災害対策の中で大きな問題になるのが水です。
そのうち、生活用水については量も多く必要で飲料水よりも優先順位が低くなるため、なかなか確保が難しいのではないかと思います。
ただ、生活用水は飲料水ほどの清潔さは求められませんから、あらかじめ準備がしてあれば確保は非常にしやすくなると思いますので、水の確保という意識を持つとよいのではないでしょうか。
例えば、排水に影響で他者に影響がなければ、風呂おけはおそらく家の中で最大の貯水場になりますので、災害が起きる前にそこに水をためておくのは一つの手です。
庭などに井戸があるなら、それらを定期的に使えるかどうか確認しておくと、いざというときに非常に頼もしい存在になります。
電気が来ているのであれば、除湿器の水やエアコンの排水なども使えるかもしれません。また、雨水タンクや太陽熱温水器なども貯水装置としては優秀です。
最近では配水管の中に貯水できる空間を確保したものもあるようですので、ちょっと意識するだけで水の確保はある程度できると思います。
普段からどのあたりに水があってどうやって処理しているのかを意識するだけで、ある程度の水の確保は可能です。
全てを準備するのは大変かもしれませんが、できる範囲での生活用水の確保の方法を考えてやってみてください。
カテゴリー: 行動
弱者ほど厳しい避難所生活
災害の避難情報では「レベル3・高齢者等避難」と「レベル4・避難指示」に別れています。
このうち、レベル3の高齢者等の「等」には障がい者や乳幼児、妊婦といった生活に対してさまざまな配慮のいる人達が含まれていて、そういった人達は元気な人よりも早く避難を促されています。
その理由はいろいろとあるのですが、一番大きな理由は、元気な人と同時に避難を開始したら、生活に配慮のいる人達は元気な人に避難する速度が負けてしまうからです。
生活に配慮のいる人いない人の区別は、避難所にはありません。考え方としては、避難者は平等に避難者としての取り扱いがされてしまいます。
そのため、生活に配慮のいる人達は元気な人と同時に行動を開始すると、どうしても速度で負けてしまって、避難しても避難所等に収容してもらえないという事態が発生します。また、元気な人に交じって避難するのが難しい場合もありますのから、せっかく避難したにもかかわらず、結局自宅に戻ってしまう例も起きています。
これはまずいということで、現在は配慮のいる人達は最初から福祉避難所に避難できるように法改正されているのですが、普段から施設を利用している人達はともかく、乳幼児や妊産婦を最初から受け入れてくれる場所は、保育園や病院、助産院などになり、福祉避難所としてはあまり聞きません。
また、元気な人でもアレルギーを持っている人がいますが、避難所で避難者に支給されるさまざまな支援物資はアレルギーの配慮はありませんので、自分でものを見て判断していくしか手がありません。
これも避難者として平等に扱われることから発生する問題です。
一般的に生活になんらかの配慮がいる人達は避難所では隅に押しやられ、その上生活再建することも時間がかかってしまうために最後まで避難所にいる羽目になることが多いです。
あなたがもし、生活になんらかの配慮が必要な人だとしたら、避難所に避難するとひどい目に遭うことは目に見えていますので、避難所以外で自分が安心して過ごすことのできる避難先を用意しておくことをお勧めします。
生活弱者ほど厳しい生活になってしまうのが避難所です。
避難しなくても済むような場所に住んでいることが一番の理想ですが、さまざまな事情でそれが難しい場合には、最低1カ所、できれば複数箇所、自分の安心できる避難先を見つけておいてください。
公衆電話を確認しておこう
とある携帯通信会社の回線が長時間ダウンしてしまっています。現在では概ね復旧したようですが、未だに繋がらないところもあるようで、該当するユーザーさんはかなり大変だと思います。
普段何気なく使っている携帯電話ですが、データ通信も含めた通信環境が全てダウンしてしまうと、思った以上に困ってしまうことが分かった方も多いのではないでしょうか。
以前は家庭に普通に置かれていた固定電話も、そもそも引いていない家が結構ありますし、家族割りなどもありますから、家族全部が同じ携帯通信会社という方も多いでしょう。危機管理上は固定電話はあった方がいいと思っていますし、家族でも事情がない限りは携帯通信会社は別である方がいいとは思います。
とはいえ、それは普段の生活とを天秤にかけての選択肢になりますので、普段からかかる経費をなるべく安くしたいと考えると、現在の状態になってしまうのでしょう。
ただ、今回のようなケースだと、家から緊急時に電話をする手段がなくなってしまっているわけで、何らかの代替え手段を考えておかないといけません。
そこでお尋ねしますが、あなたは自分の近くにある公衆電話の位置を2台以上思い出すことができますか。
携帯電話が使えないときには、公衆電話を使うしかありません。
一時期公衆電話不要論なども出ましたが、現時点ではまだ数百メートルに一台程度は残っていますので、いざというときに備えて場所を把握しておきましょう。
また、その公衆電話で使える支払い方法もきちんと確認しておくことです。
公衆電話は、基本的には10円玉は必ず使えるようになっているはずですので、公衆電話の位置の把握と同時にお財布には数十円が常にあるようにしてください。
それと、当たり前のことですが、公衆電話のかけ方をきちんとマスターしておいてください。
公衆電話も止まっているかもしれませんが、それでも携帯電話よりも使えなくなる確率は低いと思いますので、散歩のついでに確認しておいてくださいね。
小銭を少しだけ持つ
災害後にはさまざまなところにいつもとは異なる問題が発生します。
よく起きるのが、支払いの問題。
最近ではスマホ決済やカード決済などで普段は支払いが簡単にできてしまうのであまり意識されませんが、いざ災害が起きると、被災地域の電源や通信が失われてしまうことも多いです。
そうなると、買い物をしようと思っても手元に現金がないと何一つ手に入れることができなくなります。
コンビニによっては対策をしているところもあるようですが、多くは電気や通信が止まってしまったら代替手段は人力ということになっているようです。
そして、高性能なレジは電気や通信環境がなければただの箱なので、人力計算時にはまったく役に立ちません。
おつりもレジからだせませんので、できるだけ細かく、できればちょうどの支払いが要求されてしまいます。
よくある「念のために1万円しまっておいた」というのは、災害時には自分の助けになってくれないこともあるということを知っておいてください。
では、いくらくらい持っていれば良いのかというと、あまり高額になると非常用持ち出し袋などが盗まれてしまうかもしれませんし重たいですから、1~2千円程度をくずして持っておくといいのではないでしょうか。
もちろんある程度は持っている方が安心なので、あとはその人のお財布事情に合わせてと言うことになりますが、そんなにびっくりするほど持っていてもしかたがありません。
あくまでも急場しのぎとして、常に小銭を持ち歩く習慣をつけておきましょう。
ただ寝るだけでも立派な避難練習
災害時、特に雨や台風の場合には、大抵の場合一晩を避難先で過ごすことになります。ホテルや親戚宅などならとりあえずの寝具はあると思いますが、避難所に行くとそういうわけに行かない場合があります。
事前に避難先に準備しておくか、早めの避難で一緒に寝具を持ち込まない限りは、寝るときには布団が無い状態です。
そして、基本的に体育館の備品は一時避難では使わせてはもらえませんので、寝るための方法を考えなければいけません。
最近ではコッドや段ボールベッドなども準備されるようにはなってきましたが、それも基本的に高齢者が優先で数が足りているわけではありません。
つまり、寝るための道具も自分で準備しておく必要があるのです。
テント泊に馴れている人なら寝袋やその下に敷くマットなどは持っていると思いますのでそれなりに快適な就寝ができると思いますが、そうでない場合にはどうするか。
そのためには、家で布団を使わずに快適に寝るにはどうしたらいいかを練習しておくといいと思います。
やってみると、意外なものが役に立ったり、使えるとSNSで言われていたようなものが案外役に立たなかったりと、さまざまな体験ができます。
その中で、携帯性に優れていて自分がそれなりにしっかり寝られるような道具が見つかっていくと思います。
衣食住は大切ですが、それ以上に必要なものの一つが睡眠です。
可能な限り眠りの質を落とさなくてもすむように、しっかりと練習をして自分に向いているアイテムを見つけるようにしてください。
避難時に持って行くもの
避難には大きく分けると自宅避難と自宅以外のどこかへ避難する立退き避難があります。
自宅避難では、自宅が災害にあう危険性の無い人と、何らかの事情で立退き避難ができない人に別れますが、どちらにしても被災後には数日は単独で生活できるだけの品を準備しておく必要があります。
自宅以外のどこかへ避難する場合も、持って行ける範囲にはなりますが、一日から二日支援なしで凌げるだけの品は用意しておいた方が安心です。
避難してから支援物資が届き出すまでの間をつなぐものとして非常用持ち出し袋を持って避難することが必要なのですが、内閣府や日本赤十字社などが出している非常用持ち出し袋のリストを見ると、全部揃えると持ち運びできない状態になってしまうことも考えられるくらいたくさんのアイテムが必要だとされています。
また、市販品の非常用持ち出し袋を見られた方は、そのアイテムの量にぎょっとされたのではないかと思います。
これらの非常用持ち出し袋は、過去に被災した経験者の聞き取り調査で「なくて困ったもの」や「あったほうがよかったもの」などが書かれていますが、よく内容を見ると、ある場所では重要でもある場所ではそこまででもないといった品もそれなりにあったりします。
とはいえ、いつどこで役に立つか分からないことを考えると、なかなか「それはいらない」というのも勇気がいるものです。
そんなときは、割り切って自分がそれがないと生活できない品に絞ってみるのも手です。
例えば、高齢者の方だと入れ歯や補聴器、老眼鏡、持病の薬など、他の人のものが借りられないものは必須ですし、赤ちゃんならミルクやおむつは絶対に必要です。
支援物資の届く順番は、より多くの人が必要としている緊急性のあるものが優先されますので、必ず自分が使えるものが届くとは限りません。
個人的な相性で使えたり使えなかったりするものもこの中に入ります。例えば生理用品などは合わないものだとかぶれや湿疹などが出るようですので、自分に合ったものを準備しておく必要があるでしょう。
次に、水とトイレ。のどの渇きと排泄要求は止めることがかなり難しいです。
水道が使えれば大丈夫なのですが、被災すると停電が起き、そうすると給水がストップしてしまう場合も多いです。
そうなると、飲料水、生活用水、トイレの水は自前で準備しないといけませんが、特にトイレの水は一回流すごとに最低7リットル程度は必要になりますので、水の確保ができない場合には、流しきれずに汚水が溜まり、トイレが大惨事になることが予測できると思います。
少なくとも、飲み水と携帯トイレは準備しておいて、飲み水の確保とトイレを汚物の保管場所にしないようにしましょう。
あとは着替えや歯磨きなどの衛生用品、非常食、そして暇つぶしの道具くらいがあれば、最低限必要な装備にはなります。
非常用持ち出し袋はしっかりと品物を準備した方がいいですが、持っていくのには限界がありますから、迷ったときには0からの足し算で準備するようにしてください。
最後に、一つだけ注意してほしいのは、お酒は持っていかないこと。
不安な環境での飲酒は身体にも精神的にも悪い影響が出ます。
お酒は避難が終わってからゆっくり楽しく飲むことにして、避難所ではお水やお茶で過ごすようにしてください。
【活動報告】益田市の財政を学ぶ会様で防災研修会をしました。
2022年6月25日に益田市の市民学習センターで開催された益田市の財政を学ぶ会様にご依頼いただき、防災の研修会をさせていただきました。
今回は普段と違い、法律のお話や益田市で進められている自主防災組織と、国の内閣府が進めている地区防災計画との違い、個人の避難の考え方について1時間と少しの間お話をしました。
過去には行政が全てを担うような印象がある時代もありましたが、現在行政が行う公助は、地方公務員の縮減につぐ縮減で住民と直接接触する市町村の対応がかなり困難になってきています。
そのため、公助だけに頼るのではなく、自分のことを自分でする自助、そして近所や避難者同士で助け合う共助が現在求められています。
自主防災組織も地区防災計画もその中で設定や運営が求められているものであり、地域コミュニティが健在なら自主防災組織、そうでないなら地区防災計画で自分や周りの人の命を守っていく必要があると思っています。
この会でもさまざまなご意見をいただき、こちらもそういう見方があるのかというよい勉強をさせていただきました。
今回お声がけいただきました主催者様をはじめ、防災研修に参加して下さった皆様に感謝いたします。
【終了しました】初めての防災キャンプを開催します【日程変更有】
2022年7月23日から24日にかけて、益田市の北仙道公民館で「はじめての防災キャンプ」を開催することになりました。
避難所に来てから、開設、食事やトイレ、洗濯やお片付けなどを、途中遊びながら実際に体験してみてもらいます。
「はじめての防災キャンプ」とありますとおり、当研究所も今回初めて実施する企画、どうなるかは参加者とスタッフの皆様によります。
夏休み、子どもさんの一つの体験として、興味があればご参加下さい。
なお、定員になり次第締め切らせていただきますので、それにつきましてはご了承下さい。
また、詳細については、問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。
(2022年7月15日追記)新型コロナウイルス感染症蔓延のため、日程が変更になりました。新しい日程は8月27日~28日になりますのでご注意ください。
魔法瓶は必ず持っていこう
小さい子ども、特に乳児のいるご家庭では、非常用持ち出し袋には必ず魔法瓶を入れておき、災害が起きて避難するときには、できればその魔法瓶にお湯を詰めて避難して下さい。
ご存じとは思いますが、ミルクやお尻拭きの温め、湯たんぽに使うお湯など、お湯があるだけで乳児の快適さはかなり違ってきます。
普段母乳が出る人でも、避難による緊張や不安で充分に母乳が出ない場合もありますので、乳児のいるご家庭では母乳の子でも飲めるミルクを調べておいた方がいいです。
仮に発熱剤やガスコンロを持っていたとしても、お湯の準備は必要です。
避難する状況はさまざまですが、常にお湯が手に入る環境にいるとは限りません。
火気厳禁の避難所もありますし、発熱剤が使わせてもらえない場合もあります。
お湯は手に入るときにしっかりと手に入れておくことが、乳児がいるときの避難の鉄則になります。
また、お湯があるといろいろと使えて安心ですので、可能であるなら魔法瓶にお湯を入れることを忘れずに準備するようにしてください。
被災経験を伝承する
日本に住んでいると、殆どの人は人生で1回くらいは大きな災害に出くわすものですが、その災害の経験がうまく伝承されていないせいで、次に起こった大きな災害では同じような悲劇が繰り返されています。
長生きしている人でも、その寿命はせいぜい100年程度。
例えば、活断層の定義である「数十万年以内に動いた場所」から考えると、まばたきしているくらいの期間でしかありません。
年齢を重ねるにつれて、自分の経験から推し量るようになるのが人間ですが、過去に何も無かったからといって、これからも何も起きないという保障はどこにもないのです。
ただ、過去に起きたことで何が起こり、結果としてどうなったのかを伝えていくことで、未来で起こりうるさまざまな被害や悲劇を小さくすることは可能です。
技術が進み、さまざまな災害対策が進んだとしても、最終的に人は自然には勝てませんから、自分や周囲の人の命を守るためには過去の経験をきちんと伝え、きちんと承継することが大切なのです。
一代くらいならこれもできますが、二代、三代となると伝わらなくなっていきます。
そのため、昔話や伝説にたとえて、話を聞いてくれる年齢のうちにしっかりと教え込むようになっていたのです。
あなたが体験した災害について、きちんと子や孫、周囲の若い人達に語り継いでいますか。そして、若い人達は年寄りに体験した災害の話を聞いていますか。
高度成長期に年寄りの話を馬鹿にする風潮があったせいで、昔の年寄りから今の年寄りへの伝承は途切れていることが殆どです。
でも、今の年寄りが経験したことは、若い人達に語り継ぐことができるはずです。
過去の災害体験は未来に向けて伝える義務があります。
どうかしっかりと若い人達に伝えてほしいと思います。そして、若い人達はその伝承を馬鹿にせずにしっかりと聞いて、自分の体験として受取り、次の世代に伝えていってほしいと思います。