蘇生法を知ろう

心肺蘇生の練習をするために作られた”actor911”

 災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
 ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
 大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
 今回は、その方法について書いてみたいと思います。
 ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
 それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。

1.処置にかかるまでの準備

(1)まずは安全確保

 負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
 負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。

(2)負傷者の全身の状態を確認する

 どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。

(3)意識の確認をします

顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。

(4)支援者を呼ぶ

 周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。

(5)呼吸の確認

 胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
 一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
 意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。

2.処置の優先順位

放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。

3.処置の方法

(1)心臓マッサージ

両手で胸骨を圧迫する。少々力を入れて押さえても凹まないことが体験できる。

 胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
 1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。

(2)人工呼吸を行う

直接口同士を触れると感染症の心配があるので、ハンカチなどを間に挟んで人工呼吸を行う。

意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。

(3)AED

蓋を開くだけで起動するAEDの例。

心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。

①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること

  AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
 また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
 注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
 それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
 AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
 使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。

(4)止血処置

圧迫止血を包帯がしてくれる機能を持っているものもある。写真はイスラエルバンテージ、もしくはミッキーバンテージと呼ばれるもの。

 止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
 止血処置の方法は、次の3つがあります。

①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。

4.処置を止めてもよいとき

 基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。

(1)生き返ったとき

 当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。

(2)救急隊に引き継ぐとき

 救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。

(3)自分の安全が確保できない状態になったとき

 災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。

5.その他

 心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
 また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
 消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
 なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。

避難カルテを作ってみよう

 益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
 避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
 今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。

1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書を用意してみました。これをプリントアウトしてください。

2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。

3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。

4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。

5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。

6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。

7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。

8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。

9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。

10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。

11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。


 以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
 また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
 是非一度作ってみてくださいね。

栓抜きの使い方

栓抜きにはいろいろな形がある。

 最近は殆ど見ることがなくなった栓抜きですが、缶切り同様、被災地に入ってくる支援物資の中には栓抜きが必要なものがくることがあります。
 先日、当研究所で久しぶりに瓶ビールを準備したら、研究員達がどうやって開けるのか栓抜きを見て首をひねっていましたので、今更感はありますが、今回は栓抜きの使い方についてご説明したいと思います。
 使える方はご存じだと思いますが、栓抜きを使うのに難しいことは何もありません。
 栓抜きの頭部分を王冠に乗せ、引っ張る部分を王冠の端にかけてテコの原理で上に引き上げれば、簡単に栓は外れます。

栓抜きの右側の部分が支点になる。左側下にある爪を王冠の横に引っかけてテコの原理で栓抜きを上に動かすと、王冠が曲がって取れる仕組み。


 注意点とすれば、瓶をしっかりと支えておかないと栓を抜いた瞬間に瓶がひっくり返って中身があたりにこぼれてしまうことくらい。
 さっきのビールは、S研究員が開けるときに瓶が横倒しになりそうになって慌てて周りが瓶を押さえてました。
 ところで、栓抜きと缶切り、おうちに置いてありますか? そして、正しく使うことができますか?
 どちらも最近ではほぼ出番のない道具ではありますが、被災時にはいろんな場面で出番が多いアイテムです。
 使わないかもしれませんが、災害用備蓄品の一つに加えておいてもよいのかなと思っています。
 そして、たまに練習しておくといいですね。

アウトドア用ガスバーナーの注意点

シングルバーナーは個人用鍋であるコッヘルに収まるように作られていることが多い。

 前回はカセットコンロについて触れてみましたが、今回はアウトドアで使うガスコンロ、ガスバーナーについてです。
 アウトドア用のガスバーナーはカセットボンベではなく、アウトドア用のガスカートリッジを使います。
 巷ではカセットボンベをCB缶、アウトドア用のガスカートリッジをOD缶と呼ぶそうなのでここではその表現を使わせていただきますが、OD缶はCB缶に比べると次のような違いがあります。

1.取り付け口が違う

OD缶はバーナーとねじで繋がっていることが殆ど。

 CB缶はマウントに取り付けて押しつければガスの供給が始まりますが、OD缶はガス圧が高いためか取り付け部分がネジ状になっていて、マウントはねじ込んで接続するようになっています。
 このおかげで缶とバーナーがしっかり固定され、缶をバーナーの支えに使うことが可能になっています。

2.内容量が多い

大きいタイプは470g。CB缶は250gなので、ほぼ倍入っている。

 アウトドアで使う都合上、一般的にはカセットボンベよりも内容量が多く重たいことが多いです。

3.CB缶よりも手に入りにくい

 カセットボンベはどこででも手に入りますが、ガスカートリッジは売っているところが限られています。サイズもいろいろあります。

4.寒冷地でも使える

 CB缶の寒冷地仕様よりもOD缶の寒冷地仕様の方が温度の低下には強いようです。OD缶には、缶を暖めるための専用ヒーターもあったりします。

5.値段が高い

OD缶はその目的上、コンパクトで軽量という機能が要求されることが多いです。
そのため、カセットコンロよりもかなり値段が高くなっています。

次に、OD缶を使ったガスバーナーを使うときの注意点は次の通りです。

1.なるべく純正カートリッジを使うこと

基本的には自社のガスカートリッジが推奨されています。接続部の形状はまったく同じなのですが、内部に一部違いがあるということです。
ただ、メーカーによっては汎用性がある取り付け部にして、ガスカートリッジはどこでも大丈夫というようなものもあるようですので、買うときには確認した方がよさそうです。

2.あまり重たいものは乗せない

 ガスバーナーは前提条件が一人または数名の料理を作るという目的ですので、安定性よりも持ち運びのしやすさが優先されています。
 そのため、バーナーの上に大きな鍋などをのせると重心が高くなって不安定となりひっくり返ってしまうことがよくあります。
 その場合にもガスの供給は止まらない場合が多いので、大火事になることが想定されます。

低い位置で使えるようにOD缶と離れて使えるようになっているバーナーもある。

3.手に入りにくい

CB缶のようにどこででも売っているわけではありません。メーカーによりますが純正品が手に入りにくいものもあります。

 ここで書いているOD缶のガスバーナーはシングルで持ち運びが簡易なものを指していますが、オートキャンプなどではこのOD缶が取り付けられるコンロ、ツーバーナータイプもあります。
 CB缶に比べると高くて重たいOD缶ですが、CB缶よりもガスの容量が多いので保管場所があまりとれない人には非常に向いていると思います。
 ただ、原則は屋外使用であることとあまり重量物が載せられないことを考慮して、自分の目的にあったものを準備しておいてくださいね。

カセットコンロの注意点

大出力が使える大型のカセットコンロ。大人数の鍋などを作るときに活躍する。

 災害時の準備用品としてよく書かれているカセットコンロ。
 アウトドア用品などでは非常にコンパクトに収納できるものも出ています。
 カセットボンベ自体も比較的割安で用意でき、簡単に取り扱えることから準備を推奨されているものですが、用意する際に気をつけておかないといけないことがあります。
 今回はその注意点についていくつか考えてみたいと思います。

1.カセットコンロってなんだ?

 カセットコンロは、読んで字のごとくカセットボンベを使う簡易型コンロのことで、イワタニの製品がかなり有名ですが、高いモノから安いものまでいろいろと出ています。
 アウトドアで使われるものはガスバーナーとも呼ばれますが、こちらは次回で取り上げたいと思います。

左がOD缶、右がCB缶。見た目から異なるが、両方ともガスボンベ。

2.カセットコンロを使うときの注意点

 カセットコンロは普通のガスコンロの構造がコンパクトになっているものです。
 そのため、簡単に使うことができるのですが、次の点に気をつけておく必要があります。
(1)基本的には純正品を使うこと

 カセットコンロのメーカーはいろいろとありますが、大抵の場合「純正のカセットボンベをお使いください」と書かれています。同じようにカセットボンベにも「○○専用」という記載がされていることが多いです。
 純正品でない場合、事故が起きたときに保証が受けられないということが大きいですが、他にもカセットボンベによっては火力が足りなかったり、逆に火力が強すぎたり、セットしたら微妙にガスが周囲に漏れるようなものもあるようです。
 カセットコンロとカセットボンベの関係についてはいろんなホームページでいろいろと書かれているところですが、純正品を使うということを基本にしておいてください。
(2)ゴトクの上に収まるように暖めるものを選ぶ
 カセットコンロはコンロの中にガスボンベを組み込む構造になっています。
 そのため、コンロのゴトクからはみ出すような鍋や鉄板を使うと、ガスボンベが異常に加熱して爆発する事態が生じてしまうことがあります。
 よく起きるカセットコンロの爆発は、大概の場合鍋や鉄板がガスボンベの上に達していてボンベが異常加熱して起きているものです。
 自分が使おうと思っている鍋や鉄板を確認し、ゴトクの中にきちんと収まるようなカセットコンロを選んでください。
(3)換気に気をつける
 カセットコンロは気軽に使えるものですが、ガスと酸素を燃やして二酸化炭素を形成していることに変わりはありません。
 利用するときには、意識して換気をするようにしてください。
(4)カセットコンロには寿命があることを意識しておく
 カセットコンロはパッキンや内部部品にゴムを使っていますので、長年使っていたり、使い方を誤っていたりすると、ゴムが腐食したり、劣化したり、ガス漏れなどが起こることもあります。
 利用前はカセットボンベが繋がる部分等のゴムの状態を確認し、劣化しているようならカセットコンロごと交換するようにしてください。

 普段から日常的に使っていれば、かなり便利だと感じるカセットコンロ。
 防災用品として眠らせておくのはもったいないので、意識して使うようにしたいですね。

非常時に頼りになるラジオ

 災害に関する情報は刻一刻と変化していくので、可能な限り最新の情報を得て行動するようにしたいものです。
 その際、情報を得る機材はどのようにしたらよいでしょうか?
 スマホ、ラジオ、テレビ、防災無線など、いろいろな手段が考えられますが、お勧めなのはラジオです。
 スマホやテレビでは、その画面を見ないと詳細な情報がわからないことがよくありますが、もともと音で情報を伝えるラジオは、耳があれば情報を手に入れることができるようになっているため、避難しながら、避難所を設営しながら、休憩しながらと、作業しながら最新の情報を手に入れることができるからです。
 最近ではスマホでもラジオの聴けるアプリが登場していますのでそちらでもいいのですが、例えば津波警報などで避難している最中は、次々に受信するエリアメールや緊急メールでまともにラジオが聴ける状態ではないと考えられます。
 個人的にラジオが好きということはあるのですが、バッテリーの持ちやチャンネルの自由度を考えると、重量がかさむにしてもラジオを一台は持っていた方がいいと思います。
 一時ほどではありませんが、やはり携帯ラジオの需要はあるようでさまざまな形のものが発売されています。また、発電機を搭載して電池が切れても一応使えるという防災ラジオも多数発売されています。
 ラジオを選ぶとき、案外と気にしないのですが入れ替えた電池でどれくらい聞けるのかということが実は重要になっていたりします。

発電機内蔵のラジオの発電機はあくまでも緊急用と考えた方が良い。予備電池は必ず用意しよう。

 安いラジオだと単三2本で30時間程度、良いものになると300時間以上聞くことができ、当然電池が長持ちする方が災害時には有利と言うことになります。
 また、使う電池ですが軽量な単四電池よりも大きな単三電池、それよりも大きな単二電池の方がそれぞれ電池は長持ちします。
 重量とコストを考えて、自分にあった機材を用意しておきたいものです。

【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

 2019年5月30日に益田市のすみれ保育園様が実施されました地震及び津波による避難所までの避難訓練に参加させていただきました。

避難所までの避難訓練では避難経路の中に崩れたり倒れたりするものがないか確認しておくことも必要になってくる。

 今回の訓練では、地震により津波警報が発令されたという想定で保育園から近隣の避難所である益田東中学校まで実際に避難するということで、当研究所はその避難訓練の内容を見させていただき、後日具体的なアドバイスをさせていただく立場での参加です。
 訓練は午前10時に始まり、避難完了が10時25分。地震で動けない時間が3分程度ありましたから、幼児の足で1km弱の道のりを20分強で移動完了したのはかなり素早い避難だったのではないかと思います。
 今回の訓練に当たっては、ガラスでできた階段下の防煙板が落ちて散乱している想定を当日サプライズで作成させてもらい、床に卵パックやペットボトルの蓋を撒いてブルーシートで覆ってみました。

ブルーシートの上側にはガラス製の防煙板がある。もしも床に何かが散らかっていた場合には、お昼寝用の布団を上にかぶせて移動するようにとアドバイスを行った。

 ですが、廊下を覆うブルーシートにこそ躊躇したものの、子ども達は床のでこぼこやガラスを踏むようながしゃがしゃといった音はまったく気にならずに素早く移動をしていました。ちなみに避難訓練完了後に大きい子達に素足で踏んでみてもらいましたが、痛がる子よりも気持ちいいという子の方が多く、子ども達は足裏マッサージが必要な状況なのかと思わず笑ってしまいました。

道幅が狭く、軽自動車とすれ違うのがやっとというような場所もある。避難計画を立てる場合には、このような狭い道路や交差点で車をどうやり過ごすのかが鍵となる。

 今回、快晴で気温が高かったこともありどうなるかとも思いましたが、子ども達は避難所である益田東中学校までは一生懸命歩き、到着後にほっとした顔でそれぞれに持参した飲み物を飲んでいました。避難の際に水分を持って出られるというのは非常に重要な部分ですので、今後も継続してほしいなと思います。

園児と先生達が避難完了したところ。パニックも起きず、統制が取れた状態で避難が完了している。
毎月の避難訓練が子ども達にもきちんと浸透していることがわかる。

 毎回さまざまなことに気づかせていただけるこの避難訓練の見学、後日気づいた点やアドバイスを報告書で提出させていただいていますが、すみれ保育園様ではそのたびに避難訓練の内容をアップデートされ、正直なところ毎回驚かされています。

アドバイスによる変化の一例。避難所に避難する場合に保育園に掲げられる看板。道路からでも見えるように作られている。保護者へ避難先を知らせる表示をするようにアドバイスしたら、これが作られた。大きな紙に書いて窓に見えるように貼ればと思っていたが、こちらの方が時間が短縮できることを教えてもらった。

 この保育園では保育士様向けの研修会もさせていただいているのですが、その際にこちらの説明が足りない部分がいろいろとあることも、こういう訓練に参加させていたくおかげで気づかせていただきました。
 何事も無いのが一番ですが、万が一に備えて訓練をきちんとしておくことはとても大切です。そしてその訓練を第三者の目でチェックし、訓練参加者にフィードバックしていくことが大切なのかなと感じています。
 避難訓練の参加について許可いただきましたすみれ保育園の園長先生、理事長先生始め先生方、そして園児の皆様にお礼申し上げます。

【活動報告】「防災ポーチ作り講座」に参加しました

 2019年6月1日に益田市の吉田公民館様主催による「防災ポーチ作り講座」が開催され、当研究所からは所長とS研究員が受講者として参加させていただきました。
 今回の講師である防災士の黒澤様のお話では「災害を想像すること」が非常に大切であり、各地で起きる災害がもし自分の住んでいる地域で発生したらどのようにするかを、先日各世帯に配布されたハザードマップを確認しながら想像してみるとよいというお話がありました。
 そして、防災リュックと防災ポーチの違いについて「防災リュックは備えておくもの」であり「防災ポーチは日常使いでき、かつ被災時に使える最低限のものを持ち歩くためのもの」との説明がありました。

幅20.5cm、高さ15.5cmの百円均一のポーチ。ものはたくさん収まるが、重くすると持たなくなるという問題をどう解決するかが鍵。講師の方は、普通のポーチで自分の防災ポーチを作り上げていた。

 それから基本的な防災ポーチということで、今回は「絆創膏5枚」「個別包装されたマスク1枚」「ポリ袋2枚」「ウエットティッシュ1組」「ホイッスル&小型ライト1組」「飴2個」「マジックペン1本」「付箋紙10枚」をポーチに入れてみました。

今回作成した防災ポーチの中身を並べてみた。コンパクトだが、基本的に必要なものは揃っている。

 各シーズンによってこれに汗ふきシートやカイロ、保湿クリームなどが加わったり外れたりと、普段使いすることで自然とアイテムが更新できる仕組みになっていることを伺うことができました。また、手ぬぐいを一枚入れているとさまざまなことに使えて便利というような話もありました。
 その後、このポーチに「自分に必要なものを足してみよう」ということでグループ討議が行われ、エコバッグやソーイングセット、歯磨き用シートやガム、カード型拡大鏡、ポケットティッシュ、輪ゴム、新聞紙など、その人にとって必要だと思われるアイテムがいろいろと出てきました。
 ただ、あれこれと欲張るとポーチに収まらなくなって結局持ち運びしなくなるという問題が発生するため、ポーチに収めるものの最低ラインをどのように設定すれば良いのかということで参加者がいろいろと首をひねっていました。
 講師の方からは、これに家族やペットの写真、保険証のコピー、スマートフォンの充電器、衛生用品などが良く追加されるアイテムだという話がありました。
 他にも「ポリ袋は何枚程度あればよいのか?」や「刃物を加えるのはどうだろうか?」などといった質問も出され、非常に和やかな空気で講義時間を過ごすことができました。

参加者の発言を黒板にまとめたもの。予想もしなかったものがたくさんでて、確かに必要だと思わせるものがいろいろと出ている。

 講座の最後にはこの講座からどのようなことを考えたかという主催者からの問いがあり、「習ったことを持ち帰って周囲の人に伝えていく」「持ち歩くことが大切」「被災しても年数が経つと忘れてしまうのでこういう機会にそれが思い出せて良かった」などという意見や「避難にはスニーカーが必要で、ベッドの下にはいつも置いてある」「避難して一番困るのはトイレットペーパーの在庫」というようなお話もありました。
 いずれにしても、十人いれば十通りのセットができるというこの防災ポーチ。
 自分なら何をセットするかを考えて作ってみてはいかがでしょうか。
 最後になりましたが、講師の黒澤様、そして主催された吉田公民館の皆様にお礼申し上げます。

会場には市販の避難セットも展示されていた。文具メーカーのコクヨが出している防災バッグで、いろいろなものが収められている。ただ、普段持ち歩くには笠があるかも。

家族の集合方法を確認しておこう

 災害というのはいつ何が起きるかわかりませんので、それに対する備えはしておかなくてはなりません。
 今回は家族がバラバラなときに被災した場合どうするかについて考えてみたいと思います。
 考えてみれば、いつも家族が一緒にいるわけではありません。避難訓練の時はみんな一緒でも、通常は仕事や学校、買い物やお出かけなどでそれぞれがバラバラな行動をとっていることが非常に多いのではないでしょうか。
 そんなときに災害が起きたら、あなたはどんな風に家族と合流しますか?
 まず、一番に自分が生存していることを家族に知っておいてもらわないといけません。
 以前に少し触れましたが、携帯電話や公衆電話などの通信手段がある場合には災害時伝言ダイヤルの171番に自分の生存報告とどこへ避難するかを吹き込んでおくようにします。
 また、音声回線がうまく繋がらない場合には、web171や携帯電話のキャリアが提供する災害時伝言板にメモを残すようにします。いずれにしても、鍵となる番号をあらかじめ決めておかないとメモやメッセージがうまく家族で共有できないことになりますのであらかじめ決めておいてください。また、LINE等のSNSも有効ではありますが、その場合には不急なメッセージのやりとりは事態が落ち着いてからにしてください。
 次に連絡がつかなかったり、通信手段がない、もしくは失った場合に備えて、自宅のどこかに生存報告とどこに避難しているという貼り紙を貼るようにします。
 空き巣などの不埒ものに備えて、玄関などの見える場所ではなく、家族でないとわからないような場所を決めておきましょう。
 最後は、連絡がつかない、書き置きもできないような状況が起きた場合に備えて、集合場所と時間を決め、無事な場合にはそこにその時間こら一時間待つというルールを作ります。
 こうすれば、通信手段を失い、家が跡形もなくなっていたとしても、その時間に集合場所にいけば家族がいるかもしれないという希望を作り出すことができます。
 約束した時間以外は好きなように動けるので、例えば 避難所巡りをしたり、病院巡りをしたりといった行動を気兼ねなくすることもできます。
 いくら手段があっても困るものではありませんから、どのようにするのかを家族しっかりと話し合って、災害にあったときでも素早く会えるようにしておけるとよいですね。

離れて住む家族のために「逃げなきゃコール」を活用しよう

 住民避難は各自治体ともに悩ましい問題となっています。なかなか全戸に声をかけて回れるだけの人手がありませんし、声をかけたからと言ってスムーズに避難してもらえるというわけでもないからです。
 ただ、さまざまな災害で避難を判断した理由の上位には、毎回「家族・近所の人の声かけ」が入っており、知っている人による「避難しよう」という声かけが判断に対する重要な要素を占めていることがわかっています。
 そこで、このたび国土交通省が中心となって「逃げなきゃコール」を登録しようというキャンペーンを実施することになりました。
 これは、「NHKニュース・防災」 「Yahoo!防災」 「au登録エリア災害・避難情報メール」で可能になっている地域指定を利用し、離れた場所に住んでいる家族の地域を指定しておくことで、いざ避難情報が発令されたときに家族から避難を呼びかけてもらおうという取り組みで、家族間でお互いを気にかけることにより、早めの声かけと避難を促そうというものです。
また、「避難して!」と言われて避難したら「避難したよ」と返事をするでしょうから、被災後の混乱の最中にわざわざ生存確認をしなくても済むことになり、関係する全ての人が助かります。
もし離れて住む家族がおられるなら、お好みの上記の3つのアプリをスマートフォンに入れておいて、家族同士でいざというときに備えておくといいですね。