屋根の雪下ろしと安全帯

当研究所のある地域は降ってもこの程度。でも屋根からの落雪で怪我をすることはある。

 大雪が収まると、大量の雪が屋根に積もっている場所では雪の重さによる家屋の倒壊や落雪による怪我などが起こります。
 そのため雪下ろしをするわけですが、雪下ろし中に転落事故等により怪我をすることもよく起こります。
 雪下ろし中の転落防止のため、最近のNHKラジオの中で「安全帯をつける」ように放送がされていて、気になったことが一つ。
 確かに、転落を防ぐために利用されている安全帯は屋根など高所での作業では絶対に装備しておく必要のある道具の一つです。
 ただ、安全帯をつけるためにはその安全帯をつなぐためのアンカーという設備を準備しておかないと、もしも転落した時に安全帯が役に立たなかったという事態になりかねません。
 調べてみると、豪雪地帯である新潟県などでは屋根に雪下ろし用のアンカーを取り付けることや、そのアンカーを設置するために必要な工事代金の補助などが行われているようです。
アンカーを作る工法にもいろいろとあるようで、その場にあった工事をしてもらえるようです。
では、突発的に大雪が降った場合にはどうすればいいのか。
国土交通省のウェブサイトを見ると、「アンカーがない場合には反対側の柱や固定物にしっかりと固定する」となっていて、安全帯は必須であることと、固定するものの強度については特に問われていません。
 固定してみたら壊れてしまったということがないように、大雪が降りそうな場所にお住いで屋根にアンカーの取り付けができない場合は、冬に入る前に屋根から雪下ろしをする場合にはどこに安全帯を固定させるのかについて考えておいたほうがよさそうです。また、安全帯をつけていても転落時に救助してもらえなければ意味がありませんので、作業は必ず複数人で行うようにしてください。作業ができなくても、安全を確認するための見守り要員は準備しておきましょう。
 毎年大雪が降った後はほぼ必ずと言っていいくらい除雪時の転落事故が起きています。転落しないような対策について、大雪が積もる場所にお住いの方はしっかりと考えておくようにしてください。

「雪下ろし作業用具(安全帯、命綱、アンカー等)の入手、使い方について」(新潟県のウェブサイトへ移動します)

「雪下ろし安全10箇条~除雪作業中の事故に注意しましょう~」(国土交通省のウェブサイトへ移動します)

枕元に着替えを置こう

 ちょっと前くらいまでは、お年寄りが子や孫に「枕元に着替えを置くこと」を口を酸っぱくしていっていたのではないかと思います。
 かくいう筆者の家も、祖母が健在のころにはやはり着替えをすぐに着ることのできる場所に置いておくように言われていましたが、着替えの話とセットでよく空襲や災害の話をしていましたので、これは戦争時に何か起きたら、すぐに着替えて避難できるように準備しておくようになったのかなと思っています。
 突発した非常時に逃げなければいけなくなったとき、寝巻のままで避難をするのはいろいろな意味で危険だなと感じます。枕元に着替え、そして避難用の靴を置いておくことで、いざというときに迅速に行動ができると思います。
 また、これが準備できていると、夜間に停電して暗いときにでも着替えがあるのはわかっているので慌てなくてすむことも利点です。
 寝る前のちょっとした工夫で、災害時や翌日に迅速に行動ができる習慣として、枕元に着替え、そして非常時に履いて逃げるためも靴を備えておくといいと思います。
 ちなみに、非常用の靴は普段使いのものとは異なります。まっさらな靴を準備しておいて、今履いているのがダメになったら買っておいたその靴を使い、また新しいのを非常用の靴として使います。
 使っている靴を枕元に置くと、雑菌が辺りに舞うことがありますので、靴を準備するときにはその部分について気を付けてください。

JPCZってなんだろう

 ここのところ気象情報でJPCZ(ジェイピーシーゼット)という言葉が頻繁にでてきています。
 このJPCZ、日本語にすると日本海寒帯気団収束帯(Japan-sea Polar air mass Convergence Zone)となるのですが、日本語にしても意味がよくわからないと思います。
 気象用語なのですが、簡単に書くと、冬の日本海側の東北から山陰にかけて大雪が降るような状態と考えてください。
 大陸から吹く冷たい風が、朝鮮半島北部にある長白山脈で南北の二手にわかれ、日本海で再びぶつかるのですが、その際、日本海で暖かな水蒸気を吸収して大きな積乱雲が発生します。
 その積乱雲がほぼ同じような場所を通過していくため、その場所で大雪が降ることになります。

赤丸で囲った部分がJPCZの部分。

 天気図で見ると、西高東低の冬型の気圧配置で、等圧線が「く」の字状になっている部分、ここに発生します。
 そのような天気図を見たら、早めの雪対策をとるようにしてください。

冬型の気圧配置(気象庁のウェブサイトへ移動します)

停電時の寒さ対策

 最近の住宅はかなり電化が進んでいて、何をするのも電気がないと困る状態のおうちも多いのではないでしょうか。
 ただ、何らかの原因で停電になってしまうと、途端に何もできなくなるという怖さはあります。
 寒波の来ているようなときに停電になってしまうと家の中は冷蔵庫になってしまうので、低体温症や凍死を防ぐために、自分の体を冷やさないための対策が必要になります。今日はその方法を考えてみたいと思います。

1.発電機や蓄電器を使う

最低限の暖房器具が動かせるような発電機や蓄電器があれば、それを使うことで家の暖房器具を動かすことができます。
ただ、発電機は十分な酸素がないと一酸化炭素が発生してしまいますので、風通しの良い屋外でのみ使うようにして、屋内では絶対に使わないでください。
毎年1件以上の死亡事故が起きているくらい頻発していますので、屋外でも、風通しの悪い場所では使わないようにしてください。
蓄電池の場合には、その蓄電池が使える定格出力を超えない範囲で使うようにしてください。

2.別の熱源を使う

 ちょっと前までは割と普通に複数の熱源が家の中で使われていました。
 例えば、調理はガスで、暖房は石油ストーブ、灯りは電気という風に。
 少なくとも、暖房としてカセットガスストーブ、または石油ストーブを準備しておくようにすると、とりあえずをしのぐことができます。
 火を使って熱を作る暖房器具の場合、多くは調理にも使えるようになっていますので、停電時には暖と調理のできるありがたい器具となります。
 ただし一酸化炭素中毒になる危険性がありますので、30分に1回程度は換気をするようにしてください。
 炭や練炭などは大量に酸素を必要とするため一酸化炭素が発生しやすいです。そのため、屋内での使用はお勧めできません。
 また、お湯が作れるなら湯たんぽや、使い捨てカイロも暖を取るための優秀な道具です。

3.体の熱を逃がさない

 人間の体はかなりの熱量を出していますので、これを逃がさなければしっかりとした暖を取ることができます。
 例えば毛布や羽毛布団など、中に大量の空気を閉じ込められるようなものに包まれば、かなり寒さをしのげます。また、ウインドブレーカーや、何もなければ大きなゴミ袋を着ても、寒さしのぎはできます。
 ただ、体が冷え切ってしまうと熱を作りにくくなってしまうので、いくら着込んでも温かくなりにくいです。もしも着込むのであれば、停電してから部屋の熱が逃げるまでの間にしっかりと着込むようにしてください。
 また、汗をかくと冷えてしまうので、汗をかかない程度に着込む調整をすることも大切です。

 他にもあるとは思うのですが、停電時に暖を取る方法はあらかじめ準備をしていないといざというときに使うことができません。
万が一に備えて、しっかりとした準備をしておきましょう。

発電機は絶対に屋外で使う

携帯発電機を室内で使用して一酸化炭素中毒になる事故の再現映像(製品評価技術基盤機構(nite)作成)

 冬場に長時間の停電が起きると、電化されている最近の住宅では暖が取れなくなることがあります。
 その時に備えてガソリン式やカセットガス式の発電機を備えている方もおられると思いますが、屋内では絶対に使用しないでください。
 発電機に限りませんが、燃焼するときには酸素が燃焼により二酸化炭素に変わっていきます。
 ただ、供給される酸素が不十分になると、二酸化炭素になれずに一酸化炭素が発生し始めます。
 この一酸化炭素は人間が吸い込むと中毒死するような危険な気体なのですが、寒いと屋内やテントの中で発電機や炭火などを使い、酸素不足で一酸化炭素が発生して中毒死する事故がほぼ毎年起きています。
 災害後に電気が再開するまでは発電機に頼ることも多いとは思いますが、発電機はいくらコンパクトでも絶対に外で使用すること。
 そしてできるだけ開放的な場所で空気がしっかりと流れるようにしておくことに注意しておいてください。
 発電機は絶対に外の風の良く通るところで使うこと。
 周囲が住宅地の場合には発電機の音が気になってしまうかもしれませんが、命にはかえられませんので必ず守るようにしてください。

避難所は土足厳禁が基本

段ボールベッドと避難所用テントを組み合わせる。

 避難所では、生活空間は土足禁止にしたほうが健康を保ちやすいのでお勧めです。
 というのも、避難所の就寝場所がすべて床面から20cm以上の高さがある場所ならいいのですが、そうでない場合、土靴から落ちた汚れやごみ、ウイルスや雑菌などを吸い込んでしまい、呼吸器系の病気を発症することが多くなります。
 日本では床に直接寝る習慣があるために靴を脱いで生活空間に入るという習慣ができたのだと思いますが、これは理にかなっています。
 地表に舞っている病気の元であるゴミやほこりなどを吸い込まないために、靴を脱ぐ習慣になっているのです。
 逆に靴を脱ぐ習慣のない国では、寝る場所の高さを上げてベッドというものになっていて、地表で舞っているさまざまな雑菌から呼吸器系を守るようになっています。
 とはいえ、避難所は人の出入りも多く、土足を禁止してもしっかりとした衛生面の確保は難しいと思います。できるなら土足は禁止したうえで、床から少しでも高さを上げたところで寝ることにするようにしてほしいと思います。
 避難所の生活空間での土足を禁止することは、避難所で大きな病気を出さないためには大変重要なポイントです。

【お知らせ】1月開催のイベントのご案内

 石西防災研究所では、1月に一般向けワンコイン研修会を2回開催します。
 1回目は1月14日で、「ハザードマップの読み方を知ろう」。
 これはハザードマップに書かれている情報はどのようなものがあるのかということに始まるハザードマップの見方の研修会です。
 2回目は1月24日で、「マイタイムラインを作ろう」。
 これはハザードマップを読める人向きの研修会で、ハザードマップを元に、自分が置かれた状況や環境からどのような行動をすべきなのかについて時系列に整理し、それを行動計画書、防災ではマイタイムラインといわれるものですが、それを作って行動手順をみてわかるようにしていきます。
 どちらも災害への備えに対して有効な研修会ですので、興味があって都合のつく方はぜひご参加ください。
 参加費は500円/人。
 いずれも準備の都合上事前申し込みをお願いします。
 詳細は付属のチラシをご覧いただくか、事務局までお問い合わせください。

留守表示のジレンマ

 避難を促す人たちにとって、その家にまだ人が残っているのか、それとも避難が終わっているのかという情報は非常に大切です。
 避難が終わっている家に対して呼びかけを行うのは時間の無駄ですし、下手をすると避難を促している人の避難が遅れてしまうことになりかねませんので、避難したという情報がきちんと伝わるようにしておく必要があります。
 玄関への張り紙や軒下に印を出しておくなど、地域によってさまざまな形で避難したことを知らせる方法が決められているのですが、困ったことに、その方法が家に誰もいないということを教えている状態のため、空き巣にとってはこれ以上ないくらい仕事がしやすい状態を作っていることになります。
 ましてや、普段の留守であればいるかもしれないペット達も一緒に避難しているのですから、そういった人たちから見ると非常に仕事がしやすい状態にあるのです。
 かといって、普段通りの状態で避難をすると、避難してるのかどうかがわからないので、避難を促す人たちが困ることになります。
 避難区域を立ち入り禁止にして人も車も一切入れないこと。そして、立ち入り禁止区域に入ったものは問答無用で逮捕、というくらいの対応ができるとよいのですが、立ち入り禁止区域で出入りを規制する人をどうするのかという問題が発生します。
 緊急時には消防や警察は対応にかかりきりになりますので、なかなかこういったことにまでは手が回りません。
 一昔前なら消防団という地域をよく知っている人たちがいましたが、現在ではそこまでの力を持っているところは少ないと思います。
 手っ取り早いのは、避難するときに避難する人が、避難を呼びかける人に声をかけるようにすることです。そうすることで、避難したことがわかりますので、呼びかけるほうも楽になります。
 自己責任な世の中ではありますが、こういった避難確認をするようなところでは、地域コミュニティが生きていると思います。「一声かける」という文化も残っていると思いますので、お互いに安全な方法で対処ができるといいなと思います。

機内モードとモバイルバッテリー

スマホを音有りで使うなら、イヤフォンも忘れずに。

 災害が発生すると、被災地内では輻輳を防ぐために通信規制が行われます。
 そのため、なかなか電話やメールがつながらない状態になるのですが、基地局の電池設備が使えなくなると同時に通信そのものができなくなります。
 ただ、スマートフォンや携帯電話は基地局の電波を探そうとしますので、電池をいつも以上に消費することになり、繋がるようになったころには電池切れというパターンが多くなります。
 それを防ぐためには、モバイルバッテリーを持ち歩くことです。
 できれば2回以上フル充電できるくらい大きな容量のものがあると安心できます。
 また、携帯電話は通信が使えなくなったらスイッチを切っておくようにすると電池の持ちがよくなります。スマートフォンの場合には、画面の明るさを見られる範囲で暗くするのと同時に、できるだけ機内モードにするようにしてください。
 機内モードにすることで、スマートフォンは基地局の電波を探しに行かなくなりますので、その分電池の消費を抑えることができます。
 スマートフォンや携帯電話はさまざまな形で情報を集める手段として有効なアイテムです。このアイテムを活かすために、まさかの電池切れを起こさないように、二重三重の対策をしておいてください。
 ちなみに、乾電池式の充電器はスマートフォンへの充電はしっかりとはできないことが多いです。ただ、支援物資として乾電池が届くことがありますので、荷物にならないようであれば乾電池式の充電器も用意しておくと安心だと思います。

シェイクアウトのススメ

 地震はいつくるかわからないものですが、地震対策はいろいろとすることができます。その中で、簡単であなたの命を守ることができることの一つにシェイクアウト訓練があります。
 シェイクアウトの発祥はアメリカだそうですが、地震が起きた時の行動をたった3つに集約しています。
 「まず低く、頭を守り、動かない」なのですが、これができるだけで怪我から身を守る重要な行動がしっかりとできています。
 「まず低く」は、地震の揺れで自分の体が転倒することを防ぐために、できるかぎり低い姿勢をとることです。
 人間の頭は、普段はあまり意識しないと思いますが、非常に重たいものです。
 重心が高いと、揺れた時の揺れ幅が大きくなって転倒する危険が高まりますから、しゃがむ、座る、寝るなどして、できるだけ低い姿勢をとることが重要です。
 次の「頭を守り」ですが、意識がはっきりしている限り、地震によって発生するさまざまな危険から身を守る行動をとることが可能です。
 でも、もし落下物などで頭を打ってしまったら、意識不明、または混濁することになってしまい、その後に起きるかもしれないさまざまな危険から身を守ることが困難になります。
 最後の「動かない」は、安全な場所や姿勢を確保したら、状況が落ち着くまではその場でじっとしていることです。
 危険な場所であればそうも言っていられませんが、やたらと慌てて動くよりはじっとしているほうが安全なことが多いです。
 特に、日本の場合には建物や地下街であれば、よほどの地震でない限りは屋外よりも安全だとされていますので、動かないほうが得策な場合が多いと思います。
 これをまとめたものが「シェイクアウト」と呼ばれるもので、一人でも簡単に訓練ができます。
 地震が起きたと想定して、まずは姿勢を低くし、頭を守る姿勢をとってじっとしていること。
 たったこれだけですから簡単にできますし、非常に効果も高いと思いますので、ちょっとした時間にでも折に触れてやってみることをお勧めします。