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
 注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
 それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
 AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
 使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。

(4)止血処置

圧迫止血を包帯がしてくれる機能を持っているものもある。写真はイスラエルバンテージ、もしくはミッキーバンテージと呼ばれるもの。

 止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
 止血処置の方法は、次の3つがあります。

①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。

4.処置を止めてもよいとき

 基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。

(1)生き返ったとき

 当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。

(2)救急隊に引き継ぐとき

 救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。

(3)自分の安全が確保できない状態になったとき

 災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。

5.その他

 心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
 また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
 消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
 なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。

災害遺構を訪ねて6・津田川ダム記念碑

津田川ダムの全景。
灌漑用では無く、治水を行うためのダム。農業用で灌漑能力が無いダムは珍しい気がする。

 益田市津田町に河口がある津田川をさかのぼっていくと、谷が深くなって唐突にダムが姿を現します。
 これが津田川ダムで、人家ではなく農地を守るために作られた防災ダムです。

記念碑の全景
右手の白い構造物がダムの監視装置。手前の碑が今回紹介する記念碑で、周囲は草刈りをされている。

 ダムよりも少し上流にダムの監視装置があり、その横に、今回ご紹介する津田川ダム記念碑があります。
 このダムがなぜ農地を守る防災ダムだとわかるのかというと、この記念碑の背面に事細かに経緯が記されているからです。
 これによると、津田川はかつて豪雨のたびに水害を起こして下流域の農地を浸水流出していたとのこと。

 昭和34年の災害を契機にダムを造ろうという運動が始まったものの、実際の動きが出てくるのは昭和40年7月の集中豪雨後だったようです。
 その後、昭和42年から現地測量が始まり、昭和49年に竣工したのだとか。
 このダムを造るに当たって奔走した渡辺亀市さんという方も顕彰されていて、経緯と顕彰碑を兼ねた記念碑になっています。
 見える範囲から覗くと、ダムの前後から急激に谷が深くなり、そして川も急になっているように見受けられます。
 このダムが完成してから、下流域一帯が水害に遭ったという話は聞かないので、防災ダムとしてきちんと仕事をしていることがわかります。
 あまり目立たないダムですが、近くに行くことがあったら見てみてはいかがでしょうか?

避難カルテを作ってみよう

 益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
 避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
 今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。

1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書を用意してみました。これをプリントアウトしてください。

2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。

3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。

4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。

5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。

6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。

7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。

8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。

9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。

10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。

11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。


 以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
 また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
 是非一度作ってみてくださいね。

飲むおにぎりを食べてみた

 いつぞや、どこかでみたテレビで忙しいときに便利な食事特集というのをやっていて、その中に「飲むおにぎり」というのが紹介されていました。
 片手で飲めて手も汚れず、保存期間も長めという夢のような食事だというような触れ込みだったように記憶しているのですが、これは水不要の災害食として使えるのでは無いか、きっとそのうち地元のコンビニでも売ることになるのだろうなと思っていたのですが、その後特に見かけないまま忘れていました。
 ある日、ネットショッピングでたまたまこの「飲むおにぎり」を見つけてしまい、当時忙しかったこともあるので朝ご飯代わりに使えると便利だなと思って、購入ボタンをぽちりと押して買ってみました。

飲むおにぎりはよくドリンクなどであるラミネートパウチに入っている。

 届いたものは写真の二種類。味は「梅カツオ」と「梅昆布」で賞味期限は1年くらい残っています。
 6パックセット、送料込みで3,000円ちょっとでしたので、一つが500円くらいでしょうか。コンビニのおむすびの4個分の値段なので、備蓄品なら許容範囲と感じます。カロリーは280kcal、分量は通常のおにぎり1.5個分だそうです。

 さっそく蓋を開けて覗いてみます。おにぎりというよりも、海苔の佃煮という感じです。

 お皿に出してみました。あまり食欲をそそるような見た目ではありませんが、口から直接飲むものなので問題なしとします。
 さっそく飲んでみました。
 ・・・塩辛い。味が均等にされているせいかどこまで飲んでも同じ味。お米の芯が残ったような感じもなんとも言えず、途中で少し気持ち悪くなりました。ご飯は上手にたかなければということと、おにぎりの塩気の濃い部分薄い部分が食欲を増進させていたんだなぁと感じさせられました。
 半分ほど飲んだのですが、どうにも受け付けなくなってギブアップ。
 通りかかった当所の研究員達が興味を示したので、「梅昆布」を提供して飲んでみてもらいました。
 その結果。薄味好きのS研究員は「味が濃い」として一口で終了。濃い味好きのH研究員はぺろりと嘗めた後、お茶碗にご飯をつけて佃煮代わりに使っていました。最後のM研究員は、一口食べてちょっと考えてからおもむろにお水を飲んでいました。
何でこんなに塩辛いんだろうと言うことで、改めて成分表を見てみると、梅昆布の食塩含有量は3.37g。

写真はうめかつお。食塩相当量は3.47gで、梅昆布よりも食塩量が多い。

 厚生労働省が推奨する一日の摂取目安が7.0g~8.0gですから、それは塩辛いはずです。
 貴重な水なしで食べられるかと考えていたのですが、このまま飲んだらのどが渇いて仕方が無いという結論になりました。
 ただ、アルファ米白米に混ぜれば、おいしいご飯ができるかなとも思います。
 また、汗をかいた時や濃い味が好きな人なら、ひょっとしたらおいしく食べられるのかもしれません。当研究所の所員はみな薄味になれていることもあると思います。味の好みは人それぞれですので、よかったら一度飲んでみてください。

栓抜きの使い方

栓抜きにはいろいろな形がある。

 最近は殆ど見ることがなくなった栓抜きですが、缶切り同様、被災地に入ってくる支援物資の中には栓抜きが必要なものがくることがあります。
 先日、当研究所で久しぶりに瓶ビールを準備したら、研究員達がどうやって開けるのか栓抜きを見て首をひねっていましたので、今更感はありますが、今回は栓抜きの使い方についてご説明したいと思います。
 使える方はご存じだと思いますが、栓抜きを使うのに難しいことは何もありません。
 栓抜きの頭部分を王冠に乗せ、引っ張る部分を王冠の端にかけてテコの原理で上に引き上げれば、簡単に栓は外れます。

栓抜きの右側の部分が支点になる。左側下にある爪を王冠の横に引っかけてテコの原理で栓抜きを上に動かすと、王冠が曲がって取れる仕組み。


 注意点とすれば、瓶をしっかりと支えておかないと栓を抜いた瞬間に瓶がひっくり返って中身があたりにこぼれてしまうことくらい。
 さっきのビールは、S研究員が開けるときに瓶が横倒しになりそうになって慌てて周りが瓶を押さえてました。
 ところで、栓抜きと缶切り、おうちに置いてありますか? そして、正しく使うことができますか?
 どちらも最近ではほぼ出番のない道具ではありますが、被災時にはいろんな場面で出番が多いアイテムです。
 使わないかもしれませんが、災害用備蓄品の一つに加えておいてもよいのかなと思っています。
 そして、たまに練習しておくといいですね。

アウトドア用ガスバーナーの注意点

シングルバーナーは個人用鍋であるコッヘルに収まるように作られていることが多い。

 前回はカセットコンロについて触れてみましたが、今回はアウトドアで使うガスコンロ、ガスバーナーについてです。
 アウトドア用のガスバーナーはカセットボンベではなく、アウトドア用のガスカートリッジを使います。
 巷ではカセットボンベをCB缶、アウトドア用のガスカートリッジをOD缶と呼ぶそうなのでここではその表現を使わせていただきますが、OD缶はCB缶に比べると次のような違いがあります。

1.取り付け口が違う

OD缶はバーナーとねじで繋がっていることが殆ど。

 CB缶はマウントに取り付けて押しつければガスの供給が始まりますが、OD缶はガス圧が高いためか取り付け部分がネジ状になっていて、マウントはねじ込んで接続するようになっています。
 このおかげで缶とバーナーがしっかり固定され、缶をバーナーの支えに使うことが可能になっています。

2.内容量が多い

大きいタイプは470g。CB缶は250gなので、ほぼ倍入っている。

 アウトドアで使う都合上、一般的にはカセットボンベよりも内容量が多く重たいことが多いです。

3.CB缶よりも手に入りにくい

 カセットボンベはどこででも手に入りますが、ガスカートリッジは売っているところが限られています。サイズもいろいろあります。

4.寒冷地でも使える

 CB缶の寒冷地仕様よりもOD缶の寒冷地仕様の方が温度の低下には強いようです。OD缶には、缶を暖めるための専用ヒーターもあったりします。

5.値段が高い

OD缶はその目的上、コンパクトで軽量という機能が要求されることが多いです。
そのため、カセットコンロよりもかなり値段が高くなっています。

次に、OD缶を使ったガスバーナーを使うときの注意点は次の通りです。

1.なるべく純正カートリッジを使うこと

基本的には自社のガスカートリッジが推奨されています。接続部の形状はまったく同じなのですが、内部に一部違いがあるということです。
ただ、メーカーによっては汎用性がある取り付け部にして、ガスカートリッジはどこでも大丈夫というようなものもあるようですので、買うときには確認した方がよさそうです。

2.あまり重たいものは乗せない

 ガスバーナーは前提条件が一人または数名の料理を作るという目的ですので、安定性よりも持ち運びのしやすさが優先されています。
 そのため、バーナーの上に大きな鍋などをのせると重心が高くなって不安定となりひっくり返ってしまうことがよくあります。
 その場合にもガスの供給は止まらない場合が多いので、大火事になることが想定されます。

低い位置で使えるようにOD缶と離れて使えるようになっているバーナーもある。

3.手に入りにくい

CB缶のようにどこででも売っているわけではありません。メーカーによりますが純正品が手に入りにくいものもあります。

 ここで書いているOD缶のガスバーナーはシングルで持ち運びが簡易なものを指していますが、オートキャンプなどではこのOD缶が取り付けられるコンロ、ツーバーナータイプもあります。
 CB缶に比べると高くて重たいOD缶ですが、CB缶よりもガスの容量が多いので保管場所があまりとれない人には非常に向いていると思います。
 ただ、原則は屋外使用であることとあまり重量物が載せられないことを考慮して、自分の目的にあったものを準備しておいてくださいね。

カセットコンロの注意点

大出力が使える大型のカセットコンロ。大人数の鍋などを作るときに活躍する。

 災害時の準備用品としてよく書かれているカセットコンロ。
 アウトドア用品などでは非常にコンパクトに収納できるものも出ています。
 カセットボンベ自体も比較的割安で用意でき、簡単に取り扱えることから準備を推奨されているものですが、用意する際に気をつけておかないといけないことがあります。
 今回はその注意点についていくつか考えてみたいと思います。

1.カセットコンロってなんだ?

 カセットコンロは、読んで字のごとくカセットボンベを使う簡易型コンロのことで、イワタニの製品がかなり有名ですが、高いモノから安いものまでいろいろと出ています。
 アウトドアで使われるものはガスバーナーとも呼ばれますが、こちらは次回で取り上げたいと思います。

左がOD缶、右がCB缶。見た目から異なるが、両方ともガスボンベ。

2.カセットコンロを使うときの注意点

 カセットコンロは普通のガスコンロの構造がコンパクトになっているものです。
 そのため、簡単に使うことができるのですが、次の点に気をつけておく必要があります。
(1)基本的には純正品を使うこと

 カセットコンロのメーカーはいろいろとありますが、大抵の場合「純正のカセットボンベをお使いください」と書かれています。同じようにカセットボンベにも「○○専用」という記載がされていることが多いです。
 純正品でない場合、事故が起きたときに保証が受けられないということが大きいですが、他にもカセットボンベによっては火力が足りなかったり、逆に火力が強すぎたり、セットしたら微妙にガスが周囲に漏れるようなものもあるようです。
 カセットコンロとカセットボンベの関係についてはいろんなホームページでいろいろと書かれているところですが、純正品を使うということを基本にしておいてください。
(2)ゴトクの上に収まるように暖めるものを選ぶ
 カセットコンロはコンロの中にガスボンベを組み込む構造になっています。
 そのため、コンロのゴトクからはみ出すような鍋や鉄板を使うと、ガスボンベが異常に加熱して爆発する事態が生じてしまうことがあります。
 よく起きるカセットコンロの爆発は、大概の場合鍋や鉄板がガスボンベの上に達していてボンベが異常加熱して起きているものです。
 自分が使おうと思っている鍋や鉄板を確認し、ゴトクの中にきちんと収まるようなカセットコンロを選んでください。
(3)換気に気をつける
 カセットコンロは気軽に使えるものですが、ガスと酸素を燃やして二酸化炭素を形成していることに変わりはありません。
 利用するときには、意識して換気をするようにしてください。
(4)カセットコンロには寿命があることを意識しておく
 カセットコンロはパッキンや内部部品にゴムを使っていますので、長年使っていたり、使い方を誤っていたりすると、ゴムが腐食したり、劣化したり、ガス漏れなどが起こることもあります。
 利用前はカセットボンベが繋がる部分等のゴムの状態を確認し、劣化しているようならカセットコンロごと交換するようにしてください。

 普段から日常的に使っていれば、かなり便利だと感じるカセットコンロ。
 防災用品として眠らせておくのはもったいないので、意識して使うようにしたいですね。