逃げる? 逃げない?

 地震はともかく、予兆がある台風や水害の場合には、高齢者避難や避難指示が致命的な被害が発生する前に予め発表されると思います。
 行政としては、○○地区という言い方しかできないので、「○○地区に避難指示を発表」といった表示になるのですが、では、○○地区の人は全員がその場から避難しなくてはいけないのかというと、必ずしもそうではありません。
 同じ地区内でも、急いで逃げなければ大惨事になる場所もあれば、避難せずに自宅待機している状態で充分だという場所もあるでしょう。
 ただ、その判断は行政がするのでは無く、避難を判断する各個人が個別にやらなければならない作業です。
 お手元に行政機関が作成したハザードマップや防災計画書を見ていただくとわかりますが、指定避難所には、とてもその避難所に収容しきれないだろうという人数が割り振られていることがあります。
 これは、該当する地区の人口を直接当てはめてしまっているだけで、実際に収容できるかどうかは問題にしていません。
 なので、実際には災害が発生しそうだからといって避難したら避難所に入れなかったといった出来事が発生することもよくあります。また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまったという事例も、自分が避難すべき対象者かどうかをきちんと確認していなかったことが原因だといえます。
 お手元のハザードマップと、今自分のいる場所をしっかりと確認してもらい、該当する災害で避難すべき場所にいるのかどうかをしっかりと精査し、必要に応じて避難するようにしてください。

子どもの避難と保護者のお迎え

 学校やスポーツクラブ、学童クラブなどにいた子ども達が災害にあったら、子ども達をどのようにして保護者に引き渡すのかをルール化して保護者と情報共有ができているでしょうか。
 災害で避難した子ども達は、恐らくみんな不安になっていると思います。
 保護者の顔を見るとほっとするのではないかというのは、なんとなくイメージができるのではないでしょうか。
 ただ、知りうる限りの施設では、避難や避難先は内部で共有されていますが、保護者や外部には公表されていないのか、いざというときにどこに避難していて、迎えにいけばいいのかを把握してる保護者はすくないような気がします。
 これは少しだけ困った話で、子どもを引き取る保護者側はこどもがどこにいるのかさっぱりわからずに被災地内を駆け回ることになってしまいます。
 学校もそうなのですが、できる限り保護者も避難訓練に参加してどのような訓練をしているのかをきちんと確認しておいた方がいいと思います。
 そうすれば、どこに避難する可能性があるのかがわかりますので、こどもの居場所も予測しやすくなるはずです。
 被災後は、できるだけ早めに子ども達を保護者に引き渡さなければならない。
 そのことを念頭において、さまざまな会議や文書で保護者には知らせておいて欲しいなと思います。

夜間の予報を気にしておこう

雨雲レーダーのエコーを見てみると、あちこちで線上降水帯ができていて、結構な雨が降っているようです。
大きな被害が出ないことを祈りますが、とりあえず人的被害が出る前に避難行動をとるようにしてください。
ところで、避難するときに一番怖いのは何だと思いますか。
さまざまなご意見があると思いますが、筆者自身は闇だと思っています。
日没から日の出前の間、いわゆる夜の間、大雨が降るときには暗闇と雨で非常に視界が悪くて周囲の様子がわかりません。
車を運転する人であれば、大雨の中での運転では、ライトをつけていても危険を感じたことがあるのではないでしょうか。
そんな状態でいざ避難といっても、避難指示が出てから逃げ出したのでは事故に遭いかねません。
避難所が遠かったり、自分の目や足に不安のある人は、気象庁などの予報で危険な期間が夜にかかっているのであれば、明るいうちに安全な避難所へ避難してしまいましょう。
そうすれば、いざというときにも慌てずに過ごすことができます。
そして、夜が明けてから家に帰れば、周囲もはっきりと見えて安全です。
さまざまな事情はあると思いますが、早めの行動で損をすることはありません。避難所を設置する方は大変かもしれませんが、自主避難先をきちんと決めてそこへ来てもらうようすれば、手間もさほどかかりません。
災害が起きてから救助に向かうよりもよほど建設的だと考えています。
ともあれ、大雨や台風など、避難が必要になるかもしれない時間を確認して、夜間に慌てないようにしておきたいですね。

気象庁レーダーナウキャスト(気象庁のウェブサイトへ移動します)

側溝に気をつける

 大雨が降るかもしれないという予報が出ていますが、あなたの家の周りの側溝はきれいになっていますか。
 側溝は排水路ですので、水をせき止めるものが中にない限りは降った雨を川などに運んでくれるありがたいものです。
 ただ、注意が二つ。
 一つは側溝の中が汚泥やゴミなどで底が埋まっていたり、水がうまく流れなくなっていないかを雨が降る前に確認しておくこと。
 二つ目は、あなたの家の周りの側溝が、周囲と比べて低地になっていないかどうかということです。
 水がうまく流れるためには側溝にゴミがあったり、汚泥などで浅くなっていたら困るのはわかると思います。
 低地の問題は、側溝の排水能力を超える雨が降ると、低地部分から水があふれ出してしまうからです。
 もしも家の周囲がその低地に当たるのであれば、周囲に土のうを積んでおいたり、あるいは雨の様子を見て早めに安全な場所への移動を開始したりといった方策を考えておく必要があります。
 当たり前のことですが、水は高いところから低いところへ流れていきます。
 周囲から低い場所にあなたの家や避難経路があるのであれば、他の人よりも行動を早くしたほうが安心です。

ボランティアの仕事の過不足

 災害が起きると、現在ではほとんど当たり前のようにさまざまなボランティアがやってきて復旧や復興のお手伝いをしてくれます。
 ただ、ボランティアがあれもこれもやり過ぎてしまうと、被災者は何もできなくなって、当事者なのにお客様になってしまうという不思議な状態になってしまいますので、ボランティアをするときには全てをやってしまわないように注意が必要です。
 具体的には、当事者が何を望んでいるのかをしっかりと確認し、その意思の範囲内でボランティア活動をすることです。
 時間がかかっても、当事者がどのように考えるのかをしっかりと聞き出して作業を行うことで、当事者の復旧への意欲が取り戻せます。
 ボランティア自身はあくまでも支援者なので、支援者が勝手にあれこれ決めて行動するのはまずいのですが、ボランティアの現場に出ると、割とそういった光景に出会うことがあります。
 困ったことに、ボランティアのベテランになるほど、当事者の感情ではなくて作業の効率や技術面からの判断をしがちになるので、注意が必要です。
 ボランティア、特にお片付けボランティアは、被災者の背中を押すのが仕事ではありません。被災者の気持ちに寄り添って作業をすることが大事です。
 ボランティアはあくまでも支援者。そのことを常に念頭において、やり過ぎないように、足りないことがないように、活動をしていきたいと思っています。

逃げるべきか逃げないべきか

災害の原因はいろいろとありますが、その原因によって避難すべき場合と、自宅でやり過ごした方が安全な場合とがあります。
あなたはお住まいの場所やお仕事の場所がどのような災害の危険性があって、避難した方が良いか、するとすればどこに避難するのか、またはその場で待機している方が安全が確保できるのかを検討していますか。
いきなりやってくる地震の場合は、建物補強と落下物防止くらいしか事前対策はできませんが、他の災害は事前にどの災害で避難しないといけないのか、避難先はどこで、どうやって避難するのか、そして避難開始のタイミングはどうするのかを決めることができます。
また、逆に避難した方が危険な場合には、家にじっとしている場合も出てきます。あるいは、逃げ遅れた場合には自宅のどこが一番安全なのか、それも確認しておかないといけません。
行政機関が出す避難の呼びかけは地区・地域という面で発表されますが、実際に避難すべきかどうかは、あなたのいる場所の環境や条件によって異なってきますので、事前に地域の特徴を確認して、どのようにすべきかを決めておいた方が安心です。
逃げるかどうかがわからなければ、その先の準備がうまくできずに、実態とあわない状態になってしまいます。
まずはあなたのいる場所がどの災害に弱いのか、そしてどんな条件になったら避難しないといけないのか、そのことをしっかりと確認しておいて下さいね。

施設の避難計画はできていますか?

平成29年6月19日の『水防法』等の改正により、浸水想定区域などに所在する要配慮者利用施設の所有者または管理者に対し、避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が義務となりました。
要配慮者と聞くと老人や障害者が思いつきますが、乳幼児もここに含まれるため、老人ホームや障害者福祉施設だけではなく、幼稚園や保育園、こども園も避難確保計画の策定と避難訓練の実施が義務化されています。
4月18日付けの読売新聞1面には、浸水想定区域にある幼稚園や保育園、こども園の2割が避難確保計画未策定となっているという記事がありました。
その理由は「施設側の人員不足や義務化されているという意識が薄い」と記事には書いてありましたが、行政側も人員不足やコロナ禍で立ち入り検査ができず指導が難しいようです。
正直なところ、未策定の数字が思ったよりも少ないなと感じました。
実際のところ、避難確保計画では避難の発動条件が施設管理者の判断に一任されているものも多く、誰が見ても避難と判断できる避難条件が決定されていないものは策定しているとはいえないと思っています。
また、避難開始から避難完了までは定めていても、避難先でどのように過ごすのかや、どのようになったら避難を解除するのかについても、明確に決めているところは少ないと思っています。
避難確保計画はピンからキリまでありますが、災害対策に関心のある人が作っているかどうか、そして管理者や所有者がどれくらい真剣に災害対策を考えているのかによって出来上がりの質が相当違っています。
現在は計画があればいいということで、かなり適当に作っているところも多いと思いますが、大規模災害が起きるたびに要配慮者利用施設で死者やけが人がでる現状を考えると、もっと真剣に取り組むことと、防災に通じた人と一緒に考えるなどして、生きた避難確保計画を策定し、生きた避難訓練をし、本番ではだれも死なないようにしてほしいなと思います。
 

子どもと要支援者の避難先

被災地の避難所で生活しなければならなくなった場合、子どもと要支援者の方の取り扱いについては少し注意が必要です。
大規模災害で被災すると、被災地の衛生状態や医療体制は崩壊、または限定された対応しかできなくなりますので、いざというときの支援体制には非常に不安が残ります。
また、子どもの生活環境についてもかなり劣悪になります。常に見知らぬ人がいますので落ち着きませんし、何が起きても避難所の避難者に目の敵にされてしまうことが多いです。
いろいろと考えてみると、子どもと要支援者の方については被災地外に一時的に疎開した方がよいのではないかという結論に、今のところはなっています。
ただ、広域的に知り合いがいる方や医療機関同士の相互支援協定が結ばれていたりすればいいのですが、そうでない場合には疎開させるといっても受け入れ先の問題が出てきます。
そういった部分で、行政機関同士の連携が必要になってくるのかなと考えています。
大規模災害が発生しても、被災地の人は被災地で生活しなければならないという妙な前提条件があるような気がしますが、被災地の人が被災地外へ疎開しても全然問題ありませんし、子どもや要支援者といった配慮のいる人達が普段の生活に困らない場所に行っているという安心感は、復旧を早める効果があるのではないかとも思います。
原子力災害では問答無用で被災区域外へ避難をさせられてしまいますが、普通の自然災害でも、そういった対象になる人は被災地域外に移動させて、被災地の負担を少しでも減らすようにした方がいいのではないかと考えています。
ああ

段取り8分な災害対策

 昨日も書きましたが、「災害対策=特別なこと」としてしまうと、対策は長続きしません。
 あくまでも日常生活の延長線上で考えていかないと無理が来ます。
 そして、災害対策は決して難しいことではありません。日々の生活の中で、ちょっとした意識を持てばいいのです。
 災害対策とは「災害が起きた後、日常生活の質をいかに落とさなくてもすむようにしておくか」という準備ですから、住んでいる地域や今いる場所がどのような災害に弱いのかを知り、それに対する備えをしておけばよいのです。
 例えば、山のてっぺんに住んでいる人が浸水被害や津波の心配をしてもあまり意味がありませんし、平地に住んでいる人が土砂災害のことを気にしても自分の生死には直接の影響は少ないです。
 あなたがいる場所にあわせた対策をとることが、災害後の生活の質を落とさなくてもすむ一番の方策なのです。
 災害に弱いからといって、いま住んでいるところを変えるのは難しいかもしれませんが、引っ越しや家を買うときなどは、土地の形や周囲の状況といったものをしっかり確認しておくだけで、災害時に避難しなくてはいけない状況を減らすことができます。
 また、建物がしっかりとした耐震化がしてあれば、地震後に慌てて避難所に駆け込まなくてもすみますから、家を買う際にはそこもしっかりと検討しておいてください。
 普段からの生活の質を落とさないという点では、避難所へ避難するよりも自宅で過ごせる方がいいはずですので、まずは住むところが安全出ることが必要です。
 そして、食事、水分、排泄がきちんと確保されていること。
 特に排泄は絶対に我慢ができませんので、トイレの排水が無理だというときにどうやってトイレを確保するのかについてはしっかりと決めておかなければいけません。
 仮設トイレを作るのか、トイレの排泄部分だけを仮設化するのか、それとも使えるトイレを事前に調べておくのか。
 そういった決めごとをきちんと定めておくと、災害のショックで頭が回らないときにでもトラブルの回避はできます。
 最近の災害は多種多様なものが起きているので、そのときにどのようなことに困ったのかはさまざまな事例が今ご覧のインターネットなどにもたくさん出ています。
そういった事例を見て、自分のところの対応がきちんとできているかを確認しておくようにしてください。
 災害対策も段取り8分です。訓練していないことはできませんし、準備していないものはありません。
 仮設トイレや段ボールベッド、物資の配給訓練などさまざまな訓練はされていると思いますが、その訓練に使っている資材についても、きちんと使えるものを準備しておくようにしてください。

日常の延長の災害対策

 災害対策というと身構えてしまいがちですが、その目的は「日常生活を守ること」です。
 普段の生活を守るための対策を行うので、日常生活の延長として考えるといいのではないでしょうか。
 乾物や缶詰など、長期保存できるものを日々の食事のメニューに組み込んだり、風呂の水を貯めておいたり、カバンに水の入った水筒を入れておいたりといった、ちょっとした気遣いがあなたにとっての立派な防災になります。
 無理に災害対応用の特別なものを準備するのではなく、普段の生活の中で備えをしていかないと、特別にしてしまうといつかは忘れて存在しないのと同じ状態になってしまいます。
 日常生活、例えば電気やガス、水道が止まったときにどうやったら質を下げなくて済むのかを考えて準備をしておくと、それが災害への備えになります。
 個人の災害対策は身構えるほど難しくはありません。できるところから少しずつ手をつけて、災害時に日常生活をできる限り維持できるように準備しておくことをお勧めします。