災害時に備えるべきアイテム類は3日から1週間程度準備して備蓄しておくように国からは情報発信がされています。人によってはひと月程度準備しろと言っている方もいるようですが、都会地や消費地で生活している人の場合には、支援物資がどれくらいで届くのかまったく予測ができないので、国が言っているよりは長めに準備しておいた方がいいのかなとも考えます。
ただ、どんなに少ない量でも1週間分のアイテムをリュックサックに詰めるのはかなり至難の業で、非常用持ち出し袋が嫌がられるのには物理的に無理だという誤解や錯覚があるのかもしれないと思うこともよくあります。
もともと、備蓄には三種類あると筆者は考えています。
一つ目は普段から持ち歩く防災ポーチ。本当の緊急時に自分の命をつなぐために必要な最低限のものが入っています。
二つ目は、大雨や台風時などに1泊から2泊程度の生活必需品を詰めて避難に使う非常用持ち出し袋。
最後は文字通りの備蓄で、5日から1週間程度家や倉庫などに保存してある状態の生活必需品となります。
家に備えておく備蓄については、普段生活に使っているさまざまなアイテム類を少し多めに準備しておけば大丈夫です。特に食事と水に関しては普段使いである程度保存がきくようなものを重視して買い物をするようにしておけば、そんなに難しい話ではないと思います。
住んでいる環境によって備えるべきものがかなり異なるので、家に置く備蓄品については各個人や家庭でそれぞれ備えるべきものを準備しておくようにしてください。
避難に使う非常用持ち出し袋については、車などをお持ちの場合には、家と車の中の両方に準備しておけばかなり安心です。
その際、車の中はかなり温度差が激しい空間ですので、クーラーボックスなど温度変化を緩やかにしてくれるような容器にいれておくといいと思います。
そして、普段使いのカバンなどには、防災ポーチを入れておいてください。
防災ポーチと飲料水が確保されていれば、一日程度は生命の維持が可能になります。
一口に備蓄しろと言ってもさまざまな形がありますので、それぞれの目的に応じた準備をしておくことをお勧めします。
カテゴリー: BCP
災害用トイレは使えますか
災害が起きると、断水や停電、浄化槽や下水道管の破損などでトイレが使えなくなるケースが結構多いです。
トイレが使えない状態なのに無理やり使うと、トイレの中は大惨事になってしまいますので、できるならトイレがちゃんと使えることが確認できるまでは使用を禁止するようにしてください。
そうなると必要になってくるのが仮設トイレや携帯トイレ。
ただ、個人や自治会、自主防災組織などで準備はしていても、これを組み立てたり使ったりすることはほとんどないのではないでしょうか。
普段使っていないものは、いざというときにも使えませんので、防災訓練のときには実際に使ってみてください。
また、避難所で設営が必要な仮設トイレは、訓練のたびに出して組み立て、使いかたをしっかりと確認しておくことはとても大切です。
トイレは我慢ができません。そのあたりに穴を掘ってすることにしてしまうと、周囲の衛生状態に深刻な問題が発生します。
災害時のトイレ設営は最優先されることの一つなのです。
いざというときに慌てなくて済むように、携帯トイレの準備、そして実際に使ってみること。
仮設トイレは実際に組み立てて、これも使ってみること。
この部分の訓練は手を抜かないようにしたいですね。
【終了しました】研修会「となりのマイタイムライン」を開催します
2023年4月8日に益田市の益田市民学習センターにおいて、ワンコイン研修会「となりのマイタイムライン」を開催します。
最近、防災の話の中でよく出てくるマイタイムラインですが、何をどのように書いたらいいのかに悩む方も多いようです。
各個人ごとに作ることが求められているマイタイムライン。
日本語にすると「災害時行動計画(人によって違いあり)」を作っておくことで、いざというときの自分の行動に見落としがなくなり、より安全が確保できるものですが、災害時の行動がわからないとなかなか書きにくいものです。
そこで、今回はさまざまな人が作った「その人のマイタイムライン」を覗いてみて、どんなことを書いておいた方がいいのか、何を書いておくといいのかについて考えてみます。
資料の準備の都合上、事前申込をお願いします。
チラシでは電話またはLINEとなっていますが、Fecebookのメッセンジャーでのお申し込みでも大丈夫です。
興味のある方のご参加をお待ちしております。
備蓄する飲料水のサイズ
非常用持ち出し袋や備蓄品を用意するときに悩むのがお水のことです。
一日2~3リットルの飲料水を準備するとなると、それだけで2~3kgの重さになりますので、非常用持ち出し袋に入れて歩こうと考えると結構大変です。
とはいえ、水は生き延びるために必須のものですから、非常用持ち出し袋だけでなく、普段使いのカバンや車の中、職場のロッカーなどにも準備しておきたいところです。ただ、よくあるのが、2~3リットルだからといって1リットルや2リットルのペットボトルで準備してしまうこと。
分量的には問題ありませんが、持ち歩くときや飲むときに大変なのであまりお勧めしません。
300mlから500mlの容器で複数個持ち歩くようにすると、非常用持ち出し袋の中でもおさまりがいいですし、飲むときも楽です。
また、一度封を切ってしまうと一日もたつと飲料不適の水になってしまいますので、小分けすることで飲めない水の大量生産も防ぐことができます。
家の備蓄品などで料理などに使用するのであれば2リットルでも問題はありませんが、直接の飲料用は持ち歩けるサイズにしておきましょう。
また、お茶やジュースではなく、あくまで水を持ち歩くようにしてください。
水なら傷口の洗浄や手洗いなど、ちょっとしたことにもいろいろと使えます。お茶やジュースだとこうはいきませんので、もしお茶やジュースを持ち歩くのであれば、それとは別にお水も用意しておいてください。
ほんのちょっとした工夫ですが、これを意識するかしないかで本番ではかなり変わってきます。
備蓄する水の量とサイズ、少しだけ意識するようにしてください。
いかに自己完結できるか
大規模災害時における被災地支援では、支援者がどれだけ自己完結できる装備を持っているのかがカギとなります。
衣食住については、被災地では当然不足している状態ですので、被災地に負荷をかけないようにすべて持ち込むことが推奨されます。
水害のように地域がある程度限定されている状態であれば、被災地域外から通えばすむのでそこまでの負担にはなりませんが、大きな地震だと被災地のエリアが非常に大きくなるため、被災地外から通うというのはかなり難しくなります。また、宿泊用のテントや車を持参していても、それらを展開する場所が確保できない場合も想定されます。
大規模災害で被災地支援に入る組織は全て似たような悩みを抱えていて、例えば消防や警察はそれぞれの敷地内に輸送用バスや支援車両を置き、そこで寝泊まりしていますし、自衛隊は事前に行政側が幕営地を確保したうえで派遣を受けています。
一般の被災地支援者は行政側に頼るわけにはいきませんので、早い段階で被災地支援に入るのならば、それなりの覚悟をしていかなければなりません。
保温、食事、給水、排せつ、睡眠。
自前でこれを確保できない場合には、被災地がある程度落ち着くまでは立ち入ってはいけません。
被災地支援するための前提は、どこまで自己完結できているかです。
被災地や周囲の状況を確認しながら、被災地支援に入るようにしてください。
地震に備える
日本ではさまざまな災害が起きますが、その中でも地震は起きた時には勝負がついているためにどれくらい事前にしっかりと準備をしておくのかが大切になります。
地震への備えとして、一番大切なのは何かの下敷きにならないことです。
地震の揺れでも、揺れだけで死んでしまう人はほとんどいないと思いますが、揺れによって生じる建物の倒壊や家具などの転倒では、怪我をする人がでてきます。
つまり、何かの下敷きにならないように対処しておけば、とりあえず命を守ることはできるはずです。
例えば住んでいたり出かけていく先がきちんと耐震化されていることで、建物の下敷きになる可能性を下げることができます。
また、家具や電化製品の配置を考えたり、寝室から撤去することで、それらの下敷きになることを防ぐことができます。
机などの遮蔽物の下に身を隠すのもいいとは思いますが、まずは落下物になりそうなものを撤去することでより安全が確保できます。
いつどんなときに起きるのかがわからない以上、どこにいても下敷きにならないように気を付けておくことが大切だと思います。
目的と手段
どんなことであれ、「目的」を達成する、そのための方法として「手段」が存在しています。
ただ、どうしたものか、よくこの目的と手段がひっくり返ってしまうことがあるので注意が必要です。
防災関係でいえば、最終的な目的は「自分の命が安全に確保できること」で、そのために自主防災組織やその他のさまざまな支援の形が存在しています。
ところが、例えば自主防災組織を作ることが「目的」になってしまって、組織を作るための手段が模索されているという不思議な事態が日本のあちこちで起きています。
自分の命が安全に確保されるのであれば、自主防災組織がなくても問題はないはずなのですが、なぜか「自主防災組織がなければ自分の命が守れない」として、無理やりに組織化しようとしているケースをあちこちで見ることができます。
こうなってしまうと、組織化が目的なので、組織ができると目的達成となり、その後放置になってしまっているのものも、筆者の知る範囲では非常に多くみられます。
防災に関して言えば、「自分の命を安全に確保すること」が目的で、その手段として、例えば自主防災組織があったり、地区防災計画があったり、マイタイムラインを作ったりするのです。
そこをしっかりと理解したうえで、目的と手段を間違えないように対策を考えていきたいものです。
カサカサとボソボソ
避難所など人が集まっているところの夜に起きるトラブルが「音」です。
その中でもポリ袋の「カサカサ」という音は非常に不快感を与えてしまうようで、避難所以外、例えば山小屋など多くの人が就寝している場所でトラブルになることがあります。
非常用持ち出し袋などの防水対策としてポリ袋を使う人も多いと思いますが、できればかさかさしないタイプのポリ袋を使うことをお勧めします。
また、たくさんの人が集まって就寝している場所では、緊張しているせいか寝ていない人のぼそぼそとした小さな話し声も気になるものです。
アイマスクや耳栓など、周囲の光や音を押さえる道具もあるのですが、善意の人ばかりではありませんので、確実に安全が確認されていない場合には、そういったものを使うのもどうかと思います。
対策としては、音が出ないようにすることと、人の声を気にしなくても済むような小型の自立型テントを持ち込むくらいでしょうか。
しっかりと眠れないと、気力はどんどん失われていきます。
あなた自身が他の人に被害を与えないように、そして周りから被害を受けないためにも、避難が必要な人は事前準備をしっかりとしておきたいですね。
小銭が必須なわけ
災害後に停電が起きると、電子マネーやクレジットカードは一切使えなくなります。
そうなるとお店での支払いは現金になるわけですが、お札は釣銭が難しいことからお店で販売を拒否される場合も出てきます。
非常用持ち出し袋のアイテムの中に「小銭」が入っているのは、公衆電話を使うときだけでなく、手近なものをお店で購入するときにも必要だからなので、数十円ではなく、ある程度まとまった硬貨を準備しておく必要があります。
出先で被災するときに備えて普段からある程度の小銭を持って歩いておきたいところですが、せめて100円玉1枚、50円玉1枚、10円玉5枚の合計200円は準備しておきたいところです。
これだけ準備しておけば、飲み物を1本と、公衆電話での電話くらいはできますし、持ち歩きにもさほど邪魔にはならないと思います。
小銭はいろいろなところであると重宝します。ちょっとでもいいので普段から持ち歩くようにしておきたいですね。
防災計画は現実的ですか
東日本大震災における大川小学校の損害賠償請求事件では原告が全面勝訴しています。このことは割と有名な話なのですが、この中で裁判所が「事前防災の予見と不備」を大きな理由にしていることはご存じですか。
人が集まっている学校などでは、想定されうる災害についてきちんと精査し、条件変更のたびに防災計画をきちんと見直すことが必須とされています。
詳細は裁判所の判例をご確認いただきたいのですが、筆者の解釈では、この判例の前提にあるものは、学校に限らず、人が集まる施設では起こりうる災害とその対策についてしっかりと精査したうえで可能な限り犠牲者を出さないための対策を行う必要があるということなのではないかと思っています。
学校や病院、介護施設、保育所やこども園などでは、ほとんどの場合防災計画が作られていると思います。ただ、それはきちんとそれらがある場所の状況を反映し、的確に安全確保ができるものになっているでしょうか。
特に介護施設などでは、筆者の知る限りでは防災計画のひな型を適当に手直ししたものが備え付けられていることが多いですし、見直しや改訂もまったくされていないものもよくあります。
法律上は防災計画が立てられていて計画書が備え付けられているので問題がないと判断されるのですが、それで安全がきちんと確保されているでしょうか。
防災計画を一から作れというのは結構ハードルが高いと思うのですが、これらの施設に義務付けられている避難訓練の状況や結果を防災計画書に反映させることはできると思います。
もしあなたが防災担当をしているのであれば、今からでも遅くはありません。
自分の担当している防災計画書を見直し、地域の災害リスクや要件をきちんと満たせているか、そして実際に安全確実にできるような計画になっているかを確認し、しっかりとした安全を確保してください。
余談ですが、介護施設は特に地域の中では危険な場所に建てられていることが多いです。立地からすでにリスクがあるのですから、しっかりとした対策を作って実行できるかどうかを確認することをお勧めしておきます。
大川小学校津波訴訟判例文(裁判所のウェブサイトへ移動します)