被災経験を伝承する

 日本に住んでいると、殆どの人は人生で1回くらいは大きな災害に出くわすものですが、その災害の経験がうまく伝承されていないせいで、次に起こった大きな災害では同じような悲劇が繰り返されています。
 長生きしている人でも、その寿命はせいぜい100年程度。
 例えば、活断層の定義である「数十万年以内に動いた場所」から考えると、まばたきしているくらいの期間でしかありません。
 年齢を重ねるにつれて、自分の経験から推し量るようになるのが人間ですが、過去に何も無かったからといって、これからも何も起きないという保障はどこにもないのです。
 ただ、過去に起きたことで何が起こり、結果としてどうなったのかを伝えていくことで、未来で起こりうるさまざまな被害や悲劇を小さくすることは可能です。
 技術が進み、さまざまな災害対策が進んだとしても、最終的に人は自然には勝てませんから、自分や周囲の人の命を守るためには過去の経験をきちんと伝え、きちんと承継することが大切なのです。
 一代くらいならこれもできますが、二代、三代となると伝わらなくなっていきます。
 そのため、昔話や伝説にたとえて、話を聞いてくれる年齢のうちにしっかりと教え込むようになっていたのです。
 あなたが体験した災害について、きちんと子や孫、周囲の若い人達に語り継いでいますか。そして、若い人達は年寄りに体験した災害の話を聞いていますか。
 高度成長期に年寄りの話を馬鹿にする風潮があったせいで、昔の年寄りから今の年寄りへの伝承は途切れていることが殆どです。
 でも、今の年寄りが経験したことは、若い人達に語り継ぐことができるはずです。
 過去の災害体験は未来に向けて伝える義務があります。
 どうかしっかりと若い人達に伝えてほしいと思います。そして、若い人達はその伝承を馬鹿にせずにしっかりと聞いて、自分の体験として受取り、次の世代に伝えていってほしいと思います。