台風に対する事前予測をしておこう

 台風のシーズンになりましたが、あなたのおうちの台風対策は万全ですか。
 台風の場合、ある程度事前に針路が予測できるので、早めの対応を取ることで、少なくともあなたの命を守ることは可能です。

台風の進路予想はかなり早い段階から出ている。進路予想図を見ることが大切。

 台風で怖いのは風と水。強風の中、水があふれてきたからと言って避難することはできません。
 少なくとも、周囲と比べて自分の家の高さはどうなのか、それくらいは地図や家の周辺をみるとわかると思いますので、周りよりも低い場所や、全体から見て低地の場合には、台風が来る前に安全な場所へ移動しておくことをお勧めします。
 また、背後に山がある場合には、その山の傾きや土質、どのような木が生えているのか、普段の水の出具合はどんな感じかなどを調べておきましょう。
 少なくともハザードマップなどの防災マップでイエローゾーンやレッドゾーンに指定されている場所にお住いの方は、これも早めの避難が大切です。
 避難先ですが、台風の影響のない場所に逃げるのが一番いいのですが、かなりの長距離移動になることが多いので現実的ではない場合もあります。
 高台でなるべく風の当たらない場所というちょっと矛盾した表現になりますが、そういった場所を普段から探して見つけておくか、もしくは安全な場所に立っているホテルなどの宿泊施設に宿泊するのもいいと思います。
 台風では、どうしても避難所の開設が遅れがちです。避難所が開設される頃には台風の真っただ中といった場合も想定されますので、なるべく早く安全な場所への移動を自己判断で行ってください。
 また、家は安全だという方は、窓ガラスが割れないような補強や、屋根の点検、雨どいや排水路の掃除などをしっかりとしておきましょう。

いろいろといわれるが飛散防止にはガムテープは有効。張る時は屋内側に貼ること。

 台風は事前に予測できる災害です。報道機関や行政機関が発表する情報を丹念に集めて、どのタイミングで何をしておくことが適切なのかを、しっかりと考えておきましょう。

ペットの避難

避難所で同行してきたペットの犬。トイレに向かい通路横が指定場所だったので、犬も避難者も困ったことになった。

 大きな災害が起きるたびに問題になっているのがペット。
 ペットを飼っている多くの人がペットの避難についてよくわかっていないというのが実情です。
 また、受け入れ側でもよくわかっていないので、混乱に拍車がかかっています。
 環境省では避難時にはペットと一緒に避難する同行避難を進めており、思ったよりもたくさんの避難所がペットの受け入れに関して可としているようです。
 一つ目の問題は、ペットの避難用語で「同行避難」と「同伴避難」という似て異なる言葉が使われていること。
 同行避難は避難所までは一緒に避難できるが、避難所内ではペットを別な場所に入れることで、同伴避難はペットと一緒に同じ部屋で過ごすことができるというものです。
この言葉の違いがなかなか理解できないので、避難所でペットの飼い主と避難所運営者が揉めることがよくあります。
 二つ目は、この「ペット」という言葉が何を指しているのかということ。
 同行避難可の避難所はペット用の場所や部屋を用意していますが、ここに入るのは「ペット」でくくられたさまざまな生き物です。
 犬や猫だけでなく、鳥やハムスター、蛇などの爬虫類、金魚などの魚類、そして昆虫類に至るまで、食物連鎖の関係にある生き物を一緒に押し込めることになります。
 対策としては、どんな生き物がペットとして避難してくるのかが事前にわかっていること、そしてどの種類をどこへ配置するのかを事前に決めておくことが非常に重要になってきます。
 また、飼っているペットの数が多い人は、避難所への避難は諦めたほうがいいかもしれません。
 避難所への避難を考えるよりも、自宅を災害の影響を受けにくい場所にするか、獣医師やペットホテル、そのペットに理解のある離れて住む家族や友人、知人と避難の話をしておいたほうが建設的だと思います。
 もともと指定避難所で優先されるのは「人」です。ペットを理由にして避難しない人が増えてきたので、ペットと一緒に避難するという考え方が出てきただけなので、人とペットを天秤にかけた場合、当然人を助けることになります。そういう意味でも覚悟をしておく必要がありそうです。
このペットの話はあくまでも一例。避難所の問題はさまざまありますが、普段はあまり考えられていません。
さて、あなたとペットが避難すべき場所はどこにありますか。

ペットの災害対策(環境省のウェブサイトへ移動します)

家族の料理と炊き出しの違い

当研究所が主催している”外遊びご飯の会”の一コマ。

 普段ご飯を作っている人なら簡単に炊き出しができるのではないかと思われる方もおられると思いますが、一度やってみるとその考えが間違っていることに気づくと思います。
 確かに、普段作っている分量を多くすれば、計算上は多人数のごはんづくりも可能ですが、実際には材料だけでなく、鍋や釜といった調理器具やコンロの火力、調味料の量などなど、想像以上に手間暇がかかって作るのがとても大変になります。
 避難生活で暖かいものを食べたいと考え、自分たちで炊き出ししようとすると、いきなりだと失敗する場合も結構あります。
 大人数の調理は、大人数の調理のコツがいろいろとありますから、できるなら年に1回以上、地域や職場で炊き出しの練習を兼ねた催しをすることをお勧めします。
 実際に作ってみると結構大変ですが、それらを食べることで仲良くなれますし、やり続けるとコツもわかってきます。
 そしてなにより、被災後にも調理ができるという自信につながりますから、万が一食料品が届かなくてもなんとかなるという安心感があります。
 ここ数年、新型コロナウイルス感染症の蔓延で一緒にご飯を食べるということが半ば禁忌扱いになっていますが、状況が落ち着いたなら、一緒に炊き出しして食べてみてください。
 いろいろな発見があると思いますよ。

食べたいものは季節によって変化する

 大雨が続き、あちこちで避難をされている方、そして被災された方には心からお見舞い申し上げます。
 早く天気が落ち着き、自宅に帰ったり復旧作業が進むことを願っています。
 さて、そんな災害の状況が悪化しない限り、指定避難所では行政からの食糧配給がある場合が多いようです。
 多くはパンやおにぎり、ちょっとしたお弁当になるようですが、それも長期になると飽きてくるものですが、自分の非常用持ち出し袋に自分が食べたい、食べるとご機嫌になる食べ物が入っていると、それだけで気持ちが落ち着くものです。
 ただ、この食べたいものというのが曲者で、季節の移り変わりによって食べたいものが変わっていくことが多いです。
 夏場だったら冷たいものやあっさりとしたもの、冬場なら、体の温まるものやこってりしたものが好まれるようですが、あなたの非常用持ち出し袋はそういった季節の変化に対応した入れ替えがされているでしょうか。
もちろん、季節を問わずにご機嫌になる食べ物があればそれが一番いいのですが、季節の変化とともにちょっとずつ非常用持ち出し袋の食料を入れ替えていくことで、どんな季節に避難をすることになっても、とりあえずの食べたいものが確保されている状態になります。
なかなか難しいかもしれませんが、季節によって変動する食べたいものも追加しておくと、防災食のレパートリーが広がって、避難所でもご機嫌で過ごすことができるかもしれませんね。
一つ注意しておきたいのは、温める際にはその避難所のルールに従うこと。
火気厳禁のエリアでは、たとえカセットコンロであっても利用はできません。
自分が避難する予定の避難所ではどういった状況で、どこでどんなものが使えるのかについても、避難訓練のときなどに確認しておくといいかもしれませんね。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmapを知っていますか

 これからの時期、秋の大雨や台風による被害が予測されますが、現在進行形で被害予測をしているウェブサイトがあるのをご存じですか。
 あいおいニッセイ同和損保が提供している「リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap」がそれです。
 本来、このシステムは台風、大雨、そして地震の建物被害を予測して迅速に損害保険の調査や支払いの体制を組むために作られたそうですが、建物被害の予測ができるということは早めの避難を促すことにもつながるのではないかということで、現在無料で情報が提供されています。
 このシステムで被害が想定される場所にいた場合には、しっかりとした対策を取り、場合によっては域外避難も考えながら早めの命を守るための行動をとることができると思います。
 もちろんAIによる予測なので、実際には被害が出ない可能性もありますが、台風などは最大で7日前からの予測ができるそうなので、それを見ながらさまざまな備えをしていくことも可能だと思います。
 ハザードマップも表示でき、アプリもあるので、興味のある方は一度試してみてください。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap(あいおいニッセイ同和損保のウェブサイトへ移動します)

車の燃料の残量に気を付ける

車をシェルターにするには燃料が必要。

 地方では多くの人が車を所有していると思いますが、その車の燃料はしっかりと入っていますか。
 車は燃料がある限り、災害時のシェルターとして機能する能力を持っています。
 また、支援物資の受け取りや買い出し、行方不明者の捜索やちょっとしたお出かけなど、落ち着いてからもさまざまな場面で重要な働きをしています。
 ただ、これも燃料があってこそ。
 燃料がなくなると、単なる鉄の箱と化してしまいます。
 車の燃料は燃料計の残量が半分になったら満タンにするクセをつけておいたほうがいざというときに安心です。
 大規模な災害になると、被災地だけでなく、日本全国で燃料の供給が止まってしまうような事態が考えられます。
 東日本大震災では、直接の影響のなかった地域でも燃料不足が発生し、ガソリンスタンドで給油制限などが行われたことを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。現在は、東日本大震災のときよりもガソリンスタンドの数が減少しているので、給油制限が行われるとあの時以上に生活に影響が出ることが予想されます。
 ガソリンの残量に気を付けて、できるだけ満タンにしておくようにすることで、少なくとも最初の1日は補給なしでも過ごせるはずです。
 ちょっとしたことですが、これも災害への備えということで、燃料計の残量と補給を意識しておくことをお勧めします。

避難は日のあるうちにする

 予測できないような突然の大雨というのもありますが、最近は結構高精度で振り出す前に大雨の予報が出ています。
 特に夜間に大雨が予測されるような場合には、夕方までの日のあるうちのところで大雨に関する情報が出されることが多いです。
 これは早めの避難のために行われるもので、低地や水害の発生が予測されるような場所に住んでいる人は、自分のいる場所でこういった情報があったら、早めに避難を開始することを検討してください。
 夜間の避難は非常に危険です。特に大雨の場合には視界が全く効きませんので、徒歩の避難もかなり難しいです。
 指定避難所の開設は自治体が行いますので、ひょっとすると開設がされていないかもしれませんが、そういったときには高台にあるホテルや旅館といった宿泊施設や知り合いの家などを確保して避難するといいでしょう。
 また、どうにもならない場合には、車中泊ということで高台の駐車場に移動し、車で一晩過ごすという方法もあります。健康に不安のある方にはお勧めできませんが、危険を回避するという点では一つの選択肢です。
 避難方法や避難先はいろいろとありますが、可能な限り日のある明るいうちに避難を完了しておくことが肝心です。
 夜間はまったく見えない、移動はできないという前提で、自分の行動計画を考えるようにしたいですね。

面と点

 大雨に関する警報があちこちで出ていますが、あなたのお住まいの地域は大丈夫ですか。
 あなたがお住いの場所の危険をハザードマップなどで確認し、何に対して備えておけばいいかについてしっかりと確認しておくことをお勧めします。
 ところで、もしもお住いの場所が浸水するような地域の場合、避難する基準は自分で準備しているでしょうか。
 というのも、避難情報の「高齢者等避難」や「避難指示」はお住いの地域の自治体が発表するもので、あくまでも地域という面で考えられています。
 ただ、自分が住んでいる場所という点がどうかは考慮されていませんので、避難情報が出る前に家が浸水しているといった事態は十分に考えられます。
 安全に避難するためには、普段から家の周りの雨や水の様子を確認しておいて、どれくらい雨が降るとどんな感じになるのかを知っておきましょう。
 そして、ちょっと危険だなと思ったら、自治体の避難情報を待つことなく避難を開始してください。
 ひょっとすると、自治体が開設する指定避難所はまだできていないかもしれませんが、その場合には自分が安全だと思える場所に退避しておいてください。
 例えば、ハザードで見る限り安全だと思えるような日帰り入浴施設や図書館といったような時間が過ごせるような場所に移動して様子を見てもいいでしょう。
 自分の安全を自分で確保することが、災害に対する備えとしては非常に重要になります。
 何もなければそれでよし。
 万が一に備えて、早め早めの行動をとるようにしてくださいね。

あふれた水には触らない

 あちこちで大雨が続きさまざまな被害が出ているようですが、あなたのお住いの場所はいかがですか。
 洪水時には、基本は早めの避難ですが、外に出ることができないくらいの激しい雨が降っているケースも増えてきていますから、そんなときには二階以上に避難する垂直避難も避難時の検討に加えておいたほうがいいと思います。
 よく、あふれた水の中を避難する人たちの映像が出ていますが、このあふれている水は普通の川の水とはかなり異なることを知っておいてほしいと思います。
 一番の違いは、汚水が混じっているということ。あちこちが浸かると、浄化槽や下水管などの汚物も一緒にあふれてきます。こういった汚物が混じった水は、雑菌が繁殖しやすく、破傷風菌などもかなり増えていますので、万が一怪我をしたり、傷口が浸かるようなことがあればそこから化膿することや死に至る場合があります。
 よく防災講演会などでは水の中を歩くときには杖を使ってなどと説明されますが、どうしても避難が必要な場合を除いては、水があふれてきたら水の中は歩かないという風にしたほうが安全です。
 サンダル履きではなく、靴を履けといった話がありますが、それ以前に汚れた水の中は歩かないこと。
 それを前提にしてどのような避難ができるのかを検討してほしいと思います。

危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。