「個別支援計画」ってなんだろう

 災害時に命を守る行動をとるのは自分自身です。
 ですが、例えば妊産婦や乳幼児、障碍者の方、お年寄りなど、自分ではすべての行動ができない人もいると思います。
 そういった支援が必要な場合には、あらかじめ周囲の人や介護事業者、民生委員などに助けてもらうための段取りをつけておきましょう。
 この段取りを「個別支援計画」と呼んでいますが、防災と福祉の狭間にあることや個人情報保護の観点から、なかなか計画作成が進んでいないようです。
 つまり、放っておくといつまでも自分を助けてもらうための計画ができませんので、支援が必要な人が自身で自分を助けてほしいこと、そしてなにをどんな風に助けてほしいのかについて、支援をしてくれそうな人に伝えておく必要があります。
 普段からさまざまな支援を受けていると、災害時にも支援がしてもらえると思いがちですが、非常時には非常時の段取りをつけておかないと誰も助けてくれません。
 普段助けてくれている行政は、災害時にはそちらの対応で手いっぱいになってしまい、支援が必要な人の救助まではとても手が回りません。
 ですから、普段から支えてくれている介護事業者や民生委員といった人たちや、地域の人たちに助けてもらうようにお願いしておくのです。
 それが個別支援計画であり、これなしに災害時に必要十分な支援は受けられないと考えてください。
 もちろん、災害の情報収集や避難のタイミング、避難先の選定から避難後の生活に至るまで、全部自分でできるという人は個別支援計画などは作らなくても問題ありません。
 でも、助けが必要な場面で助けがないと、生活をするのに困難が生じてしまうと考えられる人は、すぐにでも個別支援計画を作るようにしてください。
 個別支援計画は、普段やり取りをしている介護事業者やケアマネジャー、民生委員といった方に相談すると段取りをしてくれます。また、地域の自治会や自主防災組織などが機能していれば、そちらにも相談をしておくとやりやすくなります。
 自分が自分の命を守る行動が取れなくても、段取りをつけて助けてもらえるように準備をしておくこと。
 それをしておくことが、自分の命を守ることにつながりますが、あなたは大丈夫ですか。

自主防災組織のお悩み

 防災の仕事をしていると、自主防災組織の方から組織運営について相談をいただくことがあります。
 最初は地域の人を災害から守るという熱い思いで結成された自主防災組織も、時がたって災害が起きなければ、だんだんと熱も冷め、次世代への承継もうまくいかないことが多いようです。いただくご相談は、今後どうやればうまく活動ができるのかとか、人がいない、集まらない、動けないといった内容で、あまり明るい内容ではありません。
 ただ、聞いていると不思議に思ってしまうことが一つあります。
 それは、なぜ身の丈にあった計画に変更しないのかということ。
 ご相談いただくときの前提が「この活動計画ができなくなっている」というのが大半なのですが、できないのであれば、できるような活動計画に変更すればすむのではないかと思います。
 自主防災組織の中には、非常に立派な行動計画を作って毎年それを更新しながら組織をうまく運営しているところもあります。
 でも、地域によってはその行動計画を実行するだけの力がなくなっているところもありますので、そういった状況で持っている行動計画をやろうとするとどうしても無理が来ます。
 自主防災組織はあくまでも「共助」のために結成されている地域のボランティア的な組織ですから、実行することが難しい行動計画でできないというのであれば、行動計画自体を変えてしまえばいいのです。
 基本的な考え方は「できることをできる範囲で」です。
 理想を掲げても物理的にできない場合にはできませんので、できることをできる範囲で設定しなおすことで、無理のない自主防災組織の運営が続けられることになります。
 もちろん、人が増えたりやる気のある人たちがたくさんいる状況になれば、活動計画を組み替えて大きなものにすればいいだけなので、その時々に応じてやる活動を変動させるくらいの気持ちでいればいいと思います。
 よく誤解されているのですが、自主防災組織は自主防災組織に所属する人たちを守るために存在しています。
 自治会や自治体とは異なる任意組織ですので、あくまでも自主防災組織に加入している人をどうやって守るのか、を基礎にしてください。加入していない人を相手に考える必要はないのです。
 自主防災組織に加入している人達が、お互いにできる範囲でできることをして助け合うだけでいいと考えると、何となく肩の荷がおりませんか。
 自主防災組織を難しく考える必要はありませんん。地域の人間関係がしっかりと生きているなら、存在しなくてもいいくらいの組織であり、あくまでもお互いをできる範囲で助け合うために作られているのです。
 できることをできる範囲で、無理なくやり続けること。
 これからの自主防災組織はそれを前提にして活動計画を作ったほうがいいのではないか。そんな風にお話をしています。

被災地外でできることとしてはいけないこと

 大規模な災害が起きると、その地域の人の手助けがしたいと思う方も多いのではないでしょうか。
 東日本大震災の後、しばらくはあちらでもこちらでも募金活動をやっていて、募金する人が寄付疲れを起こしてしまうようなこともありましたが、大規模な災害のあと、被災地が復旧・復興するための支援はさまざまな形でできます。
 被災地への支援というと、多くの人は直接的な支援ということで現地ボランティアや支援物品の送付を行ってしまいますが、これらは現地の受け入れ態勢ができていないとかえって混乱を起こしてしまいます。
 もしも直接的な支援をするのであれば、現地の受け入れ態勢が整ってから支援を開始してください。
 少なくとも大規模災害の場合には、災害発生から3日間程度は現地の混乱や救助作業が優先されることから、素人が現地入りしたり、支援物資を送られても道路や物流に混乱が生じるだけで被災地に負担をかけるだけです。
 特に支援物資を送るのはご法度です。
 SNSやマスメディアで「〇〇が不足している」と報じられても、個別に自力で現地に持ち込める人以外は絶対に送ってはだめです。
 物流に負担をかける上に、届いたころには現地で必要なものは変わっています。
 そして、どうかすると届いた時には腐ったり痛んだりしていることもありますし、大量に余ったものは現地で処分することになって余計な負担をかけることになります。
 同じ物品を送るのであれば、例えば大手通販サイトがやっているような、被災地から要求された物品を購入して届けてもらうようなシステムを活用してほしいと思います。
 また、被災地の復旧・復興は非常に時間がかかります。
 一過性の寄付だけではなく、被災地の物品を購入したり、被災地の被害から復旧したところへ旅行に出かけてみたりして、直接的・間接的に被災地にお金が回るようにしてください。
 継続して支援することが、被災地の復興にはもっとも大切になります。
 そしてもっとも難しいのも、この継続してする支援で、どこまで、いつまで続ければいいのかはあなたの判断次第です。
 被災地への支援は有形無形、いろいろとできますので、できる範囲で、できることを、現地に負担をかけない形でしてほしいなと思います。

「大丈夫」という情報の大切さ

 災害が起きた時に自分に大きな被害がなかった場合には、あえて自分は大丈夫という情報発信はしないという方が多いと思います。
 特に大きな災害の場合には、短時間で相当数の安否確認の電話やメールが集中してしまうので、通信環境への負荷を防ぐという意味でも発信を控えるということはよくあることだと思います。
 ただ、心配している人から見ると情報発信がないというのは「大丈夫」だから発信していないのか、それとも「発信できないような状況」になっているかがわかりませんので、不安に駆られて相手が出るまで電話やメール等を送り続けて通信環境を悪化させてしまうことが発生します。
 被災地外で被災地にいる人の心配をする人は、とりあえず無事なことがわかればいいのですから、とりあえず被災地にいる人は自分が大丈夫である旨の情報は発信したほうがいいわけですが、電話やメールでやりとりしていると状況はあまり変わりません。
 SNSや災害時伝言ダイヤル、災害用伝言版などを活用して、なるべく通信環境に負荷をかけずに大丈夫なことが伝えられるといいと思います。
 SNSであればいいのですが、災害時伝言ダイヤルや災害用伝言版では一つ気を付けておかないといけないことがあります。
 それは「鍵となる電話番号を決めておくこと」です。
 「J-Anpi」というシステムによって、固定電話、携帯電話会社に関係なく、登録されている伝言はどこからでも見たり聞いたりできるようになっていて、いちいち探す手間はかなり減りました。

※注 災害時伝言ダイヤルとweb171は連携しており、相互に情報確認ができる。

 ただ、J-Anpiの伝言を聞くためには鍵となる電話番号が必要となります。
 「もし自分が被災したとき、安全だったら伝言を出しておくから、〇〇番で検索してくれ」という情報を連絡してくるであろう相手に伝えておくことで、いざというときに通信環境に負荷をかけずに安否が確認できます。
 これは家族間でも同じことで、いざというときにどの番号で伝言をやりとりするのかについては事前に決めておくようにしてください。
 また、災害時伝言ダイヤルや災害時伝言版は平時でも訓練用に開放されているときがありますので、そういった機会を使って、実際にやりとりする練習をしておいてください。
 「私は大丈夫です」ということを伝えることは大切な情報です。
 自分が無事だから発信しなくても大丈夫、ではなく、無事だからこそ大丈夫だという情報を早めに発信するようにしてください。

J-Anpi(J-Anpiのウェブサイトへ移動します)

NTT西日本の災害への備え・対策サイト(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

交通規制に気を付けて

 

チェーン規制が行われている区間でチェーン規制がかかると出される道路標識。

寒くなりました。
雪が降っているところもあるようですが、車をお持ちの方はスタッドレスタイヤをきちんと履いて、安全運転で移動をお願いします。
よく「四輪駆動車だから問題ない」とノーマルタイヤで雪道に突っ込む方がいらっしゃいますが、いくら四輪駆動でも、道路と接しているのはタイヤです。
四輪駆動でも前輪駆動でも、ノーマルタイヤだと駆動形式に関係なく滑ってしまいますので、雪道は必ずスタッドレスタイヤ、またはタイヤチェーンを履くようにしてください。
ところで、冬タイヤ規制は雪の降る場所では普通に行われていますが、今年も大雪で車が動けなくなるような場所ではそれに加えてチェーン規制が行われます。
チェーン規制が該当する区間を走る人は、スタッドレスタイヤに加えてチェーンも持参するようにしてください。
チェーン規制の区間や使えるチェーンの種類など詳しくは国土交通省のウェブサイト内にある「チェーン規制Q&A」をご確認ください。

チェーン規制Q&A(国土交通省のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】高津小学校の防災クラブを開催しました

「階段で地震が起きたらどうするか?」を本人たちで考えて身を守るポーズをしてもらった。考えて動いてみることがとても大切。

 2022年11月30日に益田市立高津小学校で11月の防災クラブを開催しました。
 この防災クラブは学校のクラブ活動の一つとして取り入れてもらっているものですが、今回は校内に設けられたチェックポイントに準備された問題を解いたり、演習をしたりしてもらう「校内オリエンテーリング」を開催しました。
 去年のチェックポイントは問題だけだったのですが、こちらの想定よりも相当早く帰ってきてしまって時間が余ってしまったという経験から、今回は消火器の使い方や胸骨圧迫を交代で2分行うこと、そして階段で地震に遭遇した時の防御法について実際に動いてみてもらいました。
 結果としてはかなり楽しんでもらえたようですが、このオリエンテーリングは当日の準備が大変なので、いかに当日の手間を減らすかがこれからの課題となりそうです。
 今回参加してくれた子どもたち、快く支援してくれた先生方、そして毎回手伝ってくれるスタッフの皆様に感謝します。

あるものでなんとかするには

ゴミ袋と養生テープで防寒着を作る。ここまで本格的である必要はないが、やってみると結構楽しい。

 災害が起きた後は、とりあえずあるものでなんとかするしかありません。
 ですが、あるものでなんとかするには、あるものの活用法を知っておかないとなんとかすることができません。
 一番いいのはあるものでなんとかする羽目にならないような準備がされていることなのですが、なかなかそこまで準備のできている人は少ないような気がしています。
 あるものでなんとかするためには、その場にないが必要になったものの特徴を考えてみる必要があります。
 その特徴を満たすような代替品を探すと、案外となんとかなったりします。
 例えば、座布団で考えてみます。
 座布団の機能は床の固さの緩和、床の冷気の遮断といったところになると思います。
 そうすると、その場にビニール袋と新聞紙があれば新聞紙をくしゃくしゃにしてビニール袋の中に入れれば、とりあえずの代替品になるかもしれません。
 大き目のボールがあれば、その空気を抜くことで代替品ができるかもしれません。
 緩衝材があれば、袋にいれれば手軽に座布団ができるでしょう。
 こんな風に、機能を考えることで代替品を用意できることがあります。
 もちろん代替品の候補がどんな機能を持っているのかを知っていないとそもそもどうにもならないので、いろいろなアイテムの機能や特徴を調べて知っておくといいと思います。
 例えば、極端な例ですが、穴が開いているからと言ってちくわをストローの代わりにすると、ちくわストローを使って飲んだ飲み物はみんな魚の味に染まってしまいます。
 つまり、素材の特徴も知っておかないといけないということです。
 あるものでなんとかすることは、ないに越したことはありません。
 あくまでも代替品を作ることができるという前提で、必要なものの準備を怠らないようにしてください。

自助と共助と公助の関係性

 最近の災害対策で言われているのが「自助」「共助」「公助」です。
 考え方はいろいろとあるのですが、災害時には「自助」→「共助」→「公助」の順番に自分の身を守る対策が行われることから、一番最初に来るのが自助となります。
 では、普段はどうでしょうか。
 「自助」だから自分で、と言われても、何から手を付けたらいいのか、災害対策に興味のある人でもない限りはわからないとなると、自助は全く進みません。
 そのために「共助」としての自主防災組織づくりが言われているわけですが、これもコロナ過で地域のつながりが薄れてしまったことや高齢化などでうまくいかないという現実があります。
 また、自主防災組織単独で研修や講習をするのは難しいかもしれません。
 そこで「公助」の出番となります。
 さまざまな研修や呼びかけ、訓練開催などを通じて何をしたらいいのか、何から手を付けるべきなのかを明確化し、実行するための後押しをします。
 例えばその相手が自主防災組織だったり、地域だったり、個人だったりするわけですが、誰が何をすべきなのか、どのようにすればいいのかについての交通整理も公助の仕事かもしれません。
 災害対策は、平時には「公助」→「共助」→「自助」という、災害時とは逆の動きをする必要があるのです。
 「公助」を行政単独でするのが難しいなら、消防や社会福祉協議会、当研究所も含む災害対策のNPO等に支援を要請してもいいと思います。
 大切なのは災害対策に対する備えや心構えなどがきちんとすべての人に伝わることです。
 理想論かもしれませんが、最初はできることが小さくても、さまざまな災害対策を見たり訓練したりすることでできることが増え、結果として地域の防災力の向上につながっていくと思います。
 災害対策は発災前と発災後では「自助」「共助」「公助」の矢印が変わると考えると、案外と関係性がわかりやすくなるような気がするのですが、あなたはどう思いますか。

あなたは地図が読めますか

普段住んでいるところでも案外とわからないところがある。写真は防災マップを作る一シーン。

非常用持ち出し袋のアイテム類の一覧を見ると、多くのものに「地図」が入っています。
田舎に住んでいる人にはピンとこないアイテムなのですが、普段公共交通機関で移動している人の場合には、いざ歩いてときに道がわからないという大問題があるため、地図が必要だと考えられているのです。
ただ、この地図にもさまざまなものがあり、それぞれに特徴があります。
どのような地図を準備してもいいのですが、その地図がきちんと読めないと何の役にも立ちませんので、せっかく地図を準備するのであれば、その地図に書かれているものがどのようなものを意味するのかをきちんと理解しておきましょう。
例えば、自分のいる現在位置がわからないとそもそも地図が使えません。
また、場所がわかっていたとしても、自分がどの方向に向けて移動すればいいのかが理解できていなければ、全く違った方向に移動してしまうことになります。
最近都会地では「避難用マップ」というような名称で徒歩避難者向けの地図も販売されているようですが、地図を用意するのであれば、方位磁針もセットで準備したほうがいいと考えます。
例えば、日本で作られて日本で使う地図の場合には、基本的に上側が北になっているはずです。そうでない場合には地図面のどこかに方位が記載されていますので、それを確認してください。
では、方位磁針がない状態で自分がいま見ている方向を当ててみてください。
次に、30分ほどその地図で歩いてみて、今見ている方向が東西南北のどの方向なのか、もう一度当ててみてください。
結構な確率で方向がわからなくなっていると思います。
平時にはさまざまな目標や目印があって移動もわかりやすいですが、災害時にはそれらが燃えたり崩れたりしてわからなくなるかもしれません。
地図を準備するなら、方位磁針も併せて準備し、そのうえでそれを読み取ることが可能な程度には見慣れておく必要があります。
現在はスマホやカーナビが充実しているため、地図を見ることはあまりないと思います。
地図は普段から見慣れていないと内容を読み取ることは難しいですので、特に長距離を公共交通機関で通勤・通学している人は機会を作って地図と方位磁針に慣れるようにしておいてください。

【活動報告】防災講習会で非常用持ち出しについての講師をしました

 去る11月19日、益田市の市民学習センターで開催された南町自治会様・同自主防災組織様の防災講習会の一コマで非常用持ち出しについて講師をしました。
 災害時、自分の避難が完了してから支援物資が届きだすまでは自分の持ち込んだ非常用持ち出し品を使ってしのがなければなりません。
 その際にどのようなものを用意しておくのかやちょっとしたコツなどについてお話をしました。
 皆さん熱心に聞いていただき、こちらの説明がいざというときに備えた非常用持ち出しを上手に作るための参考になるとよいなと思います。
 お声がけくださった南町自治会の皆様にこころからお礼申し上げます。
 なお、当日カメラを忘れて写真がありませんことをご了承ください。